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邪悪神父コンビ ~魔猫は魔術を研究する!~



 世界の危機というほどではないが、世界MMO化から始まった事件は進行中。

 乗り掛かった舟は解決するべし!

 というわけで、麗しい美貌を輝かせ――大魔帝ケトスは今日も行く!


 ふふん!


 ナイトクラブの明かりを受ける私の美貌が、闇の中でよく映えているのだ。

 さて、今の私は魔猫ではなく美壮年。

 現在神父モードでお送りしているのだが――いかんせん、大立ち回りができそうにない場所。


 うっかりで人を巻き込んで蘇生不可状態にしちゃったら笑えない。


 そんな時でも私ならば問題なし!

 保健所とかが来たら一発でアウトになりそうなナイトクラブを見渡し。

 サっと腕を翳し――パチン!


『ふむ、ここは少々狭い――大魔帝たる私にふさわしくないね』


 指を鳴らし、空間をこじ開け。

 ぐぎぎぎぎぎぎぃぃぃいぃぃぃぃぃぃ!

 空間そのものを変貌させたのだ。


 戦場はナイトクラブのまま、けれどその面積は数十倍となっている。


 タバコが異能力のキーなのだろう。

 長い髪をばさっ。

 女将が無数のタバコをケースから取り出しながら、吠える。


「空間拡大の異能!? こんな規模で――っ。あなた、いったいなんなのよ!」

『名乗っただろう大魔帝ケトスって。ほら、聞いたことないかい? ダンジョン領域日本のランカーの。あの大魔帝ケトスだよ』


 思い当たったのだろう。

 女将は長い髪を風に乗せながら、まともに顔色を変える。


「あのチートか果てしなく暇な変人って噂の……っ! あの大魔帝ケトス!?」

『チートじゃないし変人でもないんだけど。まあそう思われても仕方ないか。それよりも警戒したまえ、敵が潜伏している。理由はさっき説明した通りだ、何人かが入れ替わっているよ』


 言いながらも私は周囲を見渡す。

 魅了された人間たちはすでに私の配下状態、闇雲に動かれても面倒なので。

 暗黒神話クトゥルフの呪を詠唱。


 拡張されたナイトクラブ。

 その床を闇の泉と認識させ、私は赤い魔力を纏い――。

 指令を強制付与。


『人間の諸君。ここは危険だ、それぞれに護衛をつけるから彼らの指示に従ってくれ』


 宣言するや否や。

 地を這う闇からボシャン!

 床に赤い魔法陣が広がる。


 飛び跳ねるように顕現したのは、サカナヘッドの群れ。

 既に私の眷属となっている、かわいい魚人たちである。


 人間たちを守るように前に立ち、彼らはくぐもった声で。


 イアイア! ニャンコもふもふ!

 イアイア! グルメうまうま♪


 まあ、私が召喚したから妙にファンシーな姿になっているが。

 その力は本物。

 槍術を極め始めている彼らは、とても頼りになる存在なのだが。


 ファンタジー慣れしていない異能力者たちからすると、バケモノに見えるようで。

 現場は大混乱。


「ひ……っ、なんだい、こいつらは!」

『味方だから安心しておくれ。って、言っても信じてもらえないか――』


 ふむと顎に指を当て、私は言う。


『サカナヘッド達。悪いけど従わない連中は抱っこして運んじゃっていいから、頼んだよ。終わった後は自由に散歩してていいから。頑張ってくれたまえ』


 サカナヘッド達は異世界グルメを想像し。

 ぱぁぁぁぁぁっと顔を赤くする。


いあいあ(了解)!」

いあいあ(タコヤキ)! ふたぐん(買って帰る)!」


 わが配下の魚人たちが、ビシっと敬礼をし。

 救助活動を開始!

 べっちゃべっちゃとぬめぬめした足で、ナイトクラブを駆ける。


 直後、飛び交ったのは悲鳴。


「きゃぁあああああああぁぁ! ぬめぬめが、ぬめって……っ」

「やめろぉぉぉぉおお、オレは、オレは食ってもうまくねえぞっ!」


 さながら、いけにえを運ぶ邪神の魚状態である。

 うーむ、これ。

 どっちが悪役か分からなくなってきているが、まあいいや。


『さあこれで、安心して戦えるね!』


 私の連れ、MMO化現象の原因ともいえる私の弟子!

 野ケ崎(のけざき)くんが、強面を尖らせる。


「モフモフ師匠、いったい何人がゴーストなのだ!」

『さあね! ただ、私の魅了をはじいた連中は全部黒だ。女将、念のため能力を使って確認を』


 戦いの空気は察しているのだろう。

 女将は煙草の火でズシャシャシャ!

 異能で魔術式を刻み、明らかにおかしい一部の連中に問いかける。


「あなたたちっ、人じゃないの!?」


 返事をしない。

 それがすでに答えだったのだろう。

 カマイタチくんが風の刃を掌に浮かべ、何もない空間を切る。


 風による結界だろう。


「女将! こっちへ――! たぶん、この人たちはもう人間じゃない!」

「まさか、マジだったってこと!? ヤク中を疑って悪かったわね!」


 あの二人は素直に後退する。

 これで戦いの準備は万全。


 敵は――六人か。

 案の定、それらはMMOゴースト。

 人の皮を装備した、私も知らない別のMMOのPC達である。


 見た目は人間そのものなのに、魂は明らかに異形。

 美しき神父に絡むチンピラが六人。

 そんな光景なのだが、実際は――私は魔族で相手は皮を被った付喪神つくもがみ


 その力やレベルは、プレイしていたゲーム依存。

 PC達の能力に比例しているのだろう。

 MMOで動かしていたゲームキャラを、多少劣化した状態で現実に召還した存在といえる。


 劣化といっても、召喚される際の弊害――現実の物理法則の範囲に当てはめた結果の弱体化か。

 MMOの性質。

 そしてPCの練度によっては厄介な存在となる可能性はある。


 極端な話、宇宙を破壊する規模のゲームだったら、それが再現される可能性もあるからね。

 幸いにも、そこまでの能力者はいないようだが。


 これ、どっかにラスボス級の存在も顕現してるんじゃないかな……。

 もしかしたら、ヒナタくんとか三毛猫陛下が動いて対処している可能性もあるが。

 ともあれ。


『これはやはり……裏で誰かが糸を引いているとみるべきだろうね。君たち、どこの誰にそそのかされて人間を奪っているんだい? 聞かせてくれないかな』


 洗脳の波動でゴースト達に問いかける。

 六人は私を敵と認識したのか、口元を邪悪にゆがめ。

 人には出せない機械音で、言葉を発し始める。


「へぇ、あんたが大魔帝ケトスか。聞いていたよりも優男らしいが、その前にこちらの問いかけに応じてくれねえか?」

「なぜ俺達の邪魔をする」

「そうだ、てめえには関係ねえだろう!?」


 ボイスチェンジャーみたいだと思いつつ。

 頬をぽりぽりしながら、私は言う。


『関係はないけれど、まあ暇だったし……』


 正直に答えてやったのに、だ。

 相手はご不満な様子。

 殺気と髪の毛が膨れ上がっていく。


 あ、あれ? 挑発を使ってはいないのだが。


「ふざけるなっ!」

「暇だからなんて理由で動くわけがねえっ――」

「なあ、みんな。こいつやっちまったほうがいいんじゃね? いいよな! やっちまおうぜ!?」


 それぞれが異能力を発動し――。

 ナイトクラブに異能の波動が拡散される。

 だが、甘い。


『じゃあ敵って事でいいね。ついでだし、新技術の実験台になってもらうよ――』


 告げた、私は黒く染まった顔から呪文を詠唱。

 カウンターの構え。

 クトゥルー神の力を借りた魔術を発動したのだ。


 チンピラゴーストの一人が頬に汗を浮かべ。

 ああん? とこちらを睨み。

 ……。

 しばし沈黙。


 んーむ、カウンター系の能力って、私と相性悪そうだなあ……。

 なんつーか。地味だし。


「なにもおこらないじゃねえか! ビビらせやがって!」

「ハッタリ野郎をこの場で仕留めるぞ!」


 タカカカカカカ――ッ!

 存外に迅速に敵が駆ける。


 闇の中で刃物の光が走った。


 それを合図に、それぞれがそれぞれのMMOの力を発動。

 所持金を消費し大ダメージを与えるタイプのスキルだろう。

 私の肩に魔力の刃が突き刺さっていた。


 が。

 あ、相手が弱すぎてカウンター発動の条件を満たしてない!?

 私の魔術が相手の攻撃を攻撃と判定していないのだ。


 これじゃあ実験にならないじゃん!

 と、私は挑発を発動。


『それで終わりかい?』

「な……っ、なめるなよ! 異世界人っ!」


 ゲーム内の魔術と思われる爆炎が私の肌を舐める。

 魔剣による斬撃が私の赤い魔力に包まれ、消える。

 釣り系のMMOだと思われる釣り竿が、私の魂を引き抜こうと心臓に針を飛ばす。


 カウンターが発動!

 ……。

 しないねえ……。


『ふむ。予想通り全員がゲーム能力だね――その根源にある力は全部同じ。どこかの神が力を貸していると思われる。これは、やはり黒幕がいるってことかな』


 ぶつぶつと考えを整理する私に、攻撃は続く。

 ザザザッザ!

 連撃が、魔術の嵐が、スキルの波動が私を中心に弾け続ける。


 早く攻撃判定をして、カウンターの発動を見たいのだが。


 閃光と魔力が吹き荒ぶ。

 化学式を用いた核熱反応が私を中心に収束する。

 稲光が雷の矢となって私を突き刺す。


 ダメージはゼロとさえ表示されない、虚無。

 ……。

 ダメそうだね。


「死ね! 死ね! しねぇぇぇええぇぇ、バケモノがッ!」

「ひゃーっははははは! 俺達の邪魔をするからこうなるんだぜ!」

「お、おい……待てよ。こいつ、ぜんぜん効いてねえぞっ!」


 はい。

 敵さんの指摘通り、まったく効いていないので。

 カウンターは不発。


 私の魔術は私と同じく、選り好みが激しいのか。

 まーだ、攻撃判定になってないでやんの。

 仕方ないので手動に切り替え――オートカウンターではなく、任意発動の魔術に置換。


 苦笑し、私は穏やかに声をかける。


『それじゃあもういいよ、君たち。ご苦労様――』


 せっかくなので魔王軍最高幹部っぽい空気で。

 闇の中。

 私はバッと両手を広げ、悪の神父よろしく――!


 瞳だけを赤く染め上げる。


『我が手に集うは、邪悪なる贄。汝、その名はクトゥルー神。発動せよ――カウンター魔術:《影這う大蛸(キャッチ・オクトパス)》!』


 宣言が――キーとなり、効果を発揮。

 床が割れる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 闇を背後に抱き。

 私は告げた。


『さあ我が影の上で――踊り給え』


 物理法則を捻じ曲げる力ある魔術式が、膨れ上がる中。

 魔術が発動――!

 私の背後の地面から顕現した門が、開き始めたのだ。


 ぎぎぎぎぃぃぃ……ッ。


 濃い死臭が周囲を包む。

 冥府を彷彿とさせる、死の香りだ。

 更に扉が開き、空気が扉の奥に吸い込まれていく。


 ずぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃ……ッ。

 軋む音が相手の恐怖を誘っているのだろう。

 敵さん達は皮の下の歯列を揺らしながら、声を絞り出す


「なんだよ……これ」

「なんなんだよ! てめぇはっ!?」


 問いかけに肩をすくめてやる。


『大魔帝ケトス。正真正銘、本物の異世界の邪神さ』


 神父姿というのは、こういう場面では姿をより邪悪に見せるのだろう。

 邪神を名乗る私はさながらダークヒーロー!

 なかなかイケニャン度が上がっているのではないだろうか!


 まあ人型なので、ニャンコ度は低いが。ともあれ。


 私の背後。門の奥から、ギラギラっとした大きな瞳だけが見えているはず。

 それは異形なるクトゥルフ。

 味方のはずの女将が、畏怖を浮かべながら引き攣った声を漏らす。


「なに、あれ……あ、悪魔?」

「し、知らないわよ!」


 やはり味方のはずのカマイタチくんが、恐怖を振り切るように叫んだ。

 直後――。

 門から――闇の波動をまとった触手が伸びる。


 ブシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッゥゥウ!


 伸びたのは吸盤の生えた闇の蔓。

 タコの足!

 べちべちべちべち!


「やめろ! はなせ、この!」

「力が吸われ……っ」


 発生した敵さんの異能力。そのすべてを伸びた触手が喰らう。


 ぐじゅ……っ。

 ぐじゅ……っ。


 攻撃を吸収し、反撃としてタコ足乱舞を決めるオリジナル魔術なのだが。

 見た目は闇の中で嗤う黒衣の神父。

 その背後の悍ましき門から、無数のタコ足が暴れまわっているように見えるだろう。


 しかし――。

 まだまだドヤ度と演出が足りないので要研究かな。

 実験も完了、私は終わりを告げる。


『それじゃあ眠り給え。永遠にね』


 刹那――。

 空気が揺らぎ。


 ブシュゥゥゥゥ!


 チンピラゴーストの魂を、タコ足キャッチ!

 皮を壊さないように捕縛!

 タコの足が、にょきっと伸びて捕獲を完了させたのだ!


 シュルシュルシュル。

 敵を捕らえる触手以外が、私の背に抱く闇の門に帰っていく。

 ぐぎぎぎぎぎぎぎ。


 門の奥でタコが、瞳を細め。

 いあいあ。いあいあ。

 称える言葉だけを残し――闇の門が、現実の物理法則と嚙み合わず消滅していく。


 戦いは終わり。

 静寂だけが残されていた。

 周囲は呼吸すらもままならない様子だが、異能力者だけあって気絶している者はいない。


 ……。

 いや、味方の気絶を心配するのも変な話なのだが。

 んーむ。

 クトゥルフ系の魔術はまだやはり使い慣れないね。


 異なる魔術法則。

 ドリームランド・クトゥルフの力は、まだまだ研究する必要がありそうだ。

 終わった戦いを振り切るように、私は穏やかに皆に告げる。


『さて、怪我人はいないかい?』


 告げた私の目の前には、六本のタコ足に戒められたオブジェが並んでいた。


 無傷な状態で捕縛した敵たちである。


 圧倒的な蹂躙。

 それが周囲の人間にとっても畏怖として伝わったのだろう。

 あきらかに空気が変わっていた。


 まあ! 野良のラスボスみたいなもんだしね!


 こういう畏怖を受けるのも、たまにはいい!

 まったく動じていないのは、野ケ崎君とでち助のみ。

 たこ足触手に囚われた敵を見て、淡々と告げる。


「問題ないようだな。モフモフ師匠よ、もう剥いでもいいのか?」

『ああ、頼むよ。人間という生き物はどうも、脆すぎる。私じゃあ触れただけで壊してしまう可能性が高いからね』


 言った後に気づいたけど、すごい邪悪なセリフだったかもしれないが……。

 ま、事実なのだから仕方がない。


 了承した野ケ崎君が、やはり影から赤い瞳をギラララララ!

 人数に応じた量の、ネズミの群れを召喚。

 ナイトクラブに、ネズミ達のうごめきが――走る。


「おまえたちに恨みはないが――皮を返してもらうぞ」


 キキキィィィィィ!

 小さな群れが、タコ足に覆いかぶさり――。

 皮剥ぎが開始された。


 ただでさえ、先ほどの蛸乱舞で空気は暗澹としていたのだが。

 その直後、でち助の皮剝がしが発動したのだ。

 空気はものすっごい、重く暗くなっていたが……。


 わ、私たちのせいじゃないし!


 ◇


 剥いだ皮からでてきたのは、黒い人の塊。

 人の形をしたナニカ。

 全員、さすがにこちらの話を信用したようだ。


 うっぷ……と、何人かは気持ち悪そうにしているが。


 ま、まあ知り合いが皮を剥がされ、バケモノと入れ替わっていた。

 それってけっこうホラーだし、ショッキングだろうし仕方がないね。

 けっして、正気度を削る魔術を使った私と、ネズミを用いた皮剥ぎを行った野ケ崎君のせいではない。


 たぶん……。


 ともあれ――。

 異能力者達が見守る中、剥いだ皮を確認。

 私は女将に問いかける。


『この六人の名を知っているものは? 知っていたら教えておくれ』

「名前を? どうして?」


 冷静な女将が、頬に汗を滴らせたままに言う。

 私に恐怖を感じているようだが、それはそれとして敵ではないと認識している。

 といった感じか。


『これから蘇生の儀式を行うからさ』

「蘇生って、そんな異能、聞いたことがないけど。できるのかい?」


 ムフフフー!

 もし魔猫モードだったらドヤ顔をしていただろう。

 それでも私は神父として、静かな顔色で淡々と説明を開始する。


『ああ――もちろん誰でもいつでも、ってわけにはいかないけれどね。皮化されてしまったモノの蘇生は既に実証済み。皮だけとなったモノの蘇生条件は、皮の状態が良い事。これはある程度の原型を保っていれば問題ない。次に皮とされた人の本当の名。これが問題なのさ――私はこの人たちの名も顔も知らないからね』

「名前がキーとなる異能力って事かい?」


 私は話を続ける。


『ちょっと違うね。私のは異世界魔術。もうわかっていると思うけど、本物の神も悪魔もいる世界さ。で――魔術体系の一つに言霊ことだまという現象がある。名に意味や存在理由を付与する概念だね。まあ詳しく語っても混乱させるだけだろうが――名を利用し、冥府からその魂を呼び起こすつもりなのさ』


 一応、おそらく名がなくても最終的には蘇生も可能なはず。

 だが……手掛かりとなる名がないと、途方もない作業となってしまう。

 さすがにそこまでは付き合いきれない……っていう本音もあるが。


 女将が名刺入れをバッグから取り出し――。


「分かったわ。けれど、本名かどうかは分からないわ。それでもいいのなら、だけど。どうかしら」

『まあ試してみるよ』


 冥府から勝手に魂を呼び起こしているわけだから、本当は問題行為でもあるのだが。

 そこはそれ。

 新しく冥界神となった教え子、ヘンリー君に融通を利かせてもらっていたりもする。


 持つべきものは教え子といったところか。

 今頃カナリア姫と共に、いろんな冥府を大慌てで走り回っているような気もするが。

 気にしない。


 魔力を込めて私は瞳を赤く染める。


『我はケトス、大魔帝ケトス。汝らの魂を呼び起こす者、大いなる闇。さあ、目を開け給え』


 十重の魔法陣が螺旋を描き、床を走る。

 多少の時間はかかるが、効果はちゃんと発動している。

 既に実験は済んでいるので、当然、蘇生は成功するだろう。


 皮膚の中に元の肉体が再構築されていく中。

 成功を見届けた野ケ崎君が、サカサカと次の儀式の準備を進める。


「どうやら、問題なく蘇生できているようだな。モフモフ師匠よ」

『そのようだね。だいたい三十分ってところかな。待ってるだけってのも、アレだし。皮のままってのもかわいそうだし、どんどんやっちゃおうか。えーと、カマイタチさん、この中に知り合いは?』


 彼女は口元を抑えたまま、首を横に振る。

 彼女にとってはハズレといったところか。


 明らかに落胆しているが。

 慰めた方がいいのかな。

 んーむ、仕方がない。


『入れ替わっているのなら、こうやって蘇生は可能だ。その……なんといったらいいか、私も探すのに協力するから元気を出したまえ』

「ふむ――そうだな。師匠の言う通り。ふつうに殺されていたのならどうしようもない。だが今回は違う、皮ならば蘇生ができるのだ。不幸中の幸いというべきか。そのなんだ。オレも女を慰めるのは得意ではないが、元気を出せ! オレだってスライムに皮を剥がされても、隕石を落とされても、溶かされても――こうして元気だからな!」


 こいつ。

 修行をまだ根に持ってるな。

 カマイタチくんはよりドン引きした様子で私達を見て、目線をそらして言う。


「そ、そうですね――あ、ありがとうございます」

「おう! 元気になったか! ならばそっちの皮を引っ張ってくれ、切らないように気を付けてだぞ!」


 野ケ崎君がもはや慣れた手つきで皮を伸ばし。

 ペンペン。

 でち助がチョークで魔法陣を書き書き書き。


 人の皮を扱うのは初めてなのか、カマイタチ君は恐る恐る手伝い始める。


 もう名前を忘れちゃったけど、皮の人のクローゼットに入っていた皮の蘇生も済ませていたからね。

 感覚がマヒしているのかもしれないが。

 これ、私達――事情を知らない人からは邪教集団に見えてるだろうなあ……。


 とりあえず、蘇生が終わったら次は尋問。

 今回は滅ぼさないで捕らえたままになっているし。

 皮を被っていたゴーストたちに、話を聞いてみるかな。


 なにやら事件は全部つながっている気もするし――。

 捨てられたPC達を暴走させている原因。

 というか、黒幕のしっぽをそろそろ掴みたいしね!



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