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第百二話『裏に聳える影』

「お帰りなさ_______何があったのか説明しなさい。」


ルキフェルが玄関にて出迎える。そして左腕の悲惨な状態を確認すると直ぐにシリアスな表情となり腕の治療をしてくれた。


「助かったよ。もう家に着く頃には完全に意識がなくなりかけてたからな。」


カミーユに背負われ、此処まで何とか帰っては来たが、道中は奴の襲撃があるのではないかと気が気でなかった。ルキフェルやディアーナの様な回復系の能力が使える奴がいて本当に良かったと思う。


「ジョン副団長ッ!!」


ディアーナが心底と心配した様子で駆け寄って来る。事の顛末を軽く説明すると即座に彼女は立ち上がる、杖を異空間から取り出す。


「_________戰支度が整い次第、出陣します。どこの馬かは知りませんが、私のジョン副団長にこの様な傷を負わせたのです。深淵の女王の名の下に、そのもの断罪を遂行しましょう。」

(ジョン副団長が襲われた........忌々しい創造物、血祭りに上げてやる。)


殺意に満ち溢れた瘴気の渦が発生する。しかし、彼女を止めるものは誰一人としていない。ルキフェルも同様に激昂とした様子で聖槍を取り出し、甲冑姿へと変える。


「ディアーナ、行きましょう。その者に報いを受けてもらいます。」



「待ちなさい!これは私のケジメよ!私が仕留めきれなかった!だけど、今度会ったら此の手でぶっ殺してやるわ!」


カミーユルは地団駄を踏みブランチェの元へと向かう。


「賢者様、あんな鈍剣じゃなくて頑丈な奴を頂戴!」


如何やらカミーユが使っていた剣はブランチェから授かっていた物の様である。


「ジョン、貴方の記憶を覗かせて貰います。」


ルキフェルが間髪入れずに自分の額へと手を翳すと目を瞑った。


「あぁ________この者が”私”の所有物に.........粛清をしなければ。」


ボソボソとおっかない事を口にしているが自分の為に怒って貰ってるのだから今回ばかりは軽口を挟む事を自重しよう。


「如何でしたか、ルキフェルさん。特徴、外見、特殊能力は把握出来ましたか?」

「えぇ、良き知らせですよディアーナ。カミーユが相手をした創作物の力は_______『人間』の範囲を出ない。」


ディアーナはそれを聞き高笑いをするとあのグルグルとした深淵に満ちた眼が更に深みを増していく。


「ディアーナ!彼奴はわ・た・しの獲物よ!ジョンに怪我を負わせた!それが許せないの!!」


自分の為に心底から起怒るカミーユに礼を言う。


「くっ......じゃんけんに負けなければ私が向かいに行っていた筈なのに。」チッ


礼を言われたカミィルを恨めしそうに見るルキフェル。因みにバイトを始めた当初、ルキフェルやディアーナ達がついて来ようとした為、条件を付ける事にしたのだ。最初はみんな反対したがじゃんけんの勝利者には自分を迎えに来る権利をやると言ったところ、何とか収まってくれた。


「私、ちょっと地下使うわね。実戦からかなり離れてたから身体が凄い鈍ってた.......次は絶対にジョンを危ない目に合わせないから。」


カミーユはブランチェから受け取った剣を握りアパートの外へと出る。カミーユは話す際に自分の左腕を悔しげに見ていた事から責任を感じているのだろう。


「カミーユ..........」


彼女の背中へと目を向ける。


「カミーユは強い。物語では語られなくとも吾輩は知っている。聖域への道のりは常人が為せる力量をとうに越えている。あれは試練だった。かのギリシャ神話の英雄ヘーラクレースが辿った12の功業、其れに連なる程に辛く苦難なものだっただろう。其れを一人で乗り越え、吾輩の元へと辿り着いたのだ。少なくとも吾輩の世界にいた人間では最高峰の逸材だと言えよう。」


祖母を助ける為にひたすら走った結果が今の少女なのだ。身につけた力は彼女からしたらおまけ程度の感覚なのだろう。だが彼女身につけた。英雄になれる素質、そして戦闘技術を。仮に童話ではなく冒険記に記されていたのならば間違いなくカミーユは『英雄』として祟られる程の実力者になったであろう。











「失敗か。」


高層ビルの屋上にて街を見渡す降霊術師。仮面を外し、タバコを吸う姿は何処か寂しげに見えた。


「殺してないなんて珍しいねー。」

「違うよフレイア。彼は殺しきれなかったんだ。」


魔術師は即座に仮面を嵌める。そして声のする背後を振り向き殺意の篭った表情で彼らを睨みつけた。


「貴様達が何故此処にいる。」


警戒をする様に魔術師は距離を保つ。一方、目の先の双生児二人は降霊術師を嘲笑うかの様にダンスを始める。


「君を監視していた方がより多くの同胞達と逢えるからね。もうこの半年で何人の創作物達を殺したんだい、ヨハンネス・トリテミウス?」


双子の男の方が問う。だが降霊術師はその問いに答えない。


「君は新人殺しで有名なんだ。よく思わない同胞だって沢山いる。」

「フレイアはヨハンネスちゃんの活躍に期待してるけどー。」


二人はくるくると降霊術師の周りを回りながら踊る。そして一気に距離を詰め鋭い眼光で彼を捉えた。


「けれど一方的なのはいけないよ。君が戦おうとしていた男は僕達とは似て非なる者だ。」

「そーお!美しい容姿をしていた彼、此処の世界の人間!」


降霊術師は目を見開き驚く。


「だけど良かったねー!結果的には同胞の一人と会えたんだよー!」

「偶然って凄いね。僕達は如何やら引かれ合う存在の様だ。」


降霊術師は勘違いをしていたのだ。当初の目的は創作物であると仮定していた青年である。だが双子が言う通り青年は創作物ではないらしい。


「君は下準備を欠かさないと言うけど、情報を誤った様だね。『黒の森』には報告をした方がいい。」

「うんうん。あの子も掃除屋なんて言われてるけど、根は優しい子だからね。多分、次の目標を絞って動き出している筈だから、其方を手伝えば良いと思うなって。だからフレイア的には今度からあんまり関係ない人を巻き込むなよって忠告しておいて上げるー!」


双子はお互いに両手を握り見つめ合う。


「...........私の存在を見られたのだ。生かして野放しにする訳にはいかない。それに黒の森と私は別行動で事に当たっている。貴様達に命令される筋合いはない。」


杖をトントンと床に叩くと降霊術師は双子の前まで近づき告げる。


「私を甘く見るなよ北欧神。あの者達を狩り終えた後は貴様達だと言う事を努努忘れるな。」


その台詞を言い残す降霊術師は姿を消した。


「「くく、あはははははははは!!!」」


その言葉を聞き双子はお互いを抱きしめ合いながら高笑いをする。


「ねぇ、ヨハンネスちゃんがフレイア達を殺せると思うー?」


口元が緩みきっている双子の女フレイア。もう一人の片割れであるフレアはフレイアの額に自分の額を当て言う。


「可能性は限りなくゼロだよ。今の僕達なら巨人スルトすらも圧倒できる。其れほどまでに全盛期の力を宿しているんだ。」


二人は広大な街を眺め再び笑う。


「王冠を巡る戦いは既に中盤だ。」


月へと向かい手を伸ばすフレア。


「精々僕達の分まで働いてくれよ、ヨハンネス・トリテミウス。」


その表情は愛らしい顔とは裏腹に歪な物だった。


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