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再び急襲、魔王城! ~冷静すぎる大魔帝、もう暴走なんてしないよ?~後編


 荒れ狂う怒りと憎悪の魔力が渦巻く中。

 その中心に私はいた。

 前回の事件があったからロックウェル卿の顔が浮かんで冷静になれたが、それがなかったらちょっと危なかったかもしれない。


 冷静になれなかった私の魔力は制御されずにそのまま大暴走し、放出、世界の半分が壊れる程度の被害があったかも……。

 ちょんちょん、と手で魔力を触ってみる。

 ……。

 魔力の渦に滞留する一粒一粒の輝きは、濃縮された混沌の塊かもしれない。

 じぃぃぃぃっと睨んでいると。


 こーわーせ! こーわーせ!

 世界をぶっ潰せ!

 と、魔力の渦が私を誘惑してくるが、肉球でペシペシ叩いて眠らせてやる。


『ふー、あぶないあぶない……虚無の魔力って防ぐ手段がないから、暴走すると本当にまずいんだよね。これ、ネタ抜きで世界の半分やっちゃうんじゃ……』


 そんな。

 冷静な猫ちゃんのモフ耳を揺らすのは、先ほども誘惑してきた破壊の衝動。

 ジト目で睨む私の周囲を、ネコの形で回り出した虚無の魔力が踊り出す。


 こーわーせ! こーわーせ!

 にーくーい、にんげん、ぶっつぶせ!

 せかいもついでに、ぶっつぶせ!


 たぶん、これ。

 私の深層心理のどこかに残ってる、破壊衝動が魔力になって漏れてるんだよねえ……きっと。


『気持ちは分かるけど、少し眠っていておくれよ』


 ペシペシペシ。

 浮かび上がってくる破壊エネルギーの魔力渦をモグラ叩き。

 ペンペン!

 ぺんぺんぺんぺん!

 叩かれると、魔力の渦猫が手を振りながら虚無の中に帰っていく。

 こいつら。

 たぶん遊んでるなあ……さすが私の破壊的魔力から生まれたエネルギーだ。

 足の肉球でもペチン!

 尻尾でもペチン!

 あ、ちょっと面白いかも!

 猫の瞳がギラりと輝く。

 ちょっとくらい……遊んでも、いいよね? うん、問題なし!


 ズジャ、ズジャジャジャジャ!

 ダッシュしてー、ズジャジャジャ!

 私の部屋はこの魔王城で二番目に強力な結界で覆われているから、ちょっと私が走り回っても問題なし!

 神速のモグラ叩きである!


『くははははは! 我が魔爪の輝きを見よ!』


 しばらくそうやって気を紛らわせて――不意に、立ち止まり。

 爪を舐めて、肉球を舐めて。

 沈黙。

 飽きちゃったのである。


 くわぁぁぁぁっと欠伸をしてみる。

 亜空間からアイスキャンディを取り出して、がじがじがじ。

 まだ……これじゃあ頭は冷えないよね。

 たぶん。


 頭を冷やすべく、紅蓮のマントの冷房を強に切り替えて――ぶにゃんと床に転がってみる。

 これは冷やすためだ!

 世界のためだから仕方ないのだ! と、明日の分のアイスをもう一本取り出し、がじがじがじ。

 メロンソーダの舌をぷちぷちする食感がとってもいい感じなのである!

 あー、食べ終わっちゃった……。


 ……。

 もう、頭冷えたよね?


 立ち上がろうとした私は、ふと、周囲の異変に気が付いた。

 ズゥーン! ズゥーン!

 地震か何かが起こっているのか。

 不機嫌に揺れる私の尾が床を叩くたびに、世界と大地が悲鳴を上げていたのだ。


 これ、私の尻尾ビンタだね。


 世界を叩きながらも、モッファモッファに膨らんだ尻尾から聞こえてくるのは――。

 ギシャアアアアアアアアアアア! と、発する威嚇音。

 あ、魔力の渦がまた誘惑してるんだな。

 君達もしつこいねえ……と、肉球でパンと叩いて封印する。


『あれ、もしかしてまだ頭冷えてないのかな?』


 尻尾を落ち着かせようとお手々で挟んでチペチペチペ。

 毛繕い、毛繕い♪

 にゃふふふ、魔王様にも自慢できるほどの獣毛、この輝きなのである!


 しかしだ。

 ふとかしこい私はかんがえる。


 前よりも私の危険度が上がっている気がするのだ。

 単純に言えば強くなっているのである。

 一つ、思い当たることがあった。

 実はね。

 なんかまた。

 レベルアップしちゃったぽいんだよね。


 たぶん一番大きかったのは、ファリアル君と私の過去が繋がって憎悪が共鳴した事。

 そしてもう一つ。

 フォックスエイルが私を鑑定しようと精神に接続した事。

 この二つの魔性と魂を伴う接続を果たしたせいで、魔性としての核が倍増。

 憎悪を魔力エネルギーとする私は大幅なパワーアップをしちゃったようなのである。


 既に強かったのに更に強くなってどうするんだって?

 ぶにゃっははははは! 我こそは大魔帝、我こそが魔王様の愛猫ケトス! なので、強い方が美しいのである!

 ビシ! っと決めポーズ!

 ……。

 いや、真面目な話。

 んー、どうするんだろうね?

 さすがに魔王様が起きるまでに世界を崩壊させたくはないし……。

 でも。

 レベルアップしちゃったもんは、しちゃったんだから仕方ないし……。

 いろいろとむつかしいね。

 いやあ、私はもとが低級魔獣の猫魔獣だからね。

 成長とか、そういうの早いんだよね。

 

 そういや……。

 今の力が完全に暴走したら、どうなるんだろ。

 ……。

 いやいやいや。

 今回はちゃんと制御したんだから、もしもの話なんて考えないでいいよね?

 いっそ、誰かに力の一部を譲渡して……。

 いやでも、私の憎悪のエネルギーに耐えられる存在なんてたぶんいないよね。


 んー。


 とりあえず。

 そういう、力持つ者の責任とか、メンドーな事に発展しそうな問題は考えないことにして。

 さて。

 もう十分、頭は冷えただろう!

 冷静さを保ったままの私は、現場に向かうべく空間転移をした。


 ◇


 転移亜空間の中でも涼やかな気持ちを大切にする私は、ふふんと冷静で。

 状況を、超冷静に判断していた。


 おそらく敵は強大だが、まだ侵入に成功してはいない。

 だから安心だ。

 冷静になっていれば問題ない。

 冷静であることが大事なので、冷静こそが大事なのだ。


 それにしても。

 立て続けに事件が起きるのは、何故なのだろうか。

 私は冷静に猫の頭を悩ませる。

 冷静に、冷静に考える。


『んーみゅ……にゃんにゃんだろ』


 昨今の魔王城は本当に穏やかだったのである。

 魔王様が生み出した平和な世、人と魔との戦争が終わって作られた平和な期間のおかげだろう。

 ここ百年は特に大きな事件も起きなかったのだ。

 むろん、多少の小競り合いはあったが……小競り合い程度で済んでいたのだ。

 しかしだ。

 ここ最近は状況が一変していた。

 魔族も人間も神も勇者の関係者も、急に動きを活発化させていた。魔竜や滅んだダークエルフの里事件もそうだ。

 私は冷静に猫頭をフル回転させる。


 なぜか。

 突然になって多発する大事件。

 その理由が私には分からないのである。

 そこには共通する、何か大きな原因――それこそ世界を動かしてしまうほどの大きな力持つ存在や魔道具発生など、なにかしらの因がある筈なのだが……。

 それの特定には至っていない。


 力ある存在が急に動きを活発化させているのは事実なのだ。

 今回もその流れの一環か?

 思い当たることは何一つない。

 事件が多発するようになったのは平和を満喫した私が本格的に散歩を始めてからだ。

 何も人が楽しくグルメ巡りを始めようとした矢先に、急に、こんなに事件が起きなくてもいいのに。


『本当に、迷惑な話だよねえ……』


 さて、ここからが本題だ。

 その原因を推理する、賢い私の推理パートというわけである。

 大魔帝や英雄クラスの人間が動き出さないと解決しない事件ばかりが、いったいなぜ……これほど短期間に集中するのだろうか。

 ……。

 冷静な私が導き出した答えは――!


 ただの偶然である。


『しかしまあ。偶然とはいえ、本当に迷惑な話だよねえ……』


 あれ? いま本当に迷惑な話って二回いったかな?

 冷静になって考えるが、冷静だから冷静だし。問題なく冷静だ。


 まあ冷静な私は、こんな事件ぐらいじゃ取り乱したりはしないから、冷静に問題ないけれど。

 んーむ。

 本当に冷静すぎて自分が恐ろしい。


 それにしても。

 どこのバカだか知らないが。

 魔王様のお眠りになられている我が家に攻めてくるとは――。

 どんなやつなんだろ。


 ま、ここは冷静に。

 一つ、おとなな息を冷静に吐き。

 冷静に。冷静に。冷静に。

 ……。

 あれ。

 冷静ってなんだっけ。


 なんかそればっかり考えていたら……頭が混乱してきて、頭がジリジリと熱くなってくる。

 ぷしゅ~、じりじりじり。

 あ、こういう時は保存してあるカップアイスを頭に乗せて……あ、一瞬で溶けちゃった。

 まあ、いっか。

 にゃははははは! と、ひとしきり笑って。

 さて、話を戻そう。

 いったい、今回襲ってきた相手は何者なのか。

 なんにしても、我が愛しき主を危険に晒すわけにはいかない。

 私の頭を優しく撫でてくれるあの方の身にもし何かが起こったら……。

 私は――。


 私は……とても、悲しい。

 もう、あんな想いはしたくない……。


 つまりだ。

 ピョコン! と頭を上げた私は、モフ耳モフしっぽを立て考える。

 魔王様を守る事は善行なんだし、なによりも優先されるんだし。なにより、私の尻尾もモッファモッファに荒ぶってるし。

 やっぱり、ちょっとくらい怒ってもいいよね?

 うん。

 …………。

 ……。


 ぶち。


『どこのどいつだが知らないが、消し炭にしてくれるにゃぁぁぁああああ!』


 ついに零れた本音に、先ほどから誘惑してきた魔力の渦も大歓喜!

 人間も魔族も猫だって。

 きっと無理をしてはいけないのだろう。

 冷静になろうとしていた頭が――ボカン!


 沸騰したのだ。

 滾る魔力が溢れだす。

 マグマのように沸騰する紅い瞳から、異常な量の魔光が発生し始める。


 転移亜空間の中。

 ズザズズズザザザァアァァアァアア!


 と、無尽蔵に拡がる魔力の渦が天を衝いていた。

 我が家を襲われた猫ちゃんが荒れ狂う稲光を纏って、亜空間を駆ける!


 ◇


 再び魔王城に降りかかった火の粉。

 それが今回の大事件の始まりだったのである。



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