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ニャンコ、新世界に降り立つ! ~ポカポカ草原と魔猫王城~



 スパイ襲撃事件から一週間が過ぎていた。

 人間たちの守りの準備を見届けた私は、皆から見送られ――亜空間の隙間をよーいしょ♪ よーいしょ♪

 細い身体をぶにゃーんと通して、空間を渡り。


 ズジャ!

 降り立つ台地は新世界!


 そう!

 今、私は――謎のマリモで干渉してくる異世界に侵入したのである!


『くははははは! 我、敵地に降臨せし!』


 猫の瞳に映るのは見渡す限りの草原!

 私の魔力に揺られた原っぱが、ふぁさああああああと音を立てている。

 肉球に触れる草の感触も、ちょっぴり心地良い。


 さすがに私の世界――魔王様の領地となる予定の我が世界と、マリモ軍団のいる異世界とを繋げる場所は隠しておきたい。

 目立つ場所にするわけにはいかない――と、人の気配がない場所に繋げたのだが。

 ……。

 ここ、本当に誰もいないね。

 私がなにをしても、誰も咎めないね。


 猫と原っぱ。

 我の鼻先をくすぐる猫じゃらし。姿を隠せる程に背の高い草も、いっぱいあるのだ。

 ……。

 遊びたい。

 遊びたい、遊びたい、遊びたい!


『ま、まあ……ちょっとだけなら、いいよね?』


 好奇心でウズウズ。

 モフ毛がさらにモコっと膨らんでしまう。


『うん、いいよね! ちょっとだけだし!』


 周囲に広がる一面の草原の誘惑につられ、私はニャッハー! と草にダイヴ!

 耳はピンピン。

 鼻はスンスン。

 尻尾はぼっふぁー!


 ズジャジャジャジャ!

 がさがさ。

 ズジャジャジャジャ――!


 草原を駆け回るのって最高!

 本能に負け、草原をニャハニャハ! 駆け回ってしまいながら私は考える。


 侵入口は以前、私が勇者の剣で遊んでいる時に開けてしまった次元の大穴。

 修復したその名残に再び、爪状と化した剣を通したのだ。


 どうしてそこに次元の隙間があるのか、なぜそれを知っているのか。

 勘の鋭い炎帝ジャハル君に聞かれたが――私は、渋い顔をしてシリアスに。

 色々とあったんだよ……と。

 遠い目をしてそれっぽく言ったら、ごくりと息を呑み納得してくれたので問題なし♪


 敵地に一人乗り込んだ理由は簡単。

 魔王様を御守りする戦力は残しておきたい、それがまず一つ。

 そして。

 こういう言い方はどうかとも思うのだが――異世界では何が起こるか分からない、足手纏いはいない方が良いと、そう判断したのだ。


 それに……。

 民間人を救出した後、即座にこの世界を崩壊させる可能性だって結構あるのだ。

 もしこちらの世界そのものが我が世界と敵対しているのなら、残しておく意味もないし。

 なによりもだ。

 私、ネコだし。

 飽きて帰りたくなったら、本当にドカーンと世界ごとやっちゃうと思うんだよね……。


 ちなみに。

 ロックウェル卿とホワイトハウルは万が一に備えて、魔王城と天界で待機している。

 もし私になにかがあったら、次元の扉を抉じ開けて――軍隊ごと転移。

 魔王軍と天上の神兵。

 二つの勢力が同時に攻め込んでくる手筈になっている。


 誰のおかげとは敢えて言わないけれど。

 魔族と神族が協力できるって、なかなか凄い時代になったと私は思うのだ!


 そうそう。私達の世界に残っている人間たちはというと。

 これまたちょっと面白くて、どうやら国家間で連携をちゃんと取っているみたいなんだよね。

 今回の騒動が始まる前は、水面下でなにやら情報戦も行われていたようなのだが――共通の敵ができたおかげで、仲良くなっているのである。

 今も尚続くマリモ襲来。

 やはり多少の被害には遭っているが、その性質が解析され研究されたせいか、人死にや誘拐などの人的被害はないらしい。


 ま、それでもマリモが攻めてくるせいで不穏な気配は続いている。

 安心して暮らせるように私が頑張るしかないね。

 報酬に各国グルメ巡りも貰えることになったし♪


 そんでー~……私がこちらの世界に来た理由なのだが。

 目的はもちろん誘拐された人間の救出と――うん。

 もう言わなくても分かるよね?

 こちらの世界でもグルメ巡り!

 それも、あるが――。


 一番の理由は――報復。

 魔王様が支配すべき我が世界に乗り込んできた、その愚かさを後悔させてやるのニャ!


 さて、そろそろいいかな。

 こっちの世界の魔力にも慣れてきた。

 戯れの時間は終わりだ。

 私の力の源でもある憎悪は、こっちでもちゃんと充満している。

 草原の中でぐーるぐる駆け回って、ズジャッと立ち上がり。


『我は決めたのだ! 気に入ったのである! ここを我の庭、猫ちゃん縄張り(キャンプ)とするのである!』


 言って、私は駆けまわった草原に付着した私の魔力を辿り。

 キィィィィィイン!

 十重の魔法陣の輝きで草原を満たしていく。


『我こそはケトス、我こそが魔猫。我こそが大魔帝! 我を知らぬ無知なる世界よ、大地よ、大空よ! 今この瞬間より、この地は我のモノであると知れ!』


 名乗り上げは詠唱となり、周囲の魔力も大地も時間も――全てを私の魔力でマーキング、支配権を乗っ取り上書きしていく。


 この世界にも恐らく主神や、それに準ずる存在もいるのだろうが。

 あー、うん。

 そういうのは要らないかな!


 そんなわけで――魔力で無理やり、この周囲との接続を切断。

 祝福も、守護も加護も。

 なんもかーんもぶち壊して。

 私の世界なわばりへと強制贈与させたのだ。


『さて、次は拠点作り――超カッコウイイ、御城作りかな! 一回、魔王様みたいに牙城を自分で作ってみたかったんだよね~』


 言って、私は猫目石の魔杖を振るう。

 しばらく、世界から音が消失して―― 次の瞬間。


 ドゲン、ズドン――ズジャジャジャジャジャジャジャガガガ!


 再び、世界にとてつもない振動が走る。

 この世界に満ちている魔力をリソースにあて、強制的に私のモノとして拝借。

 ようするに、窃盗スキルの一種を世界相手に使用したのだ――この世界を守る力を全て私の城作りのエネルギーに変換して、使わせてもらっているのである。


 むろん。

 今頃こっちの世界は大混乱だろうが、

 私には関係あるけど、興味ないし――知らんぷり。

 相手を大幅に弱体化させて、こちらを強化する、戦術の基本だよね。


 草原に建設されていくのは、私の棲み処。

 山ほどのサイズの、巨大で堅牢な漆黒の城。

 我が偉大なる猫ちゃんズ、キャッスル。

 魔猫王城なのだ!


 そう――この世界を破壊しかねない程の力を持って、私の御城を創造したのである。

 もちろん、心地よさそうな草原は既に我が城の中で確保済み!

 あとでたっぷりと昼寝してやるのだ!


『にゃは、にゃはははははは!』


 バリバリバリ、ベキィィィィィイイイイイイン!


 突如現れた異形な魔力に引きずられ。空間も時空も次元も滅茶苦茶に歪んでいるのだろう。

 世界の法則が、乱れていく。

 空気も大気も、異常な変動に戸惑い揺れ始める。


 さすがに、この世界も異変に気付いたのだろう。

 高次元の存在。

 大いなる光とは違うが、それっぽい力ある輝きがこちらの様子を窺いにきていたが――。

 私、これでも魔王様のペットだからね。

 最初はあくまでも紳士的に対応しようかな。

 とりあえずは接触を試みてみよう。


『ねえねえ! こっちをみているんだろー! ちょっとそっちの不手際のせいでこっちが迷惑かけられちゃってさあ! 殴り込みに来たんだけどー! そのまえにー! 一応! 話し合いとか、するかーい?』


 ちゃんと話が通じるように魔力による猫声にしたのに。

 返ってきたのは十重の魔法陣による雷撃。


 あ、向こうが話し合いを無視して攻撃してきた。

 よーし! これで正当防衛確定だ!

 相手は十重の魔法陣だが――うん、正直同じ十重の魔法陣でも私とはレベルが違うかな。

 これならわざと直撃して――。

 びりびりびりり。

 雷撃を猫毛で吸収して静電気でビリビリ。それだけで効果は無効である。


 さすがに、十重の魔法陣による攻撃を防ぐことも妨害することもせずに無効化されるとは思っていなかったのだろう。

 輝きは明らかに動揺をしていた。

 なにか今更、言い訳をしようと手を翳してきたが――。


『さて――これで君と私とは敵対関係だ。それじゃあ、さようなら』


 構わず私は肉球を鳴らし――ぶにゃん。

 普段は抑えている魔力を一瞬だけ、全開放する。


 ザザザザァァアァァァアアアアアアアアァァァァァァァアァァア!


 それだけで輝きは撤退してしまった。

 ち……っ、逃げられたか。

 今の魔力は、おそらく生者も死者も問わず――全ての者の魂を揺すった事だろう。

 この世界、全ての生きとし生けるものに警告を与えたのだ。


『汝らは猫を怒らせた――』


 と。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ケトス様ったら他人の世界でやりたい放題♪(笑) 頑張って報復してくださいね。 [一言] 前から思っていたんですが、勇者の剣完全にケトス様を主と認めているような気がするのですが?…。 も…
[一言] マリモなんて可愛くないんでダンジョン猫とか沢山発生させて猫だけの世界にしてもいいと思います( ◜ᴗ◝) ちょっと僕もその天国に行きたい
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