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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
Prelude to Yusei Theater

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お嬢様の修学旅行 中等部 六日目 その2

だからさぁ……嘘でも大騒動になると小説家はネタにぶん殴られるんだよぉ……某島のやつ……

あ、解散総選挙は無党派の大波を観測したので『郵政選挙が帰ってきたぁぁ!』と乙事主のような叫び声をあけでいるわたくし。

 ロンドンの窓の外には曇り空。石畳はまだ湿っていて、ホテルの朝食会場だけが先に温度を持っている。

 私が橘由香とエヴァを連れて入ると、会場に備え付けのテレビを見ていた皆が私の方をちらりと見る。


『……それで、イースターエッグをもらいそこなった公爵令嬢に英国王室からささやかなプレゼントとしてイースターエッグを……』


 見事な仕込みであると感心するしかないのだが、気にしないふりをしつつ少しだけ背筋を伸ばして席に着いた。

 テーブルには銀のポット、白い皿、焼きたてのトースト、ベーコンに目玉焼き、ベイクド・ビーンズ、マッシュルーム、トマトにベーコンやソーセージ……見事なイングリッシュ・ブレックファーストである。

 労働者階級の料理じゃねと突っ込む人もおらず、英国で唯一美味しい食事なんて知っていれば誰も文句をいう訳もなく。

 かくして、皆で手を合わせる。 


「いただきます」


 食事をしながら話題は、オプショナルツアーの大英博物館の見学に移ってゆく。

 私はナプキンを膝に置いてからベーコンとソーセージを取った。

 明日香ちゃんはスクランブルエッグを山盛りにしながら小声で言う。


「大英博物館ですって。どこ行く?」

「明日香ちゃん。声、少し抑えて」


 私が注意しながら蛍ちゃんの方を見ると、えらく眠たそうな蛍ちゃんがトーストにバターを塗っていた。

 当然気になった私は明日香ちゃんに聞く訳で。


「蛍ちゃんなんであんなに眠そうなの?」

「瑠奈ちゃんがもらったイースターエッグを遅くまで眺めていたからじゃない」


 ぉぅ。

 あれそんなにお気に入りになったのか。

 あげるのはやぶさかではないが、テレビでは派手に公爵令嬢こと私へのプレゼントとして扱われているので、そのまま蛍ちゃんに渡すと外交的に問題が……なるほど。おとなってこういうふうに大変なのかとプレゼント一つでなんか悟る私。

 学校近くのお狐様の神社の御神体の一つにするかと心の中で決める。


「何のんびり食べているんだ? 瑠奈。

 今日のメインの大英博物館。迷子になったら洒落にならないから、作戦会議しよう」


 私たちの会話なんてお構いなしに栄一くんが作戦会議に誘ってくる。

 私は食後の紅茶の色を確かめるようにカップを持ち上げ、落としたミルクの渦を眺めつつぼやく。


「いや、いいけど何か見たいのあるの? 色々あるけど」

「だからこそ、欲張らない」


 私のぼやきみたいなものに反応したのは光也くん。

 続いて裕次郎くんが繋げ、修学旅行のしおりの余白を開く。


「あそこは広すぎる。

 全部見ようとすると全部が薄くなる。

 まず“絶対見たい”を一人ひとつずつ出そう」


 そんなノリで私、明日香ちゃん、蛍ちゃん、栄一くん、裕次郎くん、光也くんの六人で見たいものを出してゆく。

 これ、オプショナルツアーだからこそ、好きに班が組めるというか、まぁこれぐらいのわがままは押し通していいだろう。

 まずは栄一くんがコーラを片手に手を挙げる。


「ロゼッタストーンは見ておきたいな」

「僕はラムセス二世像」

「ルイス島のチェス駒かな」


 続いて裕次郎くんと光也くんがモーニングティーを片手に続く。

 明日香ちゃんは少し考えてカップを置いて告げる。


「私は浮世絵かな。屈指のコレクションがあるって」

「蛍ちゃんは何が見たい?

 ……うん。『死者の書』?

 そんなのあるんだ……」


 そんな事を聞きながら候補をメモする私。

 栄一くんが私のペンが止まったのを確認して言う。


「瑠奈は何処を見たいんだ?」


「うーん。私は何処という訳じゃないけど……しいていうならば、円形閲覧室かな。歴史の中でそういうものが残ってるのは好きなのよ。修学旅行って、どうしても有名どころだけ追いかけがちだけど」


「瑠奈らしいな」


 栄一くんが笑い、皆の希望が出た所で橘由香が大英博物館のマップを広げる。

 地図に赤いピンがいくつも立っている。

 エヴァがそれとなく、口を挟む。


「英国政府も馬鹿ではないと思うのですが、大英博物館は昨今の情勢の為に臨時休館が決まっております。

 ええ。貸し切りでございますとも」


「うわぁ……」


 その意味を察した裕次郎くんがげんなりとした声を漏らす。

 食堂の奥では、難しい話をする事になる一条とアンジェラが新聞片手に食事をしているのだが、邪魔をしない気遣いと同時に、どうぶん殴るのか考えているのだろう。

 夕方には日本から加東特命全権大使がやってくるので、その後は日本大使館とシティーの桂華金融ホールディングスロンドン支店とダウニング街10番地を移動する事になるのだが、穏便に収まるといいなぁとこの場では他人事のように思ってしまうのも、大英博物館に心惹かれているからなのかもしれない。

 光也くんが私を指さして言う。 


「あと、修学旅行の鉄則。寄り道したくなっても、勝手に消えない。

 必ず二人以上で行く、戻る場所決める」


「申し訳ございませんでした」

(……ぺこり)


 それを言われるともう頭を下げるしかない私と蛍ちゃんである。

 私と蛍ちゃんの謝罪に全員が笑う。制服の堅さが、朝食の湯気で少しだけほどけていく。


「本当に大丈夫だよな?」


 多分気づいていないが栄一くんの確認は前振りと呼ばれるものと……テレビ番組でもあるまいしと思いながらも、聞かれた以上は確認しましょうと神奈水樹を呼び寄せる。

 占い師の彼女の予言はこうだった。


「大丈夫じゃない。私たちは」


「……何よ?

 その私たち以外で何か起きそうな言いぐさは?」


 私が眉を顰めると、神奈水樹はあっさりとその私たち以外を言い、聞いていたエヴァを狼狽えさせたのである。


「高宮館長がこう言ってたんだって。

 『もしお嬢様が美術館で何かに出会うのならば、それはイースターエッグこそ相応しいでしょうね』って。それを聞いたうちの愛夜先輩……あの人妻女子高生店長が問い詰めに行ったら、続きを話してくれたのよ。

『それで騒動になったら、ラスプーチンのグリモワールにもう一度注目が行くでしょうね』

って」

本当に世界情勢……特にイランがどうなるか次第で、東京での道化遊戯第三章を進めます。

お願いだから世界よ鎮まってくれ……orz


4:22追記

書き上げてTwitterみたら、「英国首相辞任か?」の速報が。

……orz

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― 新着の感想 ―
なおアメリカではラトニックさんがエプスタインの件で集中豪雨を受けていて日本の80兆円投資のことでなんとかうやむやにもっていくようだ
昔から思ってたけど、この小説に出てくるような知識を学べる学部っていったいどこなんだろうか… そして作者さんはどの学部を卒業された方なんだろうか… どうしてこんなにも多方面にお詳しいんだ… もうすぐ二…
小説は「待った」が利くけど、現代社会系の授業、講義を行っている教師たちは待ったが出来ないから頭を抱えているだろうなあ....。 うちの母が戦後すぐに小学校に入学したとき、担任が開口一番「社会情勢が余…
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