悪役令嬢にざまぁされないように、協力した方がいいですか?⑨
いや、普通に怖いこと言ってるんだけど。
たおやかな笑みが怖さを増強させている。
これ、聞いてもいいやつだったの? というか、止めたほうがいいやつだったりする?
「レフィトー!!!!」
「んー? 怖くなちゃったぁ?」
「そうじゃなくて! 止めなくていいやつなの!?」
私には、判断できないんだけど!!
前世では、政治には詳しくなかったし、今世も、貴族が国を回している中で、貴族なのにほぼ庶民だからと関係ないものだった。
必要になるとしても、卒業してお城で働くようになってからだから、まだ大丈夫だと。
知識がなさすぎて、どうしたらいいのか分からない。
こういう時に、知識の大事さに気がつくのだ。
自分で判断できなくて、誰かに判断を委ねなくちゃいけなくなる。意見を聞くのは大切だけど、自分で考えられないって良くない。
国の政治に関しての勉強も、これからの課題だなぁ……。
「別にいいんじゃない? 誰が国を治めたって、大して変わんないよぉ。それに、レオンハルトよりはマシだと思うよぉ。マリアン嬢の傀儡じゃないだけさぁ」
冷めた目で言うレフィトを見て、本気でこの国の未来が不安になった。
「レフィト様、その言い方はどうかと思うわよ」
「うるさいなぁ。オレは、カミレと話してるの。ネイエ嬢に用はないし、おまえには言われたくないからぁ」
そう言いながら、レフィトはネイエ様をシャットアウトするかのように、顔を伏せてしまった。
めちゃくちゃ気まずい。謝りたいけど、これは私が謝るのは違うやつだと思う。謝るなら、レフィト本人にさせないと。
どうしようか……とネイエ様の様子を伺えば、まったく気にしていないように見える。
「──というわけで、マリアン様とその下僕には、表舞台を退いてもらえるように頑張ろうと思うのですが、カミレさんもいかがですか?」
「…………え?」
「一緒にやりませんか?」
「一緒にやるって──」
「決まってるじゃありませんか。王位をリカルド王子が継承できるようにするんですよ。今はまだ難しくても、決して不可能じゃないはずです。レフィト様も協力してくれますよね? あの方たちのこと、お嫌いでしょう?」
レフィトの返事はない。
私は……、お断りしたいな。ざまぁを回避したいけど、そこまでのことをしたいとは思わない。
それに、私ができることなんて、何もない。地位もなければ、人脈もない。何より、何がいいのか判断することもできないのだ。
「すみませんが、一緒にやることはできません。私は、レオンハルト王子のことも、リカルド王子のことも、この国の政治のことも、よく分からないんです」
分からないものを決めることはできない。
「今の私は、目の前のことをどうにかするので精一杯なんです。マリアン様とは、戦うことを決めましたが、それは国のためではありません。私の未来を守るためなんです」
ネイエ様のように国の行く末を案じているわけでも、立派な志を持っているわけでもない。
ただ、自分に降りかかる火の粉を振り払いたいだけなのだ。
「そうですか。では、互いに協力関係を結ぶというのはどうでしょうか?」
「協力関係ですか?」
ネイエ様が私にできることはあっても、私がネイエ様のためにできることがあるとは思えない。
レフィトの協力狙いだろうか……。
「はい。学園内外、困ったことがあればお助けしますよ。失礼かもしれませんが、カミレさんはダンスや礼儀作法、国の情勢といったものは、あまりお得意ではないですよね? 私で良ければ、その点のお手伝いもできますよ?」
あまりにも的確な指摘に、返す言葉もない。
ネイエ様は、それを提供することで、私に……、いや、レフィトに何を求めるつもりなのだろう。
「ネイエ様のおっしゃる通りです。貴族令嬢として必要なことが、私には足りていません。ですが、私にお返しできることは何もありませんよ」
「そんなことありません。こうやって、一緒にお話をしてくれませんか?」
「…………え?」
「カミレさんは、私にはない視点を持っています。また、知恵を貸して欲しいんです」
「貸せるほどの知恵なんて、ありませんよ」
買いかぶりすぎだ。
前世の記憶があって、貴族らしい生活をしていないから、考え方が少し違うだけなのだ。
ネイエ様の欲しいものは、手に入らないだろう。
「いーんじゃない?」
「レフィト!?」
「その代わり、噂を変える手伝いもしてくれないかなぁ? そうしたら、オレの情報もあげるよぉ? カミレと一緒にいる時間が減るのが嫌だから、協力はできないけどねぇ」
レフィトの言葉を聞いた瞬間、ネイエ様の目が光った気がした。
「私の情報もお渡しするわ。これで、情報戦なら、こちらの勝利が決まったわね」
そう言って笑うネイエ様、何だか悪い顔をしている。
このあと、噂を変えるべく話し合いが開かれ、いきいきと悪い顔をして話すレフィトとネイエ様に、このふたり似てるんじゃ……と思った。
けれど、言ったら怒られそうなので、そっと私の小さな胸の中にしまっておくことにした。
たくさんのお祝い いいね、ありがとうございます!!
活動報告へのお言葉をありがとうございました。
また、評価やブクマもたくさんいただいて、感謝しかありません。
すべて、嬉しかったです✨本当にありがとうございます!!!!




