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エピローグ ~ぼくらのプリースト戦記~



 これは――事件も終わり。

 ジャハル君もホワイトハウルも帰還した後の話。


 聖母を追っていた二人を魔王城で待たせ、私、大魔帝ケトスはカードゲーム会社社長の金木かねき白狼はくろうくんのもとを訪れていた。

 生地がパリっとしたピーチパイを齧り。

 しっとりとした桃の甘さを頬張りながら、私はネコひげをブワブワ!


 社長室にはネコちゃん用グッズで溢れているが。

 それはまあ当然の権利として、私は堪能するのみ!

 おいしく桃を味わって――本題を告げる。


『と、そんなわけで――プリースト戦記がサービス終了した後、私がサーバーとデータを買い取ろうと思うんだけど、どうだい?』


 こちらの事情を聞き、ハンサムらしい爬虫類顏を緩め――。

 白狼くんは穏やかな笑みを口の端に刻む。


「なるほど――。終わったゲームを魔王城で再び稼働させたいということですか。構いませんが、経営などは大丈夫なのですか?」

『うちにはフォックスエイルがいるからね。こちらの世界の知識を吸収した今の彼女の手腕は知っているだろう? 魔王城での暇つぶしにもなるし、問題ないさ』


 大人の取引をする私の前――。

 既に黒鵜君の相棒状態になっている多頭の神獣、マスターテリオンが瞳を細める。


『新たに迎エタ、部下のために、仮想世界を買い取るカ。大魔帝よ。ヌシはやはり、お人よしでアルナ』

『それはどうだろうか。あのプリースト戦記が魔王城にある限り、愛の魔性はどんな手段を使ってもあのラストダンジョンを守ってくれるだろう。彼女の力は本物だ。兄への愛のために、もっと強くなるよ――きっと。そう考えれば買い取るぐらい安いものだろう?』


 もっともな理由を語る私に、マスターテリオンが獣の直感を発動。


『で? 本音はドウナノダ?』

『いやあ! 長期サービスが続いていたゲームって本当にグルメアイテムも充実していてね! 童話魔術アリスマジックを悪用すれば、まだ見ぬグルメを召喚し放題なんじゃないかなって!』


 足の肉球をピコピコしながら、私はにっこりチェシャ猫スマイル。

 腿のモフ毛もいい感じに照っている!


「承知いたしました。ならばサーバーもデータもお譲りいたしますよ」

『いや、タダっていうのはまずいから買い取るよ。そこはちゃんと線引きしないとね』

「とはいっても、そう安いものではありませんよ?」


 そんな安いものではないモノを譲ろうとしていた白狼くんであるが。

 んーむ、この男もけっこうお人よしだからなあ。

 茶化すようにマスターテリオンが言う


『では。ワレを崇め奉る神社を作る代金も欲しいシのう。十億でヨイか?』


 そんな冗談を漏らすほど馴染んでいるマスターテリオンに、白狼君が苦笑する。

 が――。

 ここでドヤポイントを見出した私は、ニヒィ!


『分かった。キャッシュでいいね』


 告げてパチンと肉球を鳴らし、亜空間から現金をドババババババ!

 合計百キロの札束が降り注ぎ続ける。

 ドドドドド、ドヤァアアアアアアアアアァァッァア!


 さすがの白狼君もマスターテリオンも顔色を変えて。


『な! 現ナマだト!?』

「……っ、ケトスさん!? どこでこんな現金を!」


 ふふーんと首のモフ毛を見せつけて、私は優雅に紅茶を啜って。

 ぶにゃははははは!


『忘れたのかい? 私はダンジョン領域日本の管理者だよ? 最初にこの世界を作った時に、現金でもガチャを回せるようにしておいただろう? 普段はそこまで使っていないから封印したけど、持ってるには持ってるんだよ。これで十億だ、交渉成立だね』


 無数の顔から、豹の口をあんぐりと開けて。

 マスターテリオンが唸る。


『マテ、大魔帝。汝は、経済というモノを理解しているノカ!? 大量の資金ヲ眠らせていたとは、日本経済を滅茶苦茶にするツモリだったのデハ!?』

『だから、ちゃんとこうして使ってるだろ? なんかそういう難しい話をフォックスエイルに言われてね、私もちょっとは消費しはじめているってわけさ』


 それにしてもだ。

 こいつ……。

 終末のケモノのくせに経済を語るとか、すっかり社長さんの相方になってるでやんの。


 ただ白狼君は意図を読んだらしく、顎に手を当て呟く。


「なるほど――ダンジョン領域日本化が解けた時のために、こういったいびつな部分を徐々に修正したい……そういう意図もあったのですか」

『ま、そういうことさ。完全にダンジョン領域日本から手を引いた後の私が、こんな資金を死蔵させていたら問題があるんだろう?』


 とはいっても、まだまだ現金はあるんだけどね。

 マスターテリオンが鼻息をフンフン!

 興奮気味に言う。


『ハクロウよ! わが神社を建てるノダ! キリンの奴メ、自らが神社と信者持ちだからと偉そうにしてイルノダ! 今度の酒盛りの時に、自慢シテヤリタイノダ!』

「神社もいいですが、この資金を元手にあなたが登場するゲームを作った方が自慢できるのでは? プレイヤーが信仰者となるのならば、キリン信仰の力を超えることが可能かもしれません」


 こっちとしたら、ちゃんと経済が回るようになれば問題ないし。


『まあ使い方は君たちに任せるよ。てか……マスターテリオン、君、キリンさんとも仲良くやってるんだね』

『四神トモナ。やはり獣同士、ナカナカに楽しい宴ができるノダ』


 四神かあ。

 ……。


『今度私も参加するよ。魔王様が白虎君の写真をもっと欲しがっていたからね』

『分かった。伝えてオク!』


 獣神同士が打ち合わせをする横で、白狼君がコホンと咳ばらいをし。

 チラっと三白眼を向けて、何気なく問う。


「ところで、ケトスさん。ウチの馬鹿はどうしていましたか?」

『バカって、ああ弟君か。黒鵜くろう君はちゃんと公務員をやっていたよ。まさかあんな形で出世するとは思っていなかったけど――本当に、一見するとまじめなキレ者に見えるから、ちょっと笑えるんだよね』


 告げて私は、例の会議の様子を映してやる。


 そんなに心配なら、見に行けばいいと思うのだが。

 まあ、互いに大人なのだ。

 そうしょっちゅう会ってもいられないか。


「そうですか。うまくやって……」

『ああ、初めは仲が悪かったグレイスくんともイイ感じになってるし』


 言って私は気がついた。

 それは初耳だったのか、社長さんの三白眼がすぅっと尖っている。


「なるほど。あの弟にそんな人物が――そうか彼女ですか。これは、調べさせないといけませんね」

『ハクロウよ……ワレ、兄がそういうコトに干渉するノハ、どうかと思うのダガ?』


 終末のケモノに突っ込まれるブラコンに目をやり。

 私は未来視を発動させる。

 あ、あぁ……これ、なんか余計なことしちゃったかな……。


 グレイスさんの弟君のトウヤくんと、黒鵜くんの兄の白狼くん。

 シスコンとブラコンが、二人のデートシーンをこっそり覗き込んでいる場面が浮かんできたのだ。

 いや、心配だからって……これはダメだろう。


 今回の事件の中心人物、野ケ崎の兄と天童の妹は、まあ特例として行き過ぎだとしても。

 兄弟って、結構そういうもんなのかなぁ……。

 魔王様もわりとブラコンだし。


 ま、まあ気づかなかったってことにして!

 プリースト戦記を買い取った私は、魔王城に帰還したのだった!


 ◇


 帰還した魔王城で、魔王様はパソコンの前でカタカタカタ。

 なにやらゲームをしているらしく、私は気にせずモニターの真ん前に顕現!

 けっしてパソコンばかりを見ている魔王様に、私を見ろ!

 と、アピールしているわけじゃない。


 ついつい、しっぽを膨らませモニターを隠す私に魔王様が眉を下げる。


「お帰りケトス。今回の散歩はどうだったかな?」

『ただいま戻りました魔王様。報告の通りです、今回は将来有望な人間、私の弟子――野ケ崎(のけざき)かなめと、愛の魔性、天童てんどう美香みかが我が魔王軍へと加わりました。彼らの忠誠は本物。おそらく、とてもよい戦力となるでしょう』


 言いつつも、私はモニターの前でモフ毛を膨らませる。

 ネコの本能か。

 どうも邪魔したくなっちゃうんだよね。


 さて、魔王様が何を見ていたのか。

 チェェェェェック!

 ここで私以外の猫画像でも見ていたら、キシャァァァァっとなってしまうのだが。


 そこにいたのは、神父姿をした妙に丸っこいモフモフ黒猫で。

 すんごい偉そうな顔で、くははははは!

 っと、嗤っている。


『なんですか、これ……我が名は聖職者ケトス! とか言ってますけど……』

「キミが購入したプリースト戦記の新キャラだよ。フォックスエイルがさっそく手を加え始めていてね、魔王城のアイドルってことで、まず君のデータを作っているらしいね」


 アイドル!

 魔王様にそう言ってもらえるのは、やぶさかではないのだが。


 私をデフォルメしているのかな。

 ちょっとキャラクターっぽくするために、画面の黒猫はドデーン!

 結構ふくよかになっている。


 じぃぃぃぃぃっとモニターを睨む私を抱っこして。

 魔王様が言う。


「あの二人のことは心配いらないよ、もう既に魔王軍とも馴染んでいるからね」

『はい――きっと彼らにとってもあちらの世界よりこちらの方が、あっているのだと思います』


 それが良い事だったのかどうか。

 私にはわからない。

 けれど、彼らがこの世界で幸せになってくれるのなら――。


 それはきっと悪い事じゃない。

 私はそう思う。


 黒の聖母を追っていたホワイトハウルとジャハル君も帰還している。

 あとで彼らにも話を聞こう。

 けれど今は――。


 シリアスな顔をし、私は魔王軍最高幹部としての声で言う。


『それでは――ちょっとフォックスエイルのところに行ってきますね。いくらなんでも、この猫神父は膨らみ過ぎてるんじゃないかって、ええ。監修してこないとですし……はい』

「え? いや、これくらいモフモフの方が可愛くていいんじゃないかな?」


 魔王様は私の脇を抱き上げながら、モフモフモフ。

 私のおなかに顔をうずめている。

 ケトス成分を補充しているらしいのだが、その謎の成分はともかく。


『んー、魔王様がそうおっしゃるのならいいですけど……』


 なんでこう。

 モフ毛に顔を埋めたがる人って多いんだろうか。


 絶世の美貌をもつ魔王陛下が、麗しいネコに顔を埋める場面を想像してみてほしい。

 ……。

 いや、ありか。


 魔王様ならありだね!


 今回の事件をきっかけに――。

 私は改めて思う。


 大好きな人と一緒に居られる。

 それはとても幸せなことなのだろうと、強く感じたのだ。

 私も、眠る魔王様を待ち続けていたから、よくわかる。


「ああ、ケトスはモフモフで癒されるね~」

『そんなに顔をおしつけて……魔王様……苦しくないんですか?』


 幸せは幸せなのだが。

 なんつーか、こう。おなかがくすぐったいのである。

 呼吸できないほどにスーハーしているのだが――全然問題ないらしい。


 しばらく遠出をしていたのだ。

 魔王様もネコちゃんモフモフをしたりなかったようである。

 まあこれも、ネコと主人の一つの形なのだろう!


 それにしても――。

 新生プリースト戦記のモニターを見て。

 深く渋い顔をして、私は考える。


 偉そうなドヤ顔はいいとして、ここまでまん丸フォルムじゃないよね?


 あとでやっぱり、フォックスエイルのところに行くとして――!

 モフモフされる私も魔王様成分を補充し!

 今回の事件の記録クリスタルを閉じるのであった。



 隠しステージ第二章

 我が名は聖職者ケトス ~完~



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― 新着の感想 ―
[一言] 抜け毛の季節に気管とかに入っちゃわないんだろうか?
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