第百一話『戦う少女』
剣を魔術師と名乗る男の首へと突きつける。
「カミーユ!!」
青年は左腕の痛みに耐えつつ安堵の表情を見せた。何とか裾を包帯代わりにし、出血を抑えては居るが早く医療機関に行かなければ出血多量で死んでしまう。
「そろそろ離して貰おうか、娘よ。」
余裕然としたタキシードに疑心の視線を送る少女。すると掴んでいた感触が突然消えた。
「カミーユ!!後ろだっ!!」
降霊術師は少女の背後へと移動していたのだ。少女は体を回転させ剣を横払いするが肉を切った感触が感じられない。
「その程度の速度では私を捉える事は叶わぬよ。」
遥か上、電柱の先から声が響く。青年と少女は声がする方向へと顔を上げた。
「よそ見はいけない。」
だが見上げた先にはおらず青年と少女の中心にて両手を広げる降霊術師はいた。
「........貴方、何者?」
カミーユが即座に自分の元へと移動すると剣を降霊術へと構える。
「降霊術師と言った筈だが?」
「そんな事を聞いてる訳じゃあないわ!貴方のその動きは何って言ってるの!!」
降霊術師は一息吐くと大きく笑い声を響かせた。
「戦いに置いて、手の内を晒す阿呆が何処にいる?」
「教えなさいよ!ケチぃ!!」
そう叫ぶとカミーユは真っ直ぐに降霊術師の元へと駆けだし、突きを放った。だがやはり突いた先に奴の姿はなく周りを即座に見渡す。
「ねぇあんまり此れ使いたくなかったんだけど!」
ポケットから石を取り出すカミーユ。石の大きさは拳程あり其れを投擲する。速度は人では捉えられぬ程の速度を出し、降霊術師の仮面を擦った。
「面白い事をする娘だ。」
声が青年の背後から聞こえる。そして降霊術師は間髪入れず青年の首を掴み上げた。
「娘よ、私と組まないか?」
不敵な笑みを仮面の下に浮かべカミーユへと問う。
「は!組まないわよ!!」
カミーユは跳躍し、降霊術師の頭上へと剣を定め振り落ろす。
「この男は人質にはならない、か。」
青年は降霊術師により壁際まで弾き飛ばされ意識を失いそうになる。
「ガハッ........」
左腕だけではなく、今度は身体が軋む。痛い。痛覚を遮断できるなら切断したい。
「テレポートばっか......はぁ....はぁ....使いやがって......インチキじゃねえか....」
青年の言葉に眉をピクリと動かす降霊術師。
「降霊術の教養を持たぬ者はこれだから困る。私が生み出す術は崇高な降霊術を置いて他ならない。其れを魔術と同義と言うか?嘆かわしい。」
ペラペラと口を動かす降霊術師に小馬鹿とした笑みを浮かべる。
(こいつ、もしかしたら............)
痛みに耐えつつも必死に頭を回転させる。
「降霊術......確か、占いの目的のために亡者の霊を呼び寄せようとする魔術の形態だった筈、か?」
降霊術と空間転移................考えられる可能性は一つしかない。
「お前.........自分を召喚しているのか?」
「ほう?」
その発言を聞き降霊術師は青年へと興味をより示す。その際、何度も剣戟を繰り出すカミーユなのだが、全ての攻撃は異空間から現れる異形の腕により塞がれていた。
「何なのよ!此奴!うっざいわね!」
カミーユは魔術師の背後へと飛び切りつけようとする。だが異形の腕により剣を叩き落られ、杖を胸元の中心へと向けられる。
「_______チェックメイトだ」
だがその中に置いても少女は冷静だった。
「すぅーはぁ.........うんッ!!」
呼吸を含み目にも見えない速度で魔術師の顎へと拳を穿つ。
「ぐあッ!」
杖もろとも破壊され近隣の住宅地へと吹き飛ぶ。魔術師の顎は砕け見るも無残な姿になっていた。
「私は殴る方が得意なのよ!」
実に蛮ぞ、純粋かつカミーユらしい。
「ねぇジョン、大丈夫?」
心配そうに自分に肩を貸してくれるカミーユ。
「あぁ大丈夫だ。カミーユの方は無事か?」
「ピンピンしてるわ!何なのよ、あの気色悪い仮面の奴!ジョンの友達?」
阿保なのか、此奴は?
「友達な訳ないだろ。帰り道にいきなり襲われたんだよ。」
フラフラになりつつも何とか歩く事は出来る。視線を倒れている降霊術師の方へと向ける。
「おい、彼奴は何処に行った!?」
カミーユは即座に青年を壁際へとやり守る様に警戒する。
「あぁ......痛いではないかね。気づくのが後少し遅ければ私は死んでいたよ。」
顎が外れゾンビの様な出で立ちになりつつも電柱の上から自分たちを見下す降霊術師の姿があった。
「なんだ、今の声?」「何か大きな音がしたけど。」
住民達が外の異変に気付き窓から覗き始める。
「やれやれ、時間切れの様だ。君たちならば狩れると思ったのだがな。次に会うときは貴様達の命日だ。」
降霊術師はそう言い残すと姿を消していった。
「意味わかんない!こっちこそアンタを狩ってやるんだから!覚えて起きなさい!!」
虚空の電柱へと向かい叫ぶカミーユ。
(何が起きてる...........)
ルキフェル達が住み始めてから既に半年は立っている。その間、何も無かった。
(..........そう、何も無かったんだ。)
だからこそ、先程の魔術師の発言がどうにも引っかかる。
「君『たち』ならば狩れる、か。」
其れを意味するのはルキフェル達みたいな奴らが他にも複数いると言う事だ。そういった創作物を殺し回っているのだろう。だがどうして俺を狙った?もしかして奴は俺が創作物であると勘違いしているのではないだろうか?
「................俺達の知らない所で何が起きているんだ。」




