学園戦争 ~ネコの瞳はナニを見る~その2
異界に招かれ帰還せし者――リターナーズの若者を集めた、特別な学校内。
一寸先は闇。
言葉の意味とは少し違うが――暗黒に満ちた教室の中には、静寂が広がっていた。
冷たい緊張の中で、獣の声が響きだす。
ぶにゃははははは!
くははははははは!
クスクスクスと囁き漏れる声は、闇の中で嗤う影猫達。
私の夢と心の中の国。
ドリームランドの住人達だ。
ネコの声が――。
響く。
うまそうなニンゲンたちニャ♪
けれど食べたらダメらしい……。
ならば、死した後で喰らおう♪
ああ、愚かなりし人間♪ どうか無謀に戦いあって、ぼくらの胃袋に入っておくれ♪
先ほどの戦闘を揶揄する歌だった。
リターナーズの表情が引き締まる。
亜人種に転生している帰還者が、歯を食いしばり――ギリリ!
大粒の汗を浮かべ、犬の尻尾を脚の間に隠す。
「ネコ魔獣……、レベルは――鑑定不能だと!」
「迂闊に手を出さないでください! 少なくともレベル三百を超えているわ!」
聖職者の生徒が更に警告を出す。
この二人はそれぞれ――闇と聖のリーダーのような存在になっていたようだが、さすがにこの状況では手を組むようである。
『賢明な判断だね――そう、この影猫達はとても強くて気まぐれなんだ。私と同じでね』
闇の教室――ここは既にネコ魔獣のテリトリー、それを理解できない程に弱い者はさすがにいないようだ。
なぜ。
影のネコ達を周囲に配置したのか、それはもちろん。
ただの演出である。
闇の中で強力なネコ魔獣が、何か意味ありげににやにやしている。
そしてそれらの魔獣を操る謎の神父。
それってなんか!
とってもイイ感じに! 強キャラ感がある気がするのである!
それに美味そうだなんて言っていたが、ニンゲンなんて喰わないしね。
この子たち。
そんな演出効果を計算しながらも。
あくまでも冷静に、私は両手をすっと広げる。
『改めて自己紹介をしよう――メルティ・リターナーズで保護されていた者達は知っているだろうが、私は異界の魔族だ。名を大魔帝ケトスという、少しだけ強いだけのネコ魔獣さ。まあこの姿は人の形をしているけれどね、基本はネコそのものだと思って貰っていい』
朗々と告げるのは教壇に立つ男。
凛々しく麗しい教師姿のこの美壮年こそが、私!
神父の異装で、ふっと微笑する魔族――大魔帝ケトスである!
ででーん!
よーし、自己紹介完了!
私の声に反応した闇の猫達が、蠢き。
パチパチパチと肉球で拍手喝采!
くおぉぉぉぉぉっぉおぉっと、デフォルメされていない状態の黒マナティが顕現し。
じぃぃぃぃっぃぃ。
顔のない顔でこちらを眺め。闇の中で、ぱちぱちと拍手を送ってくれる。
生徒の一人が、茫然と声を漏らす。
「大量のネコ魔獣召喚に、異形なる死霊の顕現。この方、召喚術師……ですの?」
「いや、違う……これらは召喚されたものではない……っ。付き従っているのだ。伝承にある存在、魔を統べる王に従うようにな。つまり――この男こそが」
と、歯を食いしばり、額に汗を滴らせる戦士職っぽい生徒が応じる。
更に続いて、ぽっ!
私の魅了の影響を受けた一部の生徒達が、恍惚な表情を浮かべ言う。
「この神父様こそが、魔王……様?」
「ああ、なんて魅力的な方なのかしら」
「我が君、あなたこそが我が主!」
自動強制魅了。
耐性の低い者が、純粋なる私の魅力値に汚染され精神を蝕まれているのだ。
「精神汚染! 魔術による魅了まで扱えるのですか……っ」
「まずい……っ! 全員取り込まれるぞ」
何人かが魅了に耐える精神結界を張ろうとしているようだが。
目をやった私は、肩を竦めてみせる。
『おや、誤解はしないで欲しいね。私は何もしていない。これは魔力による誘惑ではないし、ネコ魔獣としての誘惑でもないよ。単純に、容姿と空気による魅了さ。人間は、強く恐ろしい者を畏れ、また同時に惹かれる生き物だからね――当然の反応でもあるのさ』
と、告げる私も美しい! おそらく――髪の隙間から覗く赤い瞳が、ギラギラギラギラと闇の中で輝いている筈である。
いやあ! 私!
神父モードでも人間達にモッテモテだからねえ!
更に私がドヤりそうになったその瞬間。
見かねた女子高生勇者のヒナタ君が、魔力を込めた一喝を放つ。
「ちょっとあんたたち! しっかりしなさい! こいつ、正体はネコなのよ! ネコ!」
勇者の能力の一つである扇動による魅了解除である。
ヒナタ君も既にかなりの高レベル勇者。
そのスキルの効果はすさまじく、さすがに冷静さを取り戻したようだ。
私もヒナタ君の言葉に乗って、苦笑してみせる。
『悪いけれど、耐性が低い者は目を閉じるか目線を合わせないようにしておくれ。もっとも、この私に一生仕えたいというのなら、話は別だけれどね』
「人でいたいのなら、マジで目線を逸らしなさい! こいつ、半分は冗談だけど半分は本気だから。本当に心から従属したいと願っちゃったらアウトよ! この闇の中にいる影猫みたいに、猫化状態にされて一生眷族にされるわ!」
一部の生徒達は、ヒナタくんの忠告を本気と受け取ったようだ。
即座に行動を開始。
慌てて私を直視しないように、目線を逸らす。
『そういうことだ。本当に人生に疲れてしまったのなら――いつでも歓迎するけれどね』
逃げ場がここにある。
そう伝える意図もあったのだが――。
ともあれ!
ヒナタ君もなかなか判断力がついてきていて、教師である私としては大満足!
話を続けよう。
『さて、自己紹介の続きで最初の授業だ。この学園生活が面倒だと思うモノ、私を信用できないモノ。私を倒して名を上げたい、そんな野心を抱いているモノでもいい。文句はいまのうちに頼みたくてね。だから、私は考えた。ゲームをしようじゃないか――!』
言って私は、ぼふっと闇の炎を顕現させ。
魔導契約書を浮かべる。
むろんただの演出であるが、それっぽい教師の顔で――視線を一周させる。
『ルールは簡単だ。君達はどんな手段を使ってもいい、実力行使で私を倒しておくれ。そうしたらこの空間を解除するし、君たちは自由。こちらからは一切の干渉はしない。極めて単純な方法だろう? まあ、文句が無くてそのまま生徒になるというのなら、無理に戦わなくてもいいけれどね』
やはり穏やかに。
あくまでも優雅に生徒達を眺め、私は言う。
『名乗りを上げる者がいないのなら、全員がこの学園生活に同意をしたものとする。以降、規律や学則に従って貰うという事だ。そしてこれが魔導契約書、異議申し立てがないのなら――君たちを学生として登録することになる。私はどちらでも構わないよ? さあ、どうする?』
ようするに、文句があるならかかってくるのニャ!
ここでかかってこないのなら、全員同意と認定! おとなしく生徒になるのニャ!
と――言っているのである。
まあ生徒契約の裏に、思惑はもう一つ。
危険な存在が紛れ込んでいるのなら――その対処をしたいのだ。
この学園でこっそりと、消してしまおうとも思っているのである。
生徒達を集めるのに使ったのは召喚の儀式。
転移帰還者のみに動作するとはいえ、強制召喚を発動させたのだ。
その範囲は条件さえ当て嵌まっていれば無差別に近い。
アン・グールモーアやカナリアくんのような、かつて転生前に地球で育ち、恨みを持って戻ってきた刺客まで呼んでしまった可能性もあるからね。
二回とも地球のニンゲンを恨んでいて、魔性化している存在だった。
おそらく。
次も事件が起きるなら、同じ条件か、似た条件の敵がくるだろう、私はそう考えているのである。
ここで扇動して、何かを仕掛けてくるかとも思ったのだが。
……。
戦いを促す私の言葉に、返事はない。
不発に終わったかな。
ヒナタくんだけは、なにやってるんだか……と呆れているが。
他の生徒はごくりと息をのんでいる。
あ……ヒナタくんの後ろにヘンリーくんがコソコソと隠れてるし。
ようやく一人が動き出したのは、二分ほどの沈黙の後。
ブロンド色の巻き髪が特徴的な少女である。
こくりと頭を下げた彼女は――おっとりとした様子でぷっくらとした唇を動かした。
「あのぅ……ケトス先生、でしたよねぇ? 一つ質問、よろしいでしょうか~?」
『ああ、構わないよ。えーと、君は』
名を問われたと理解したのだろう。
やはり、おっとりとした様子で少女はお辞儀をし。
妙に人懐っこい……まるで犬の様な愛嬌のある顔で告げる。
「し、失礼しました~! わ、わたしは、ノスタルジア。星のノスタルジアと呼ばれております。あわわわわ! そんな目でみないでくださいぃ! 転生してしまったのでこの世界にいた時と、名前も容姿も変わってしまっているので、す――すみません……!」
なかなかコミカルな生徒なのだろう。
視線を集めてしまった事が気になるのか――目をバッテンにし、あわわわわとしている。
『君のように既に転生している者も多い。気にしないで話を続けておくれ』
「は、はい! えーと……あのぅ、いったい、先生は何が目的でこのような場所に、わたしたちをお連れになったのでしょうかぁ? 常識を学ばせたい、というのは……学園パンフレットォ? に載っていましたけれど……それだけじゃないんですよね~?」
おっとりとしているが、その言葉には他の者も興味があるようだ。
私はうんうんと頷き、唇を動かす。
『良い質問だ。信じる信じないは別として、私の話に耳を傾けて欲しい。実は、いま地球は狙われていてね――。滅亡の未来がいまだに回避できていない。その証拠に――ここ最近でも二回ほど、人類に滅亡の危機があったくらいだからね。このあいだのゾンビ系ガンシューティングゲームのイベントは覚えているだろう? あれもその一つさ。もっとも、既に事件は解決しているし、滅びを招く憤怒の魔性も味方となっているけれどね』
ざわめきが起こる。
中には、なにをバカげたことを――と、あからさまにバカにした様子のモノもちらほら。信じていない者もいるが。
まあそれが正常な反応である。
もっとも、何人かはあの時の滅びの歌を聞いていたモノがいるのだろう。
私も滅びの歌を披露したからね。
大魔帝ケトスの逸話を思い出し、あ……っと、声を漏らしている者もいる。
おっとり少女ノスタルジアくんも、巻き毛を揺らし言葉を漏らす。
「あの夢の……! というか睡眠妨害の使い手! 人を憎悪せし、異界の大魔族……ですか。なるほど、あなたがあの大魔帝ケトス……さん、なんですね。猫に転生した地球人……ていうか! あの睡眠妨害はほんとうに酷かったと思います! わたし、ねぶそくになっちゃったんですからね……!」
ものすっごいジト目で睨まれてしまった。
さすがに、睡眠妨害をしたことを根に持っている者は多いらしい。
う……っ、あの時の私は暴走していたからなあ。
その辺を誤魔化すように、私は平然と告げる。
『それは悪かったね――まあ、その通り。私があの大魔帝ケトスさ。伝承にある通り、最強のネコ魔獣だよ。もちろんその本質もネコ。だから今、人間を救っているのも気まぐれでね。行動も気まぐれだし、制限はない。いつ飽きて帰ってしまうか、私自身にも分からない。まあ、この世界には守るべき宝、液状猫おやつがあるからね。一応、このまま守るつもりではいるよ? 今のところはという条件付きでね』
告げると、闇の中の影猫が一斉に――ギラ!
ちゅ! ちゅ~……ぅ、ぬ!
あぁ、なんと甘美な響き!
我らは食べたし、あの至宝! それだけのために、この世界を守ろうぞ。
全てはネコのオヤツのため!
ブブブ、ブニャハハハハハハハハハハ!
ネコの哄笑が、響き渡る。
……。
まあようするに。
オリジナルの液状オヤツを守るために、この世界もついでに救うだけなんだよね。
『さて動機はともあれ――私はこの世界を守ることにした。そこで私は滅びの未来を回避するべくこの世界を一旦、改変した――時間凍結させ、日本だけをダンジョン領域として登録したんだよ。ソーシャルゲームという皮を使った、世界の書き換えにより、かつて地球だった世界の保存をしている状態にある、ということさ。君たちもいまこの世界がどうなっているか、それは知っているだろう? なぜか夢の中に閉じ込められ、世界がゲーム化されている……ほら、これがその管理者権限さ』
言って、私はにゃんスマホの元となっている膨大な魔術式を提示してみせる。
空気が――。
更に変わる。
実力のある帰還者達ならば気が付いたのだろう。
これが世界創生規模の魔術であり、それを扱う私が主神に等しき強力な存在であるのかを。
ま、まあなんか――。
あ、あの鬼畜案内猫ね!
極悪案内猫!
ゲームの中だけの外道キャラクターじゃなかったのか!
そんな声も届いているが。
ん-む、せっかくのダンジョン領域のマスコットキャラクターなのに、酷い言われようである。
どよめきの中。
いかにもヤンキーですって感じの女子が、男勝りな声を上げる!
「って――! あんた! まさか大魔帝ケトスって、あの有名ランカーの大魔帝ケトスかい!」
『ご名答。せっかくだからね、世界を救うついでに私も一プレイヤーとして参加させて貰っているんだよ。正真正銘のゲームマスターでもあるけれど、ランキングに関しては一切のインチキはしていないよ? そこは一応、ちゃんと伝えさせて貰おうか』
チートを使って攻略した!
なんて思われたくないしね。
「じゃあ、そっちの聖剣使いの黒髪美少女は――! あの超有名女子高生の! ヒ、ヒナタさま!」
いや……様って。
なんで私は呼び捨てで、ヒナタくんが様付けなんじゃい!
私の時以上の混乱が周囲に広がる。
あのヒナタさまか。
え? あの!?
みたいな声がチラホラ。
言葉を受けたヒナタ君が、苦笑しながら声を上げる。
「そうよ、様呼びはなんかムズがゆいけど――あたしがヒナタ。日向撫子。んで、そっちのケトスっちが言っている事も本当。この世界、実は今すっごい不安定になってるのよねえ。皆も異世界に行って世界を救うなり、滅ぼすなりして帰還したなら、ここがなんとなくヤバイ状態にあるってのは……薄々分かってるんでしょ?」
「ヒナタ様が言うなら、マジなんすね――」
ヤンキー女子に妙に納得されてるけど。
んーみゅ……。
ヒナタくん……私がいない間になにやってるんだか……。
これで一応、こちらの話も事情も伝わったかな。
後は個人的な好奇心として――どれほど戦える存在がいるのか!
とっても興味がある!
ウズウズも隠せなくなってきているし、影に潜むネコの私がダンスしだしちゃってるし!
『さあ――今の状況を理解して貰えたかな! まあせっかくだ、君たちの力を見せておくれ! この空間では死なないし、かかってきたまえよ! 私も君たちの実力を知りたい! 君達の魔術を、スキルを、経験を、物語の片鱗を! どうか私に見せておくれ!』
言って私は、魔導書をバサササのサ!
周囲を闇の結界で覆い隠す。
強制的に戦闘を開始するエリアに切り替えたのだ。
空気が変わる。
戦いの気配を感じたのだろう。
逃げ足が速いのかヘンリーくんが、慌ててヒナタくんの後ろで詠唱を開始。
結界を構築しはじめている。
「おい、そこの暴力女! ちゃんとボクを守れよ!」
「うっわ、バカ王子。あんた、ほんと、ブレないわねえ……。ねえ……美少女を盾にして恥ずかしくないの?」
ボヤきながらもしっかりヘンリーくんを守るヒナタくん。やはりなんだかんだで、他人にけっこう甘いんだよねえ。
「ふん! ボクはこの場で二番目に強いおまえを頼りにしてやってるだけだ! 男とか女とか、ネコだとかヒトだとかイヌだとか、そういうのはさあ――っ、戦いには全部関係ないだろう! 強いか弱いか、それだけのことだ! そしてボクは弱いから強い奴に任せる! なーっはっはっは!」
無駄に偉そうな王子君はとりあえず問題ないとして。
私はヒナタくんに目で合図を送る。
止めるなと伝えたのである。
生徒達への教育。
私が口先だけではなく――本当に、それなりに強い存在であると、この場で教えておく必要があると判断したのだ。
まだ半信半疑の生徒もいるからね。
『さあ、じゃあゲームという名の授業を開始しよう!』
言って、私は魔導書を広げた。
◇
戦いは始まった。
無数に飛び交うのは――勇者や英雄、悪や闇の道を進んだ反英雄たちの物語の結晶。
魔術とスキルの雨あられ。
彼等の冒険の片鱗を読み解きながら、私はただ悠然と全ての攻撃をいなすのみ。
ヒナタくんもこれ幸いと、死なない環境とこちらが反撃をしない状況を利用し――。
にひぃっと口角をつり上げ――聖剣で空間を薙ぐ。
「たまにはアンタもダメージを受けなさい! ケトスっち!」
『へえ! その空間と次元、両方を裂く攻撃はホワイトハウルに習ったのかい!』
三方向から襲う亀裂を全て繋いで、なかったことにし私は微笑する。
ちぃ……っ!
と、戦士の顔で瞳を尖らせたヒナタくんが、浮かべた魔導書から魔力封じの羽吹雪を召喚。
これは……!
『今度はロックウェル卿に教わったデバフ攻撃か、うん、まあ悪くはないよ。私には効かないけれどね!』
「だぁあああああああぁぁっぁ! あんた! ほんとうに、チート! せめて一発でも与えるまで、諦めないからね!」
言って、勇者ヒナタ君は長い黒髪をぶわ!
時間を操作し世界に誤認識させ、必殺の一太刀を同時に何回も行うという――無限の剣閃を放ってくる。
が――。
『へえ、私の教えもちゃんと守っているのか。これ、私じゃなかったら魔族幹部ですら滅んでいたかもしれないね』
「なっ……! うそつき! これ、どんな相手にもダメージを与えられる技じゃなかったの! ケトスっち! アンタが自慢げにそう言ったんじゃない!」
唸る美少女に、私は眉を下げ。
ちっちっち!
『何事にも例外があるという事さ。それに武術の達人は、技を生み出した時にその破り方も同時に編み出すモノだって、マンガに書いてあったよ?』
「待ちなさい! アンタに一撃与えないと、ホワイトハウルと鬼教官ニワトリに怒られるんだから……っ!」
私とヒナタ君の戦いに、正攻法でついて来られるモノがいないのか。
周囲は完全に置いてけぼり状態。
なかなか派手に戦っているのだが。
さてそんな中で、私はヘンリー君に目線を送る。
やはり存外に優秀なのだろう。
ヘタれでバカ王子であった筈の彼はその意図を察したのか、こくりと頷いた。
この中に、侵入者がいないか――。
チェックして貰うつもりなのである。
あくまでも賢い私の勘であるが――。
……。
このリターナーズの中。生徒達の中に、おそらく……既に何者かが入り込んでいる。
私はそう確信していた。
まあ……こっちが勝手に召喚しちゃっただけなんですけどね。




