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第九十九話『ブランチェとカミーユ』

一匹の狼は人類が生まれるよりも遥か昔に生誕した。その傍らには一振りの『剣』があったとも言われている。何もない暗き森の奥、狼は永き時を待った。狼は何も無き虚無。人の持つ感情を持ち合わせてはいない。外敵に襲われたとて指を振るうだけで相手は死滅する。そんな相手に会話を望む生物など一人もいなかった。其れから暫くすると大勢の人間が狼の元へと訪れる。狼は歓喜した。孤独という永き時を生き、初めて感じた感情だった。だがその希望は容易く崩れ去った。何故なら、人間達はその狼を殺しに来たのだから。王都と言う場所から派遣をされた討伐隊だと言う。狼は必死に説得を試みた。だが、人間は説得を聞かず弓を引いたのだ。其れから暫くもしない間にその場所は血だまりとなり、白銀の毛並みは鮮血へと染まったと言う。





私の村には掟がある。北の最果てに位置する森へとは立ち入ってはならないと。森には様々な異形が住み着く。人一人が立ち入ればたちまち餌とだろう。その様な場所に好んで行く筈がない。私は小さい頃、祖母と一生をこの小さな町で過ごすと心の中に誓った。恋人も結婚もしなくていい。ただ祖母が一緒にいてくれるだけで私は幸せだと感じていた。だけど、祖母は病に倒れてしまった。なけなしの大金を払い医者に見て貰った。けれども医者が告げた言葉は残酷な物だった。奇跡以外に助かる術はない。私は信じられず様々な町の医者の元へと駆け巡った。だが結果は喜ばしいものではなかった。祖母は自分の頭を撫でもう良いと言う。言い訳がないだろう。奇跡以外に助かる道がないのなら、奇跡を掴むまでだ。私は祖母を助ける為に北の最果てへと目指した。過酷極まりない旅立った。巨大な肉食獣、害虫など様々な試練に遭いつつも私は必死に食らつき突破した。身体がボロボロに成りつつも剣を掲げ森の最果てへと辿り着く。そして緊張の糸が解けたのか私は意識を失った。目を覚ました頃、目の前には人の長身を超えるほどの狼が自分を見下げていた。私は迷わず祖母を助けて欲しいと懇願する。すると狼は目を細め二つの条件を渡して来た。


一つ、一月の間に祖母に別れを告げること。

二つ、聖域に必ず戻る事。


私は迷う事なく条件を呑んだ。例え我が身が祖母と会えなくなろうとも大切な人が生きているのなら私は胸を張って生きていける。北の最果て、聖域から帰還した私は直ぐ様祖母の元へと戻る。祖母は元気良く立ち上がり神の祝福だと歓喜した。私は祖母を抱きしめ共に喜びあった。其れから暫くたわいもない話をした後、真実を話した。祖母は涙を流し行くなと言う。たが約束を守らねば祖母の病は戻ってしまう。私は祖母を引き剥がし、聖域へと戻った。その旅路の中、何度泣いたか覚えていない。狼のいる最奥地へと向かうと狼が横たわっていた。私は何をすればいいのか分からず狼の前へと座る。狼は自分の存在に気付き驚いた顔をすると優しい表情へと変わっていった狼はか細い鳴き声を上げる。そして私へと告げた。命の輝きがもう時期に失われる、と。そして最期に人の命を救えた事を感謝された。狼の瞳が徐々に閉じられると共に私は意識を失った。其れから暫くして目を覚ますと祖母と暮らす自室のベッドへと横たわっていた。私は訳がわからないまま祖母の元へと走る。祖母は私が帰って来た事に再び涙を流し抱擁をしてくれた。私達は其れから暫く何も無い平穏が過ぎる筈だった。だけどある日目を覚ますと、神社と呼ばれる場所に私はにいた。其れに賢者である銀狼もである。


「何で賢者様がいんのよ!まさか、私死んじゃったの!?早く生き返らせて!うんうん、生き返らせなさい!」


ブランチェの毛を掴み上げ訴えるカミーユ。


「おばあちゃんが待ってるの!」


だがブランチェは何も言わない。ただ遠くを模索する様に見るだけだ。


「何とか言ったらどうなの!」

「此処は.........何処だ?吾輩は無へと帰した筈。」


ブランチェの口から出たものは信じられない台詞だった。


「もぅ!冗談はいい加減にして!!」

「何だ此れは。何故吾輩と汝は繋がっている。此れでは_____」


ブランチェはカミーユを凝視する。


(______どちらかが死ねば、片割れも死ぬ。)


「少女よ」


ブランチェがカミーユへと真実を伝えようとした刹那、前方から混沌よりも深き闇と其れを凌駕する程の聖なる光が現れる。カミーユへと警告をする前に彼女はブランチェの前へと出て問うた。


「あんた達、誰?」



________________


____________


______


「とこれが私達が此処に来るまでの経緯よ!」ムフン


したり顔で説明するカミーユ。


「ブランチェは死んだと思ったら生き帰り、カミーユは幸せを手に入れたとたんに此処に来たと.........」


青年は複雑な表情をする。


「落ち込まないでよね、私まで悲しくなっちゃうじゃない!其れにこの世界、案外私気に入っているわ!ルキフェルにディアーナ、賢者様がいる!皆んな良い人!何より貴方がいるわ、ジョン!」


ニッコリと笑うカミーユ。純粋なその言葉に一同も微笑んだ。


「.............ですが、仮に帰る方法があるとすれば貴方は帰りますかぁ?」


するとディアーナが唐突にカミーユへと訪ねる。


「当たり前じゃない!おばあちゃんが待っているんですもの!ジョンを連れて帰るに決まってるわ!」

「俺を連れて帰ろうとするな!」


カミーユの回答にツッコミを入れる。だがカミーユは決定事項だから拒絶は出来ないと言う。


「其れじゃあ、ディアーナ達はどうなの?」


逆に質問を返すカミーユ。


「天使の栄光を掴むために神を討つ。其れが私の生きる目的でした。ですが全てがまやかしだと知った今、偶像の神を討った所で何の意味も無しません。そして今の生活は実に心地が良い。天界にて責務を果たしていた頃よりも私は自由だ。仮に戻れたとて、ジョンを天界の戦火へと巻き込む事になる。私は私の遣いを失う事が何よりも怖い。ならば私は此方へと残り幸福な時を世界が朽ちるまで共に過ごそうと思います。」


青年の顔を見て言うルキフェル。


(俺が一緒に行く前提で話を進めないで下さい、堕天使様........)


「私も同じですかねぇ。皆さんといる方が私は楽しいと感じますしぃ♪あ、もちろん戻るなら一人は嫌なので、ジョン副団長は連れて行きますから安心して下さぁい?」


(安心して下さぁい?じゃあねぇーよ!)


若干邪念が入るディアーナにジト目を送る。


「私は史実では殺されましたが、ルシファーさんなんて最後ぉ、永遠にコキュートスの中ですよぉ?未来が見えているのにぃ戻りたいと思いますぅ?そ 大量殺戮もそも救済そのものが失敗する世界なら見捨ててしまえホトトギス!です。」


ディアーナの何処かの戦国武将の様な物言いにルキフェルは共感する。


「ええ、ディアーナの意見には賛成ですね。思い通りにならないのなら、その世界を切り捨てるのみです。此れが欲に言う省エネと言う物なのでしょう。」


(何処も効率良く無いのだが........寧ろ、俺への負担が増したんだが!)


青年は賢者であるブランチェへと助けの眼差しを送る。するとブランチェは声を震わせ語り始めた。


”吾輩も残りたいと、考えている。此処は本当に心地が良い場所だ。孤独である事を忘れられる。吾輩が此処にいて良いんだと其方達が申してくれる。だが、去れと言われれば去る。吾輩はこの記憶を糧に後生を生きていけるだろう。だが出来る事ならば、もっと.........共に生きて生きたい。其れだけが吾輩が望む願いだ。”


思わずブランツェへと抱きついてしまう。


「ブランチェ!ずっーと一緒にいても良いんだぞ!」


ブランチェの姿は現在狼体であり、嬉しそうに青年へと頭を擦りつける。


「「「私達との反応が余りにも(違うのですが)(違うんですけどぉ)(違うじゃない)!!」」」


三者は怒声を上げる。青年はやれやれと言った表情で三人へと向き直った。


「当たり前だろ、ブランチェは唯一の良心だからな。アンタらが此処に来てもう直ぐ半年になる。複雑だが喜ばしい事だしお祝いもしようと計画もしている。」


其れを聞いた四名は嬉しそうに手を上げお互いにハイタッチをした。大方、美味しい料理が食べられる事に歓喜しているのだろう。


「だが、一ついいか?」

「はい、何でしょうかぁ?」

「.............いつになったら、問題事を起こさなくなる?」


青年はブランツェ以外へと鋭い視線を投げる。


「そう言えば、私は読書に戻らなければいけないのでした。」

「ふふ、最近アップデートをされたDLCをやらなければ行けませんでしたぁ〜」

「あ!えーと、そうだ!課題しないと行けないんだったわ!」


三人は青年から顔を背け逃げようとする。


「おい、待て。」


だが、青年は逃さない様に三人をブロックした。


「大学での騒ぎ、誰が後始末をしていると思ってる。買い物やレストランに行く際の無断飲食もそうだ。其れに俺の財布を勝手に持ち出している時があるよな、アンタら?」


ルキフェルの場合、講義中に講師の理論を論破する癖がある為、目の敵にされている。ディアーナは気に入った物があれば懐に入れる為、良く捕まる。そして厄介なのが捕まえた相手を殺そうとするところだ。一々、ルキフェルかブランチェを連れて記憶を消しに行かなければならない。因みにこの行為はルキフェルにも該当する。カミーユはコンビニやらスーパーへと勝手に買い物に行く時がある。其れも自分の財布を勝手に持ち出して、だ。


「はぁ......程々にしてくれ、良いな?俺たちはただでさえ目立っているんだから自粛してくれ。欲しいものがあれば俺に一言言ってくれればいい。”だから法を犯す事をするな”」


最後の台詞を強めに言う。三人は何処か嬉しそうに頷いた。


(欲しいもの、ですか。)

(欲しいもの一つしかありませんよぉ、ジョン副団長♡)


邪な事を考えるルキフェルとディアーナ。するとカミーユが青年の元へと近づき手を握る。そしてニッコリと笑い告げる。


「ジョンが欲しいわ!くれるのよね?くれるんでしょ!くれなさい!」


ぴょんぴょんと跳ねるカミーユの頭に手を置くとワシャワシャとかき混ぜた。


「何?わっ!?」

「くれるわけがないだろ、此れで我慢しろ。」

「えー!我慢できないわ!えへへ」


我慢できないと言いつつ満更でもないと言った表情を見せるカミーユ。ルキフェルとディアーナは直ぐ様、カミーユの左右へと立ち期待した目で見上げる。


「.............頭に貴方の手を置く事を許可しましょう。勿論、貴方に拒否権はない事を理解して下さい?」

「俺の首元に槍の刃先を当てるな!」


ルキフェルは若干顔を紅くし興奮した面持ちだった。だが手を頭へと置き撫でてやると子犬の様に大人しくなり身体を引っ付けてくる。最近、この様に距離感が異様に近い気がするのだが、気の所為であって欲しい。


「あ、私はカミーユさんやぁルキフェルさんとは違う願いですのでぇ安心して下さぁい♪」


二人から手を離し、ディアーナへと身体を向ける。二人は名残惜しそうに自分の頭へと手を触れていた。


「違う願い?」


正直に言うと余り良い予感がしない。


「そう、私とセ●クスをして下さるだけで良いんでぇす!エロ同人誌見たいに!」


何を言っているんだ、この女は.......


「さぁ!お願いしまぁす♡私達が迷い込んで来てからと言うもの溜まっているでしょう?なら出さなくてはなりませんよぉねぇ♡」

「俺の股間を掴むな。」


思いっきり自分の逸物を握るディアーナにチョップを入れる。そしてルキフェル、ディアーナを真似てそこを握ろうとするな。


「先っちょだけですからぁ、ねぇ?」

「その台詞が一番当てになんねぇーだよ、処女聖女!」

「な!?」


ディアーナは思わぬ返しに顔を真っ赤にする。そして自分を睨みつけてきた。


「処女で何が悪いんですかー!ジョン副団長に捧げるから良いんでぇすぅ!此れから卒業するから良いんですぅー!」


両手を上げ怒っているのだが、普段のギャップもあり可愛い。とは言え直ぐに邪念を振り払いブランチェへとヘルプの視線を向けるが知らんぷりをされてしまった。


”吾輩は面倒ごとには首を挟まない主義だ、済まぬな”


時折この様に冷たいブランチェに涙目になる。周囲は未だに騒いでおり暫く騒ぎが続きそうだ。


「...........ねぇ、セ●クスって何?」←(カミィル)



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