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軍事砦の勇者とニャンコ ~元・聖騎士シアンの秘密~



 砦を占拠した翌日。

 大魔帝ケトスこと最強猫魔獣な私は朝陽を目指して、よーいしょ! よーいしょ!

 モッフモフかつ細い身体で塔を登っていた。


 膨らむニャンコな尻尾を――ピョコピョコ!

 天辺に上り詰めて、ふぅっとシリアスな息を吐く。


 憎悪の魔性たる赤き瞳を、くわぁぁぁっと開き。


『くはははははははは! これぞ素晴らしきニャンコ砦! ディガンマ大陸に築かれし希望! 魔王様の別荘とするべき拠点の一つであり、我の新たなる居城。すなわちネコちゃんハウス!』


 占領した辛気臭い砦を一夜にして改築!

 匠も感動ものの大改造!

 大陸の三分の二も、占領されていた脆弱なる大陸。私の偽物である大魔王ケトス。かの悪逆非道の君主に支配されていた、哀れな地に突如現れた堅牢な城である!


 領域名は大魔帝ケトスハウス!


 この私が顕現させた新たな拠点なのだ!

 なのだ!

 なのだ、なのだ、なのだぁぁあぁぁ――……。


 ふっ、魔力音声が遠くまで響いてしまうのである。


 監獄塔だった砦の頂上に、魔力を通し。

 ブシュ!

 魔王様を讃える旗を立てて――と、まあこんなもんかな。


 一番、モフ毛が際立つ角度を計算してっと――ビシ!


『見るがいい人類よ! 畏れ慄け、平伏すのじゃ! 今日からここを――ネコちゃんキャンプ地とする!』


 旗を掴む肉球。ぶわっとチキンレッグみたいに広がっている脚のモフ毛の下。

 肉球で踏みしめる砦の中では、今。

 膨大な魔力が巡り始めている。


 ダンジョン領域として正式に世界に認識させたのだ。

 もちろん、領域ボスの名は大魔帝ケトス。

 私を討伐しない限り、この領域は私というダンジョンモンスターに支配され続けるという事である。


 まあ、ようするに。

 うん――いつものように勝手に拠点を立てているのだ。


 ちなみに。

 皇帝さんには事後報告である。

 どーせ、先に連絡を入れると周囲の家臣が相談とか会議とか言い出して、建築が遅れちゃうからね。


 完全改装された内部では今頃、私の眷属が働き出している筈だ。


 ダンジョン領域となり召喚された猫魔獣と影猫達が、わっせわっせ!

 いつものように遠足気分で、わっせわっせ!

 寝床を作っているのだろう。


 我が配下のネコ達の愉快な笑い声が聞こえている。


 まあ、ケルベロスやヒュドラ。

 見た目のインパクトの強い陸獣神ベヒーモスや、悪魔ではなく海獣神としてのレヴィアタンの本体とかも召喚してあるので。

 たぶん今頃、大騒動。

 中で準備している勇者たちはパニックになっているだろうが。


 ともあれ!


 もちろん、私の部屋は既に設置済み!

 帝国の自室から複製したロイヤル寝具をこっちにも持ち込んだので、寝床も完璧!


 ポテチ自動分裂魔道具まで開発したので、今頃私の部屋ではポテチの丘が作られている事だろう。

 ぶにゃ!

 ぶにゃははは、ぶにゃはははははははは!


『完璧ニャ! 完璧すぎる己自身が怖いのである!』


 ここを足掛かりに各地の町や村を解放するのだ。

 希望はまだ残されている。

 昇る朝陽も、私のモフモフな黒毛をキラキラと輝かせていた。


 さあ、私の冒険もこれからだ!

 いざゆけ可愛いニャンコ!

 魔王様最愛の部下!

 麗しき魔獣、大魔帝ケトス!


 このディガンマ大陸の明日は、その気高い肉球に掛かっているのだから――!


 ビシ!


 ――完――


 と、人が気分を出している所に響くのは――女子高生特有の明るい声。


「ちょっとケトスっちー! なに、一人そんなところでドヤ顔してるのよー! あたし、忙しいんですけどー! こっちの結界張るの手伝って欲しいんですけどー!」


 黒髪を風でぶわっとさせる美少女が、私をビシっと指差し。

 愛嬌のある顔をくわっとして。

 風属性の魔術で音声を倍増させ、叫ぶ。


「って、こらぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 何が完よ! ぜんぜん終わってなんかないじゃない! 魔力文字で器用に空に日本語なんて書いてるんじゃないわよ!? あんた、やっぱり! 日本知ってるわね!」


 太陽に向かってモフ毛を靡かせる私を呼んでいるのは、もちろん味方。


 日本から呼ばれた女子高生勇者で転移者。

 まあそれなりに強い聖剣使いのヒナタくんである。


 彼女もニャンコと協力中。

 大魔帝ケトスハウスの建設を行っている筈なのだが。


『えー! せっかく昇る朝陽に向かってポーズを決めるカッコウイイ私を撮影してたのに! もうちょっと待っててよー!』

「そんなことしてる暇ないでしょうが!? ここ、絶対に敵の集中砲火を受ける拠点になるんだから! 一刻も早く避難民を守り切れる防衛拠点にしようって言いだしたのは、アンタでしょう――ッ!?」


 たしかに。

 実はそんなに遊んでいる暇はないんだよね。


 塔の天辺でびにょーんと片足を上げて、チペチペチペ。

 モモのもふもふ部分を、太陽で温めてモコモコさせたいのだが――。

 ……。

 そろそろヒナタくんがマジギレしそうなので、仕方がない。


 ふよふよと降りて、着地した私は言う。


『別に遊んでいたわけじゃないんだけどなあ。これは戦争なんだ、御旗は必要だろう?』

「まあその理屈は分かるけど――アンタの主人である魔王陛下? の旗っていうのは、どうなのよ……。いや、怒らないでね? 一応、これは人間と大魔王ケトスの戦いなわけなんでしょ? この地とは関係のない大魔族の旗よりかは、ふつーに帝国の旗でいいと思うんだけど」


 魔王陛下への言葉を慎重にしつつも、苦言を呈するヒナタくん。


 もっともな意見である。

 ――が!

 私はここに魔王さまの旗を立てたい!


 なのでシリアスな顔をして。

 私はチッチッチっと肉球を振る。


『そしてこの騒動が終わった後には、大陸全てを帝国が支配している――と』

「はぁ? なによいきなり」


 少し真面目な口調で、私は猫口を開いていた。


『現在占領されている王国の民や、共和国の民。他にも色々と国はあるだろうけど、援助を目的とした支援を受けて、そのままなし崩しに吸収合併。植民地とされるべきだって言いたいのかい?』

「え? いや、ちょっと待ってよ! 話が飛躍し過ぎじゃない!? なにもあたしはそういう意味で言ったんじゃ……!」


 肉球をすっと出し、私は彼女の言葉を遮る。


『分かっているさ。敢えて私は意地悪な言い方をしているんだからね』


 朝ごはんの大魔帝風ホットサンドをヒナタくんにも差し出し、私もパクパク。


 まあ。

 これはあくまでも魔王様の旗を立てるための方便なのだが。

 ……。

 こうなる可能性もある、そういう意味での警告も込めて私は少女をまっすぐに見る。


 魔王軍最高幹部としての声で続けた。


『君はまっすぐでイイ子だから――あまり負の感情を考えもしないだろうけど。実際、国を滅ぼされて捕虜となっていた他国の人間は、不安になるだろうさ。ただ悪の支配者が大魔王から帝国に代わっただけなら、意味なんてないしね。帝国とて、今はピンチで私に頭を下げているが……いざ大魔王との戦いが終われば、どうなるか――。喉元過ぎれば熱さをなんとやら――世界を救った勇者でもある君なら、なんとなくわかっているんじゃないかな?』

「そりゃ、まあ……あたしも二番目の世界では厄介者扱いされたけど」


 平和になった後の世界での、異世界人の英雄。

 その扱いがハッピーエンドに終わる。

 なんて御伽話みたいな世界も中にはあるだろうが、そうじゃない世界も多いだろう。


 勇者たちの何人かが私の話を聞いていたのだろう。

 砦の窓からこちらをこっそりと覗く気配が複数ある。

 タヌキくんの尻尾も、ぶわりと膨らんでいた。


 私は気付いてしまっていた。

 呼ばれた勇者の条件に、私に説明されていない部分があるのだ。


 それは人間性。

 今、ここに残っている勇者たちはみな、英雄扱いされたが厄介者にされ――おとなしく身を引いた者達。

 条件指定して呼んだのか、それとも偶然か。

 それは分からない。


 分からないが――もし選んで呼んだのなら、召喚の儀式を行った術者はなかなかどうしてイイ性格をしている。

 そもそもだ。

 大量の勇者を召喚したのは、誰なのだろう。

 あえて、その部分には触れず――私はこちらを気にする皆にも聞こえる声で言う。


『イプシロン帝自体は良い皇帝だ、彼個人で考えるなら間違いなく善人だろう』


 猫好きだし。


『けれど、その周りの臣下全員がそうとは限らない。むしろ、帝国のためだけを思うのなら、植民地にする方向で話を進める方が忠義であるともいえる。その方針が間違っているわけでもない。だからこそ、こうした牽制は必要なのさ。お互いのためにもね』


 善人悪人、そういう問題じゃなくて――ね。

 そう、大魔帝風ホットサンドをガジガジしながら語る私に、唇を尖らせたヒナタくんが黒髪を息で揺らす。


「でもさあ。帝国は勇者召喚っていう代価を払ってあたし達を呼んだわけなんだから、別にそのまま大陸の支配者になっても、まあ……圧政とかしなければ、問題ないと思うんだけどなあ。もしかして、皇帝はともかく……帝国自体は信用してなかったりするわけ?」


 さすが本物の勇者。

 猫としての私が、どこまで人間を信用するべきか――慎重になっている事を見抜いているのだろう。


『そうかもね。そして君は一つ勘違いしている』

「え? なになに?」


 他の勇者たちも耳を傾ける中。

 私は言った。


『皇帝も神官も騎士も巫女たちも――みんな勘違いしているようだが……私は勇者召喚されたわけじゃないからね。あくまでも勇者召喚の兆候を察知し、侵入した、イレギュラーなんだよ。故にこそ、私には召喚による契約が成立していない。好き勝手に……というと我儘を言っているみたいだから違うか。自分の信念に従って行動させて貰うさ』

「えー! でも、イケおじ皇帝と契約したんでしょ? よく、わかんないわねえ」


 魔術師系統の職業の勇者なら気が付いたはずだ。

 私は、召喚契約の対象外。

 いかなる制約や強制も――受けない。


 もし帝国が暴走したとしても、私が勇者たちに代わって調子乗ってんじゃねえぞコラってするから、心配しなくていいよ。

 テヘペロ!

 っと、しているわけである。


『いいかい、ヒナタくん。私はね――大魔王ケトス討伐には協力を約束したが、イプシロン帝国がこの大陸の覇権を握る事に協力しているわけではないんだよ。まあ少なくとも、魔王様の旗を立てておく事でそれをアピールできるってことなのさ』


 伝承があやふやなせいで曖昧になっているが。

 この世界、別大陸では私や魔王様が住んでいる世界でもあるからね。


 魔王様の敵となるならば、容赦など一切しない。

 いざとなったら。

 私は本気で魔王軍を率いてこの大陸に再臨し、全てを破壊しつくすだろう。


 けれど、できるならばそうはしたくない。

 今のうちに、牽制しておきたい。

 なーんて、邪心に混じった仏心も少しはあるのだ。


 帝国ではなく、魔王様の旗を立てる理由をそれっぽくこじつける私に。

 ヒナタくんはまん丸な瞳を、じぃぃぃぃっぃぃい。


「ケトスっち……あんた、能天気担当なおバカニャンコじゃなかったの?」

『ふっ――軍師ケトスと呼んでおくれ!』


 胸を張る私の頭をナーデナデナデ♪

 女子高生の手が、わしゃわしゃわしゃ♪


 くはははははははは!

 やはり撫でられると、哄笑が飛び出てしまうのである。


「ネコってずるいわねえ……こんなかわいい顔で威張られたら、何も言えないじゃない」

『それが猫の特権ってもんさ』


 ゴロゴロゴロ。

 ついつい喉が鳴ってしまうのである。


 喉を鳴らす私の猫鼻をピッピッと指先で軽くつついて。

 少女は言う。


「まあいいわ。で、大魔王ケトスについては何か分かったの? あの砦で大魔王ケトス軍からは情報を抜き出したんでしょ」


 さきほどとは違った意味で真面目な話だ。

 私も空気を切り替え、告げる。


『少なくとも大魔王本人が姿を見せていない、っていうことは把握できたよ』


 脳から……直接に引き出した情報だ、間違いない。

 けれど。

 うん、わりと外道な手段だから黙っておこう。


「ケトスっち、何か隠してる?」

『ネコちゃんのかわいいイメージが崩れてしまうからね』


 話の先を促され、私は続ける。


『ついでの情報だが、異界から呼ばれた彼らの正体は君達も察しの通りさ。皆、元の世界で自らの悪行の果てに殺される寸前、または殺された直後に召喚されていたようなんだよね。死の直後ならば蘇生が可能な使い手がいるってことになるだろう。ま、命令しやすい上にそれなりに強いから、異界の悪人は便利なんだろうけどね』

「それって、下手するとあたしらが前の世界で殺したと思っていた悪人が、実はこっちの世界で召喚されて暴れている、なーんて可能性もあるわけ?」


 うへぇ……とあからさまに嫌そうな顔をしている。

 まあ、気持ちは分からなくもないけど。


『復讐とかしたいなら、もう一度殺せるチャンスだけどね』

「あー、あたし……そういう相手はいないから。ともあれ――大魔王が姿を見せていないって、どういうことなんだろ。存在しないかもしれないってことか、部下にすら顔を見せてないってことか。なんにしろ、召喚されて命を助けられたからって、姿も見せないような奴の命令なんて聞くもんなのかしら」


 あたしはごめんよ――と、訝しむ女子高生。

 大魔帝風ホットサンドで口元をベチャベチャにしながら、彼女がシリアスに唸る。

 ……。

 肉球を鳴らし、こっそり汚れを拭ってやって……と。


『おそらく、大魔王はかなり慎重な性格なんだろうね。本人はまったく強くない、カリスマもない軍師タイプの知将、なーんてパターンもあるかもしれないが……。まあ、現時点では職業どころか種族すらも特定できない。推測だけで考えるのは危険かもしれないかな』


 固有スキルで悪人を操る能力を持っている、そういう可能性もあるか。


「あたし、好きじゃないなあそういうタイプって。やっぱり敵でも最前線で軍を率いるイケメンだと、戦い甲斐があるってもんなんだけど。そうだ! その大魔王ケトスってさ、男か女か、どっちだと思う?」


 性別にこだわるって所が、なんとも女子高生らしい発想である。

 ま、色々な経験を積んでいても、心はちゃんと現代社会に生きる学生なのだろう。


 そこは、嫌いじゃない。

 尻尾をくるりと回して、私は言う。


『さあね。男と女って区別じゃなくて、オスメスかもしれないし』

「イケてるおじさんかな!」


 この子、ファザコン気味なんだろうか……。

 年上ダンディに憧れる若い子か。

 ん-む、そういうのはよくわからん。


『まあ、話を戻すけど――この砦を守っていた転移者達が単純にただの捨て駒だった、ボスが姿を見せるに値しない存在だったという可能性もあるけれどね。ほら、ここの連中ってヒャッハーでありがちなクズっぽいのが多かっただろう? 私がボスでも会いたくない……っていうか、たぶん見なかったことにして消し炭にしちゃうし』

「同感。あたしだったら次元の狭間に送りこんじゃうわ」


 ニャンコと女子高生が仲良く悪党撲滅案を出している。

 その時だった。


「談笑中にすまない、少しいいだろうか――?」


 そう声をかけてきたのは青紫色の髪がキレイな女性。

 シアンさん。

 私がうっかり呪われた魔槍を授けてしまった、デルトライア王国の聖騎士である。


 まあ元、聖騎士だけど……。

 私のせいで、うん。

 暗黒騎士になった、まま……なんだよね。


 ◇


 ヒナタくんに大魔帝風ホットサンドのバスケットを渡して、配るようにお願いし。

 私はポテチ量産工場となった我が部屋にシアンさんを通し。

 ぶにゃん!


 蜂蜜たっぷりな紅茶をお出しして、私はネコちゃんクッションに座り凛々しくキリ!

 イケニャン顔をしてポテチをばくばくばく。


 促され椅子に腰かけたシアンさんは蒼き魔槍を背負ったまま。

 深く頭を下げる。

 ガタリ……と、まだ慣れない槍の長さに背中を押されているようだ。


 ……気まずい。


此度こたびの砦制圧の件、全ては貴殿の提案だとうかがった。大魔帝ケトス殿、くどくなってしまって申し訳ないが、もう一度礼をさせてくれ。ありがとう」


 シアンさん、めっちゃいい人だよなあ……。


『気にしないでくれていいよ。ま、謝辞は謝辞でちゃーんと受け取るけどね』

「そうか、すまない。ありがとう」


 身を清めた影響か、傷もなくなった彼女は一見すると気丈で美しいお姫様のようで。

 じぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。

 ついつい、その顔を見てしまう。


「あの、どうかしたのだろうか?」

『あ、にゃははははは! ごめんごめん、まるでお姫様みたいだなって!』

「そうか――」


 呟いて、シアンさんは憂う美女顔で考え込んでしまう。

 そして、くすり。

 まるでご令嬢のような笑みを作り、唇を動かした。


「なるほど。さすがは、大魔帝殿。隠し事などできぬということか。アタシが王族であったと――気付いておられたのだな」


 ん?

 なんか、いま、いった?


「そう、貴殿も既に察している通り――アタシは……いえ、私の本当の名はシャーネス=ヴィ=デルトライア。かつて王位継承権を持っていたデルトライア王国、第三王女。王権争いに嫌気がさし騎士に志願、十年前に失踪したとされていた、シャーネス姫とは私の事さ」


 遠くを見ながら告げるその顔には、とてもふかーい物語性を感じてしまう。


 ……。


 やはり、知っておったか。

 みたいな顔をされてるけど。あっれー?

 ま、まあ乗っておこう。


 静かに紅茶を啜って。

 私は言う。


『君の高貴さと気丈さを見れば――まあ何かあるとは思っていたよ』

「そうか。では――私が捕虜となっている間に、デルトライア王家が既に崩壊してしまったとも……知っておるのだろう」


 あー、そういや。

 やっぱり既にあの王国、大魔王ケトスの手に落ちているって話だったね。


 ……。

 あれ、これ。

 ヤバいんじゃね?


 私、王家の最後の生き残りであるシアンさんに……強制的に暗黒騎士になる魔槍をうっかり渡しちゃったから……。

 職業として、姫にも戻れない。

 ……。

 これさあ――私、王家……断絶させちゃった?


 やばい、やばいやばいやばい!


 びちょびちょびちょ……。

 ポテチを掴む肉球から、べちゃべちゃと汗が滴る。


 目を泳がせる私。

 気付かず遠き故郷を思う姫。


 先に動いたのはシアンさんの方だった。


「私は王家の生き残りとして、デルトライア王国を取り戻すための遠征に参加しようと思っている。もしかしたら、王家の生き残りがどこかに身を潜めているやもしれぬ。兄や弟、姉たちが生きているのなら、助けてやりたい。もし既に……眠っているのなら、弔ってやりたいのだ――そこで、頼みが」

『参加させていただきます』


 食い気味に、しかも敬語で言った私に、シアンさんは眉を顰める。


「いや、まだ何もお願いしてはいないのだが。確かに、王国奪還のための助力を願おうとは思って――」

『ぜひ、参加させてください』


 更に被せ気味に言って、私は一息。


 ネコちゃんのお鼻をスンスン!

 よっしゃぁぁぁ!

 まだ、間に合う!

 最後の希望を見つけて、安堵する。


 これ。

 大魔帝の全力をもってデルトライア王国を取り戻し、王家の生き残りを見つけ出さないと。

 私――。

 ぜったいに叱られる……!



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― 新着の感想 ―
[一言] ニャンコ様まぁたまたやっちまったなぁwww テンプレ化してきちゃったね……
[良い点] ん?あの騎士さん姫さんだったんだ。 [一言] 暫定ただ一人の亡国の姫さんが暗黒騎士になっちゃいましたから大変ですね。 どうしましょ((o(^∇^)o))
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