世界を呪いし骸 ~それはまるで太陽のような~
戦場となったマルドリッヒ領。
崩れた屋敷と広がる魔術フィールドには今、二人の転生者が対峙していた。
一人は、全ての策を失い地に崩れる男。
勇者の関係者にして扇動者――竜人イヴァン。
もう一人は大魔帝にして、魔王軍最高幹部たる私。
魔王様の愛猫ケトス。
並ぶ者がいない程の猫魔獣である私は、紅い瞳をギラギラとさせ敗者となった男を睨む。
もはや竜人イヴァンに戦況を覆す手段はない。
魔術は私によって封じられている。
人質は既に精鋭たちにより保護されている。
元より扇動者の職にある者は、表に出てしまった時点で大幅に弱体する。あの占術で居場所を探られてしまったあの時既に、勝負はついていたのだ。
それも、自らが操り呼んだ東洋魔龍の術で発見されたのだから――男は自らの墓穴を掘ったと言えるだろう。
世界を滅ぼすために召喚する筈だった魔竜神の顕現も失敗。魔剣の喪失と共に不可能となった。
……。
いや、まあ格好よく喪失とか言ったモノの私が美味しく食べちゃったわけだが。
ともあれ。
『チェックメイトさ――勇者の遺した災厄よ』
私は敵として。
かつて勇者と旅をしていた男に、終わりを告げた。
扇動者イヴァン――。
人間に転生した狡猾なる魔竜。
その人生はおそらく、あまり明るいものではなかったのだと思う。
敗北は相手が一番理解しているのだろう。
銀の男は揺れていた。
さまざまに考えが巡っている様子で――男の瞳は既にこちらではない場所を視ていた。
五感をシャットして思考のみに集中している、といったところか。
逃げる術、戦う術。
勇者の供として活躍した男には、様々な兵法が浮かんでいる筈。
きっと、私を説得するといった選択肢も巡っているのだと思う。
この男は優秀なのだ。
だからこそ。
きっと、こう結論づけた筈だ。
大魔帝からは逃れられない――と。
◇
大魔帝である私と、死霊使いと吟遊詩人の人間二人。
そして。
説得も扇動も通じないアンデッドの軍勢に囲まれる男に退路はない。
「どうして、こうなったのです……っ」
竜人イヴァンは掻きむしるように指で地を掻き、呟いた直後。
自らの背に浮かぶ影の魔竜さえも震わせて。
「なぜ……、なぜです! なぜ、なぜなぜなぜなぜ! なぜだあぁぁぁああああ――ッ、なぜなぜなぜだあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
吠えた。
ただただ本能に任せて吠えたのだ。
「ワタクシはただ――ワタクシを責め、迫害する者達から……この身を守りたかっただけだったのに! 勇者様に必要だと言われ、嬉しかった。ただ、それだけだったはずなのに――どうしてこうなった! どうして、どうして――っ!」
魂を裂くほどの嘆き。
絶叫が虚しくこだましている。
自らの血の池の上で、絶望する姿は哀れだが許しはしない。
『さて……悪いけれど、そろそろ終わりにしよう。竜人イヴァンくんだっけ、君はおそらくこれからの歴史で悪人と呼ばれることになる。闇に堕ちた勇者の仲間としてね。もしいつか、その魂が転生を果たし勇者と巡り合えたとしたら――詫びの一つでもすることだね』
言って、私は闇の霧を発生させる。
亜空間に接続し、世界を揺らすほどの魔道具を取り出す。
『我はケトス。大魔帝ケトス――偉大なる御方、魔王様の代行者。裁きを下す魔爪なり!』
魔王様から授かった品々。
大魔帝セット一式を装備して、終わらない者に終わりを与えるために再臨する。
これから滅びを与えるのだ。
完全なる滅びを――。
冷めたネコの瞳。
憐憫と蔑みを同時に含んだ私の眼差しを受け。
ぐぎぎと血を漏らす勢いで歯を食いしばり、男は獣のように這いずった。
「くく、くふふふふ。大魔帝ケトス、まさかここまで破天荒な存在だったとは――……っ、ああ、計算外。全てが計算の外。未来さえも把握して行う神の領域にすら届いたと言われたこのワタクシの扇動がっ、まさか、こんな……こんなくだらない理由で……っ」
クソ――ッ……と食いしばる歯。
歯列の隙間から血と共に怨嗟を漏らし、男は私を睨み続ける。
『君には同情するよ。その人生が昏く閉ざされていたとも理解はできる。けれど――君はそれ以上にやりすぎた。残念だよ』
同情はするが、助ける気にはなれない。
そう告げた。
次の瞬間。
ザアァァアアアアアアアアアアァァァァァァッァア!
黒い雨を降らし、私は男の領域を闇で侵食する。
『じゃあ、滅びたまえ』
宣言と共に――私の影が男の影を包む。
バリ――。
一瞬だけ、爪を研ぐ音が現実世界でも響き渡り。
それだけで男の首は飛んでいた。
嗤う魔猫の影が、扇動者の影の首を刎ねていたのだ。
斜めに切断された男の上半身が、ズルリと落ちる。
影の中から浮かび上がるのは、憎悪の魔性として揺らぐ巨獣の影。
私の影だ。
影が見ていた。
私の影は、ただじっと男の死を眺めていた。
きっと、これでは死なないと知っていたのだ。
刎ね飛ばした首に向かい、ケントくんが冥界神の竪琴で呪縛。
更にその上。
蠢く胴体と下半身にリベル伯父さんが魔導書を翳し――ファラオによる呪縛結界を張り巡らせる。
合図もなく動いてくれたリベル伯父さんが私をちらり。
「で――ケトス君。これ、どうするんだい? また自動で復活するんだろう?」
問われた私は意図して明るい声を出した。
『良い質問だねえ。さて、魔術師の先輩として君に不死の相手の対処法を披露しようじゃないか。ちょっと君の書を借りるよ』
言って、私はリベル伯父さんが所持する魔王様の魔導書を勝手にバサササササササ!
魔竜の影が蘇生を開始する、その前に。
影から伸ばした猫の影で、蠢くその死骸をペチペチペチ。
『永遠なる魂の冒涜。こうやって、不死者にしてしまえばいいのさ』
じゅぅぅううううぅぅぅぅぅぅぅ……。
触れる肉球から、漂う邪気。
不死なる魂が、不死者化の呪いで汚染されていく。
不死ではなく、アンデッドとしての不死者と化していくその身。
銀の男の肉塊は揺らいでいた。
不死とアンデッド。
二つの属性が自己蘇生という魔術反応の中で衝突しあい、不安定になりつつあるのだ。
肉塊が、グギギギギと歪む。
口なのだろう、三日月のように線の引かれた肉の谷間から、声がした。
「ああ――そこに……おわすは……ケトスゥゥ、大魔帝……ケト……ゥ……ワタクシの、あたらしき……ゆうしゃさま。……せかいを……こわしてくださる……ワタクシの、きゅうせい……しゅ様」
声は掠れていた。
まるで縋るように。
そして。
刎ね飛ばされた首の方からも、声がした。
血の気を失い蒼く染まっていく男の首が、救いを求めるように唇を蠢かせる。
「後生です。おねがい……です、ど……うか……、どぅか……この醜い……せかいを……、憎き世界を……いつか――……ほろぼ……し――て」
いや、男が求めていたのは救いではなく――世界の破壊か。
哀れな男だと思った。
けれど。
構わず私は、詠唱を開始。
『大魔帝ケトスの名において命じる――光よ集い、死者を照らす道となれ』
アンデッド化の呪いと同時詠唱。
聖者ケトスの書を顕現させバササササササ!
邪と聖。
二つの相反する属性の同時使用に、リベル伯父さんはピンと眉を跳ねさせる。
まあ、それなりの高位な技術を駆使しているからね、分かる人には分かるのだろう。
いつもならドヤタイムなのだが。
今の私は、少し――違った。
翳す肉球から光が発生する。
『死者よ、安らかに――眠りたまえ』
不死能力者を滅する方法。
その答えが――アンデッド化をさせて浄化の光で祓う事だったのだ。
何故これを知っているのか、答えは簡単だ。
これこそが、私と魔王様が導き出した答えだったからである。
自分でやろうとは思わない。
しようとも思わない。
けれど――もしどうしても疲れたのなら、これで休むことができるだろうと。自らを消す方法を、私も魔王様も既に研究していたのである。
本来なら、もしものための研究だったのだが。
今はこれが役に立った。
まあ、もしかしたら――魔王様はこの状況まで予見して、私にその術を授けたという可能性もゼロではないが。
私は、浄化の奇跡を発動させた。
◇
天への祈りの光を発生させ、不死だった者の身を神聖なる力で焼き焦がしていく。
おそらく。
天の光に焦がされていく男には、月夜の中で見えている筈だ。
同情と憐憫とはいえ――私がこの男の安らかな死を心から願っている事を。
浄化の光の中で――理性が少し戻り始めたのだろう。
男は肉塊の中で細い腕を伸ばし。
まるで太陽に手を伸ばすように……腕を上げ。
呟いた。
「ワタクシは……いままで、いったいなにを……して――」
呟き、肉塊と化した自らを感じ取ったのか。
しばし、時を止めたように動かなくなっていた。
考えているのだろう。
肉塊となったことで記憶と意識が混濁しているのか。
やがて、不意になにやら思い至ったのか。
ゆったりと、肉塊の貌が探るように周囲を見る。
「――……勇者様……? どこに、いらっしゃるのですか? まさか、あなたさまがやられる筈、ないですから……ええ、信じております。ワタクシ、信じております」
人の形を取り戻した顔で、割れていく細い手で――男はいない人間を探して腕を伸ばし続ける。
それでも勇者が見つからないからだろう。
やがて。
自らの状況を確認し、違和感でもあったのか。
男はしばらく呆然としていた。
次第に、戻った理性が現実を理解し始めたのだろう。
自らが行っていた数々の暗躍を思い出したのか。
勇者の供としての表情が崩れ、出会った頃と同じ――三日月の笑みを浮かべる、銀の男の顔に戻っていく。
魔竜を騙し、人間を騙し。
巨人を騙し、魔龍を騙した男の声で、それは言葉を発していた。
「ああ、そうか……」
静かに、息を吐くように声を漏らした後。
後悔とも懺悔とも違う、不思議な声音で肉塊の中の口が蠢き語る。
「勇者様が……いなくなってしまってから、ワタクシ――狂ってしまったのですね。そうですか、やはり――ワタクシは、あの方がいなければ、ただの狂人。だったのですね」
ギシリ。
浄化されていく男の肉塊が、崩れていく。
不死者の死。
これは――強制的な成仏だ。
『痛くはないだろう?』
私はつい、声をかけていた。
もしいつか。
私が滅ぶときは、痛みなく消えたいと思ったからだろうか――意図せず声が出ていたのだ。
人の形を取り戻し、また崩れ。
けれども三日月形の笑みを浮かべ。
不安定な状態の男の瞳が、ぎょろりと私を眺め始める。
おそらく。
今のこの男の意識は、私と敵対していた時の銀の男だ。
「はは……は……はは……へんな、ひと、ですね。ワタクシに……どうじょう、しているのです……か? ああ、そうか……あなたと……ワタクシ……は、すこしにていますからね……憐憫、ですか。哀れみですか。そうですか……いやはや、新しき勇者様は随分と傲慢な方だ」
『似ている、か。否定はしないよ』
否定すれば、この男の魂を更に追い詰めることができたはずだ。
なぜだろうか。
私はそれをしなかった。
男もそれを感じ取ったのか、しばらく私に眼差しを向け。
苦笑したように息を吐いた。
「痛くはないだろう、でしたか? ええ、だいじょうぶです……痛みは――ございませんよ。まったく……すこしも……痛くありません。むしろ――やっと眠れて……ワタクシは……どうやら安堵しているようですね」
今の彼にとっての成仏とは、おそらく死――そのもの。
消えてなくなってしまうと分かっている筈なのに。竜人イヴァンは妙に落ち着いた声で、誰にともなく口を開く。
「勇者様。ああ、勇者様。闇の中に沈むワタクシを照らしてくださった、希望の光。ワタクシの全て。けれど――残酷な方。ワタクシに光を教えた、救いを教えた惨い御方。知りたくもなかった心を教えた、知りさえしなければ焦がれることなどなかった感情を私に植え込んだ御方。ああ、勇者さま……あなたこそがワタクシの輝き……。けれど――卑怯者のワタクシは……こう思ってしまうのです。ズルいです、卑怯です、と。今のあなたが……ワタクシには、すこし憎いのでございます。憎いのでございますよ、勇者さま」
この男にしてみれば。
勇者は異世界に逃げてしまった――そういうことなのだろう。
「あなたのいない世界など、やっぱり――黒く苦しいだけだったじゃないですか。勇者様……」
腕を天に伸ばし。
届かぬ太陽を掴む仕草で、男は弱々しく滅んでいく。
勇者への恨み言を告げて、満足したのか。
男は私の方を向いて、言う。
「転生者同士。世界を恨む者同士の慈悲を……、ワタクシは所望いたしとうございます。どうか……あなたの手で、肉球で……終わらせてください。散々に暗躍し、あばれたワタクシの卑怯な頼みで御座います」
勇者の面影をみるように私を見て。
私を新しき勇者だと信じ切っている男は、願っていた。
「もう、疲れたのです――疲れたのですよ……勇者様。あなたのように……ワタクシも……」
男の漏らした虚しい独白に、私の憎悪が呼応する。
私は感じていた。
ああ、この男もまた世界を呪ったのか――と。
私の中の憎悪の魔性が、強く共感を抱いていたのである。
汚泥に沈み、太陽を睨み続けたあの日々。
全てを憎悪し叫び続けたあの日々。
救えなかった、あの焦げたパン色の思い出を踏みつぶされた憎悪を私は忘れない。
だから、言葉が勝手に口を伝っていた。
『もし私が、魔王様より先に君と出逢っていたら――共に、世界を滅ぼしていたのかもしれないね』
それはあり得ない仮定。
私と魔王様の出会いがなくなる筈がない。なかったことになど絶対にならない。
けれど、もしもの可能性。
それを私は口から零していた。
おそらく、この男の憎悪に共鳴してしまったから――。
言葉を受けて。
しばらく男は呆然としていた。
それが魔王様を太陽と仰ぐ私から発せられる、最大級の手向けだと理解したのだろう。
やがて。
男は笑った。
嗤ったのではなく、笑ったのだ。
寂しい男だ。
きっと。
心の底から嬉しかったのだろう。
もはや言葉を発する力もろくにない。
表情を作るのが精一杯。
そんな中で、男はまるで太陽の光を浴びる向日葵のように――私の顔を眺め続けていた。
「ひとつだけ……、よろしいでしょう……か?」
『一つだけならね』
同じく世界を呪う者同士。
せめて最後の言葉ぐらいは聞いてやろうと、そう思えていた。
「その……モフモフ、触らせていただいて……も?」
もしかしたら、この男は猫が嫌いではなかったのかもしれない。
別れの代わりに触らせてやろうと近づく私に、罠を警戒した死霊使いリベルは腕を伸ばしかけるが――私は小さく目くばせをし、首を横に振る。
浄化の光に包まれる男の細い腕が、たどたどしい動作で私の毛を撫でる。
魔王様に愛される猫毛だ、きっと極上の手触りだろう。
「ああ……、猫とは。温かい生き物なのですね――……」
『君、長く生きていたのに知らなかったのかい?』
「人であり魔竜である異形なるワタクシが近づくと、勘の鋭い生き物は全て――逃げて行ってしまいましたから……ああ、いい……ですね。もし、生まれ変われるのなら……今度は、醜い竜でも、人でも……なく、ネコ……に……なん、て……冗談です、ええ……じょう……だ……――」
皮肉げに嗤って――男の手がずるりと滑り落ちていく。
細い指から、撫でていた私の毛を滑らせて――やがて、それは動かなくなった。
反応はない。
魔力も無い。
滅んだのだろう。
私は大魔帝としての責務を果たすべく、肉球でぎゅっと猫目石の魔杖を握る。
まだこの状態でも再生する可能性はある。
終わりを与えるのだ。
『それじゃあ、成仏したまえ。これで――終わりさ。どうか、安らかに』
言って私は、肉球をパチン。
聖者の書を翳し、魔杖を振るう。
崩れ行く男の周囲に広がるのは、十重の魔法陣。
ぐるぐるぐるぐる。
魔法陣は回転する。
十分に回転力をつけた――その直後。
ゴォォォゥウウウォォオオオオオン――ッ!
発生した青い焔が、対アンデッドを焼く聖なる種火となって燃え広がる。
死者すらも焦がす地獄の業火に神聖属性を付与し、灰すら残らぬ浄化による滅却を行ったのだ。
燃えて消えていく灰が、ありがとう……と、最後の言葉を残すように風に舞って。
私のモフ毛を撫でる。
やがて――かつて魔竜だった人の残滓は完全に消え去り。
ただ静寂だけがこの場に残された。
◇
勇者の関係者、扇動者イヴァンの肉体は消滅した。
人間としての彼は、もう死んだのだ。
けれど――。
ここに残るのは、もうひとつの心。
『さて――残るは君の方だね』
告げる私の言葉に、私の背後に潜んでいた影が――揺らぐ。
返答はない。
逃げ切れる気でいるのだろう。
『あのねえ……私、大魔帝ケトスだよ? ただの影のふりをして逃げられるだなんて、まさか本気で思っているんじゃないだろうね? 人間としての心か、魔竜としての心かは分からないけれど――肉体の方を支配してた君と、影の方で動いていた君。竜人イヴァンには二つの心があったんだろう』
この男には私と同じように複数の心が存在していた。
人間として転生した本体の心。
そして。
本体の消滅に動揺する、影の心――魔竜の影だ。
『そのままただの影のつもりをするのもいいけど、私、容赦はしないからね』
告げて、魔力をぶわっとモフ毛に滾らせる私を見て。
影が、言った。
「いやで……す! ワ……ワタク、シは――まだ……きえたく、ない!」
人間の形となった影は怯え戸惑うように、蹲る。
けれど。
その肩が、揺れる。
「などと――命乞いでもすると思ったか? 大魔帝ケトス! 戯れで我が計画を踏みつぶした、災厄の魔猫。こんな現実、認められる筈ないであろう! 貴様に絆されて消えてしまった肉体はもはや不要。我は影のみで生き続け、必ずや貴様に復讐を果たす――そう、復讐だ。復讐だ! 復讐だ! ググググ、グハハハハハハハ!」
どうやら、まだ逃げ切る気満々のようである。
『いやいやいや、君も消えるのさ。はあ……心が複数ある存在って面倒だね。一つは改心しても、もう一つはまったく違った反応になるわけだし。ともあれ――かつて不死だった者よ。おめでとう、これで君は、不死の呪いからも世界を呪う憎悪からも解放される。だって消えてしまうからね? ――すぐに影の方の君も後を追わせてあげるさ』
暗躍していたその闇の心を睨み、私は不敵な笑みを浮かべていた。
さあて。
ある意味諸悪の根源だったこの影を滅すれば、今回の事件は今度こそ本当に解決かな。
それにしても、さあ。
勇者の関係者、ほんっとうにしつこいでやんの……。
ったく……ある意味感動の最後だったのに、気分は台無しである。
状況は他の仲間にも伝わっている。
そのうちこちらに加勢に来るだろうが。
厄介なことになる前に――。
猫目石の魔杖を握る私は――キリ!
滅びの呪文を詠唱し始めた。




