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悪役令嬢にざまぁされないように、静かにするのは無理でした⑤

サブタイトル、変更しました!!


「いい雰囲気のところ悪いけど、リカルド様が呼んでるわよ」

 

 少し言いづらそうに、ネイエ様は言った。

 ネイエ様の視線の方を見れば、ひとりの男の子が手を振っている。

 けれど、それが誰に向かってなのか、私には分からない。

 

「オレたちじゃないんじゃないかなぁ」

「そんなわけないでしょ? レフィト様も私も、何回呼び出されたと思ってるのよ」

「オレ、呼ばれても行かないけどねぇ。今回も気が付かなかったってことで」

 

 そう言うレフィトに、ネイエ様は呆れたような視線を向ける。

 

「反応しなかったら、使いの者をだされるわよ」

「それ、ネイエ嬢にだけじゃないのぉ?」

「えっ……。レフィト様も出されてたわよね? って、もう来ちゃったじゃないの」

 

 こちらに向かって歩いてくるひとりのメイドを見て、ネイエ様は少しだけ嫌そうな顔をした。

 そのメイドは、頼んでもいないのに新しい飲み物を用意すると、無言で手紙を置いて去っていった。


「今の、何?」


 使いの者が来るって言ってたけど、まさかこんな形とは……。

 あんなに大っぴらに手を振ってるのに、用件は極秘って、どういうこと?

 誰に手を振ってるのか分かんなかったし、限られた人しか気付けないから、問題ないってことなのかなぁ……。


「ネイエ嬢が開けなよぉ」

「いえ、レフィト様がどうぞ」


 互いに一歩も引くことなく、ふたりで手紙を押し付け合っている。

 あれかな? この手紙を見ると不幸にでもなるのかな?

 たしか、昔、流行ってたよね。不幸の手紙ってやつ。


「私が見ましょうか?」

「駄目だよぉ。厄介事に、自ら巻き込まれちゃぁ」

「そうよ。カミレちゃんが嫌な役目を引き受ける必要はないわ」


 親切心のつもりが、ふたりから、はっきりと断られてしまった。

 でも、このままだといつまで経っても手紙が開かれることはないと思う。


「じゃんけんしたら?」


 そう言った瞬間、白熱したじゃんけんが繰り広げられた。

 ネイエ様って、こんなに真剣……というか、必死にじゃんけんするんだ……。


「よっしゃ、勝ったぁ!!!!」


 私と繋いでいない方の手で、レフィトはガッツポーズをした。

 ネイエ様はというと、口元に笑みを浮かべたまま、悲壮感あふれる目で手紙を見ている。


「……開けるわよ」


 そう言って開かれた手紙。

 紙いっぱいにびっしりと文字が書かれていた。


「ネイエ嬢、要約よろしくねぇ」

「分かってるわよ」


 ため息を溢しながら、ネイエ様は手紙に目を通していく。

 一枚、二枚とめくられていくが、ネイエ様の表情は珍しく険しい。


「ねぇ、要約ってどいうこと?」

「手紙にね、必要ないことまで色々と書かれていて、伝えたい内容は一行くらいなんだよねぇ。そのくせ、時々雑談と思われる内容に重要なことが書かれていることもあるから、気が抜けないんだよぉ」


 それは、読むのが疲れそうだ。

 王族からの手紙の内容を間違えるわけにはいかないもんね。

 というか、何でそんなに面倒なことをするの? 罰ゲームか何かなのかな?


「リカルド様のところまで来いって書いてあったわ」

「それだけぇ?」

「必ず三人で来るようにとのことよ」

「うわぁ。面倒なことがなければいいけどぉ」


 その言葉に、ネイエ様が深く頷いた。


「場所はぁ?」

「応接室よ。昼休憩の時間を指定されてるわね」

「そうすると、一緒に食事かぁ。忘れたふりしたら、駄目かなぁ」

「ここまで突撃されるわよ」

「だよねぇ」


 ふたりの空気が重い。

 強者であるふたりにこんな反応をさせるなんて、リカルド様ってどんな人なの?


「その三人でって、もしかして私も入ってますか? アザレアちゃんだったりしません?」

「残念ながらカミレちゃんよ。名指しされてるわ」


 ネイエ様が手紙を見せてくれる。

 ちょっと読みたくないな……と思わせる、余白のない手紙の中に、カミレ・ハオトレとしっかり書かれていた。


 うん。この便箋の書き方だけでも、クセが強いのが伝わってくるわ。

 便箋の模様の上にまで、びっしりと文字が書かれてるの、前世を合わせても一度も見たことないよ。


「私、テーブルマナーを失敗すると思うんですけど、大丈夫ですかね?」

「そこら辺は心配ないわ。クセは強いし、性格に難もあるけれど、相手の苦手なことを責めたりしないから」

「そうなんですね……」


 安心していいのやら、駄目なのやら、反応が難しい。


「カミレのことは、ただ会ってみたいって理由で呼んだんだと思うよぉ。オレは、さっきのことだろうなぁ。ネイエ嬢は、何で呼ばれたのぉ?」

「さぁ? 大して用事がないのに呼ばれることもあるしね」

「お気に入りだもんねぇ」

「ありがたいことにね」


 そう言ってはいるものの、ネイエ様は少しも嬉しそうではない。


 手を振っていた男の子──リカルド様は、私たちより二歳下で、見た目はあまりレオンハルト王子と似ていない。

 整った顔をしているけど、攻略対象ではなかった……はずだ。追加ディスクが出ていたり、隠しキャラだった場合を除けばになるけど。


「あーぁ、憂鬱だなぁ。この鬱憤(うっぷん)は、デフュームで晴らそうっとぉ」

「そうしてちょうだい。私は、やられているデフューム様を見て、いくらかスッキリさせることにするわ」


 レフィトとネイエ様は頷き合っている。

 こんなに、ふたりの意見が合うのも珍しい。

 そして、デフュームはちょっと気の毒だ。


 ただでさえ、私が眼鏡推しで、デフュームのことをかっこいいと思っていたから、レフィトからデフュームへの当たりはキツイ。

 そこに、憂さ晴らしが追加されるとか……。

 デフュームの眼鏡、大丈夫かな。眼鏡に罪はないもんね。


 そんなことを言えば、レフィトはもっとデフュームにキツくなるだろうから、何も言わないけど。


 ご愁傷さまです。

 心の中で、デフュームに手を合わせた。

 

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