表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
522/701

アニマル休憩所 ~戦いの後の団欒~



 時は夕刻過ぎ、場所は私の魔力で完全再建した麒麟信仰の神社。


 とりあえずの決着がつき、騒動は終わった。

 ようやく話し合いを再開する事になったのだが――。


 ネコの祟りも、女神の精神汚染も治まった地には平穏が戻っていた。

 ……。

 と、言っていいのだろうか。


 せっかくなので打ち上げじゃ!

 ということで、屋敷の中では大宴会!


 勝手に連れてこられた上に、麒麟じゃなかった!

 と、理不尽な扱いを受けたキリンさんは、過去の恨みと事情を説明し、それを聞き入れた人間達も事情を把握。

 なぜ顔を見られたくなかったのか、その内情も知ったようだ。


 まあ、まだ互いに心のわだかまりは残っているだろうが……。

 ここでまた争いになると――大問題。


 大魔帝ケトスこと私が、いつブチぎれるか分からないから仲良くやろう!

 そんな流れで、和解が成立したのである。


 屋敷に集まるモフモフはかなり多い!

 なにしろ、この屋敷――既にネコ魔獣にかなり侵食されてたからね!

 むろん、ネコ達は参加!


 この宴会の流れで呼ばれたのは、四神の端末。

 ようするに、大いなる光の白鳩状態と似ている分霊たちも登場し――大賑わい。

 神たる獣が集うここは、ある意味で新たなアニマル信仰が生まれそうになっていたのだった!


 朱雀は赤き鳥の分霊で女性という事で、白鳩状態の大いなる光と意気投合。

 世の中の男神は見る目がない。

 そんな雑談をしながら酒を、啄み――あはははははは!


 亀状態になっている玄武と、ミニチュアサイズの龍になっている青龍は共にリンゴに齧りつき。

 んまんま!

 っと、舌鼓を打っている。


 そして、そのまんまトラさんな白虎はというと――。

 絢爛豪華な屏風の前で、麗しい黒猫にカメラを向けられ。

 困惑顔。


『はーい、白虎くーん、こっちに向かってガオォォォォっとポーズを頼むねえ! 魔王様が、ガォォォォって唸ってるカッコウイイもふもふを、スタンプにしたいんだって!』

「あのぅ……オレサマ、これでも神なんですが……」


 愚痴りながらも、ガォォォっとやってくれているので。

 パシャリ!

 おお! 綺麗に撮影できた!


 役割が終わったと安堵の息を漏らした白虎君が、ふぅ……。

 宴会をやるからと、私に強制再召喚されたマスターテリオンの元に逃げるように駆け。

 もう一度、モフ毛を揺らし――はぁ……。


 犬歯を尖らせ、ハンバーグを齧りながらもトラさんが――。

 耳を後ろに、もしゅっと下げる。


「なんなのだ? このネコ魔獣は……オレサマ、理解できん」

『諦めヨ。こやつは、戯れのナカで生きる、駄猫。しかも力だけはマチガイナク、本物のナ。ワレは考えるコトを諦めた』


 七つの頭から吐息を漏らすマスターテリオンに、白虎がポンと肉球をあてる。

 なにやら、被害者同好会みたいになっている二獣だが。


 彼らの前に、私、秘蔵の神酒ネクタルを提供しながら言ってやる。


『ねえ、せっかくの宴なんだからもっとジャンジャン飲んじゃいなよ! 戦いが終われば全員友達! これは敵対関係じゃなくなりましたって、世界の神に伝える儀式でもあるんだからさあ!』


 黒き聖母の魔道具を崇める聖女アイラさん。

 彼女たちの団体から貰った、最高級のお酒を躊躇せず提供する私。

 とっても優しいね?


「ほぅ――異界の酒か!」

『マア、飲んでやらぬコトモなし!』


 こいつらは神といえど、基本は獣。

 食欲に弱いんだよね。


 ササササっと、麒麟に仕える女中たちがフィレステーキ肉の鉄板皿を用意し。

 じゅじゅっ……じゅじゅ、ジュ~♪

 熱々鉄板にステーキソースを流し込み、肉汁と絡め合成!

 供物の準備を進めている。


 仲良く酒を飲むビャッコくん、そして多頭のマスターテリオンのツーショットも撮影し。

 魔王様にこっそり送信!

 おー! 魔王様、かなり喜んでるなあ!


『フム! コレは美味い酒でアル。サタンムエルテ神……願いを受け入れる女神の加護を与えられたネクタルか、ナルホド。実にウマシ!』

『ん? いや、葡萄を聖女の祈りでネクタル化させたお酒の筈だけど……?』


 サタンムエルテ神の加護って……。

 まあ、確かに……転生する前の彼女は黒き女神だったし、あの団体が崇めていた魔道具の女神像も黒かったが。あの団体が祀ってたのって……。

 ……。

 まさかね。


 ともあれ、これで今回集ったアニマル神達の接待は十分か。

 今――賢くモフモフな私の頭の中にあるのは――この後の話。

 ようするに、世界が終わるかもしれないという予言と、それについての話し合いである。


 ◇


 屋敷での宴会は続いている。

 けれど、一部の関係者は少し離れた場所にある応接室で、かなりむつかしい顔をしていた。

 その中には当然、私もいる。


 というか、代表みたいなもんだよね。


 お酒ではなく麦茶が並ぶテーブル。そこに並んでいく資料の数々。

 私が猫手を伸ばして、資料を切り替える度に――ふかふか感触のソファーが、ぎしりと鳴っていた。

 ……。

 別に私が重いからではない。


 ともあれ。

 大魔帝ニャンコによる説明を受けたキリンさんと、巫女スミレは……互いに目線を合わせて。

 …………。

 頬に緊張の汗を滴らせていたのだった。


『と、まあそういうわけで、なんとかしないとこの地球が壊れちゃうからさあ。こうしてはるばる、私も異界から帰ってきたわけだけど……って、どうしたんだい? ちゃんと話を聞いてくれてる?』


 あまりにも無言なので、私は肉球を鳴らし魔力を放射!

 召喚した水ようかんを齧りながら問う私も、とても可愛いわけだが。


 話し合いに参加しているトカゲっぽい貌の男――。

 細身のスーツマン。

 社長で異能力者の金木白狼かねきはくろう君が言う。


「誰だって驚きますよ。地球が終わるだなんていきなり言われたんですから」

『ま、そりゃそうか』


 言いながらも私は応接室の戸棚を、じぃぃぃぃ。


 せまくていい空間だニャ~と、眠る野良ねこまじゅうの横から――そっとお菓子を拝借。

 勝手にカステラを取り出し、くははは!

 ザラメ部分を丁寧に齧りながら肉球をパチン!


 まだ数十パターンは残っている滅びの未来を映す。


『私が取り除いた滅びは大きく二つ。恐怖の大王……かつて人間に滅ぼされた種、オオウミガラスの転生者。イワトビペンギンと化したアン・グールモーア、畏怖の魔性による滅び。そして、かつて人間に使役され死んだ炭鉱の金糸雀カナリア。死して冥界の神に拾われ、古き神と共に転生し……憤怒の魔性と化した、死神の姫による憤怒の滅び。まあ、今は両方とも私の味方みたいなものだけれどね――共に感情を暴走させて魔性となり、この世界を滅ぼす未来を歩んでいた者達さ』


 滅びの未来を眺める巫女のスミレが、長い黒髪を揺らし。

 ぼそりと言葉を漏らす。


「魔性……でございますか。大魔帝ケトス様……大いなる光からあなたも魔性であると話を聞きました。あなた様は……その、大丈夫なのでしょうか?」


 その言葉には心配、といった感情が含まれている。

 おそらく。

 私が世界を滅ぼさないか不安なのだろう。まあそれも仕方ないけれどね。


『正直に言っちゃうとね、私による滅びもこの未来には含まれている』


 素直に告げる私に、キリンさんと巫女スミレ。

 そして、ハクロウくんがごくりと息を呑み込む。


 あ! そういや、私にも世界を滅ぼす可能性のある未来があるって、説明してなかったっけ!?


 隠し事をしたまま話し合いをするのも誠実じゃないだろう。

 私は私による滅び……。

 ペンギンさんと一緒にアイスを買って、ついうっかり転び――地球を割ってしまうシーンを投影してやる。


 映像の中。ウキウキだったかわいい黒猫が――落ちたアイスさんの無残な姿を見て、瞳に涙を溜め。

 ウニャニャニャニャ!

 どーっかぁぁぁぁぁぁぁ……ッ、ん! ドガドガ、バキキィィィィィッィィィィン!


 地球が割れていく姿は、見事の一言。


 なにやら思う所があるのだろう。

 トカゲ目を尖らせたハクロウくんが、頭痛を堪えるように眉間に長い指をあて。

 鼻梁に濃い皺を刻む。


「あの……えーと。ケトスさん。すみませんが。ワタシにはなぜアイスで世界が滅びるのか、いまいち理解ができないのですが?」

『きっと……アイスを落としたショックが大きかったんだろうね』


 既に回避できているアイスの滅びを想い。

 ふっとモフ毛を揺らしながら微笑を漏らす私――麗しいね?


 なぜか二人と一柱は、ジト目で私を睨んでいる。


 こほんとわざとらしい咳払いをし、キリンさんが草木をみながら。

 つぶらな瞳で私をちらり。


「よもや、地球が滅ぶとはな――。しかもそなたらは、それを防ぐために動いている。既に本当に危機的状況だった地球を二度も救っているか。なるほど、そなたほどに強力な猫神が動いていた理由、その説明にはなるか」


 相変わらず。

 声だけはすっごい凛々しい、良い声でやんの。


『信じる信じないはご自由にってやつだね』

「協力しろとは言わないのであるな」


 キリンさんの言葉に、私は苦笑で返してしまう。


『辛辣な言い方で悪いけれど――こっちとしてみれば、正直この世界の異能者達の力はあまり期待していない。これだけ無数に存在する滅びすら、まったく予知できていないってわけだからね。邪魔をしないでくれたらそれでいい』


 ハクロウくんがフォローするように言葉を繋げる。


「仮にです。把握できていたとしても、現状で動いていないということは――自らの世界を助ける気もない、結果的にはそうなってしまうでしょうからね」

『そういうことさ。極端な話を言ってしまうとね――敵にならないでくれれば、それだけでいいのさ。悪意をもって邪魔をするのならば、おそらく私はその命を消滅させてしまう。遠慮も容赦もなくね。私はね――無駄な殺生をしたくないんだよ』


 それは結構重要な話でもある。

 いざ、もっと切羽詰まった状況になった時に、私達がやらかした事件だと勘違いされて攻撃されてしまう。

 なーんて、展開はごめんなのである。


「無益な殺生を嫌う……か。我もその意見には賛同する」

『巫女を殺そうとしたくせに?』


 試すような言葉に、キリンさんは耳をピョコっとさせて。

 巫女に再度、頭を下げる。


「我が巫女であった麒麟児スミレよ、すまぬ……」

「ワタクシも、あなたさまが顔を見られたくない理由を知らずに、覗き見てしまったのです。そして、人間達があなた様にしてきた仕打ちも……理解致しましたわ。つまりはその、はい……お互い様でございましょう」


 よしよし。

 なかなかイイ感じに治まったかな?


『試すような事をして悪かったね、キリン。そして今の君の行動を、私は賞賛しよう。神たる者が、かつて従者だった人間に頭を下げる。それは誰にでもできる事ではない。さて、和解もできたってことで麒麟を望む君に一つ、プレゼントだ』


 言って私は、ハクロウくんの異能によって作り出された魔術カードを掲げてみせる。

 カードプールの中にあった、その魔術カードの名は。


 《進化の心》


 種族を変更する、まあカードゲームではよくある効果を持つアンコモン。

 レアリティもそれほど高くない通常カードである。


『これを君に授けよう。既に私の力で誰でも使用可能になっている、君が望むのなら――このカードを解放し、キリン種から麒麟神への進化が可能な筈さ』

「なんと!?」


 キリンさんが瞳を見開き、カードに目線を注ぐ。


『ハクロウくん、譲っても構わないよね?』

「ええ、代わりにとてもイイものを作らせていただきましたからね。どうぞ、ご遠慮なく」


 ふふふふっと微笑する彼の手元にあるのは――獣の数字、666を示すカード。

 ようするに宴会場で酒とステーキにかぶり付いている多頭の獣。

 マスターテリオンのモンスターカードである。


 ちなみに、たぶんハクロウくんの能力で召喚も可能な筈。

 ……。

 あの子が酔っている隙に、こっそりと許可をとった詐欺みたいな経緯で生み出したカードだけど、まあ別にいいよね!

 魔導契約済みだし!


 キリンさんはカードを受け取ると、身体を震わせ鼻を啜る。


「感謝しよう、異界の猫神よ。そして、異能力者の男よ。なれど――我がこれを使うのは、まだしばらく先にするとしよう」

『あれ? いいのかい? 本当にあの麒麟になれるよ?』


 まあ元から麒麟としての力があるので、姿があの麒麟に変わるだけだが。


「考えてもみよ。今、我は――こうして堂々と顔を出し、そなたらとも、巫女とも会話ができている。この屋敷の女中とも、四神ともな。麒麟に対する憧れも強いが――なに、急ぐ必要などあるまい?」

『へえ、なかなかいい顔で言うじゃないか』


 こういう前向きになった獣は、まあ嫌いじゃない。

 穏やかなムードの中、巫女のスミレが見えるようになった瞳で微笑み。

 言った。


「しかし、本当に世界が滅ぶとなれば――協力しないわけにはいかないでしょうね。ワタクシはケトス様、あなたを信じますわ。ワタクシにできることならば、なんなりといたしますので、いつでもおっしゃってくださいな」


 目線を受けて。

 モフ毛を膨らませた私もネコスマイル。


『それは助かるね。君の能力――異能を他者に与える力はとても有用だ。それに、情報も欲しい。なぜハクロウくんの弟が正義感を拗らせて襲ってきたのか。なぜ、君の部下もまた、正義感を拗らせて私に襲い掛かってきたのか。共通点は正義感……偶然とは思えない。そこに何か、ヒントがあるような気がしてね。明日から本格的にその辺の調査をしたいと思っている。手伝ってくれるかい?』


 シリアスな顔で草餅をむる私に、巫女はやはり花の笑顔。


「はい! どうか、ワタクシを頼りにしてくださいませ! ワタクシ、あなたのためならば何だって。火の中とて水の中とて、どこまでも――……あ、あら?」


 前のめりになり――拳を胸の前でぎゅっとした少女は、ハッと赤くなった顔を意識したのか。

 カァァァァァっと耳まで染めていた熱を抑えるように――。

 そっと、ソファーへと座り直す。


 うーみゅ。

 今回の事件で色々と、嫌がらせをしちゃってたからなあ……プリンを毎日、盗んで食べてたし。その心労のせいで風邪とか引いていたのなら、私のせいだし。

 ……。

 ちょっと心配になった私は言う。


『大丈夫かい? 色々とあったからね、やはりまだ無理はできないかな? ご、ごめんねえ。私もやられたらつい十倍返しにしちゃうから……にゃははははは、はは……本当に大丈夫? 腕のいい医者さん(ニワトリ神)、呼んでこようか?』

「ふふふ、大丈夫です。風邪ではありませんわ。熱くなってしまった理由は、いえ……、これはワタクシの中にだけしまっておきましょう」


 彼女は私に向かい頭を下げ、言った。


「麒麟の巫女スミレ。麗しのスミレ。大魔帝ケトス様の御力となる事を、改めて誓わせていただきますわ。どうか末永くお使いくださいませ」


 キリン神が見守る中。

 巫女は微笑み、気丈に笑む。


 憑き物が落ちたような顔で。

 まるで恋を知った乙女のように――微笑んでいたのだ。


 ◇


 かくして、我等は協力関係となった!


 今日はそのまま盛大な宴に戻り――わっせわっせ♪

 たっぷりのんびり楽しんで。

 その後!


 明日からは、また心機一転!

 裏でなにか扇動していそうな相手の、特定作業開始なのである!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 新たな恋のライバル参戦!!(☆∀☆) 魔王様はメインヒロインの座を護ることができるのか( ̄▽ ̄)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ