魔猫は神をも噛み殺す ~栄光が喰らうモノその1~
荒野と化した封印王立図書館。
空に広がりつつあるのは歪な形で願いを叶える魔道具、栄光の手。
女教皇の眷属と化した哀れな聖遺物――切り落とされ黄金メッキで加工された人間の手である。
膨大な数の犠牲者がでていたのだろう。
空を覆いつくすその数は常識の範疇を超えている。
そして。
彼らを我が子と呼び操るのは、狂える女教皇ラルヴァ――マンドレイクから生み出された強大な力を持つ植物魔族。
本来ならここに全てを裏から操っていた主神、大いなる輝きがいるはずなのだが。
私は猫の魔眼をぎんぎらぎーん!
全てを見通すアニマルアイで、探し尽くしたのだが――。
んーむ……どうしたことか。
姿も気配も魔力もない。
まあラルヴァとその眷族は地平線に近い場所にいる。
とりあえず距離がまだある。
戦闘開始前に更に強化を上乗せすることも可能なのだが――……。
やはり大いなる輝きの存在が気になる。
せっこい女神だし。
性格も最悪っぽいし。
いきなり不意討ちとかしてこないだろうな?
訝しみながら猫の眉間にうにゅうにゅっ!
濃い皺を刻む私こと、大魔帝ケトスに犬天使が声をかけてきた。
「大いなる輝きの姿が見えませんが、いったい……なにが。どこに行ったというのでしょうか」
『さあね。なにしろ暗躍が大好きな女神さまだ。まだ何かを企んで隠れているのかもしれない』
周囲を魔力で探知するワンコ天使に答える私の顔は落ち着いている。
至極、冷静だ。
もっともその内心は、汗でじとじと。
先ほどの大魔術でやりすぎてしまったのかと、ちょっと慌てているわけだが。
あくまでも冷静に。
モフ毛をぶわっと膨らませ奇跡の波動を纏った私は……スゥっ!
猫の手を翳し――。
幸運値を引き上げる祝福を全ての味方に付与する。
『とにかく、君達はそのまま結界を維持して各リーダーの判断で行動――可能なら周囲を舞う栄光の手の相手をしておくれ。その性質を君達も知っているだろう? 願いで邪魔をされると厄介だ』
皆が顔を合わせて頷き。
「承知いたしました」
「うにゃんにゃ」
「全てはケトス様の御心のままに」
王国軍を含む全員が肯定を示す中。
僅かに吠えたのは栄光の手を睨む天使ワンコ。
犬の肉球でワンコ顎を撫でながら――彼らは静かな声を発した。
「栄光の手は、人の遺骸に魔力が込められた呪われし魔道具」
「魂を囚われた状態になっております。なれど――その性質を利用すれば、失われた手を持ち主に戻すことも不可能ではない筈」
「ケトス様。確認したいのですが――あの手の持ち主は……」
ゴールデンレトリバーの犬天使が、憐憫の眼差しと共に低い唸りを上げている。
ラルヴァの手による人間狩り。
その犠牲者――望まず囚われた人々から切り離された手であると知っているのだろう。
そして、おそらく既に手遅れだという事も。
助けてあげたい。
それが犬天使としての彼らの本能。けれど私は首を横に振る。
『ああ……君達も察している通りさ。あれらは既に持ち主を失っている手。縫合し、治療魔術と儀式で元に戻してあげる事は出来ない……残念だけれど、眠りにつかせてあげるしかないのさ』
私の言葉を正面から受け止めて。
ワンコたちはそれぞれに目を見開き、嘆きの遠吠えを上げる。
「畏まりました――それでは、すみやかな救済を」
犬の瞳を閉じ、祈りを捧げる姿は犬であっても敬虔さが滲んでいる。
助けられない。
それが、悔しいのだろう。
その横顔はワンコそのものだが、犠牲者への鎮魂を誓う表情はキリリと凛々しい。
けれど――少しだけ、切ない。
人と寄り添い、人と共に生きた力ある犬たちが、こうした犬天使になると聞く。
死して尚。愛した主人と同じ種族――人間を救い導く使命に目覚めた犬。
賢く心優しい犬なのだ。
人間への愛情も深いのだろう。
だからこそ。
彼らは犬眉をけわしく尖らせる。嘆きに魔力を震わせている。彼らの表情からは、失われてしまった人間の命、それを嘆き悲しむ、まっすぐな愛が感じ取れるのだ。
私が既に失ってしまった心――人間への純粋な愛を、彼らは犬の身でありながら持っているのだ。
それが、なぜだろうか。
私には少しだけ、羨ましかった。
これもまた心の輝きと光。
かつて……憎悪の海へと捨て去ってしまった心の欠片、か――。
彼らは祈りを終えたのだろう。
決心した目を強く光らせ――唸りを上げる。
「我等犬天使!」
「バウバウゥ!」
「ホワイトハウル様の眷属、偉大なる大神の名代として恥じぬ働きをお約束しましょう!」
吠えて、亜空間から取り出したのはホワイトハウルの魔力が込められた牙状の杖。
太古神である三女神の力を宿した杖。
そのレプリカだろう。
復讐の力――すなわち法の番人としての法力が込められた牙杖。罪への制裁こそが、神としての側面を持つホワイトハウルの権能の一つである。
「ガウガウバウバウバウウウ!」
杖に向かい、犬天使たちの祈りがささげられる。
祈りに応じるように、栄光の手で染まる空に顕現したのは白銀の魔狼の影。
主神としての力を見せつけるように、魔狼の影が肉球を翳し――奇跡を起こす。
ワオオォォッォォォォォォォオオオォォオン――!
光に満ちた遠吠えが、強化魔術となって全軍を覆った。
これまたかなりレベルの高い支援魔術である。
微笑を携え――任せたぞ……と、魔力の吐息を漏らし魔狼の影が消えていく。
……。
どうでもいいけど、ワンコたち……大いなる光じゃなくてホワイトハウルに誓うんかい。
今掛けられた強化魔術もホワイトハウルの力を借りた魔術だったし。
きっといまごろ。
神官長ミディアム君をカメラ代わりに使っている大いなる光が「あれ? え? え? どうして、自分への祈りはぁぁぁぁ?」となっているだろう。
こりゃ、犬バカが過ぎてワンコたちの信仰と忠誠は既にホワイトハウルに移り始めてるな……まあ群れのリーダーとしてホワイトハウルは文句なしで優秀だから仕方ないが。
あいつ。
私以外の前だと、凛々しく精悍でクール系を気取ってネコ被ってるし。
その時だった。
どうだー! ケトスよー! 見たか、聞いたかこの祈り!
我の力を借りし魔術はすんごいだろう! ワフワフー!
ほーめーよ! たたえーよ!
ケトスよ! そなたも我を崇め、たてまつれーッ! わふわふー!
と、下らない伝言ワンコ魔術が私のモフ耳を揺らす。
むろん、あのバカワンコである。
世界の壁も次元の壁も突き破って行われた、犬の奇跡なのだが……とりあえず無視。
腐っても主神候補の魔狼の力を借りた強化魔術。
その効果は本物だ。
最上位の強化を重ね合わせたこの極大結界は、ちょっとやそっとじゃ壊れない。
私も安心して単独行動ができるだろう。
これで準備は万全!
『猫魔獣大隊も、カルロス王の部隊も聞いての通りだ。私はラルヴァをとっととやっつけて、大いなる輝きを捜索する――行動を開始してくれ!』
言って、私は肉球で空を踏みしめ駆けだした。
◇
すかさず動いたのは王国軍。
人間を支える王の器にある者、カルロス王だった。
力ある言葉、魔力を含んだ号令が荒野フィールドにこだまする。
「皆の者! これこそが聖戦、今、この時こそが武器を手にする時! 剣を構えよ、矢をつがえ――杖を翳し、聖書に祈りを捧げるのだ!」
スゥゥゥッゥウウウウ!
翳す剣は私が与えた王家の剣のレプリカ。
雷鳴を纏いし刀身がまるで猫の唸りのように稲光を放ち、輝いた。
「我、メルカトルの血筋を継ぐ者。我を選びしは偽りの女神、なれど――その選定に偽りなし。民を守りし王国軍よ、そして共に歩む勇者よ、英傑よ! 汝ら全ての剣に王の勅命を与えん!」
対象は極大結界の内部。
範囲内全ての者に王の号令を与え、その攻撃力を大幅に高める支援スキルだろう。
続いてそのまま、
「ケトス殿の道を開くのだ!」
雷鳴を唸らせた王剣が空を裂き――黄金に輝く栄光の手の一団を薙ぎ払う。
それはさながら神の雷。
ゴガァァァッゥゥゥゥゥゥアアアアガガガ!
雷属性の広範囲遠距離攻撃である。
王の先陣を合図に、皆が一斉に動き出す。
『おー! いいねえ、それ! その調子で頼むよ!』
「ウニャニャニャ! ウニャー!」
猫魔獣大隊が自分たちも活躍して、ホットサンドをもらうんじゃー!
と、闇の中を動き出す。
カルロス王の雷鳴により作り出された光。
その魔力光で生じた栄光の手の影を踏みつけて、猫たちが闇の魔力で相手を呪縛。
「うにゃんにゃ、うにゃにゃ……!」
続いてモフ毛を轟かせたのは魔王様を崇める聖職者猫。
彼等は、呪縛された栄光の手に肉球を翳し。
きぃぃぃぃぃぃん……!
不死属性を持つ魔道具と化した彼等の魂に干渉、塵へと戻してその迷える命を眠らせる。
「主よ――! 慈悲深き光の御手よ! 哀れな魂に慈愛の光を授けたまえ。聖光による安らかなる浄化!」
広範囲浄化スキルの輝きが、各地から広がっていく。
ワンコと人間の聖職者。そして猫司祭が次々と栄光の手を鎮め、眠らせていたのだ。
開いた道を私はわっせわっせ!
走るついでに、宙を踏み込む肉球で器用に空へと魔法陣を描き込んで。
巨大な時計塔を顕現させる。
クワァァァァァン、クワァァァァァッァアン!
栄光の手の群れの動きを遅くする時属性の魔術だ。
動きを鈍くする敵たちとは裏腹。
超神速で私はそのまま突き進む!
このままラルヴァを一撃で粉砕して、その肉体が内包する魔力を探査魔術に変換すれば一石二鳥!
私の猛進撃を目にする女教皇ラルヴァはというと……あれ?
なんだろう。
清楚な聖職者の上半身を妖しく蠢かし、けれど、落ち着いた様子でこちらを観察している。
静かに眷属達の眠りを見つめるラルヴァが、聖勝者の証であるヴェールから薄らと不気味な貌を覗かせる。濡れた唇を、ゆったりと動かし始めた。
「ほぅ、時属性を操る魔猫かえ。なんとも、けったいな事よ……。いやはや実に恐ろしい。かように悍ましき憎悪を感じるのは、顕現して初めてじゃ」
なにか嫌な予感がする。
探りを入れるべく、私は挑発属性を込めた魔力会話を選択。
『おや、君のかわいい子たちがあるべき場所へと帰っているというのに――随分と余裕じゃないか』
「我が子の眠りも所詮は一時の事。眠る我が子を慈しむのも、また母の愛。それに……すぐにこの世全ての人間から手を狩り、新しき我が子とすれば解決することであろう?」
懐に忍ばせていた白く輝く手。
まだ乾燥したばかりの女の手を齧り――口元を唾液で濡らしたラルヴァがほくそ笑む。
『君ほどの力があれば私の力だって理解はできているだろうに。もしかして、眠り過ぎて耄碌しちゃったのかい?』
探る私の言葉を受け止め、彼女はギシシと口元を歪ませる。
重なり合う蛇のような根の下半身をくねらせ、紅い唇から舌を覗かせ吐息を漏らした。
「はて、力とな? そなたとて時の流れの中で耄碌したのではないのかえ? たしかにそなたの魔力は膨大じゃ、なれど――所詮は猫。その小さき頭脳で何が出来ようか」
相手も挑発の魔術で返してくるが、むろん挑発と分かっている挑発に乗るつもりはない。
だって別に、小さき頭脳じゃないし。
すんごいいっぱい、詰まってるし。
それにしても。
やはり相手の見せる余裕が気になる。
少なくとも単純な力比べなら、私には到底敵わないと悟っている筈なのに。
なんだ、この余裕は――。
まあ単純に、ただ寝ぼけているという可能性もゼロではないが。
『まあ、いいや。君には消えて貰うよ!』
「やれるものなら、やってみるといい。あたしも、目覚めたばかりで腹が空いて、足らぬのでな。その皮、剥いで夥しきその憎悪も喰らってくれよう!」
女教皇が呪われし魔書を開き――バササササ!
「我が名はラルヴァ、四大脅威が一柱。母の名は大いなる輝き、我等脅威とこの世界の母にして唯一無二の輝き」
名乗り上げの詠唱をしつつ魔法陣を展開……。
こいつ、意外に詠唱が早い……!
「世界よ、応じよ……我が願いは一つ――!」
妖しげな魔力を纏う魔書を中心に、十重の魔法陣が広がっていく。
って、いきなり十重!?
ラルヴァの下半身から這い出てきたのはやはり栄光の手。
血の色でくすんだハンド・オブ・グローリーが、彼女の詠唱を補助するように魔術印を刻んでいる。
『なるほどね、他者による詠唱補助か……!』
増え続ける栄光の手が、八重の魔法陣を無数に生み出す。
その中心にいる数体だけは、他の手と格が違う。
一体、二体、三体、四体。
これは、彼女直属の眷属か!
血塗られた願いの手。
魔物と化した栄光の手の上位種である。
『みんな、大きいのが来る。警戒してくれ! 可能ならば術妨害を!』
「承知いたしましたわ、ケトス様!」
言葉を受けたミディアムくんと聖職者の部隊が、聖書を手にし祈りを捧げる。
広がる光は大いなる光の言霊。
守りの奇跡が飛び交う栄光の手を浄化させ、同時に聖なる属性の守護結界を張り巡らせる。
その隙間を縫って、魔力を紡ぐ声が続く。
「偉大なりしも怠惰なる者。巨鯨のごとき憎悪を纏いし大神よ! 我は大魔帝の力を借りし人の子、ワイルなり!」
ワイル君だ。
偉大で怠惰な神としての私の力を引き出した彼は、聖杖に魔術式を刻み。
展開!
放つ魔術式は、結界強化と風を操る二種の大魔術。
「グルメ喰らいしその姿は神速。風よ舞え、敵を穿つ道を作らん!」
ブフゥゥゥォオオオオゥゥゥ!
吹き荒ぶ風が、有象無象の栄光の手を吹き飛ばし――強大な四体の眷属への道を作り出す。
「いざ! いざいざいざ!」
「人の子らが作った道を使うのです!」
ミディアムくんの祈りによって張られた結界。
そして、ワイルくんが生み出した風を踏み台にし――獣たちが一斉に飛んでいた。
「主の導きを汝らに――!」
「我等、猫魔獣大隊こそがケトス様の魔爪なり!」
犬天使の肉球から放たれた淡い光。
その聖光が鎖となって空を走り、特に強力な栄光の手を戒める。
聖騎士猫が飛び跳ね――ラルヴァの支援をしようと魔法陣を形成しはじめた栄光の手を尻尾で叩き落とす。
大地に落ちた栄光の手が、術を発動させようと魔術印を指でなぞるが。
「させません!」
「秘儀、セントクロス!」
「どぉぉっぉぉりゃああああぁぁっぁあ!」
人間の騎士団が確実に一体、一体とその手の甲を貫き剣を穿つ。
なかなか見事な連携である。
やはり極大結界を通して個として機能しているおかげだろう。今の彼らは本来の力を遥かに超える魔力と光を放っているのだ。
正直、戦力としては当てにしていなかったのだが、かなりやる!
彼らが作ってくれた隙を見逃さず。
私は猫目石の魔杖を回転させ、円形の魔法陣を形成。
『そのまま――貫かれてしまうがいい!』
選んだのは一定レベル以下の反射能力を貫通する魔術。
貫き属性の魔弾の射手。
とりあえず、ラルヴァが手にする妖しい魔導書を焼き払うつもりなのだ。
シュシュシュシュ――ッ!
さすがに主神クラスの相手ならば、反射貫通能力を無効化され返されてしまうが、強いといってもラルヴァは所詮、そこまでの相手ではない。
そもそも四大脅威の制約で、弱体してるしね。
武器を破壊してしまえばこっちのものだ。
聖書や魔導書を扱うタイプの使い手って、武器破壊をされてしまうとわりと無力化されるんだよね。
だから、今回もその手でいったのだが。
「くふふふふ、くふ、くははははははは! 馬鹿め、かかりおったな!」
狂える女教皇は聖職者のヴェールを靡かせるほどの哄笑を上げ、栄光の手を召喚。
彼らが手にするのは魔術を反射する鏡。
いやいやいや、予想通りだし。
ぜんぜん、かかってないし。
構わずラルヴァは空を覆う栄光の手の一翼を生贄として使い、魔術を詠唱。
「禍々しき魔弾よ。狂える時を告げる時計塔よ! 妾はそなたらに語り掛ける。罪は罪、罰は罰。放たれた矢は、放ちし狩人を貫き給う! 汝らの身体、因果を辿り反転セリ!」
意味がないと分からないのだろう。
ラルヴァは勝ち誇ったように反射の魔術を詠唱し、発動。
このまま楽勝かな。武器を焼き払ったら、少しかわいそうだがラルヴァの身体を分解し、魔力の素材として使わせて貰おう。
大いなる輝きがこのまま逃走、別の世界にトンズラ! なんてことになったら面倒だからね。
意識が既に移っていた、その時。
声が、聞こえた。
劈くような、悲鳴の警告。
「だめぇぇぇぇぇ! ケトスさまぁぁぁぁぁ、避けて!」
『え……?』
目の前に――私の放った魔力の弾丸が迫っている。
時が、遅れて見えた。
遅延を発生させる時魔術――時計塔の魔術の影響範囲に私も巻き込まれていたのだ。
時間を操る私の魔術が、反転されている!?
さきほどの警告する声は――神官長ミディアム君のモノ。
啓示を授かる能力のある聖職者――彼女には一瞬、先の未来が見えていたのだろう。
私にすら見えていなかった、最悪な未来が。
貫通する筈だった魔弾の射手が、こちらに向かって戻ってくる。
これも反射――されている!
なぜ!
時計塔は反射への対策を切っていた。だからまだ分かる。けれど、これは違う。この弾丸は――主神クラスでなければ反射できない性質を加えた、高度な魔術。
それは大いなる輝きを誘う罠でもあった。
これを反射しようと顕現するように誘っていたのだが。
その気配はなかった。
だからそのまま放ったのだが……結果はラルヴァによる反射である。
その時。
私のいっぱい詰まった大きな猫の頭脳が閃いた。
そうか。ならば答えは簡単だ。
ラルヴァは短期間で主神クラスへと昇格した。それだけの話だろう。
そこでようやく、全てが繋がった。
なぜ、大いなる輝きが突然、姿を消したのか。
その魔力も気配も完全に隠すことが出来たのか。
大いなる輝きは姿を隠したのではない。
既に、存在しなくなったのだ。
『そうか! 大いなる輝きは――!』
答えを導き出した私の顔。
驚愕にモフ毛を跳ねさせる私の紅き瞳を、ギシシシシ……!
歪んだ笑顔で睨みつけて――狂える女教皇は剥き出しの腹を指でなぞり、濡らすような声で告げた。
「そう、あたしが――喰らった。全部、頂いたのさ。お母様の力は既に、この胎の中。あたしと、あたしの子供たち。ハンド・オブ・グローリーのものさね!」
異様に細いラルヴァの指先。
彼女の手にする呪われし魔書が、バサササササァァッァアと開く。
「自らの魔術でその身を貫かれ、滅ぶがいい――!」
私が最も警戒するべきはずだった魔術反射。
大いなる輝き、主神の存在を警戒し過ぎた故に生じた隙。
油断が招いたネコちゃんのピンチ。
黒猫の影が射手の標的となって揺らぐ。
しまった……!
避け切れない……!
魔弾の閃光が、私の身を貫いた――!




