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女児型なると製造機 なるみ [ 試作型 ]  作者: しおまめさん


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5/6

結果次第で産廃なるのれす…

 鳴海工機製作所からモニターテストの連絡が届いた。なると製造機のチェック、僕には簡単なアンケートがあるらしい。

 なるみ2026を車に乗せて30分ほど。


「いやぁ……でかいなぁ」


 自社ブランドで販売していたのは旧「なると製造器」くらいで、高度な技術力と専門性で、一部の製品は世界的にも高いシェアを誇る部品メーカーだ。

 身体検査の後、「学習の進捗状況を調べます」と告げられて、なるみ2026は「はい!」と元気に答えたが、笑っているのは膝だけで、虚ろな視線をさまよわせ青息吐息だった。


「んででででゎ、行ってくるのれす!」

「すごく緊張してる? 大丈夫かなぁ」

「大鈴様は、こちらでお待ちください」



 応接室へ通されて、「笠松(かさまつ)直葉(すぐは)です」と名刺を差し出したノースリーブ の女性は、キリッと涼し気な目元にアンダーリムの眼鏡で、いかにも頭の回転の早そうな印象を受けた。

 正直に言えば、苦手なタイプ。


 テストの結果について尋ねると、「良好でした」と見せられたタブレット端末の画面に、身体各部の部品の項目が、ずらり。それぞれチェックがついている。


 自動車の整備記録簿のような体裁。

 テスト、そういう意味だったのか。

 思わず膝を打つ、と、同時に。

 ひとつ、疑問が首をもたげた。



「なると製造器から飛躍しすぎてません?」


「エラストマー樹脂製人工筋肉による、なめらかな動作。ジャイロを複数搭載し、全体を覆う触覚センサーの情報を人工知能で深層学習することで、人に近付いていくヒューマノイド。需要はあると考えていますが?」


 そこが疑問だった。

 なるみ2026、寄せ集めの技術で成り立っている。


「それは右足の、義足の説明ですね」

「なるみ2026になにか問題が?」

「なるみは頑張ってくれてます!!」


 笠松さんは「当然です」と呟いた。


「泣いて笑って食って寝る。ゲップやオナラもするし寝相が悪くイビキまでかく。感受性豊かというより情緒不安定。ほとんど人間。ヒューマノイドって言い張るのは、無理がありますよ」


「ヒューマノイドです」

「無理ありますよ?!」


 少し、迷う素振りがあった。


「昔話はお好きですか?」

「むかしばなしですか?」


 クスッと自嘲気味に笑った。



「むかーし、むかし。ダンビラという不良がおりました」

「鬼とかじゃないんですか?」

「お爺さん相手にカツアゲしようとして、失敗しました」

「カツアゲ……完全に不良だ」


 楽し気だったが、フーーッと長い溜め息。


「会長は年寄りのくせに強かった。しかも鼻つまみ者の問題児を拾ってくれた恩人です。客先を回り、独学で資格とって、会社で事務仕事。必死でやりました」

「ダンビラって、笠松さんなの?」

「私、年上好きなので」

「上って、何歳差?!」


 窓の外を見て「歳だったから」と呟いた。


「療養中の会長のお見舞いに、社長夫婦が娘さんと家族3人で旅立って。移動中に事故に遭い、一家で帰らぬ人に。葬儀でバタバタ、社長の後任も必要で……」

「たしか2年ほど前でしたね」

「会長を元気付けようとして」


 一時的に、会長に戻ってもらった。

 よくある対応だが、事情が事情だ。


「にしても……なんでそんな話を僕に?」

「私は。できもしない嘘をついたんです」

「嘘?」


 スマホを取り出して、簡単な操作。

 手渡された画面に表示された少女。



 それは――



「なるみ2026だ」

「生前のお写真です」

「あぁ! 社長夫婦の娘さんですか。つまり、なるみ2026はお孫さんに似せて作られた……っていうレベル?! まるで生き写しじゃないですか!!」


 これが、嘘。


「なると製造器の次期モデルはこうなりますと、お孫さんの写真を見せたんです。なると? あぁ、なると? そんなもの、出ても出なくても、どーでも良かった。たった一人でも需要はありました! 間違いなく需要はあったんですよ!!」


 興奮してバーン!と蹴ったゴミ箱。

 想像以上に詰まってた中身が散乱。

 笠松さん「あれ?」と呆けている。


 のそのそ動いて、拾い集めだした。


「間に合わなかった、それだけ」


 試作段階の、なるみ2026。

 会長さんに会えなかった……。


「ヒューマノイドを作る技術なんて無い。でも、右足1本無いだけで、お孫さんの御遺体は綺麗でした。ここは工業団地で、中小企業の寄合所帯かもしれない。でも食品加工から宇宙開発まで、様々な得意分野があるんです。大の大人が揃ってて、子供の一人も救えませんか?!」


「右は義足。だから足が弱いのか」

「きんでんぎそく、という」

「子供の臓器提供は数少ないのに」

「心臓を作る会社があって」

「どうやって時間稼ぎを?」

「液体冷凍で、凍眠させて」

「刺身の? ……異業種すぎます」


 工業団地に、病院は無い。


「わかってた、ただの自己満足でした。なのに、なんか、本当に動いちゃって。でも、記憶喪失だったし……どうしたらいいか困っていたら、お電話が」

「やめて? 僕まで逮捕されそ」


 紙ゴミだらけの応接室。

 2人で回収してまわる。


「ばかみたい! 私、ばかなんです」

「そんなことない、と思いますけど」


 笠松さん。


 目的のために手段を選ばなかったら肝心の目的を見失ってる。見た目に反して、ひどく乱暴者で、やさしい嘘つきで、おっちょこちょいなタイプっぽかった。

「また、定期的に検査に来ます」

「これからも、がんばります!」

「かわいい三枚おろし、そう報告がありました」

「 「 そこ? 」 」


 AIが学習した内容をテスト。

 結果は、コスプレ三枚おろし。


「ただ、ひどい点数ですね」

「え?」

「まだ今月の問題集は届いていないようですが」

「 え っ ?! 」

「そういえば、勉強がんばるって言ってたなぁ」

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