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にゃんことわんこの神回復大作戦! ~ダンジョン攻略準備編~



 あれから数ヵ月後。

 魔王城の留守番を皆に任せた私は、一人、冒険の準備をしていた。


 ここから少し慣れた場所で待機をしている神の眷属たち。

 彼等と合流する前に、色々と用意をしているのだ。

 冒険の期待に立てた尾の先が、ぶるりと小刻みに揺れてしまう。


『ぶにゃーっと壊して、ぶにゃぶにゃーん♪』


 ついつい鼻歌なんかも漏れてしまうね。

 なぜって久々のダンジョン攻略だからね!

 ちょっとウキウキなのである!

 そう。

 私は――今、魔王軍から離れて隠密行動中なのだ!

 まあ、真面目な話をするとだ。

 ホワイトハウル達を始めとする神のダンジョン攻略班と、とあるダンジョンに足を踏み入れようとしているのである。


 ダンジョンの場所は次元の狭間。

 ゲームクリア後に入れるような、特殊な場所に眠る迷宮だった。

 いわゆる隠しダンジョン。

 まだ名前すらも決められていない未踏の新ダンジョンである。

 その新迷宮の前。

 神の眷属たちにはとてもじゃないが見せられないような闇のアイテムをネコのお手々で、よいしょ♪ よいしょ♪

 冒険リュックに荷物を入れて準備中なのだ。


 一見すると、ピクニックの準備をするかわいらしいモフモフ黒猫ちゃんだが。


 どんな鍵さえも開けられる私オリジナルの猫型マジックキーに、どんな傷も、どんな状態異常も治せるロックウェル卿の尾羽。耐性がない者の精神を、確実に侵食し操るフォックスエイルの魅惑の香水。

 その他にも天才錬金術師ファリアル君からいっぱい秘密道具を貰ってきたからね。

 どれも一つでも売れば一財産どころか、街一つぐらい買えてしまうほどの価値のあるアイテムなのだが、なんというか……うん、結構危険なアイテムばかりで神の眷属には見せられないんだよね。

 だから。

 ちょっと離れた場所で、猫モードのままガサガサゴソゴソ。

 それらの危険物を肉球で掴んでモッキュモッキュ。

 無限に広がる亜空間に繋がる特殊なリュックに、ギッシリと詰めこんでいるのだ。


 準備もできたかなとヒゲをぴんぴん揺らしていると――。

 魔術によるメッセージが届いた。

 相手は向こうで神の眷属を束ねる駄犬こと神獣ホワイトハウルである。


『ケトスよ。そろそろこちらと合流してくれ。あー、昨日も説明したが、ネコ形態ではなく、獣人形態で頼むぞ』


『はいはい。分かっているよ。猫モードの方が可愛いし、何かと楽なんだけど。まあ、今回は仕方ないよね――ちゃんと魔王軍の皆には口止めしてあるから、私が君達、神の眷属に協力するって事は内緒になっている。公式な文章にも残さないから、安心しておくれ』

『すまぬが、くれぐれも頼んだぞ』


 忙しいのだろう。

 すぐにメッセージが切れてしまった。

 機嫌が悪いとか、私が昨日、彼の分の唐揚げまで食べてしまったから怒っているとか、そういう理由ではない。

 私と彼との間には、既に、取り繕う必要もない関係性があったのだ。

 魔王軍時代の付き合いも長かったしね。

 まだ言いたい事とか聞きたいことがあったのだが――まあ後でもいいか。


 ポンと魔霧を発生させた私は、華麗な仕草で獣人モードに大変身!

 いつもならもっとすんごい演出をするのだが……。

 うん。

 今回。

 見てる人がいないから、そういうの……省略しちゃっていいよね。


 それにしてもだ。

 妙に顔を洗いたくなってしまう……。

 これは猫の予知能力の一種なのだが……。

 なんか嫌な予感がするのだ。

 遠見の魔術を発動し、嫌な予感の出所――神々しいダンジョンの入り口を、私はじぃぃぃぃっと、ダンディ美貌獣人モードで見てしまう。


 やっぱり、不安の香りが漏れているのは……ここだよなあ。


 モフモフ猫耳をぴょんぴょんと跳ねさせ、尻尾をクルリ。

 獣人の猫毛部分がビリビリする……。

 ここ。

 めっちゃやばい空気がプンプンするんだよね……。


 この世界と異世界を隔てた空間に隠されていた、幻の迷宮なのだが――んーむ、どうなんだろうね、ここ。

 人類どころか、神魔未踏の地である神話級ダンジョンなのだ。

 その攻略難易度が不明なのである。


 はてさて。

 どうなることやら。


 そうそう。

 説明が遅れたが――なんでこんな場所にいるかというと、答えは単純。

 目的は大いなる光の弱体化の解除だ。

 神を回復させるためのアイテムがここのダンジョン制覇報酬にあるらしいと、様々な場所から情報が上がっているのである。


 なぜこんな超難度の謎ダンジョンが突如生まれたのか!

 それも神を治すためのアイテムが眠っているなんて!

 いったいどういうことだ!

 と、いった感じで。

 この都合が良すぎる現象を疑問に思うモノは少なくなかった。

 神サイドでも魔族サイドでも少々の物議をかもしたのである。

 これは神の罠ではないか!

 いや、大魔帝ケトスのしかけた卑劣な罠ではないか!

 などなど。


 まあ憶測は様々に浮かぶが答えは得られていない。

 この世界のダンジョンを作り出しているのは、世界自身。

 それが――いつの間にか生まれているダンジョン誕生の不思議について、もっとも信じられている説なのだが。

 もしそれが正しいと考えると、世界は神の弱体化をなんとかしたがっているのかな?

 わざわざこんな新ダンジョンが、理由もなくいきなり生まれるわけないし。

 ……。

 いや、そりゃ……私も特に理由もなく、爪研ぎの影響でダンジョンを作っちゃったことが、何回もあるけど。

 あれは全部、結果的に役に立ったんだから意味はあったのだ!

 案外。

 誰かが私みたいに、うっかり作っちゃった可能性もあるかもね。

 まあ。

 このダンジョン誕生の経緯は推測の域をでないから、深く考えても仕方ないか。


 もうあるんだから、あるもんは利用させて貰う。

 ただそれだけである。

 このダンジョン自体が、誰かの仕掛けた卑劣な罠だったら私がぜーんぶ、ぶっ壊せばいいだけだしね?


 ともあれ。

 胡散臭い話ではあるのだが。

 おそらく、本当にここには神を回復させるだけの秘宝が眠っている。


 というのも、だ。

 私達はそれぞれ独自に弱体化した神の回復手段を求め、魔術を用いた占いをしたのだが――。

 私とロックウェル卿、そしてフォックスエイルにホワイトハウル、神の眷属である魔術師、そして大いなる光自身の占いの結果が全て、ここに集中しているのだ。

 そもそもみんなの占いでここが発見されたんだしね。


 これほどの大物全員が別々に占い。

 それぞれがここを指したのだ。

 まず間違いなくここにはそれほどのアイテムが存在する。


 さて、じゃあ神の眷属たちでダンジョンを攻略し、神様の力を取り戻そう!

 と、なり既に先行組がダンジョン攻略を開始したらしいのだが……いまだに彼らは帰ってこない。

 連絡もつきそうにない。

 どうやら、神クラスの力を持つ精鋭達ですら攻略困難なダンジョンだったらしく、あっさりと全滅してしまったようなのである。


 ホワイトハウルは鋭い嗅覚と魔力を伴った勘で、現存する神の眷属だけでの攻略は不可能だと反対したらしいのだが――聞く耳持たず突入し、全滅。

 神の連中って、基本的に傲慢で自分の力に絶対の自信を持っているからね。

 ぶにゃっははは!

 神サイドの短慮、超うけるんですけど~♪

 素直にワンコの忠告をきいておけば良かったのにね?


『ぶぶ、ぶにゃーっはっはっは! あーいけないいけない。今はダンディ獣人モードだったんだ、もっと渋く優雅にエレガントにしないと。魔王様に笑われちゃうな』


 誰も見ていないものの、こほんと咳払い。

 一人でもこれだけ優雅を維持する私って、素敵だよね?

 さすがは魔王様のペット!

 それにしてもだ。

 ダンジョン攻略で全滅なんて、神サイドとしては情けない話だとは思うモノの、本当はちょっと笑い事ではないのだ。


 一応、神の眷属というのはこの世界では最上位に位置する高位存在なのである。

 信仰も弱まり、弱体化もしている大いなる光といえど、その力は絶大。

 普通ならばその部下である神の眷属が全滅してしまうなど、まずありえないのだ。

 そんな彼らが全滅した。


 それはつまり。

 結構洒落にならないレベルの超高難易度ダンジョンだという事である。


 そう。

 いつもの人間同士の小競り合いや、野良魔竜などとは訳が違うのだ。

 まあ神の眷属たちは死んでも魂さえ無事ならカップラーメンのごとく容易く蘇生できるらしいので、大した心配はされていないようであるが。

 魂の回収をしなければ蘇生はできないし、なにより神を回復させるアイテム入手には到っていない。

 そこで。

 先行した者たちの魂の回収と、ダンジョン攻略自体を目的とした神聖で新生な攻略チームを設ける事になったらしいのだが――。


 問題はさまざまにあった。

 話が長すぎるとか、説明が長すぎるとか。

 そういう問題じゃないよ?

 うん、私の場合はけっこうそういうのに飽きちゃうこともあるけど、神サイドだからね?

 で、問題はというと。


 そもそも、神々という存在はダンジョン攻略なんていう泥臭い行為に慣れてはいないらしく、本領を発揮できずにいるらしいのだ。

 その上。

 既に全滅した先行組は、神の眷属の中ではトップクラスの実力者だったそうで――彼らを失った神サイドの連中は通常業務に支障がでているらしく、ダンジョン攻略にも、全滅した魂回収にも割く戦力がないそうなのである。


 神の通常業務ってなんやねんと、思うが――災害を防いだり、逆に罰として災害を起こしたり、まあ色々とやっているらしい。

 主に、人間たちからの信仰を糧とするためらしいのだが――。


 んー……人間たちは神がいなくてもなんとかやるだろうし。

 むしろ勝手に運命を操られるリスクもなくなるし……。

 大いなる光を力の源とする「神の祝福」は発動できなくなってしまうだろうが、回復魔術は祝福や奇跡のカテゴリーじゃない魔術にも存在するし……。

 正直。

 そのまま滅んでもいいんじゃね?

 って、ネコちゃん的には思うのだが――まあホワイトハウルがかわいそうだから仕方ないよね。


 ともあれ。

 足りない戦力を補充する必要ができたのである。

 そこで元魔王軍であり強力な存在であるホワイトハウルが提案したのは、当初の彼の計画通り、他勢力に助力を願う事。


 そう。

 もうお分かりだろう。

 そこで白羽の矢が立ったのが、この私!


 素晴らしき大魔帝にして、ラストダンジョンと迷宮契約を交わしているダンジョン猫魔獣――ケトス! だったという事である。

 私は二つ返事で頷いて、協力を快諾した。


 魔狼は静かに頭を下げていたが――。

 んーむ。

 あんまり感謝されるとちょっと罪悪感があったのである……。

 まあホワイトハウルには協力を約束していたしね。

 それに……なにより。

 神を弱体化した犯人……私だしね。

 普段から世界からの存在の隠避と、周囲からの監視魔術の妨害なんてモノを無意識的にしていたから気付かれてないし、サバスとファリアルくん以外には知られていないが――。

 一応、まあ……。

 ちょっとは責任を感じているのである。



 さて。

 ひっじょーうに長い話になってしまったが、少しは伝わっただろうか?

 後で自分で確認するための記録クリスタルに刻みながら、私はふとそんな感じに悩んでしまう。


 いやあ、この話。

 黒マナティ達にも説明したんだけど、途中で飽きちゃったらしく、いつのまにか説明していた私も含めてキャッチボールで遊びだしちゃったんだよね。

 まあようするに。


 神を救うホワイトハウルに協力し、ダンジョン攻略をしにきたわけなのだ!


 ……。

 あー……。

 誰かに説明する時は、これだけで十分だったかもね。

 記録クリスタルにはそう記載しておこう。



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