表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2巻発売】悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした(Web版)コミカライズ企画も進行中です。  作者: うり北 うりこ@ざまされ2巻発売
第一章 悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指します

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/133

悪役令嬢にざまぁされたくないので、変装道具を買いましょう③


 叫んだと同時に、レフィトへと伸ばした手。

 私を見るレフィトの瞳は、まん丸だ。銀のスクエア型の眼鏡に、驚いた表情。眼福だわ……。

 ……じゃなくて! こういうところだよ。私の悪いところは!

 

「ドレスを着てないと、今日のデートが終わっちゃうことに気付いてなかった。汚したら、どうしよう……って気持ちでいっぱいになって、その他のことを考えられてなかった。ごめん」

 

 私のレフィトへと伸ばした手は、未だに宙に浮いたままだ。横になったまま伸ばしているから、腕がプルプルしてきた。

 驚くほどダサいけど、それが今の私だ。(ひる)むな。

 

「わがままなのは、分かってる。それでも、デートを続けたい。……駄目かな?」

 

 自分勝手過ぎるかな。今更だったりする? それでも、自分の気持ちは伝えないと。

 私を見つめたままレフィトは動かない。これは、どういう反応なんだろう。困ってる? 迷惑だった? それとも、驚きすぎて思考が停止してるの?

 

「うはぁー! 羨ましい。俺も可愛い婚約者から、こんなこと言われたいわ!! 何? レフィトはお嬢さんの申し出を受けないんか? だったら、俺が──」

 

 言葉を言い切る前にカガチさんは地面へと沈められた。

 そして、がしりと私の手をレフィトは掴んだ。

 

「愛してる!!!!」

 

 ふぁーーー!! あ、愛してる!!??

 えっ? 愛してる? どこにそこに繋がる部分があったっけ?

 デートか? デート続行を願い出た部分なのか?

 

「ドレスは、本当に気にしないで。オレの趣味だからぁ。カミレはオレが眼鏡をかけると嬉しいでしょ? オレもカミレがドレスを着てくれると嬉しいんだよ。だって、それはオレのために着てくれた、オレのための姿だからねぇ。カミレの姿を見た野郎の目を本当は全員潰してやりたいくらいだよ。オレのためにオシャレをしたカミレを見た罪、重いと思うんだよねぇ。カミレが嫌がるから、しないけどさぁ」

 

 スゴい勢いでまくし立てられ、脳の情報処理速度が追いつかない。

 何かよく分からないけど、後半は物騒だった。潰すとか、罪とか言ってたし。何で急に犯罪者の話になってるの?

 

「レフィト、お嬢さんが追いつけてないじゃん。思考を全部口にするなよ」

「カガチさん、全部分かったんですか!?」

「付き合いだけは長いからね!」

 

 レフィトに潰されたまま、親指を立ててカガチさんは笑う。何ともシュールな絵面に、出たのは愛想笑いだった。

 

「それで? デートは続行すんのか?」


 レフィトの下から這い出しながら、カガチさんは言う。立ち上がると、パタパタと踏み潰されていた箇所をはたいている。


「本当に体調は大丈夫? 無理してない?」

「うん。大丈夫だよ。やっと、ドレスを着る覚悟も決まったし」

 

 そう言った私の瞳を覗き込み、レフィトは微笑んだ。琥珀色の瞳がハチミツのように甘い。


「お願いしたいのは、オレの方だよぉ。オレとデート、続けてくれるぅ?」


 甘い声が鼓膜を揺すり、甘い瞳で視線を絡め取る。眼鏡の相乗効果で、トキメキがすごい。

 顔は熱いし、心臓は壊れるんじゃないかってくらい暴れ回っている。

 眼鏡は凶器だ。私の思考を壊す。今、レフィトにお願いをされたら、何でも叶えてしまいそうだ。好きな人と眼鏡の相乗効果を舐めていた。

 

 デートを続けたい。続けて欲しい。そう言いたかったのに、トキメキに押しつぶされ、声は出なかった。

 代わりに一つ頷けば、レフィトはへにゃりと笑う。


「可愛い……」


 あ、声に出ちゃった。トキメキに押しつぶされてたはずなのに、言わなくてもいいことだけは、口に出るとか……。


「ふふー。オレ、可愛いもんねぇ」


 くすくすと笑いながらレフィトは言う。外してしまった銀縁眼鏡を目で追いながら頷けば、レフィトの顔が目の前に迫ってきた。


「眼鏡とオレ、どっちが好きなのぉ?」


 ……えっ? オレと眼鏡?

 何でそんな、私と仕事、どっちが大事なの? 的なことを聞くの?


「比べるものじゃないでしょ」


 うん。比べるものじゃない。


「だよねぇ」


 なら、何で聞いたの?

 ちょっと近すぎるんじゃないかって思うくらいに近くにある琥珀色の瞳を見る。真意は何なのだろうか。


「言ってみただけぇ。眼鏡をした時と、してない時だと、あまりにも反応が違うからさぁ」

「……そう?」

「そうだよぉ。眼鏡に負けたみたいで悔しいんだよねぇ」


 そういうものだろうか。眼鏡をしていても、していなくても、レフィトはレフィトだ。

 確かに、トキメキ度合いは違うけど……。


 何て考えていたら、レフィトの顔が更に近付いた。

 ん? んんん? 近すぎない? 近すぎて、顔がよく見えないんだけど。


「ちょっと、レフィト……」


 近いと言う前に、鼻の先にちょんと何かが触れた。


「…………え?」

「真っ赤だぁ。かーわいい」


 今、鼻にチューしたよね? どうして? いや、婚約者だから当然……なわけあるか!

 学園でしている人、見たことないからね! 指先にチュッみたいな感じはあるけど。あと、ほっぺもあるなぁ。その時の令嬢たちの羨ましそうな視線と、取り巻きたちの嫉妬の視線を気にもしないマリアンと王子にある意味感心したんだよね。

 ここがふたりきりなら、百歩譲ってありとしよう。でも、カガチさんいるからね!


「今のは、破廉恥(ハレンチ)だからね!!」


 睨みつけて言ったが、レフィトはにこにこしている。可愛い……じゃなくて、反省しなさい!! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした』予約開始です✧◝(⁰▿⁰)◜✧ 書籍の方も、是非よろしくお願いいたします。 青字のところを押していただけますと、各サイトに飛べます。 ❁TOブックス公式サイト❁☆Amazon☆♡BOOK☆WALKER
― 新着の感想 ―
楽しい……(笑) カミレとレフィトの温度差!そして嗜好のベクトルが違いすぎて! なんですかその眼鏡愛? なんですか他の人見るな? 面白いです!! また読みに来ます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ