第百十一話『捕食能力は秘密である』
バイトを辞め彼らといる時間が増えたのだが、自分に対しての依存度がより高くなっている気がする。
「なぁ、俺は今からトイレを使う。分かるか?」
そう、病的なまで自分と共にいようとするのだ。仮に此れが付き合いたての恋人ならば可愛げのある行動なのだろうが、此奴らは違う。
「どうぞ、お構いなく。」「ふふ、排泄の音を私に奏でてくださぁい?」「拭いてあげるわよ!」
頭が可笑しいのでは無いか?最後に至っては拭いてあげるって何だ?拭かせる訳がないだろう。正気の沙汰ではない。
「あぁもう!ドアを閉めさせろ!!」
トイレの扉を閉め様にも三人はニッコリと微笑みながら全力で開けて来るのだ。
「あぁークソッ!」
(もう漏れるってのに!!)
青年は諦めた様にズボンを脱ぎ、座る。
(座って小便をすれば多少は見られ難いはず!)
だが三人はしゃがみ絶妙な位置で自分の逸物を見ようとしている。いや逸物を凝視している。ねぇ、これって一体どういう状況?教えて頭がいい人!!
「.......もう諦めたよ、俺は。」
ブランチェが三人に気づいたのか此方へと歩いてきた。
「何をしてるいるのだ、お主ら..........」←見なかった事にしてその場を去る
待ってぇブランチェ!!違うの!!俺じゃなくてこいつらなの!!
「早く出しなさい、ジョン。」「そうですよぉ焦らすなんていやらしい♪」「早く出さないと拭けないじゃない!」
見られている所為で小便が出ないんだよ!!最悪だ。扉へと再び手を掛けるがルキフェルが怖い笑みで押さえつけて来る。
「良い加減にしろよ、変態ども!!」
気合いで小便を何とか捻り出しトイレを出る。しかし三人は未だにトイレの個室に残って居た。
「此れがジョンの蜜の香りですかぁ♪」
即座にトイレに入り、匂いを嗅ぐディアーナ。ドン引きである。
「確かに。此処はエデンの香りがする。」
エデンに住んでた二人に謝れ、堕天使。
「べ、別に私は匂いを嗅ぎたい訳じゃあないけど、い、一応、将来の妻として旦那のお、おしっこの匂いを...........ってもう!何言わせんのよ!!」
此処まで最悪のツンデレを聞いたのは初めてだよ。
(バイトを辞めてからますます変態度がエスカレートしている気がする。そもそも彼奴ら本人は行為其の物に悪意を持っていないところが厄介だ。)
リビングにあるソファーに腰掛けテレビをつける。
「はぁ、無駄に疲れた。ん?これって........」
時刻が既に深夜帯という事もあり、アニメが放映されていた。
(ルキフェルの小説、映像化されたのか。)
「地獄内部の変革、統治、ね。」
今の姿からは想像できぬ程に禍々しくカリスマ性に満ちた姿のルキフェルが画面には映る。
”神は不要、我ら闇に生きる者が世界の根幹を成すのだ!”
堕天した天使、もしくは悪魔に対し弁を述べる姿はまさしく覇王。悪魔達は歓喜しルキフェルへと賛同の雄叫びを上げる。
(はぁ、来た当初はまだ良かった。威厳性やカリスマ性に満ちてたし、しっかりと律儀な面もあった気がする。)
「ディアーナ、袋はありますか?匂いを詰めなければなりません。」
しかし今では見る影も無い。此れが如何してああなった?
(スペックだけはかなり高い.........だが日が経つにつれてより残念になっていく。)
携帯でルキフェルの名前を検索すると数多のページが出て来る。小説の公式ページへと移りルキフェルのキャラ設定のページをクリックしてみる。
(これが公式設定か。)
ルキフェルの能力は本人に聞かされた為あまり調べなかったが、一応は目にする良い機会だ。
『Lucifer〜神への反逆、そして敵対者へ〜』
ルキフェルは元々全天使の長であったが、神と対立し、天を追放され神の敵対者となる。天使たちの中で最も美しい天使であり、聡明な人物とされるていた。
【能力 】
「天の奇跡一覧」
『天使の祝福』_如何な病をも完治させる奇跡。
『熾天使の肉体』_人と言う種が振るいし能力、武具は一切通用しない(此れは例え半神であろうと人と言う血が流れる使い手である以上、如何な能力と言えど肌を通さない。)。
『情報の把握』_地上にある物であれば如何なものでも即座に解析し、己で作成できる様になる。
『天使の夢』_過去、未来、現在をランダムで見る事が出来る。最大限に集中して見れば、ある程度の指定も可能。天使は本来、眠る必要がない。
【武器】
「熾天使の槍」_主武装の一つ。聖なる力を宿す聖槍。破壊する事は不可能。地上の物であれは如何なものでも必ず破壊する事が可能な槍。一振りで国を屠るだけの威力はある。
「裁きの光」_天から浄化の光を地上へと下ろす。罪ある者は逃れられない。
「黙示録のラッパ」_ヨハネの四騎士を召喚する。天界の再奥地にて封じられる四騎士の起動権。
うん、中学生の頃に書き殴った最強キャラノートかな?
「前からチートだろうなとは思ってたけど、マジでチート過ぎるな。」
あまりの設定に絶句する。まず見た限りではカミーユやあの降霊術師ではルキフェルに傷をつける事すらも叶わないだろう。
「それにあの槍、そんな能力があったのか........」
初期の頃、何時も脅される際に首に当てられた聖槍を思い出し、寒気を感じる。
「実質、神や悪魔、同じ天使の奴らしか此奴に勝てないじゃん。」
トイレではしゃぐルキフェルを横目で感慨深く見る。
(王冠戦争が仮に勝利者一人を決める戦いだったら、彼奴一人が余裕勝ちをするんじゃあ無いのか?)
(いや、ブランチェもいたな。)
100%の神性を宿すブランチェはルキフェルの身体を貫くことが出来る。だけどブランツェの力は未知数だ。戦ったら面白い結果になりそうだけど、其れは永劫に起こらないだろう。選定者が五人である以上、此処にいる皆は協力するらしいし、殺しあって欲しく無い。
「とはいえ、この二人が入ればうちは安泰だな。」
勿論、カミーユやディアーナだって強い。だがルキフェルら二人は一線を画すだろう。以前の戦いでカミーユの戦闘を見たが、人間離れをした戦いだった。やはり、この世界の住人とは違う身体の作りをして入るのかもしれない。
「ああいう戦闘をリアルで見るとワクワクとする物があるよなぁ。」
確かに怖かった。けれど楽しくも感じた。青年は小さく笑い、テレビへと視線を戻すとミニキャラと化したルキフェルが次回予告をする。
『見ないと叛逆します!叛逆叛逆ー!』
「ぶふっ!」
思わず吹き出してしまう。
(作中より次回予告のルキフェルの方がルキフェルっぽいのがいいな。)
青年は一度立ち上がりキッチンへと向かう。行く途中にトイレへと顔を移すが、既にルキフェル達の姿はなかった。
「散歩にでも出かけたのか?本当に自由気ままな奴らだな、彼奴は。」
コーヒーに砂糖を入れ口に含む。
(そう言えば、ディアーナの能力が瘴気や過剰回復って事はゲームやってて分かってるんだけど、ちゃんとした設定集に目を通した事無いなぁ。)
「登場作品名」
『Radiance 〜始まりの冒険〜』
『Radiance2 〜深淵の女帝〜』
勇者一行と旅をした元司祭。一作目の最期にてパーティを残滅させ、天界への門を開く。二作目には天界を滅ぼした深淵の女王として登場。二作目主人公マールスの元戦友にして最大の敵。
【能力】
「瘴気」_触れたもの、吸い込んだ物を枯渇させる。最大にして最強の武器。
「瘴気の応用」
1.不死身の肉体ー聖なる剣で細胞を一つ残らず消さない限りは死なない。
2.魔獣生成ー瘴気による魔物の生成を行う。人型も可。
3.捕食ー喰らった者の全ての能力を自分の物とする。
「過剰回復」_相手に一定以上のヒーリングをかけ生体組織を破壊する。
「奇跡」_仲間に対し、強化を与えたり邪悪なる者(亡霊、死霊など)を討ち亡ぼす加護を与える。勿論回復なども奇跡に含まれる。
「あいつもあいつで凄まじい能力だな。」
青年は瘴気の応用を見て驚きの表情を見せる。
(ん?待て、待て待て待て!!彼奴、あの降霊術の奴を喰ったってルキフェルが言ってなかったか?)
ディアーナが拷問を終える際に瘴気を出し降霊術師を取り込んだと説明されたけど。
(あいつ、降霊術師の力が使えるんじゃ.........)
「じー」
「うわぁ!!!?」
いつの間にやらディアーナが目の前に立っていたのだ。
「何をしているんですかぁ?」
自分へと近づき膝の上に乗る。対面座位の格好だ。いつもなら悪態をつきながら突き放すのだが、緊張感からか口が窄んでしまう。
「い、いや、ちょっと、な?」
「ふー隠し事は行けませんよぉ♪」
耳へと顔を近づけ息を吹きかける。
「あひっ!?」
そしてディアーナは青年から携帯を取り概要を目にする。まるで浮気の証拠現場を取り押さえられた感覚だ。
「ふふ、私のことを知りたいのならぁ此処にいますのにぃ♪」
自分の頰をイヤらしく舌で舐めるディアーナ。
「でも...............この事は他の方々に言っては行けませんよぉ♪」
耳を甘噛みし身体を離すディアーナに微笑まれる。
「二人だけのぉ、秘密でぇす♩」
その姿は何処か悪魔的で魅力的に思えた。




