桂華資源開発オフィスにて
Q 感想にてロシアどうなってるの?
A ご覧のありさまだよというお話
「ただいまー。
岡崎統括いる?」
「奥に居ますよー」
「おかえり。アニーシャ。欧州のドサ回りどうだった?」
「駄目ですね。岡崎統括。
ロシアのアセット、ほとんど崩壊しています。
国が潰れてからおよそ10年ですからね。
人も金も繋げなかったから西側に張り巡らせたネットワークも崩壊します。分かっていた事ですが」
「そっちは、組織的に動いていないだけでよしとするか。
で、生き残っているだろうロシアのアセットは今、どこで何をしているんだ?」
「メインはチェチェン共和国。その次がウクライナで、西側の生き残ったネットワークは米国大統領選挙へ。
ロシアコミュニティを通じて動いていたみたいですが、実際はうちへのタダ乗りですよ。
請求書つきつけてやろうかしら……」
「ははは。少なくともこのバカ騒ぎにロシアが絡んでいないのが分かっただけでも朗報だ。やはりウクライナとは思ったが、二番目か」
「この騒ぎには絡んでいませんが、ウクライナではバリバリに欧州の魔女たちとやりあっていますからね。ウクライナ大統領選挙当日まで何があっても驚きませんよ」
「チェチェン共和国の方はどうなっている?」
「ロシア本国も含めてアセット総動員です。
にもかかわらず、航空機や地下鉄が爆破されるわ、北オセチア共和国ベスラン学校占拠事件での衝撃で国内は表向きは平静を装っていますが、内情は大混乱ですよ。
未確認情報ですが、ウクライナのアセットすら引き上げさせて、本国とチェチェン共和国に振り向けているとか」
「……なんだって?」
「あまりにも守る場所が多すぎる上に、ロシアの国土が広すぎるんです。
使えるアセットをロシア国内に張り付けないと、対テロ戦争で後手に回りかねず、それですらこの様です。
9.11が起こっていなかったら、また国が滅んでいたかもしれませんよ」
「思った以上にロシアはやばくなっているな。
お嬢様の国民的支持の背景はここか……」
「この騒動で欧州の魔女たちがアセットをウクライナに大量投入するのが確定しているのに、国内の対テロ戦争でロシアはウクライナにアセットを十二分に投入できない。
こりゃ、まさかがありえますよ」
「……まさか? グルジア共和国みたいなことがありえると?」
「野党候補者を仕留めそこなったのは今となっては痛いですね。
お嬢様の護衛にスペツナズをつける、とロシア大使館が秘密裏に申し出たのを断ったそうですが、多分断られるのを承知で提案したんでしょうね。
スペツナズの精鋭はロシア本国およびチェチェン共和国にて対テロ戦争に投入されているのは確認済みです。
どうします? 日本は善意の第三者を気取れる立ち位置ですが、政府を動かして介入しますか?」
「お嬢様の読み通りになってきているじゃないか……静観するしかないだろう」
「本当に何なんですか? あのお嬢様の読みの深さは?
私は旧東側の人間として科学によって迷信が排除されてゆくのを見て来ましたが、お嬢様のあの読みは時代が時代ならば預言者として祭り上げられますよ」
「あまり深くかかわらん事だ。お嬢様もそうだが、お嬢様のお友達は多分本物だったろうからな」
「……肝に銘じます」
「話を戻そう。
ロシアの欧州アセットが崩壊しているのはいい。
それを誰が拾ったか? だ」
「岡崎統括の推測通り、マフィアが食い物にしていましたね。
宗教過激派が北アフリカ系イスラムコミュニティーからテロリストを送り込んだように、マフィアの連中は旧東側アセットを利用して暗殺者をお嬢様の所に送り込んでいるかと」
「プレイヤーが複数いて賭けている弊害だな。
西側も東側も相手を潰すためにテロリストを育てて、その結果手を噛まれるなんて笑い話にもなりゃしない。だが、マフィアの火遊びにしては賭け金が大きすぎないか?」
「マフィア側はお嬢様のいやがらせで止まった洗濯機を再稼働したくて色々手を尽くしているみたいで。その洗濯機に名乗りを上げたのが……」
「……王立エディンバラ商業銀行と欧州セデル銀行」
「その通りです」
「そっちは一条CEOの仕事だ。俺にもあかせないどでかい闇だそうで。
少なくとも、パリの騒動はもう一幕ありそうだと関係各所に伝えてくれ」
「承知いたしました」
「それと、私見でいい。アニーシャ。
パリの騒動の後、もう一幕があるとしたら、元東側アセットとしての意見を聞きたい」
「私が想定されるマフィアのヒットマンならば、パリでは仕掛けませんね。
金と情報が集まって、ロシア人コミュニティーが機能していて、テロの下地がある場所で仕掛けます。
ちょうど、明日、お嬢様そこに向かうじゃありませんか」
「ああ。なるほど。プレイヤーが複数だとこういう事が起こる訳だ。
王立エディンバラ商業銀行を守るために英国諜報機関も参加しそうだな。ロンドンでのもう一幕は」
アセット
資産の意味だが、諜報の世界ではスパイや協力者を指す。
チェチェン紛争2004年 ウィキベティアより抜粋
ナズラン襲撃 - イングーシ共和国・ナズランをチェチェン独立派が襲撃
モスクワ地下鉄爆破 - 41人死亡
グロズヌイの対独戦勝記念式典を爆破 - 親ロシア派のチェチェン共和国大統領アフマド・カディロフなど30人死亡
イングーシ共和国内務省などを襲撃 - 約90人死亡
モスクワ発旅客機同時爆破 - 80人以上死亡
モスクワ地下鉄駅付近爆破 - 約10人死亡
北オセチア共和国ベスラン学校占拠事件 - 322人死亡
この状況でお嬢様の護衛にさける戦力がある訳がなかった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E7%B4%9B%E4%BA%89




