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歪み ~ニャンコの瞳は何を見る~その1



 ちょっとした小競り合いがありつつも、我等は無事王都に到着!


 現在の場所はホテル前の看板のない魔術師専用レストラン。

 木造りで温かい雰囲気の魔女の家。

 理事長が趣味で経営している料理店らしいのだが――まあ、悪くない空気ではある。


 具体的に言うと。

 丸太の机とキノコの椅子がイイ感じ!

 料理はもっとイイ感じ!


 周囲と世界を隔てた特殊な空間にて、王都の学生たちによる宴会という名のサプライズ歓迎会は予定通り行われていた。

 当然、中央学園の生徒達も魔導士。

 魔導学園だからね。


 王都での魔術師は特権階級。

 国を守るための戦士であり生贄で、まあそれなりの待遇になっているらしい。


 さて、それならここの生徒達が幸せなのか、というと。

 答えは曖昧になってしまうだろう。


 宴会会場にいながらも――猫魔獣な私はモフ耳を傾け、外の人々の声を聞いていた。

 王都がどういう場所か、把握しようとしているのである。


 モフ耳に、声がひっかかる。


 やはり皆、魔術師を持て囃している。

 男も女も、子どもも老人も。

 魔術師というだけで優先する。全てにおいて贔屓をする。


 そう、怖いくらいに。


 理由はあまり明るいものではない。

 いつか。

 近いうちに死ぬからだ。


 魔術師は死ぬ。

 聖女も剣士も、僧侶も弓兵も死ぬ。

 一定数値以上の魔力をもって生まれてしまったらそれだけでもう、未来は固定される。


 魔術徴兵だ。


 どう言い繕っても最前線の砦に送られる駒。

 捨て石なのだ、それは避けられない現実なのだろう。


 だからこそ快く死ねるようにここでは魔力持つ者を讃える。

 勇者が如く賛美する。

 持て囃して、英雄視して、特別扱いして――逃げ道を塞いでいるのだから、なかなかどうして悪趣味な特権階級でもあるのだ。


 だからこそだろう。

 王都の人間。

 普通と言われる魔術師の才能のない民達の瞳はいつもニコニコ。

 怖いくらいに魔術師を笑顔で見送っていた。


 こんなにチヤホヤしたんだから逃げませんよね?

 我らのために。

 魔物を討伐してください!


 できますよね?

 だって強いんですから!

 特別なんですから!

 こんなに頭を下げて、あなたたちを讃えているのですから!

 だから。

 さあ――!

 どうか、われらのためにしんでください!


 私の猫の瞳は、どこか冷めた心でそれを眺めていた。

 まるで勇者を英雄視し、その心を壊してしまった私の世界と同じではないか。

 そう感じていたのだ。


 ここの人間達はどこかが狂っている。

 終わる世界の終わる民。

 主神の加護を喪失した世界。

 崩壊の定めを迎える世界なのだろうと、改めて思ってしまう。


 まあ――よそ様の世界の事だ、それぞれに事情が違う。そういう殺伐とした英雄殺しの価値観が間違っているわけではない。

 ともあれ。

 心を切り替えて!


 さて、ではなぜこんなファンシーな魔女のレストランで宴会が行われているかというと。

 なんと!

 私達は!

 中央学園の生徒達。魔術師の卵たちから、結構チヤホヤされていたのである!


 心も読んだから、本当に歓迎されているとも調査済み。

 理由は単純。


 海外からのセレブ留学生が高校にやってきた!

 そんなイメージをして貰えばいいだろう。


 留学してくるのはポイント上位者のみ。

 当然、やってくるのは最前線で活躍している実力者ぞろい。

 退屈な時間を持て余している中央学園の人間にとっては、それなりに大きなイベントのようだ――実際、このサプライズも生徒達が立案した企画らしいし。


 暇つぶしで世界に干渉している私が言うのもなんだが――若者たちの活気ある暇つぶし。

 なのだろう。

 若者たちも皆パーティ衣装で、おめかししている。

 そこはそれ――歓迎会という浮かれた気分をそのままに、出会いの場としても利用しているのかもしれない。


 彼等もいつか送り出されて死ぬことを知っている。

 だから、今を必死に生きているのだ。


 んー、これ、もし血祭りにしてたらとんでもないことになってたよね。

 にゃははははははは!

 ……。

 あ――あぶねえ!


 ちなみに。

 大魔帝ケトスこと猫魔獣な私は、ふつうにレベル一桁の猫ということになっている。

 さっきまで起こっていた事件は時間停止状態での出来事。

 エリカくんと私。

 時間停止を解除した残りの三人。

 そしてボクっ娘、お年配大魔女理事長しか把握できていない。


 打ち合わせをして最初からやり直したのである。


 まさかレジストされて返り討ちにあっていた、なーんてことになったら大魔女理事長の面目も潰れてしまうから仕方ないね。


 とりあえず大魔女理事長がそのまま時間停止を成功させて、会場である魔女レストランに我等を運んだ。

 んで軽い模擬戦を挟んで。

 サプライズも大成功!

 そういう体で話を進めたわけで。


 聖女候補――令嬢エリカ君も話を合わせて、いつもの口調でビシ!


「おほほほほほほ! まあ皆さま、アタシを歓迎して下さるのですね! 仕方ありませんわね、なにしろ、アタシは聖女候補! 実力も魔力も美貌も完璧ですもの! おーっほほほほほほ!」

「そうか! 獄炎と呼ばれしオレを知っているか! それは嬉しいな、ハハハハハハハ!」


 体育会系のミシェイルくんも女生徒に囲まれて、糸目のままで大笑い。

 姫騎士なのに、ぼそぼそなフローラ君はというと……王家筋ということもあり、貴族連中の生徒に囲まれているようだ。


 こうやって、私の生徒達が周囲の目を引き付けてくれるというわけである。


 まあこの世界での猫魔獣はそれなりにレアな存在らしく。

 私もそれなりに目立つんだけどね!

 私がスッと歓迎会の会場を歩けば、ササっとご馳走が差し出されてくるので――くははははははははは!

 キノコクッションの上で王様気分!


『良いぞ、良い! 我にもっとグルメを貢ぐのである!』


 温野菜のオードブルからほくほくニンジンをフォークで、ぶしゅ!

 蒸し焼きウインナーをダブルフォークで、ぶしゅぅ~!

 魔術を用いない天然魅了で従えた女子生徒たちを侍らせ――むふー!


 肉球をモミモミマッサージさせて、くはははははははは!


『人類よ! 我こそが猫魔獣! この可愛さを愛でたいのなら、もっとご馳走をもってくるとよかろうなのだ!』


 猫魔獣の麗しさに魅入られた男子生徒にグルメやジュースを運ばせ、ぶにゃ!

 さあて、次はなにを持ってこさせるか!

 ウニューっとモフモフ頬毛を膨らませるのだが――。


 あ、あっちの方で睨んでいるハザマ君がカツカツカツとやってきて。


「ケトスちゃん、あんた……理事長と話があるんじゃなかったのかい?」

『ふむ、では我がモフ毛に魅入られし諸君。私はちょっと理事長のところでドヤってくるのである!』


 よっとハザマ君の腕の中に飛び込み、くはははははは!

 ハザマくんがよそ行きの顔で、ニヤリ。


「それじゃあんた達、悪いけどウチの可愛い子を借りていくよ。あそこで笑ってるバカ二人と唯一まともなお姫様にも構ってやってくれると助かる。って……ん? なんだいアンタたちあたしをそんなじろじろ見て」

「す、すみません。まさか戦場の女神さまに会えるとは思っていなかったので!」


 ハザマ君が、め……女神だって!

 ぷぷぷー!

 そうか、最前線では戦場の猟犬って呼ばれているけど、ここでは活躍をした魔術師を褒め称えるから、女神扱いになっているのか。


 男子生徒の目線はハザマ君の白衣の中。

 若者には目に毒な肢体に注がれている。


 視線を受けたハザマ君は、ははーんと悪戯そうな顔をして。


「あたしが後で個人的に遊んでやってもいいけど? どうする? オバさんだって、まだ若いからね。色々と弾むよ?」

『君、さすがにそれは逆セクハラじゃないかな……?』


 煙を出さないタバコを吸って、きしししと豪快に笑うハザマ君。


 英雄扱いの大人の女性。

 実際にそれなりに煽情的な彼女に、そんな冗談を言われた男子たちはというと――。

 あー、こりゃ駄目だ……。

 魅了状態になりつつある。

 女生徒の方もハザマ君のワイルドな部分に惹かれているみたいだし。


「ふふ、相手が嫌がってないからセーフさ――なんて、冗談も過ぎるとさすがに怒られちゃうね。アンタたちも、あんまり女の身体をジロジロ見るもんじゃないよ? 責任を取ってくれるなら、まあ本気で考えなくもないけどね」

『はいはい、話がややこしくなるから……理事長さんが待ってるし。もう行くよ。運んでおくれ』


 ハザマくんが魔力を使わなくても動くようになった手をピラピラ。


「それじゃ、悪いけどちょっと借りていくからね」

『では行ってくるのである! 我の帰還を心待ちにしているといいのである! くははははははっ!』


 私達が離れた後。

 中央学園の生徒達の様子はというと――。


 これ――さっきの冗談を本気にした生徒が何人かいるな。

 まあハザマ君も一応レディ。

 この性格と戦闘狂気味な部分をきちんと知らないと、ちょっとセクシーな女教師にみえないこともないし。

 ……。

 私の肉球魅了で上書きしとこう。

 だって、私の方がかわいいニャンコだし。


 うん。


 ◇


 別室に向かう途中。

 ハザマ君の腕の中。

 上にジト目を向けながら、私はいう。


『君、教師になる前はけっこう有名な戦闘員だったんだろう? 傷が治ってる事も知られているみたいだし、あんな冗談を言ったら、本気にしちゃう子がでちゃうかもしれないよ』

「いいんだよ。腕があのままだったら諦めていたけど……今はあんたのおかげで自由に動くからね。まだ若いといえるうちに、子供が欲しいのさ」


 女性としては大胆な発言であるが――。

 まあ猫魔獣としての私は理解があった。

 種として、自分の遺伝子を残そうとする本能もあるだろうし。


 まあ、私は死なないからか。

 そういう感情は薄いけど。


 少し声のトーンを優しくして、彼女は言う。


「あたしはそのうち老いる。独りで死んでしまうのかもしれないし、誰かに看取られて安らかに死ぬのかもしれない。できたら素敵な旦那様に看取って貰いたい――なんて、冗談が思い浮かんじまうね」


 寂しさは私も知っている。

 だから、まあ――ちょっと気持ちは分からないことも無い。


『君は寂しいのかい?』

「どうだろうね――まあ真面目な話さ。あたしはいつか死ぬ。寿命があるし、いつまでも戦えるわけでもない。油断して死んじまう時だってあるはずだ。けれど……聖女様は違う。マイル様はいままで通りあの学園を守護し続ける。独りで、あたしのいない世界を歩むんだ。可能なら――あたしの子に、聖女様を支えて欲しい。身勝手だとは思うが、そう思ってしまうのさ」


 今を生きる人間の意見――か。

 それは私が失ってしまった、肉球では掴むことのできない世界と感覚。

 眉を下げて教師の声で私は告げる。


『おや――子どもに君の感情を押し付けるのはあまりお勧めできないね。不良になっちゃったり、グレちゃうパターンだと思うよ、それ』

「ふふ、あたしの子ならきっとあの人を好きになるよ。ま、相性もあるから無理そうなら諦めるけどね。そうだ! ケトスちゃん、あんたあたしが死ぬ未来を見えてたんなら、死なずに進んだ場合にどんな相手と結ばれるのか――もしかしたら見えるんじゃないかい?」


 目をキラキラさせるハザマ君に、私もモフ耳をぴょこん!


『んー、どうだろう。私は――特定の箇所を都合よく見る未来視は得意じゃないからなあ……』


 猫の直感と神秘的な能力。

 死を見る力を通じて、未来を覗くことは得意なんだけどね。

 いつかのヤキトリ姫とか、それで救った訳だし。


 まあ確かに。

 子を作るなら、そもそも相手を見つけないといけないわけだし。

 相手にちょっと興味がある。


 私は紅き瞳をぎらーんとさせて未来視の魔術を発動。


 うん。

 あくまでも今のまま進めばだけど死の未来はなくなってるな。

 様々に繋がる道の先。

 もし世界が滅びてしまっても、私が回収して魔王城に連れ帰る、なーんてパターンの未来も見えている。


 ロックウェル卿ほどの精度がないからあくまでも占いレベルではあるから、確定じゃないし。私がいる限り、変動しまくるわけだけど――。

 そもそもだ。

 私と未来予知って相性悪いんだよね。観測した時点で私の気まぐれ心が何か悪戯をして、その未来を変えようとしちゃうだろうし。

 どれだけ正確に未来を見ても、その次の瞬間には、肉球で未来への道をパーンと払ってしまうわけだ。


 ともあれ。

 結婚相手を探ってみて、と。


 えーと、相手は――……。

 この未来は、振られているな。えーとこっちは……片思いのまま奥手で終わると。

 こっちは……あ、男に貢いでそのままなんて未来もある。

 ちょっとマイル君に似ている女性と、むにゃむにゃなーんて面白い未来も見えるが。


 ……。

 あれ?

 見つからないな。


 死ぬはずだった未来を捻じ曲げたから、安定するまで先が見えないのかな……?


 まさか、ずっと婚期を逃したままなんてことも……。

 いやいやいやいや。

 ま、まあ可能性は無限にある。

 簡易魔術だし。力を入れてない遊び感覚の予知だったし。き――きっと、私の能力不足で見えなかっただけだろう。


 ど、どうしよう。

 ハザマ君が、ちょっとワクワクした様子でこっちを見てるし。

 い、言えないよね。これ。


 ……。

 話題を変えるべく、私は言う。


『さて、そろそろ真面目な話をしよう』

「ん? 打ち合わせかい?」


 シリアスな顔を作り。

 行き遅れてしまう可能性の未来を見なかったことにして、と。


『現状までの判断でいい。この王都で私がいない状況を仮定して――君達は自分自身の身を守れそうかい?』

「ケトスちゃんは単独行動するかもしれないってことだね。そうだねえ――あたし達全員でもあの理事長には正直、敵わないと思う。けれど、ここに居る他の連中や入国管理塔にいたような連中なら問題ないね」


 私も同意見である。


『了解。なら一応、あの魔女さんにはクギを刺しておくかな。まあ、マダムサンディのお師匠さんみたいだし、敵意もなさそうだったけど――状況次第じゃ分からないからね』


 聖者ケトスの書をバサササササ!


『念のため一度なら死んでも蘇る奇跡もかけておくよ。それと幸運の祝福もね。あと君達の影にはハンド君が常に入り込んでいる。ちゃんと守るようにお願いしてあるから万が一と言う事もないだろうけど……一応気を付けておくれよ。ここは敵陣かもしれないんだ。私はあの子たちを死なせたくない。巻き込んだ以上はね、責任がある』


 かなり真面目な表情を作ったから、彼女もスゥっと瞳を細め。


「分かってるさ。生徒達の方は任せておいておくれ――ケトスちゃんにとっての生徒でもあり、あたしの可愛い生徒達でもあるんだ。で、このハンド君……というか、栄光の手の亜種だけどさ……どれくらいの強さなんだい? 頼りにはしているけれど、力が読めないんだよ」

『ふむ――』


 ハザマ君は相手の力量を測れるほどの強さを持っているのだが。

 まあ今回は相手が悪い。

 力の差があり過ぎるのだろう。


『前に君と私の部下との魔力を比べて、魔竜とミジンコのたとえをしたことがあっただろう?』

「ああ、あったね。事実としては受け入れているよ」


 あはは……と苦笑いし、私を片手に抱きあげハザマ君。

 頬を掻く彼女の薄着が揺れる。


『気を悪くしないで貰いたいんだが、あの時みたいな比較すらできない程の差だよ』

「え? この子、そんなに強いのかい?」


 影の中。

 ふふふ――と言いたげにブイサインを作ったハンド君が、ピース君になっている。


『ああ、ラルヴァという世界を滅ぼしかねない異世界の大魔族、現主神に転生した彼女の元眷属で、歪んでいたとはいえ……愛と魔力を注がれた子どもみたいな存在だからね。それに負の感情を司る私とも相性が良いからかな、私の眷属化してからは更に力を増している。部下の中でも上位に位置する存在だよ』


 まじかぁ……みたいな顔で視線を落とし。

 自らの影にぷかぷか呑気に浮かぶハンド君を見て、はぁ……。

 頬をポリポリするハザマ君。


「冗談、じゃないんだろうね……ケトスちゃんの場合は」

『ああ。ちょっと分かりにくいから具体例を出すと――単騎で世界を破壊できるレベルの敵、創世神話領域の存在でもない限りは負けないよ』


 ようするに、ハンド君でどうしようもできない相手だった場合。

 そもそも元からどうしようもない相手、ということでもある。

 複雑そうな顔をして彼女がぼそり。


「じゃああの黒い人魚の方はどうなんだい?」

『黒マナティの事かい? ハンド君より強いよ。統率してるクイーン個体なら単騎で世界を破壊できるだろうし』


 しばし、沈黙が走る。


「で、あんたはそれを無数に使役している――と……」

『そりゃあ私は魔王様の部下だからね。当然さ。黒マナティもハンド君も最初は敵だったんだよねえ、ニャハハハハハハ、懐かしいな~』


 くはははははは!

 と哄笑を上げる私にハザマ君がなにげなく言う。


「そんなあんたを召喚できちまうなんて、ウチの聖女様はどんだけ運がいいんだか――……しかもブリ照りだろ?」

『そう――だね』


 そう。

 ギャグみたいな話ではあるし、様々な偶然、私からのブリ照りを食べたい! なんていう念もあったのだろうが……彼女は本当に私を呼べてしまっているのである。

 それを運がいいという言葉だけで片付けていいのかどうか。

 ちょっと疑問なんだよね。


 聖女についてもうちょっと詳しく聞きたい。

 猫口をうにゃんと開きかけた、その直前。


 理事長が待つレストランのビップルームの前。

 声が響いた。


「おぬしたち、興味深い話をしておるの。ボクにも聞かせてくれんかな?」

『おや、感心できないな。盗み聞きかい』


 ここは魔女のレストラン。

 大魔女であり理事長であるあのボクっ娘熟女コドモのダンジョン領域ともいえるのだろう。

 聞こえていた、ということか。


 ふむ。

 なかなかどうして、生意気じゃないか。


 私はスゥっと瞳を細めた。


「そう、怖い顔をするでない。まったく、年寄りを労わらんかい」

『都合のいい時だけ老齢のフリをするのは悪癖だって、誰かに言われた事はないかい?』


 言って私は、猫の爪をザシュ。


 ぶしゅぅうううううううううううううううううぅぅぅっぅぅぅ!


 領域を侵食。

 結界を貫通して転移、大魔女の待つ空間に侵入してやる。


 私とハザマ君が空間に足をつけると、そこには魔女の森が広がっていた。

 深く昏い森の中。墓標にも似た碑文が様々に突き立っている。


 空間座標をずらしてあるのだろう。

 領域が変わっている。


 フィールド名は――大魔女の棲み処「碑文図書館」。

 マダムサンディが言っていた、異界の記述が残された石碑が建てられた場所。

 この理事長魔女の家、というところか。


 ざぁあああぁぁぁぁぁ!

 森の鳴き声がして――その後に声が響いた。


「ようこそ――大魔帝ケトス殿。この地、碑文図書館に刻まれた異界の破壊神よ。まさか、本当に現れるとはのう……」


 ティーセットが用意された空間に、巨大な帽子をかぶった彼女はいた。

 時魔術すらも操る魔女。

 中央学園理事長。

 その本体なのだろう。

 スラリとした肢体の、妖艶な魔女がそこに立っていた。


 ならばあの子供の姿は――分霊か、または人形なのかな。


「ボクはこの地の領域ボス。中央学園と碑文図書館を守りし使命を刻まれた者。かつての主神、滅びし女神――大いなる導きにより作り出された者。名もなき大魔女じゃ」


 大いなる導きの眷属、か。

 つまり。

 大魔女は何かを知っている、ということだろう。



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― 新着の感想 ―
[良い点] お!少し未来が明るくなってきたのかな?("⌒∇⌒") [一言] う~ん…。(。-∀-) ケトス様が魔術師以外の人間に抱いた感じは私もなんとなく感じたことある感想だなぁ~((o(^∇^)…
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