裏プロローグ 後編
液状ネコちゃんオヤツを巡る大問題。
世界を救った大英雄にゃんこ。
大魔帝ケトスたるこの私が率いる我等、ネコ魔獣大隊はシリアスな顔で――尻尾を膨らませ!
ぶにゃにゃにゃ!
『異界のオヤツを取り戻すぞー!』
「にゃー!」
『さあ、我らニャンコの本気を見せる時なのニャァァァァァァ!』
にゃぁぁぁぁ……っと。
息を吸って――ここだ!
ぶにゃははははははははははははははははははははははは!
肉球と輝く瞳。
一斉に立てた尻尾とステキ猫達による哄笑が、ラストダンジョンから世界を揺らす。
ニャンコ達が闘志を燃やす中。
目の前の冥界神。
レイヴァンお兄さんはなぜかちょっと困惑顔で、首筋をポリポリポリ。
「ああ、なんだ……その。異界召喚がキャンセルされたってのは、どういう現象でそうなったんだ。遠くの次元の遠くの星だって話だし、さすがのおまえさんでも魔術制御に失敗したのか?」
『いや――言葉通りの意味さ』
私のミスと思われたら沽券にかかわる。
異界召喚失敗時のデータ資料を手渡しながら、私は続ける。
『これを見て貰うと分かると思うけど……この私の魔術が向こう側のなんらかの要素によってキャンセルされたんだよ。妨害か、それとも日本自体が不安定になっているのか。人為的なモノなのかどうかも不明なのさ。フォックスエイルも同じ理由で失敗しているって言っていたからねえ――この私の術が失敗するとも思えないし。たぶん何かが、あちら側で起こっていると考えるべきなんじゃないかな』
お兄さんが難しい顔で、ごくりと息を呑んでいる。
事の重大さを理解したのだろう。
そして、口を開き。
「いや、これ……おまえ、字が汚くて読めねえんだが?」
申し訳なさそうに言われてしまった。
……。
まあ、たしかに――ニャンコの文字で、走り書きしたから分からないのかもしれない。
液状オヤツを食べられないなんて!
そんな感情で書きなぐったかもしれない!
笑って誤魔化そうとする前に、膨大な魔法陣が発生。
大魔王なケトスが白きモフ毛を靡かせて――翻訳の魔術を発動したようだ。
大魔王ケトスが偉そうに、ドヤ!
背中の毛をぶわっぶわにさせて、お兄さんを眺めている。
『そこの冥界神よ、ワタシを褒めてもよいのだぞ?』
「ったく、ただの翻訳にさえ神話領域の魔術を使いやがって。これだから極悪アニマル共は……えーと、どれどれ」
グチグチいいながらもお兄さんは大魔王の頭を、褒めるようになでなで。
書類に目を通し。
まともに顔色を変えて、息を漏らす。
「は? 魔術の腕だけはまともなおまえさんの魔術に干渉――強制キャンセルしただって!? ありえねえだろ!」
『魔術の腕だけはまとも、って部分がちょっと気になるけど。ちょっと異常だってことは理解して貰えただろう?』
まあ、後でネコキックをするとして。
『大魔王ケトスにも別の異界召喚の魔術を使って貰ったんだけど、結果は同じ。異界のワタシは憎悪の魔力が減少しているから、あの時よりちょっとだけ弱体化しているけど――それでも敵う者がほとんどいないほどの大魔術師だ。冥界神である君や、主神である大いなる光すら簡単に倒せてしまう程のね。私と大魔王の異界召喚が両方ともにキャンセルされるなんて……明らかに変じゃない?』
暇つぶしにやってきた筈だったレイヴァンお兄さんが、空気を変えて唸り。
僅かに眉を顰める。
「大丈夫なんか、それ。たしかあそこにはお前さんの関係者の勇者もいるんだろう?」
『ああ、転生した異界の魔王様の娘がね。君とは……どういう関係になるんだろうね。魔王様が転生した人間の子どもになるわけだから。……。姪、とも違うよね?』
モフ毛をうにゅっと動かす私に。
苦く笑ってお兄さんは言う。
「そういう複雑な間柄は、今はどうでもいいがよ。向こうの状態を、その、なんだ……ヒナタちゃんだっけ? その嬢ちゃんに聞いてみるってのはどうだ? お前さんの事だ、何か連絡を取る手段ぐらいは隠れて仕込んであるんだろ」
おや、鋭い。
『まあたしかにプラズマ魔力球を仕込んだ魔導書を渡してあるからねえ。連絡は取れる筈、だったんだけど――』
「筈だった?」
『ちょっともう一回、試してみようか』
口で説明するより見せた方が早いと――私は猫目石の魔杖を翳し、魔力波動を纏い。
くわ!
『我はケトス! 大魔帝ケトス! 汝と宴を交わせし異世界の魔猫王なり!』
多重起動の十重の魔法陣で次元干渉。
異界にまで届く長距離用のメッセージ魔術を発動させるが。
ざざざ、ざぁぁぁぁぁぁぁ……。
「キャンセルされちまったな……しかも、今のは確かに魔導による干渉だ」
『ね? 私の仕込んだ手段が潰されているって時点で、もう、アウトっぽくないかい?』
「オヤツばかりが目当てってわけじゃなさそうだな。分かった――俺様も協力してやるよ、真面目にな。何をすればいい」
このお兄さん、普段がふざけて怠惰な生活を送っているから――。
真面目になるとギャップが凄いんだよね。
よーし!
冥界神の協力をゲット!
さっそく、大魔帝、大魔王、冥界神。
三柱による合成魔術を展開しようと魔術式を組み立てていたのだが。
三人が三人、同時に眉を跳ねさせた。
ズン!
強大な魔力で空気が――揺れたのである。
けれどだ。
これは敵ではない!
私と大魔王のモフモフ猫毛が、もこもこもこもこ!
にゃにゃにゃ♪
瞳を輝かせる私達とは裏腹。
お兄さんは瞳を細め、あからさまに顔を顰める。
「うげ……っ、この気配は……」
「なるほど――キミたちが極大転移門の研究をしていたのは、そういう理由だったんだね。ははははは、ごめんごめん。てっきり悪戯をしているものとばかり思っていたよ」
偉大なる声と共に――キィンキィンキィン!
一切の無駄のない転移魔法陣が、ニャンコ魔導研究所の床を走る。
当然。
現れるのは――魔王さまである!
◇
ぶにゃっと私はネコ毛を震わせ、目をギンギラギン♪
にゃほん!
大魔帝としての声で、第一魔王様配備を発令!
ビシっと肉球とネコの手をうにょうにょ!
『ネコ魔獣大隊、魔王様がいらっしゃる! 大至急、お迎えの準備を!』
「ハハハハ、ありがとうケトス。でも大丈夫――ここは君の研究室、邪魔をしたくはないからね。自分で用意させておくれ」
闇の煙と共に顕現した魔王様が、謁見用の儀礼服を装備したまま。
ぶわり!
やはり一切の無駄のない魔術式で、ティーセットを召喚。
「いつもかわいく元気でいるキミたちにも、ご褒美を上げないとね」
ついでとばかりに軽く指を鳴らす魔王様。
指で魔力干渉した――それだけで天が揺れて大地が震え、海から竜巻が起こる。
ネコ魔獣大隊全員の前に、ぽん!
ホールサイズのチーズケーキを召喚してみせたのだ。
ネコ魔獣たちが瞳を輝かせ、ごくり♪
許可が出るまで口をつけないのは、かなーり、偉い!
いやあ、さすが私の部下!
「ワタシのケトス達と遊んでくれてありがとう。キミたち猫魔獣大隊にはいつも期待しているよ。突然来ちゃってごめんね、楽にしておくれ。そしてキミたちが可愛くケーキを食べる姿をみせてくれると、嬉しいな」
『ありがとうございます魔王様、それで……たしか、いま会議中だったのでは?』
魔王様の配下、魔王様の次にえらい大魔帝としての声で私は言う。
会議が終わったら謁見。
その合間に判子押し地獄が待っている、そんなスケジュールだと聞いていたんだけど。
「え? いや、そのなんだ――。ほら、休憩! そう、休憩さ! 懐かしい声と魔術の反応があったから、謁見を抜け出してきちゃっただけだから。ハハハハハハハ! 今頃サバス、カンカンに怒っているだろうな」
既に優雅に紅茶を啜りながら、手を振ってみせているが。
魔王様……。
私みたいに書類仕事が嫌になって、逃げだしてきたな……これ。
楽にしていいと送られた合図に従い、ネコ魔獣たちが頭を上げる。
彼等はボス猫である私をじっと見る。
ホールケーキを食べていいか、判断を仰いでいるのだろう。
『出されたモノを食べないのは失礼になるからね、食べて構わないよ。もちろん、魔王陛下への感謝は忘れないように、いいね?』
「ケトス。キミは本当に落ち着いた、紳士なネコの一面も出せるようになったんだね。ワタシは嬉しいよ」
穏やかな声で許可を出す私に、魔王様はふっと頬を緩める。
私も頬を緩め。
ぶにゃにゃ!
大魔帝と大魔王。
仕事モードを解除した私達は魔王様の膝の上に向かい、よいしょ!
ででん!
必殺、かわいいニャンコダブル乗りである!
『にゃははははは! またサバスくんに怒られますよ魔王様~♪』
『でも、会いに来てくれたのは嬉しいですよ?』
私達のネコ頭をナデナデしてくれながら、にっこり。
魔王様は皆を見渡し言う。
「キミたちは本当に可愛いねえ。素直だし、まあちょっと悪戯はするけれど――ところで、何故かいつのまにか我が家に侵入しているそこの冥界神。どーして逃げようとしているのかな?」
「いやいやいや、逃げようとなんてしてねえぞ? ただ幹部連中に、おまえさんがここに逃げ込んでるってチクろうかと思っているだけだし?」
やはり魔王様に苦手意識があるのか。
逃げようとしていたレイヴァンお兄さんがぐぬぬぬ。
唸りながら、転移し後退。
魔王様が周囲をチラリ。
指を鳴らし――ぱちん!
次元の隙間に逃亡しようとした兄の強制顕現。
更に捕縛の魔術までを一動作で展開。
ざざざ、ざぁぁあああああああああああああああああっぁぁぁぁぁ!
麗しい眉をお下げになり。
闇の腕に捕まえた、実のお兄さんを見ながら仰る。
「兄さん、ウチに来るなら先に言ってくれればよかったのに。魔王城全員でお出迎えさせてほしかったんだけど、どうしていつもコソコソやってくるかなあ」
「こういうことをするから、言わねえんだよ……っ!」
兄との再会に喜ぶ魔王様であったが。
お兄さんの方は、死を操る冥界神の権能を行使し――捕縛の術の魔術式をキャンセル。
怒りマークを浮かべて、牙をくわ!
「いいか! これ以上近づくなよ! てめえと鉢合わせになりたくねえから避けてるんだよ! 察しろよ、そういうの! このあいだ、何をしようとしたのか、忘れたわけじゃねえだろうな!」
「はて? せっかくの兄弟なのに、会いたくないとは……悲しいねえ。なあ我が愛しきケトス達、キミ達はどう思う? 弟を虐める兄って、ネコちゃん的にはどうかな? とても非道な事だと、そう思わないかい?」
本来なら魔王様に味方をするべきなのだろうが。
……。
うにゅっとネコ鼻を動かし、考える。
私と大魔王ケトスは知っていたのだ。
『あー、魔王様。同意したい所ではあるのですが』
『やっぱり……冥界神のもつ死の魔力を解明するための魔導実験とはいえ。実のお兄さんをゲームの妖精みたいに瓶の中に詰めて、分裂させようとするのは……まずかったんじゃないかなぁ……と』
愛猫二匹にもツッコまれて。
けれど反省も懲りもせず。
魔王様はピアニストのように長い指をアゴに当てる。
「ふむ――兄さんが増える、つまり冥界神の分霊が増えれば生存率が跳ねあがる。どれか一つが消滅しても再生可能になるんだけどねえ。兄さんを増やして、冥界を兄さんでいっぱいにして、朝用兄さん、昼用兄さん、夜用兄さんの在庫を確保。それぞれを部屋に飾っておけば、いつでもどこでもワタシは兄さんの無事を確認出来て安心。素敵で一切の無駄のない、美しい魔術式だと思うのだが」
ちなみに。
魔王様、これマジで言っているので……反応に困る。
『魔王様。普段はとてもお優しいですけど、一度敵と決めた相手には厳しいし。魔導のことやお兄さんの事になると、けっこうブレーキをなくして暴走しますよね……』
それに。
ジト目で私は魔王様をチラリ。
まあ、魔の王と言われるだけの事はやらかしてるんだよね。
雑魚扱いされているのが可哀そうだからって理由だけで、ガチのふつうのナメクジに魔導を教え込んで、すっかり忘れて。
そのまま放置。
人間国家とナメクジとの、五年間に及ぶ魔導戦争の原因を作りだした事もあったし……。
事実をうっかり知ってしまったのは私だけなので、おもいっきし隠蔽したし。
やらかした魔王様本人は、すっかり忘れたままなので――、ずっと眠ったままになる真実なのだが。
実は……そういう案件が結構あるのだ。
どうして私がそれを知ったのか。
理由は単純。
私も似たようなことをやらかして証拠隠滅しようとした時に、偶然知ってしまっただけなのだ!
ともあれ。
魔王様は美しい笑顔のまま。
私の肉球を掴んで、プーニプニ♪
「ハハハハハ! まさかケトスに諭されるようになるとはね。キミはこの百年で、本当に大人になって落ち着いたようだ。どうもワタシはそういう倫理とか、常識とか、そういうフワフワっとした感覚が分からなくて……参ったね。自分でも悪い癖だとは分かっているんだ。でもケトス、聞いて欲しい――ワタシはね、ただ、もう兄さんを死なせたくはない。失いたくないだけなんだよ。キミ達なら、分かってくれるね?」
キミたちなら、分かってくれるね?
つまり、魔王様は味方を欲しがっている。
イコール全面協力!
まあ魔王様が絶念の魔性化を果たし、楽園を滅ぼしたきっかけは兄魔族レイヴァンの謀殺。
ちょっとしたトラウマになっているのだろう。
なら、仕方ないか。
魔王様だし、許されるよね?
私と大魔王は頷き。
ギロリ――。
世界最強猫魔獣二匹が、冥界神を捕縛しようと魔術式を組み上げ始める。
お兄さんを渡す気満々な黒白ニャンコ。
我等の気配を察したのだろう。
劣勢に立たされる前にレイヴァンお兄さんが、唸る。
「だぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ! 冗談でもやめろ! で、ここに何の用だ! ケトスに用があったんだろう! 俺様の事は良いから、もっと可愛い眷族をかわいがってやれ! こいつ! おまえがいなかった時、本当に頑張ってたんだからな!」
ビシっと指差すお兄さんを無視して。
魔王様は私を向き。
「そうだね、ふふ……ケトス、キミには本当に世話になった。兄さんの荒み切った心まで救ってくれていたとは思わなかったしね、さすがワタシのケトスだ。まあ――兄さん分裂計画については、今後もう一度話し合うとして」
空気がわずかに引き締まる。
威厳ある、魔王陛下としての声が部屋に響き渡ったのだ。
「大魔帝ケトスに大魔王ケトス、キミ達にちょっとだけ大事な話がある。いいかい?」
わざわざ大魔帝と大魔王と言い直している。
本当に大事な話なのかもしれない。
大魔帝セットを装備し、私は静かに頭を下げる。
『はい、魔王陛下。お説教以外ならお聞きいたします』
『にゃんにゃりとお申し付けください! お説教以外ニャら!』
目を輝かせる黒白ニャンコに、魔王様は微笑み。
「はは、大丈夫――お説教じゃないから安心したまえ。ごめんごめん、まあそこまで大事な話じゃないんだ、ちょっとだけって言っただろう? 話は簡単さ。今、キミたちがやっている転移の研究を、大至急で進めて欲しいんだけど――頼めるかい? 無理ならそれはそれでいいし、諦めるけど……来週までに単独転移でいいから、可能になっていると助かるのだが。どうだろう」
「おいおい。そりゃまた、随分と急だな」
私と大魔王ケトスとレイヴァンお兄さんが目を合わせ。
こてん?
はて、いったい何を急いでいるのだろう。
代表して大魔王なケトスが魔王様の膝の上からおり、魔導メガネを装着。
転移装置を眺め。
じぃぃぃぃぃぃぃっぃぃい。
腕を組み、真剣に猫口を――うなんな。
『おそらく集団ではニャく単独転移でよければ、たぶん――既に可能だと思われますニャ。もちろん、誰でも転移をできるというレベルではニャいので、転移可能なモノは高位魔族やそれに準ずる神族達や、ごく一部の人間になるでしょうが』
「おや、キャンセルされると聞いていたけど――すごいね、もうそこまで解明できているのか」
鑑定の魔術が発動されているのだろう。
魔王様の瞳が、魔術式を読み取っている。
『けど――、どうしたんです? 魔王様、どちらかというとワタシや大魔帝なワタシがどこかに遊びに行っちゃうから、あんまり研究を進めて欲しくないニャ~。みたいなノリだったじゃニャいですか』
手を伸ばして、抱っこ抱っこ!
魔王様に抱擁を求める白ニャンコを、魔王様の手が抱き上げる。
どうやら大魔王ケトスもだいぶ癒されているのだろう、憎悪による暴走の兆候はもはや消えている。
微笑ましい光景を優しい瞳で見る私。
偉いね?
だって、私だし。
幸せになって欲しいからね!
ちょっとだけ嫉妬もしそうになるが、我慢我慢。
……。
あ、なんかレイヴァンお兄さんが苦笑しながら私を抱き上げ始めた。
「おまえさんは偉いなあ、ケトス」
『なんのはなしだい?』
「そういうところだよ――ま、分からないならそれでもいいけどな。ほら、ワシャワシャしてやるよ! はははははは!」
ま、まあ。
勝手に偉大なる私の頭を撫でているが、許してやろう。
ゴロゴロゴロゴロ。
二匹の大ゴロゴロが部屋に響く。
おだやかな時の中。
魔王さまが、うっとりと瞳を閉じる大魔王の頭を撫でながら言う。
「いやあ、実はさ。そんな大した話じゃないんだが、ワタシとロックウェル卿が共通の未来視をしてしまってね。日本というか、地球全体――なんだけど」
魔王様が鮮明な魔術ビジョンを展開。
そこにあるのは例の蒼い星。
地球なのだが。
魔力を失い白く炭化していく惑星が、宇宙の中で消滅していく姿が映っていた。
「なんか近い将来、まあ五年、十年の誤差はあるだろうけど。日本を軸に異変が起こって、惑星自体が滅亡しちゃうみたいなんだよねえ。商品の取り寄せができなくなっている事が、その証拠かな。いやあ、困ったねえ。これじゃあ、向こうの漫画雑誌が手に入らなくなっちゃうんだ……まあ、ないならないで諦めるけどさ。最後まで見たかったんだよなあ、ニャンターニャンターの連載。これじゃあ、完結しない間に滅亡しちゃうね」
と、魔王様は漫画雑誌を思う麗しい顔とお声で仰っていた。
あまりにもいつも通り。
何事にも動じない美しい顔と声音だったので、言葉を受けた私も……ぶにゃ?
違和感を覚えつつも、ふつーに返していた。
『へえ、滅亡するんですねえ。まあ、既に四十六億年とか存在しているわけですし。星の寿命ですかねえ。じゃあ、壊れる前に一刻も早く飛んで――液状オヤツを買い占めて……』
そこで言葉を詰まらせ。
ふと賢いニャンコな私は考える。
『ん? なんか魔王様。今、サラっと、とんでもないことを言いませんでした?』
――と。
魔王様とロックウェル卿の滅びの予知。
そう、この予言こそが裏ステージへの散歩のきっかけ。
今回の事件の始まりだったのである。
ていうか、さあ。
魔王様と、あのニワトリが同じ予言をするって。
どう考えても。
なんとかしないと絶対実現しちゃうやつじゃん……。
いつも思うんだけどさあ、世界……簡単に壊れかけ過ぎじゃない?
もうちょっと頑張って欲しいんですけど!




