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悪役令嬢にざまぁされたくない令嬢の婚約者は、幸せな庭を作りたい〜レフィトside③〜


「レフィト!」

 

 カミレの声がオレを咎めた。

 空色の瞳が、言い過ぎたと言っている。きっと、もう少し言い方を考えて……と言いたいのだろう。

 確かにゼンダは打ちひしがれている。

 けれど、自業自得でしかない。

 

「……レフィト様は、女性の味方でしたのね」

「…………は?」

 

 アザレア嬢がキラキラした瞳で、オレを見てくる。

 何というか、鬱陶(うっとう)しい。


「レフィト様、どうぞもっと言ってくださいまし!!」

「え、ちょっ……アザレア様!?」


 カミレが慌てている。

 オロオロとゼンダとアザレア嬢を交互に見て、手をパタパタとさせている姿は可愛くて癒される。

 その姿は、もっと見てみたい気もするけれど──。


「それは、お断りかなぁ」

「なぜですの?」

「オレは、アザレア嬢の味方でも、女性の味方でもないからねぇ。そんなに言いたいなら、自分で言えばぁ?」


 カミレが望まないことをこれ以上するつもりはない。

 言いたいことは言ったし、あとは自分でトドメを刺すなり、好きにしてくれって感じだ。

 オレの言葉を聞いて、アザレア嬢は少し考える素振りを見せたあと、一つ頷いた。


「分かりましたわ。自分で言いますわ。他力本願ばかりではいけませんものね」

「がんばれぇ」


 適当に応援し、カミレの頭を撫でる。

 大丈夫だよ、という気持ちをこめて笑いかければ、睨まれた。

 え、可愛すぎない? 睨んでるのに可愛いとか、最強なんだけど。


「レフィトのバカ」

「うん。そうだねぇ」


 カミレに言われるなら、バカという言葉も嬉しいなんて、我ながら馬鹿だと思う。

 そんなオレたちの横で、アザレア嬢は扇子を取り出すと大きく振りかぶった。

 そして、パーーーーン!!!! という音をあげて、その扇子はゼンダの頬の上を走っていった。

 まさか、言葉ではなく行動で示すとは……。

 ゼンダの頬に赤い筋ができた。角の硬いところが当たったのか、ほんの少し血が滲んている。


「な、何で避けませんでしたの!?」

「……気が済んだか?」

「こ、こんなものじゃ済みませんわ。どうしてわざと当たりましたの? 意味が分かりませんわ」


 アザレア嬢の声は震えていた。

 まさか避けないとは思わなかったのだろう。

 いくら見事なスウィングといえど、アザレア嬢は何の鍛錬もしていない普通の令嬢。騎士のゼンダなら避けられた。

 避けなかったのは、ゼンダなりの罪滅ぼしなんだと思う。

 だけど、まったくと言っていいほど、その気持ちがアザレア嬢に伝わっていない。


「……あと何回叩けば気が済むんだ?」


 うわぁ……、火に油を注いでるよ。 

 ゼンダの言葉でアザレア嬢の雰囲気が変わった。怪我をさせてしまったと後悔していた彼女はもういない。ギッとゼンダを睨みつけている。

 そして、叫んだ。


「あなたの……ゼンダ様のそういうところが嫌なんですわ!! 確かに私は馬鹿ですわ。だからって、いつもいつもいつも!! 私のことを馬鹿にし過ぎじゃありませんこと? 私が少しも傷つかないとでも思いましたの? 傷つかないんじゃありませんわ。心を固くして、あなたの言葉だけ耳を塞いで、聞こえないように、気にしないように、傷つかないふりをしているだけですわっ!!」


 言い切ったアザレア嬢は肩で息をしていた。

 目に涙をため、歯を食いしばり、ゼンダを睨みつけている。


「レア……」

「今更、愛称で呼ばれても絆されませんわよ。もう限界ですわ。婚約破棄をしてくださいまし。卒業したら、修道院に入りますわ!!」

「「えっ!!??」」


 ゼンダとカミレの声が重なった。

 カミレの方を見れば、大きな目が更に見開かれている。

 目が落っこちちゃいそう……。

 何でそんな馬鹿なことを思ったのか。自分でも分からないけれど、そっとカミレの目を手で塞いで、反射でまぶたを閉じさせる。

 その手をすぐに外せば、カミレがオレに視線を向けた。


「な、何?」

「目が落ちそうだったから、一回閉じたほうがいいかなぁ……と思ってさぁ」

「え、あ……うん?」


 よく分からない。そんな顔をされるが、オレだってよく分からない。


「修道院、ありだと思うよぉ」

「そう……なの? 悪いことをすると入れられちゃうところじゃないの?」

「違うよ。修道院は女性の逃げ場だよぉ」


 なぜ、そんな認識なのか。

 悪いことをして入れられるのは、牢獄なのに。


 確かに、驚くほど質素な生活にはなるだろう。

 今の何でもやってもらえる生活を捨て、自分のことは自分でやり、修道院で暮らす子どもの世話をする。自給自足の生活に耐えられる貴族は、きっとほんの一握りだ。

 だから、貴族の女性がその生活を選ぶとしたら、余程追い詰められていることになる。

 けれど、生活としての豊かさは失うけれど、心は穏やかに豊かになるかもしれない。

 家族や、その他から守られ、どうしても合わなければ、本人の意志で修道院を出ることもできる。生涯神に仕えなくてもいいわけだし。結構、自由が利く。

 まぁ、罪を犯したものは除外されて、牢獄行きだけど。


「今度、行ってみる?」


 こくりと頷いたカミレの頭を撫でる。

 自分の目で見て、知りたい。そう思うのは、良いことだ。

 もちろん、安全でカミレに害をなさない場所に限定されるけど。

 行ったら、きっと優しいカミレは何もせずにはいられないだろう。カミレの評判を上げるのにちょうど良い修道院をピックアップしておかないとなぁ。

 

 

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