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終わるラスボス ~ドタバタの果てに~



 なんだかんだで事件も解決に向かっていた!

 さて、後は私というラスボスを倒して貰い――大規模イベントとなってしまったゾンビ系ガンシューティングゲーム化を解く。

 それだけなのだが。


『んーむ……なぜこんな事になってしまったのか』


 大空を見上げて、私は――モフ毛をシペシペシペと毛繕い。

 思わず肉球に汗を浮かべ、目を細めてしまうのである。


 大魔帝ケトスことカワイイにゃんこな私の目の前で行われているのは――。

 神獣聖戦。

 ラスボスクラスの神による正面衝突である。


 大気が揺れて、宇宙が荒ぶる。

 星座の力を借りた、いわゆる星占いなどで扱う獣帯ゾディアックの魔術を操るニワトリさんが、赤き瞳をギラ!

 両翼を広げ、ラスボスの登場シーンのような強力な魔力波動を纏い、詠唱を開始。


『魔力解放、因果反転――! クク、クワワワワワ! 黄道あまねく十三星! 集い灯りて道を開かん!』


 宇宙すらも巻きつくことが可能とされる世界蛇、ミドガルズオルムの幻影が浮かび上がり。

 ザザザ、ザァアアアアアアァァァァ!

 無限を示す蛇の形をした十重の魔法陣を、纏い――トサカを輝かせニワトリは朗々と告げた。


『聞け! 大いなる精霊ガンドよ、我が名はロック。神鶏ロックウェル卿なり! 余の呼びかけに感謝し集え! 汝らの道を照らし導こうではないか! 黄道天体魔術:《ゾディアック・フォール!》』


 そして、術は発動する。

 ゴヒューンゴヒューンヒュヒューン!


 蛇使い座を加えた、十三星座の力が星の矢となり魔狼に襲う!


 私の天体魔術に似た、星の力を扱う特大攻撃魔術である。

 ロックウェル卿の力で、無数の状態異常攻撃が付与されているようだが……。

 むろん。

 こんなもん、普通の存在ならその攻撃の余波を受けただけでも、消滅する。


 私でもダメージを受けるレベルの魔術。

 そう言えば、どれほどの規模か想像して貰いやすいだろうか。


 対するホワイトハウルは、鋭く尖らせた獣の魔眼を赤く輝かせ。

 グォオオオオォォォォォォォォン!

 術そのものに対し、時間膨張の効果――すなわち行動遅延を発生させているのだ。


 これで魔術直撃までの時間を、稼いでいるのだろう。


 牙を輝かせ、唸る魔狼が天に吠えた。


『抜かったな! ロックウェル卿よ! 天体を扱う魔術はケトスの得意魔術、我がその対抗方法を編み出しておらんとでも思ったか!』


 告げて――詠唱を開始。

 フェンリル神を彷彿とさせる狼型の十重の魔法陣が、大地を回る。

 更に発生した神雷が、地上に複雑な魔法陣を描き。


 術を発動!


『月を追いかけし憎悪の獣! 汝の喰らうその天体こそが、聖父ちちの敵! 天災妨害魔術:《ハティ・マーナガルム》!』


 ホワイトハウルの放った影の狼が、天体落下の衝撃魔術を天災と判定。

 その効果をことごとく喰らって無効化していく。


 これは本来なら人々を災害から救う神の魔術、ようするに奇跡なのだろうが。

 こういう使い方もあるのか。

 てか、こいつ……いつのまにか私の天体操作魔術に対するカウンターを用意してたんかい!


 これ、直接私と魔狼が戦闘してたらちょっと危なかったな。

 両者の攻撃が相殺されて、魔力爆発が起きる。


 さすがに大規模な衝突。

 戦いあっていた人間達も、恐怖ペンギンやレイヴァンお兄さんたちも何事かとざわつき始める。


『クワワ! ほぅ! やるではないか! さすがは余の友と認めた魔狼よ』

『貴様もな、ロックウェル卿! さすがは我が友、そしてケトスの友よ!』


 構わず、獣の二柱はどちらが上かをハッキリとさせるべく。

 バチバチバチ!

 視線をぶつけ合って、怨嗟と嫉妬の魔力を滾らせる。


『汝に審判を下す! 冥府魔狼アヌビス血魔咆哮結界ブラッティロアー――ッ!』

『甘いわ! 汝の魔術ごと石化してくれようぞ!』


 ホワイトハウルが魔狼の叫び。

 いわゆる咆哮に魔力を込め、音が届く全てを裁く裁定魔術を放ったようなのだが。


 対するロックウェル卿は魔力すらも石化させる状態異常フィールドを発生させ、魔術式に石を割り込ませ妨害。

 周囲に石化の叫びが響き渡る。


 いつもの黒猫モードに戻った私は、肉球を鳴らしぶにゃん!


『えぇ……マジでやり合ってるじゃん、もう、仕方ないなあ!』


 体力ゲージを頭上に浮かべたままの私は、華麗に魔術式を組み上げ。

 てい!

 戦いあっている人間達とその他魔族たちを、結界で防御。


 サタン・ムエルテ神の権能を使ったカナリア姫が金糸雀カナリアの亡霊を集め、黄金色の防御魔術を展開する。

 人間達を巻きこんだら、まずいと判断したのだろう。


 これ……この二柱の戦いに巻き込まれたら、再生できないんじゃないかな?

 ともあれ。

 結界で人間達を守り始めた私達にヒナタくんが気付き、声を上げる。


「ケトスっち!? あんた、やっと起きたのね!」

『にゃははははは! ごめんねえ、まさかこんな事になってるとは思わなくて二度寝しちゃってさあ』


 いつもの口調だからだろう。

 ホッとした様子で彼女は、瞳も表情も和らげる。


「もう、大丈夫なの?」


 怒りよりも先に体調を気遣ってくれる――か。

 心配そうにしている所を見ると、けっこう迷惑をかけてしまったのだろう。

 嬉しさと申し訳なさに、私は眉とヒゲを下げる。


『迷惑をかけたね。もう落ち着いたよ――お説教は後でちゃんと聞くさ』

「ま、誰かから説教はされるでしょうけど――あたしからのお説教はやめとくわ、あんなの見せられたんじゃ、何も言えないしね――。まあそれはいいのよ。うん、ケトスっちが暴走気味になるのは前からだし。で? これ、マジでどうすんの……?」


 彼女も指摘するのは、次元を渡りながらもビシバシズガン!

 まるで別の世界観で戦う、モフモフ魔獣神ども。


『余の名はロックウェル卿!』

『我が名はホワイトハウル!』


 名乗り上げの詠唱が、神器の先端を輝かせ――魔力を倍増。

 単純な、けれど膨大なエネルギーの魔弾の射手による砲撃が始まる。


 ビゥゥッゥウウウウウウッゥゥゥン!


 相殺魔術現象。

 互いの魔術効果を打ち消し合う際に発生する魔力の爆発。

 音速を超える衝撃はソニックブームとなって、周囲を揺らす。


『やば……っ! 我はケトス! 大魔帝ケトス! なんか、どばーんと我らを守りたまえ!』


 宣言する私を中心に、ゲーム内のアイテム……一定期間使用キャラを無敵にするゲーム魔術効果が発動。

 周囲の安全を確保する。


 この異様さはさすがに際立つのだろう。

 皆、戦いを止めて天を見上げる。


 二柱同時に杖を構え――。

 逸話魔術を発動。


『ジズの日食よ――!』

『レヴィアタンの海流よ!』


 ドドドズドドドドドー!

 コミカルなもふもふ戦争が、世界を軋ませ亜空間すらも湾曲させているのだ。


 レイヴァンお兄さんが私の元へと転移。

 その鼻梁を尖らせ、くわっと唸る。


「ケトス! てめえ心配させやがって!」

『あー、お説教は後だ。一度、残っている人間をカナリアくんの冥界世界に転移させる。たぶん、彼らの戦いに巻き込まれたら冬眠では済まなくなるからね。補助を頼むよ』


 告げて魔法陣を組み上げる私を見て、他の者も行動を開始。

 よっし!

 これでどさくさに紛れてお説教を回避できる気がする!


 ぶにゃははははは!

 絶対お説教など受けてやるものか!


 と、こっそり猫微笑をしていた。

 その時だった。


 いつの間にか、周囲から気配が消えている。

 発動していたのは緊急転移魔術。

 はて?

 これは確かに私の魔術だが。


『あれ? 私、まだ完成させてなかったよね?』


 今、ここにいるのは。

 ぽつんと立っている私と、空で死闘を繰り広げるロックウェル卿とホワイトハウル。

 そして。

 その声は、闇の靄と共に現れた。


『それは使い手が――キミと同じ魂を持つ存在、だからだろうね』


 声の主にはもちろん覚えがあった。


 明らかに大物と分かる魔力。

 赤き瞳を覆う前髪は――白髪と銀髪の丁度中間色。


 酷く蠱惑的な雰囲気を纏った大魔族が、そこに佇んでいた。


 魔王様と少し似ている、男。

 大魔王ケトスである。


 その後ろには大いなる光が、青筋を浮かべてにっこり。


『ど、どうして君がここにいるんだい? し、しかも白猫モードじゃなくて、マジな顔をした神父モードって……』

『決まっているだろう、ある方のご命令で――キミたちの暴走を止めに来たのさ』


 ある方。

 それはもう既に分かり切っている。

 私のモフ毛が、しゅんと静まっていく。


『ま、魔王様が? この光景をご覧になっておいでで?』

『ああ、執務室から全部――見ていたよ。ワタシと一緒にね』


 あ、やばい!


 耳を下げ、尾を下げて――私は瞳をウルウル。

 ……。

 って! 相手が自分だから、ウルウル攻撃が効かない!?


 後退りし、空間を渡ろうとしながら私は言う。


『ま、魔王さまは……にゃ、にゃんと? おっしゃって?』

『魔王陛下は許すと仰ったけれどね……うん、無言でね。あの方はこの魔導書を、ワタシに授けてくださった』


 それは、魔王様が作り出した逸話の魔導書。

 大魔王ケトスの書。

 私の持つ、猫目石の魔杖とは異なる、大魔王ニャンコ用の神器なのだろう。


 大魔王がその魔導書を開くと、こうメッセージが綴られていた。


 ――はは、悪いけれどお仕置きだ。たまには誰かに怒られなさい。

 と。

 その魔術文字は当然、魔王様のもの。


 次元の狭間に渡ろうと進めた私の肉球が、ぷにゅんと跳ね返る。

 空間を封鎖されたようで。


 ブニャニャニャニャ!


『ちょ! 待ってよ! 私、もう暴走はしてないんですけど!?』


 言い訳を考えながらも結界を組む私だが。

 ゲーム化ラスボス状態で間に合わず。


 その間にも相手の魔術は次々と広大な魔法陣を形成。

 大魔王ケトスが――白銀の髪を靡かせ、ドヤり。

 魔導書を翳す。


『キミが一人の少女の心を救おうとしたのも分かっている。偉いとも思っているし、ワタシも同じことをしただろう。けれど、これとそれとは話は別。暴走と涙で世界を滅亡させたワタシが言うのもなんだが、キミたち――少し今回はやり過ぎだよ』

『そ、そうなんだけど! 待ってよ、タイム! い、今、言い訳を考えてるからさあ!』


 魔導書が魔王様と同質の魔力を放ち、輝き。

 大魔王の瞳も、連動して揺れた。


『魔王陛下に代わり、お仕置きだ――。キミ達は比類なく成長し過ぎた、強すぎるからね。たまには他の強者からの制裁を思い出した方がいい!』


 今回のゾンビ系ガンシューティングゲーム化現象を引き起こしたのは――大魔王ケトス。

 今のこの世界は彼の支配下にあるといっても過言ではないのだ。

 つまり。

 その権能は範囲内にいる存在に強制付与できる。


 冥界でのゲーム化も、大魔王にとっては操作の範囲内なのだろう。

 ロックウェル卿の頭上にも、ホワイトハウルの頭上にも体力ゲージが顕現し弱体化。


 いやあ、さすがは私。

 かつてのラスボス……って、呑気に解説している場合じゃない!


『ロックウェル卿! ホワイトハウル! 君達、ストップ! やばいよ!』


 そう、ある意味で今、この瞬間だけは大魔王ケトスがゲームマスター。

 主神以上の存在となっているのだ。


『ん? コケケ!? なんであるか、これは!』

『しまった――! これは、魔王陛下の御力? それに、我が主、大いなる光の加護もあるだと!?』


 にゃぁああああああああああぁぁぁ!

 大いなる光のやつ! なんかあんまり関わろうとしないと思っていたのだが、こっそり魔王陛下と結託していたな!


 私と二獣が違和感に気付いた時には、もう遅い。

 大魔王ケトスは、魔王様代行としてお仕置きの波動を発動!


『というわけだ――母なる光もキミたちは少し暴走する傾向にあると、陛下と相談なさっていてね。取り返しがつかなくなる前に――……一度、心を鬼にしワンコにメっとする事にしたらしい。おかしな話だよね、こうして……かつての楽園の友が協力しているのだから』


 それは、魔王陛下と大いなる光の事か。

 た、たしかに……崩壊以降――楽園の住人と魔王陛下の初めての共同作業なのかもしれないが。

 それが私達へのお仕置きって……。


 闇と光の輝きが、世界を包む。


『さあ! 反省し給え! 我はケトス! 大魔王ケトス! 母なる光と魔王陛下の代行者なり!』

『ぶにゃにゃ! て、ていうか! 君にだけは、反省とか言われたくないんですけど!』


 魔王陛下と大いなる光。

 二つの大神によるバフを受けた、最強に近い大魔王ケトスが魔導書をバサササササ!


 私とロックウェル卿とホワイトハウルが視線を合わせ。

 ぶにゃ!

 コケ!

 ワオン!

 慌てて三獣の合成魔術、多重結界を張ろうとするも後の祭り。


『おしおき魔術:《機械仕掛けの大神猫デウス・エクス・マキニャ》!』


 宣言と共に生まれたのは、巨大な白猫。

 これは大魔王ケトスの幻影だろう。

 魔力の白猫は、機械仕掛けの肉球を振り降ろし――瞳をギラァァァァン!


『クハハハハハハ! たまには、反省するといいのニャ!』


 大魔王ケトスの肉球が――。

 ズドドドドオォォォン!


 三獣を巻き込みながら、ゲーム化世界が大爆発。

 世界にお仕置きの鉄槌魔術がさく裂した!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王様じゃなかったけど自分にお仕置きされたよケトス様!((o(^∇^)o)) [一言] あー…。やっぱ私感じた魔王様の大魔帝用お仕置きセットが準備されだした気配は気のせいではなかったようで…
[一言] ケトスにゃん君は反省の証として、ちゅ〇るタワー(ちゅ〇る5~6本分一つ300円程)を24時間我慢しよう。
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