ハロウィンに挑戦するれす!
昨夜は衝撃的だった――
背中にチャックがあって、なると製造器が入っていた。
取り外して洗えるけど、結局おへそを洗うのはお風呂。
太陽光発電はウソ、食事をとらないと死ぬ。
昨日は最高の一本を入れた袋めんで大満足。
「おはにょ~ごじゃいますれすぅ」
「うん、おはよう」
なるみ2026は、睡眠も必要。
「ほい、チャーハン。一丁上がり」
「なると入りのチャーハンれす!」
「好きな器を選んで」
なると製造器の出し入れは初めてで、おへそをいじって「モゾモゾするのれす」と訴えながら寝付いたが、初めて来た家で、なると作り初体験で、違和感もあり寝相がひどかった。
「こぉばしいパリパリ薄皮、ふっくらした身、最高なのれす!」
「なると炒めたとこの感想だなぁ」
「はい、今日もがんばりますっ!」
「それより服とか、買い物だなぁ」
車に乗ってから、「ん?」と首を傾げた。
なるみ2026は体格が小さい。後部座席に座るにしても、チャイルドシートを持ってない。ジュニアシートかな? どっちだろ?
連れて行かないと選べない。
一緒に買って、帰りは座る。
そんなとこか……。
フロアマップによると、大人向けの商品は2階まで。子供服売り場はオモチャや文房具、ベビー用品と一緒に3階にまとめてあった。
「子供服、欲しいんですけど」
「お出かけ用の洋服ですか?」
『いいえ。用途は、なると製造です』
とは……とても言えないなぁ。
「似たのを、買い足す感じで」
「今はもう、在庫が無いかと」
「え、子供服売り場なのに?」
「暑がりのお子さんもおりますが、10月ですし」
「あ、あぁ季節? そ、そっ、そうですよね?!」
考えもしなかった、キャミソールにスカート姿。
これは今時期、売れ筋とは言えない恰好だろう。
なるみ2026は、家、車、店内と移動してきたけど、気温はかなり低いのだ。こんな恰好で連れまわして、行く先々で「大丈夫。なると製造機なんです」なんて言ったら育児放棄で通報されかねない。
「秋冬ものと、下着類を」
「え……全部ですか?!」
「そろそろサイズが、ね」
まぁ。
難しいことは後回しでいいや。
「なるみ、お姉ちゃんと選んできて?」
「わ~っかりまっした~!」
紙袋を持って戻った店員さんが、「売れ残りですけど」と、なるみ20026にモコモコ素材のコートを着せた。これはオマケで、コーディネイトは完成だろう。レジでスマホ決済する。
「 ぇ……?!!! 」
一瞬表示された値段に驚いたッ!!
生地は少ないのに、結構するなぁ。
知り合いに聞いてみるか。
『あいよ。あぁ、今日は在宅?』
「そんな感じ。質問していい?」
『おや、珍しい』
「子供の服って、どこで買うもの?」
『島村屋。あと、にしまつですかね』
「生活キツそう」
『扶養手当チョッピリ出ましゅよ?』
「チョッピリね……や、さんきゅ!」
了解、買いに来る店を間違えてた。
これは秋冬おでかけ用。もう1件立ち寄って普段着購入。季節は巡る。春夏秋冬4シーズン全部揃う頃には、ちょっとした出費になるぞ?
思わず溜め息が出た。
ありえない出費をしてきた。
「少子化、原因これ?」
なるみ2026は、女児型。
その形状に維持費がかかる。
「お買い物に失敗したれすか」
「失敗したのは僕だけどねぇ」
ビニル袋を握ってガックリうなだれた、なるみ2026に苦笑いした。
色々用意したけど、「好きなの選んで?」で持ってきたのが、百均のハロウィンコーナーにあった、魔女っぽい衣装とトンガリ帽子。とても掃除に使えそうにないホウキ。カボチャのLEDライト。まぁ、つまり全部オモチャ。
一着数万円の高級冬服より、ビビッドカラーの黒&オレンジにビビッときちゃうお年頃。それが全部で数百円、買い物上手だ。
「早速、着替えてみようか」
「とりっくぉぁとりーと☆」
安っぽい生地なので使い捨て?
だけど、かわいらしくなった。
想 像 の 百 倍 く ら い っ !!
「ねるねるねるねは、いーっひっひ♪」
「どこで教わってきたんだ、懐かCM」
「お店の店員さんに相談したのれす!」
なると作りをはじめる前に、撮影会。
部屋に戻るなり、意味不明な飾り付けをセッセと開始したけれど。カメラ機能で画面を見ると、なるほど華やかに見える。
釣られてテンション、上がってきた!
「いいなぁ、いい、似合う、似合う!」
「では、今日はこのまま練るのれす!」
「ねるねるねるねは?」
「い~っひっひ~ぃ♪」
ホウキを持ってクニクニ動きだした。
魔女の衣装がヒラヒラするたびに、ブラ下がった安っぽいビーズや、「なにこれ?」と思ってたキラキラのモジャ紐が、輝きながら踊る。
前回より、抜群に動きが安定してる?
このホウキなると作りには使えるっ!
『そっ、そうだカメラ、じゃなくって動画で――
と! ……そこで
ピピッ ピピッ ピピッ ピッ♪
百均で買ったキッチンタイマーが、煉り工程の終了を告げた。「ストーップ!」と声をかけると、「ふぅ、いたずらしちゃうんれすよぉ?」と笑ったので、お菓子をポンと手渡した。
「お疲れさん、ハッピーハロウィン」
「ぅわぁ、ほんとにくれたのれす☆」
「明日も、ハロウィンかもしれない」
「わっかりましたー!」
翌々月の引き落とし、まだまだ余裕。
なんとかなるかー!!
ベッドルームに、カボチャのランプ。
ちっちゃい魔女が緊張して座ってる。
「やっぱり、お買い物は失敗したれす」
「えっ? そうなの?」
「おへそが、出てないのれす」
「どうしたらいい?!」
「おさえててほしいのれすぅ」
どこを……どう?
「ここまで上げるっのれ、ぅあぁ、もも、もぉでましゅ」
「ぃゃ待てソレ持つ係? ちらちら下着、見えてるけど」
「ゆで、ゆでちゃったの、でっ、でてきちゃうのれすぅ」
「なんで?!」
「ゆでてるっ、とこ。見られりゅ……はじゅ、かし……」
「あ、そこ?」
や。
なると製造機の恥ずかしポイントわからんけど。
女児型は仮装するとカワイイ、そこは理解した。
「明日はハロウィンも本番だなぁ」
「ゎ、わかり、ました……ぱたり」




