終わる事件と冷たい事後処理 ~魔猫は密かに計画する~
あれから一週間が過ぎていた。
ダンジョン領域日本には、平穏な日常が続いている。
戦いは終わった――。
今回の事件にかかわった皆を集めた私、大魔帝ケトスは玉座の上。
冷淡なネコの口を、ただ淡々と蠢かす。
ファンシーなお菓子の家の会議場にて――。
全てを語っているのだ。
何の全てか?
それは今回の事件の経緯。
なぜ皮剥ぎ事件が起こったのか。
死んだ一人の少女の人生を、でち助のデバフによって得た知識を元に解説。
そして、その巨悪も滅んだと包み隠さず語ったのである。
語り終わった私は、静まった空気の皆に目をやり。
あくまでも魔族幹部としての声で告げる。
『以上が今回の事件のあらまし、いや全貌さ。おめでとう諸君、悪は滅んだ。事件は解決、あとはこのダンジョン領域日本の自動解除と共に、MMO化も自動的に解除される。ご苦労だったね』
そう、これでハッピーエンドだ。
なのに皆の顔は沈んでいる。
私の側近、ジャハル君だけは何食わぬ顔で凛とたたずんでいるが――。
実はこのジャハル君は、影武者。
その正体は人に化けられるショゴスキャット。
彼女は今現在、別の任務で行動中だったりする。
向こうからの連絡も待っているのだが――ともあれ。
以前、野ケ崎君と襲撃者との戦いの最中に転移してきた、異能力者の青年が言う。
「どうにか、ならなかったんですか……?」
『どうにかとは?』
こういう反応があることは想定済み。
だから私はあくまでも冷酷な異界の魔猫としての声で、穏やかに問い返していた。
相手はギリっと顔色を険しくし。
「なんで、殺したんですか……っ」
『彼女、天童美香くんは自らの異能力で事件を起こし、私利私欲のために犠牲者を出した。君の仲間も、そちらのカマイタチ君の仲間も、そしてそこで下を向いている皮の人……えーと、新田タケルくんも一度、本当に殺されているんだ』
言葉を区切り。
私は玉座をぎしりと鳴らし続ける。
『私だから皮となった彼らの蘇生はできた。けれど普通ならそうはならなかった。死んだ者は生き返らない、普通はね。彼女は死人が出ると知っていて、それでも凶行を止めなかった。それは罪だ。罪が露呈した以上、それなりの罰を与えなくてはならない。それとも――君や君たちの仲間が無惨に殺され、死んだままだったとして、なんで殺したと、同じ言葉を君は私に言えたのかい?』
意地悪な言葉だと自覚はしていた。
けれど事実だった。
男もまた、言葉を窮し……しばらく後で声を漏らす。
「それは――そうかもしれませんが。でも!」
『なら君は……いいや、この際だはっきりと皆に言おう。君たちは――人を殺した少女が可哀そうだから見逃しました。そう犠牲者の遺族に告げることができるかい? 皮にされて、ずっと冥府の狭間で恐怖を感じていた被害者たちに、許してあげろと言えるのかい?』
皆は黙り込んでしまう。
そう。
ここにいる皆、天童美香という薄幸で病弱な少女の人生に同情していたのだ。
『私の個人的な感情でも彼女に同情している。いっそ、彼女に手を貸してあげてもいいと思えるほどにね。それでもだ――彼女が行ってきたことは無責任な悪。その責任を負う義務が彼女にはあった。因果応報。悪因悪果。そのツケが回ってきた、それだけの話だよ』
残念だとは思うけれどね、と告げて。
しっぽをくるりと回し――。
私は喪に服すように瞳を閉じる。
どうしようもなかった。
けれど、もう少しなんとかならなかったのかと、理不尽な現実を噛み締める。
そういう空気が流れている。
皮の人こと新田タケルくんが、机に向かい。
ぼそりと呟く。
「それでも俺も、もしその子が助かっていたのなら――きっと許せていたと思います。もし、その場にいたのなら。ケトスさん、俺はあなたを止めて少女を庇っていたかもしれません。いえ、終わった後にこんなことを言うのは卑怯だとは、分かっているのですが――やるせないですね」
けれど言葉に覇気はない。
言いながらも、彼自身も気づいているのだろう。
もし犯人が死んでいなかったら――同じセリフを、綺麗ごとを言えていたかどうか?
きっと、本人にもそれは分からないのだと思う。
彼の恋人も仲間も、今も、取り調べを受けているのだから。
それでも。
人々の目は、物語っていた。
薄幸だった少女の死を哀れと思っているのは、間違いない。
言質を取った私は、ニヘェっと緩みそうになる顔を引き締め。
魔猫の王としての厳格な声で、告げる。
『君たちの言いたいことは分かった。なら、当分先の話だが――彼女の蘇生の可能性も考慮にいれておく。一度、その魂を終わらせ転生という形で新たな命を与えよう。それは百年後、君たちが死んだ後かもしれない。犠牲者の魂の許しを得たその後に、彼女という魂を救うと誓うよ。それでいいね?』
手を血で染めてしまった哀れな少女への、せめてもの慈悲。
それがわずかな救い。
彼らのモヤモヤに一定の答えを与えただろう。
これ以上の議論は無駄。
もう少女は死んでいるのだから――。
空気を読んだのだろう。
メルティ・リターナーズのグレイスさんがモニターに情報を投影する。
「とりあえず……事件はこれで解決しました。我々は事後処理がありますが、異能力者の皆さまはあとは自由にしてもらって問題ありません。お疲れさまでした。保護申請やこれからについての相談なども受け付けておりますので、どうぞ資料をお持ち帰りください」
異国風美女が淡々と繰り返す事務的な声が響く。
終わりの合図。
唇が、モニターの前でむなしく輝いている。
しばらく同行していた女性、異能力者のカマイタチ君がおずおずと手を上げる。
「あの、ひとつ質問があるのですが――いいでしょうか?」
『私にかな? 構わないよ』
「ここ十年ぐらいに発生していた異能力者、その力を授けていたモノの一人が、その少女だったんですよね? そしてその少女が死んだ今、魂がリンクしていた存在は死ぬはずだったのでは? えーと、おそらく仲間にも該当者がいるのですが……その……大丈夫なのかと」
良い質問である。
ちゃんと話を聞いていた、深く知ろうとしていた者の質問だ。
仲間が心配なのだろう。女将たちも私を眺めている。
『天童美香、愛の魔性。天使を介し、彼女が授けていた異能は私が引き継いで持続させている』
「持続、ですか……?」
『ああ、私は窃盗も得意とする猫魔獣。魔猫の王だ。彼女の能力を盗む力が私にはあったからね。該当者たちが死ぬ心配はない。もはや少女とは離れた命となっている。だから、これから組織に戻ったら誰かが死んでいた――なんてことはないよ』
「そう、なのですか――わかりました」
この質問は予想していたので問題なし。
グレイスくんからも資料として、彼らに提供される手筈になっている。
誰が悪いわけではない。
けれど、後味の悪さだけが残る事件となった。
巻き込まれた異能力者達にとっても、きっと永遠に記憶に残るだろう。
公務員枠の金木黒鵜くんが、立ち上がり。
「それでは本日はお集まりいただき、ありがとうございました。政府としても正式ではありませんが、保護申請の窓口がございます。ご相談はいつでも受け付けておりますので、ぜひご活用を。逆に、もし異能を使った犯罪などが起こった場合、こちらも犯罪者としてあなたたちと向き合わなくてはいけません。これからのことをよく考えてから、行動していただければ幸いです」
会議はこれにて終了。
どこかやるせない空気を残したまま解散。
事件に巻き込まれた異能力者達は、帰還した。
◇
関係者しか残っていない会議室。
シリアスな顔をぶにゃ~っと溶かした私は、どでんと玉座の上で座りなおす。
『あぁ、疲れた……こんな感じでよかったかな?』
「お疲れさまでしたケトスさん。たぶん問題なかったと思いますよ」
と、グレイスさんが私の机の前にイモ羊羹を置いてくれたので。
にゃは~♪
思わず、猫毛がぶわぶわっとなってしまうのである。
周囲を確認した黒鵜君がカード能力で探査を発動させ――。
安堵した様子で言う。
「監視の目もありませんね。まあケトスさんを監視するなんていう事は、さすがに異能力者達もしないでしょうが――これでようやく、本題に入れそうです」
『んじゃ、もう出てきていいよ』
イモ羊羹をむっちゃむっちゃしながら肉球をクイクイすると。
闇の中から三匹のネズミさんが、とてとてとて♪
神父姿のネズミさんが、腕を組んで。
ふふーん!
野ケ崎君の声で、偉そうにドヤ!
「ぶわはっはっはははは! あいつらめ、まんまと騙されおって! というか! 妹の事ばかりで、オレのことは何も触れなかったな!?」
その横、でち助がモフモフな防寒着を装備したまま。
やれやれと肩をすくめて。
「まったく、野ケ崎君は本当にバカでちねえ……病弱で薄幸だった女の子と、野ケ崎君じゃあ仕方ないでちよ」
そのまま、ふふーんとモフモフボディを輝かせ。
「まあいいでち! ネズミとしては、デチの方が先輩なんでちからね! デチをもっと尊敬するといいでち!」
『君……意外と性格、アレだよね……』
先輩ぶるでち助のモフ毛を眺めながら、私は苦笑。
彼らの奥にいる雪兎のようなネズミに目をやる。
『もう出てきて大丈夫だよ。これで君は公には死んだことになった、いや、まあ実際一度死んだわけだから嘘は言っていないんだけど。ともあれ、でてきておくれ』
とてとてとてと、人間だったときには満足に歩けなかった少女。
雪兎のようなホワイトハムスター化した妹、天童美香くんが神秘的な顔でこてん。
首を傾け、困り顔を作る。
人見知りなのか、何をしゃべろうか悩んでいる様子である。
とってとってとって!
そんな少女を庇うように神父姿の野ケ崎ネズミが、なっはっはっは!
「すまんな、モフモフ師匠よ。妹はまだネズミ状態に慣れておらんのだ!」
「ううん、大丈夫。お兄ちゃん、ありがとう」
兄の後ろからちょこんと顔を出し、雪兎のような少女ネズミが頭を下げる。
「みなさん、初めまして――その、すみません。わたしのせいで、その……」
「オレからも礼と詫びをしよう。今回は世話になったな。じゃあオレと美香はゲームがあるからこれで失礼するぞ!」
「ちょっとお兄ちゃん! そ、それはさすがに――だ、だめでしょ」
そのまま妹を引っ張りトテトテと偉そうに歩く野ケ崎君に向かい。
じぃぃぃぃぃぃ。
ものすっごい、狩猟本能を我慢しながら私は!
ネコひげを!
ぶわぶわぶわ!
『わ、悪いんだけど。あんまり後ろを向いて走りかけないでおくれ。どうもネズミをみていると……うん。とりあえず人間の姿に戻ってもらってもいいかな?』
言われた兄妹は顔を見合わせ。
ざざざ、ざぁぁぁぁぁぁぁ!
元の神父姿の強面青年と、白い肌と白い髪、そして赤い瞳の少女に戻る。
「オレ! 華麗に登場! こういう変身も悪くないな!」
「もうお兄ちゃんたら……」
照れる少女の頬は赤く染まっている。
けれど、その細い指は兄の服の裾をぎゅっと掴んでいた。
ようやく会えて、心に平穏が訪れているのだろう。
私を知る者なら、大方の人は予想していただろうが――。
そう。
私は結局、彼らを蘇生していたのである。
私は言った。
百年後ぐらいに転生させると。
犠牲者が許すなら的なこともいった。
その条件は両方満たしているからね。
長く続く世界での百年なんて誤差。
それに犠牲者である新田君が、許していた的なことを明言している。
ほら解決!
以上の二つの事を先読みした結果!
あの直後に、とっとと壊した少女の心臓と野ケ崎君の心臓に新たな心臓を授け!
蘇生!
それを転生と言い切ることにして! こうして匿っていたのである!
彼らはネズミの姿をしているが、普通の人間のまま。
いや、普通の人間というのは語弊があるか――。
愛の魔性として、新たな人生を歩む権利を得たのである。
だって、問題ないよね?
みーんな、できるならば少女を死なせたくなかったって空気だったし。
うん、問題ない。
もし後から文句を言って来たら、私は先ほどの会議の映像を見せる気なのだ。
皆が、私を責めるように睨んでいた。
あの報告の映像。
私が身勝手な同情で蘇生したのではなく、総意だったのだと証拠は確保してあるのだ!
さすが私!
言い逃れ手段も完璧なのである!
その辺の事情も知っているグレイス君が言う。
「お二人の戸籍は既に削除されています。その存在も、おそらく徐々に人々の記憶からも消去されていくでしょう。ケトスさんの力らしいですが……本当によろしいのですか?」
黒鵜君が真面目な背広公務員の顔で続ける。
「あなたたちはこの地球にはいなかった事になります。その痕跡も、なにもかも……。戸籍や履歴の削除は可能ですが、それを戻すとなると……なかなか難しいというのが現状なのです。今のままでも名や顔を変えて、普通の生活を送ることもできるのですが――」
心配する彼らに向かい、首を横に振り。
野ケ崎君が出逢ったころには作ることのできなかった、凛々しい顔で告げる。
「いや。もはや我ら兄妹にこの世界への未練はない。人にも化けられるネズミ魔獣として、モフモフ師匠の魔王軍に籍を置くと決めたのだ。そもそもだ! 迷いなど、はじめからなかった。きっとオレたちは、この世界から捨てられた存在。不適合者。ならば、ここではないどこかへ移っても問題ない筈。初めから――ここは馴染めなかった、それだけの話だろう」
「お兄ちゃんがそう言ってくれるなら――わたしも、問題なしです」
グレイスさんは残念そうな顔を見せ。
眉を下げる。
「そう――ですか。あなたたちなら、こちらでもやっていけるとも思っていたのですが。決心が固いならば、こちらからは何も言うことはありません。ただ、もし、帰ってきたいと思ったのならお声がけください。きっと力になれますから」
彼らに言わせれば彼らがこの世界を捨てたのではない。
この世界が彼らを捨てたのだ。
これも一つの結末。兄妹はこの社会を捨て、ファンタジーの世界へと生活を変える。
それだってきっと、ハッピーエンドのひとつだろう。
私はじっと兄妹を見る。
彼女の心臓に寄生していた黒山羊聖母の影は散っている。
私が破壊した際に逃亡していたのだ。
まあその辺は、あの激おこホワイトハウルとジャハル君が追っているので問題なし。
今頃、なにか情報を掴んでいることだろう。
魔王様の母上、マリア関連の事はとりあえず保留にして――っと。
『それじゃあ二人とも、しばらくは魔王軍での暮らしに慣れてもらうからね。君たち、とくに妹君は十重の魔法陣まで扱える魔性。きっと魔王様の役に立ってくれると信じているよ』
告げる私に、白い肌と髪を赤く輝かせ。
魔性としての赤い瞳に魔力を浮かべ。
兄を愛する少女は妖しく微笑した。
「はい。ケトス様、お兄ちゃんと一緒に居られるならなんなりと――。ふふ、ケトス様。怠惰なりしもいと慈悲深きお方――わたしとお兄ちゃんとを一緒にさせてくれた大魔帝。恩人ってことよね? ならわたしはその恩に応えます。ネコ様のためなら、どんなことでもしてみせるわ」
魔性としての輝きは本物。
すでに永遠に生きる存在と化している。
その相方として、野ケ崎君もおそらく共に、永遠の命を生きる存在となっているだろう。
少し悪い言い方をすれば、ずっと魔王軍で働くことができるのだ。
これもある意味で罰と言えるだろう。
まあ、うちって色々と緩いけどね……。
少女の胸の中。
弱った心臓の代わりには、私が与えた生命の樹のリンゴが埋まっている。
闇落ちレイヴァンお兄さんからもらった、前の事件の報酬だ。
そのリンゴの心臓が安定するまでは、様子見。
リンゴをかじる性質のある動物、その名はネズミ。
リンゴとの相性を考えるとネズミの姿でいた方が調整もしやすい。
でち助もいるのでさらに調整は楽。
そんな事情と、もし人間の姿のまま関係者に見られたら正体がバレる!
ということで、ネズミを維持して貰うつもりではある。
絶対、こっちの世界にゲームとか買いに来ることもあるだろうからね……。
ネズミ以外だと蛇もリンゴの心臓と相性がいいのだが、さすがにちょっとね?
ちなみにこの心臓代わりのリンゴはかなり貴重。
というか、とんでもない神話アイテムなのだが――。
わが弟子、野ケ崎君の願いと薄幸な少女を助けるためなら安いモノだろう。
愛の魔性という、並々ならぬ強大な戦力も手に入れたのだから。
彼ら兄妹は魔王軍に入る。
あそこでもオンラインゲームはできるしね。
そして――もはや彼女にその気はないだろうが、裏切ることはできない。
その心臓は私が握っているようなものなのだ。
これで、他の魔王軍幹部たちへの建前もできている。
もし魔王軍に入ったとして、暴走するようなら処分もできる。
そういう残酷な印だ。
彼女がやったことはけして褒められたものではなかった、だから、そういう戒めも必要なのだと私は思う。
野ケ崎君が言う。
「モフモフ師匠よ。軍属になるならば、これからはケトス様と呼んだ方がいいのか?」
『いいよ、そういうのは。君が呼びたいように呼べばいい。モフモフ師匠って響きも嫌いじゃないしね』
それに軍属って言っても、うち……。
すんごい、軽いし……。
自分の足で立って、兄の腕に抱き着き――魔性の少女は言う。
「ケトス様。本当にありがとう、そしてごめんなさい。たくさんご迷惑をかけて――」
『問題ないさ。まあ気になるのなら、これからの活躍で返してくれればいいよ、無理しない程度にね』
それをやさしさと受け取ったのか。
少女は、本当に嬉しそうに微笑んだ。
が――。
たぶん、この娘……気づいてないんだろうなあ。
十重の魔法陣を発動できる者なんて、魔王軍の中でもほとんどいない。
むろん、大規模な儀式や仲間の協力を得て、頂の魔術を発動できるものはいる。
けれど、彼女は自力でその力を発動できるのである。
病弱だったとはいえ、現在の強化された魔王軍の魔帝クラスに届いているのである。
そんな即戦力を確保できたのだ。
実はめちゃくちゃお得な買い物なんだよね。
しかも私の事をお兄ちゃんとの生活を支援してくれる、いい人!
そう勘違いしているし。
慕ってくれているみたいだし。
まあそれにはちょっとした事情もある。
実は彼女を殺した直後に時を止めて、猛ダッシュ。
色々と工作をしていたのだ。
彼女とリンクしていた人間たちの魂をいったん回収し、リンクを解除し私と接続。
彼女の死をきっかけに死ぬはずだったその回路を捻じ曲げて、死なないようにして。
そのうえで異能力を維持するように改造。
そんな大規模な作業をしていたわけで、めちゃくちゃ大変だったんだよね……。
なにしろ数が多かった……。
その辺の事情も知っているので、彼女は私に気を許しているのかもしれない。
兄妹は再びハムスターに戻り、モフ!
でち助を含めて、めっちゃテチテチテチと戯れているのだが。
や、やばいな……。
どうしよう。
めっちゃジャレつきたい。
うずうずとする私を見て、先輩ネズミのでち助が首のモフモフを捻り。
でち?
「なんでちか? デチたちのモフモフを眺めて……」
『にゃ!? な、なんでもないよ?』
本能に負けてパクっとやらないように、私も気を引き締めなければ。
と、思いつつ。
今回の事件は一応の幕引きとなったのだった。
社会に捨てられた兄妹は死んだ。
けれど、その本当の結末を知る者は――少ない。
《次回》
章エピローグ




