出会いは偶然じゃなかったりして
物語が繋がる瞬間です。
本当なら、私が色々と説明しなければいけなかった。でも、お姉ちゃんが全部やってくれた。凄く格好いい。それと、大人に囲まれてびっくりした時に、お姉ちゃんは守ってくれた。凄く暖かくて安心した。
お姉ちゃんにもう一人お兄さんがいた事は、それほど驚かなかった。ただ、顔付きは似てないのに、やっぱりおじさんの兄弟だと思えた。
正義感に溢れ、とても優しい。この人もおじさんと同じく、家族を守ろうと頑張ってたんだと思う。
お兄さんは、街の人達を連れて港へ行った。そして、少しガランとした役所の受付部屋で、お姉ちゃんは私を椅子に座らせてくれた。
「ねぇ、ミサちゃん。小さい兄の所には、おじさんがカナちゃんを連れて向かうと思うの。私達が行くのは、国の対応を確認してからでい?」
「ん。化物に関してはカナに任せれば解決。病気に関しては、国の対応次第で死者が増加する」
「そうよね。でも、万が一の場合は私達で何とかしなければだけど。土台無理な話しよね」
「独りだったら、それも仕方ない。だけど、お姉ちゃんが示してくれた」
「どういう事?」
「私はカナが居ないと何も出来ない。カナは想いを受け取って力を発揮する」
そう。お姉ちゃんは独りじゃない。私がいる、カナがいる、おじさんがいる、お兄さんがいる、街の人達がいる。
「だから、何とかなる!」
「そっか。ありがとう、ミサちゃん」
お姉ちゃんになると決意したばかりなのに、また勇気を貰った。やはり駄目な姉だ。そんな私にも出来る事が有ると教えて貰ったんだ。最後まで頑張らなきゃ。
自分で言っといて『万が一』なんてね。見た事もない誰かが、知らない場所でどれだけ死のうと、まるで実感がない。
私とミサちゃん達は違う。私には何もない、誰一人として救えない。でも、抗わなければわからない事が有る。
私の知る限り、助けを求めた際に国が動く事はなかった。それこそ、重大な危機であっても。多分それは、私が抱えている疑念の正体なんだと思う。
恐らく私達は、滅びる事が運命付けられている。
その証拠に、私は病気で死ぬはずだった。街の人達は病気で死に絶え、例え生き残ったとしても怪物に殺される。
ミサちゃん達が街へ来なければ、そうなる運命だったんだと思う。
私は「救われた命だから誰かを守る為に戦う」なんて格好いい事は言えない。
だって私は悔しいんだ! 勝手にあれこれ決められて、挙げ句の果てに死ねと言われて!
もうわかってる! それもこれも可愛い妹達を殺す為なんでしょ? 絶対にさせない! それだけは許さない!
ただ私のちっぽけな決意を他所に、事態は予想外の展開を見せる。十数分の後、町長が告げた言葉に私は言葉を失った。
扉が開き、再び町長が受付の向こうに現れる。その表情は浮かれるでもなく、悲しいでもなく、怒っている訳でもない、何とも表現し難い表情だった。
「町長。連絡はしたの? まさか、通話機が壊れてたなんて言わないわよね?」
「あ、あぁ。連絡はした」
「どんな反応でした? もしかして一蹴されたとか?」
「いや、そんな事はない。内務局なんて部署に取り次いでくれた」
「なんで?」
「いや、わからん」
「ちゃん説明したの?」
「あぁ。だけど」
「だけど何?」
「もうこっちに向かってると」
「はぁ? 誰がです?」
「担当官だそうだ」
「はぁ? なんで?」
「いや、全くわからん」
「どういう事……」
☆ ☆ ☆
兄貴は嘘をついていない、おかしくもなっていない。いつだって家族を守ってくれた。馬鹿げた俺の話を信じてくれた。でも、俺は兄貴を嘘つきにした。
もし俺が嘘をついてなければ、家族の船を奪われ街を追い出されていた。今は、それが理不尽だと思える。仲間が俺達を追い出す事もないと思う。
だけど、あの時はそれが当然だった。理由はわからない、頭の中で「知ろうとするな」と告げているから。
それから兄貴は、港から追い出された。それでも兄貴は色々と調べ続けた。そして「狂った」と呼ばれる様になった。そんな兄貴の為に、俺は何も出来なかった。
いや、嘘だ。俺は何もしなかったんだ。
死の間際にお袋は涙を流して、「兄貴と仲良くしろ」と言った。その時やっと、俺が間違っていると理解した。兄貴がして来た様に、俺も家族を大切にするべきだった。
例えこの街を追い出されても、家族が一緒ならどんな場所でも生きていけるんだ。
俺は、家族と仲間の双方に不誠実だった。だから俺は、港に集まってくれた奴等に頭を下げた。
「ごめん、ごめんなさい。俺はみんなを騙していた。俺は妹が説明してくれた怪物を確かに見た。知らないと言わなければ、この街で居場所を無くすと思った。だから嘘をついた」
最初に謝らなければならない、全てはそれからだ。そうでなくては、妹の話を信じて集まってくれた街のみんなに、不義理を働く事になる。
「全て俺が悪い。兄貴は俺を信じてくれた。兄貴は街を救う為に頑張ってた」
妹が言ってた『この街だけじゃない、この国全ての命に関わる危機』なんてのは、俺一人どころか街中の奴等を集めても、止められはしないと思う。
だけど、ここが最前線なのは間違いない。そして、俺は家族の為に戦いたい。
「嘘をついた責任は取る、この件が片付いたら罰を受ける。それまでの間は、俺に兄貴の手伝いをさせてくれ! お願いだ、みんな! 兄貴に償いをさせてくれ!」
伝えきったつもりだが皆の反応がない。恐る恐る頭を上げると、誰もが呆気にとられた様な顔をしている。
俺は馬鹿な事を言ったか? 理解出来ない事は言ってないと思うが? それとも頭の中に響く声が邪魔をしてるのか? 俺にはもう聞こえて無いけどな。お袋が死んだ時に聞こえなくなったからな。
もし、今でもその声が聞こえてるなら、どうか無視してくれ! 頼む! その声じゃなく、俺の話に耳を傾けてくれ! 妹の説明を聞いてくれた時の様に! どうか、どうか!
「違う! お前が悪いんじゃない! 俺も同じだ!」
「親方?」
「俺もだ。俺も見た、でも黙ってた。お前が罪を背負う必要はない! お前の兄貴を悪者にしたのは俺だ! みんな、すまん!」
漁を取り仕切る親方の声をきっかけに、ポツリポツリと頭を下げる奴が出始める。
そいつ等は、「水揚げした魚がおかしい事に気が付いてた」とか、「病気の原因は魚だと思ってた」とか色々と言っていたが、共通してる事も有った。
全員が『思っても、口に出しては駄目だと思っていた』事だった。
多分、皆が俺と同じだった。街の状況よりも、自分が置かれている状況がわからないんだ。でも、今はそれを考えるべきじゃない。今はこれから起きる大事に備えなければならない。
俺は、頭を下げてくれた仲間達に、「ありがとう」を告げる。そして、俺が改めて口を開こうとした時、人だかりの向こうから大きな声がした。
「おい! 反省会は終わったのかよ!」
そして、周りを威嚇する様な鋭い目つきの奴が、人だかりをかき分ける様にして、俺の方へ歩いてくる。
「お前、名前は?」
「は? 名前?」
「なんだよ、そこからかよ! ったく、タカギの馬鹿は何してやがんだ!」
「いや、その前にあんたは誰だ?」
「あぁ? 見りゃ分かんだろ? 調査に来たんだよ!」
「え? 何の?」
「頭の悪い野郎だな! 港を中心に広がってる病気の調査だよ!」
「でも、俺達の病気は他所から来た子供が」
「カナの結界だろ? んな事は知ってんだよ!」
背丈と顔付きから推測する限り、恐らくこいつは女だろう。この街は態度の悪い奴はいるけど、こいつよりはましだ。それに、こいつほど目付きの悪い奴は、この街にいない。
考えるまでもなく、町長が連絡したから来たんじゃない。事情がわかってる風だったから、恐らく別の誰かが危機を知らせたんだろう。
こいつと『ぼけっとした女』ってのが、どれだけ戦力になるかわからないけど、どちらにせよ、国もこれをいち早く解決すべきだと認定したはずだ。
「さて、お前等は今から臨時の職員だ。報酬は生き残ってから、内務局へ申請しろ! 俺とぼけっとした女が国から派遣された。俺とそいつに従って作業しろ! 質問は受け付けねぇ!」
☆ ☆ ☆
お片付けが終わってから、おじさんと一緒に弟さんを待ってました。しばらく待ったけど帰って来ないので、港へ行く事にしました。そんな時です、ココココと扉を叩く音がしました。
「え〜っと、あの? 医療局から来ました。パナケラと申します。ここ一帯の調査をする為に。って聞いてます? あの〜、いますか〜?」
優しそうな声です。何だか懐かしい感じがします。おじさんが扉を開けると、笑顔が可愛い女の人が立ってました。
女の人はおじさんが邪魔なのか、飛び跳ねながら中を覗いています。面白い人です。
そして、私と女の人は目が合いました。
「わぁ〜、カナちゃん? それともミサちゃん?」
「カナだよ。お姉さんは?」
「パナケラだよ! 覚えてない? そうだよね、ちっちゃかったもんね」
パナケラさんは、おじさんを跳ね除けて私に抱き着きました。やっぱり懐かしい匂いです、それと……。
「ねぇ。パナケラさんから、ばあちゃんの匂いがするね。知り合いなの?」
ここまで読んで下さった方は、港に現れたのが誰だかわかると思います。
答え合わせは次話にて、お楽しみに!




