某アンダーグラウンドネット掲示板より 2004年秋 その2
美術と芸術周りの解説が足りない……
ネタ元の一つ公開『ゴルゴ13』(さいとうたかお リイド社)「すべて人民のもの」
NANASHI:何で美術品や芸術品が欧州の闇の最奥って呼ばれているかですって?
AYA's:そうなのよ。そのあたりの知識がないからあなたたちが慌てているのがいまいちわからないのよねー
NANASHI:まぁ、簡単な話。残った美術品や芸術品は王侯貴族というパトロンの存在なしでは成立しえなかった。だから、それらの品が歴史の生き証人になるのよ。
AYA's:うんうん。ここまでは分かる。続けて。
NANASHI:という事は、この美術品や芸術品が王侯貴族の価値証明になっているという訳。
AYA's:か、価値証明???
NANASHI:あー。ここで躓いたわけね。OK。もう少しわかりやすく説明すると、芸術家が成功するとその芸術家を抱えていたパトロンも脚光を浴びるのよ。権力者の箔付けって訳。
AYA's:あー。なるほど。それなら理解できるわ。
John Doe:入室しました。いらっしゃいませ♪
John Doe:まどろっこしい事をやっているな。俺も混ぜてくれよ。そんな芸術品や美術品は逃亡時の財産になったんだ。
NANASHI:それ私が言おうと思ったのにー!!!
AYA's:財産? お金じゃダメなの?
John Doe:お前、王侯貴族の全盛期の通貨は金貨銀貨だぞ。一生分の逃亡資金でも重たくて持ち運びできんだろうが。
AYA's:あっ……!?
NANASHI:それに比べたら絵って軽いでしょ♪ あと、逃亡だと馬車だから。重さは本当に大事なのよ。
John Doe:欧州の王侯貴族は基本親戚みたいなものだからな。ある王家が認めた芸術家の作品は他国でも価値を尊重される傾向があったんだよ。まぁ、フランス革命からそのあたり滅茶苦茶になってゆくんだが。
NANASHI:で、それが完全に瓦解することになったのが二度の世界大戦。これでドイツ・オーストリア・ロシアの三帝国が倒れて、これらの美術品や芸術品が闇に隠れる事になった。
NANASHI:その美術・芸術品の避難先がスイスであり、英国であり、裏で暗躍していたのが、バチカンとユダヤ人。ワシントン原則は『ナチスによって没収された美術品は、奪われた家族の子孫に戻される』という国際的合意だけど、これよく見て。『奪われた家族の子孫に戻される』って所がポイント。
AYA's:???……ごめん。わかんない。
John Doe:あんたの雇い主のお嬢様だけに的を絞るとだ。ロシア帝国は第一次大戦で莫大な戦費調達のために多くの資産を担保として欧州の金融機関に差し出した。その当時の金融機関にはユダヤ人が絡んでいる。当然ナチスに分捕られる訳だが、こいつの所有でもめる事になる。
AYA's:え? 借金のかたにとられておしまいじゃないの???
John Doe:だったらこんな所でこんな話をする訳ないだろうが。世界の富の1/10を占めていたロマノフ王朝の財産だぞ。王侯貴族相手の信用前提の口約束だからこそ、話がここまでこじれるんだろうが。
NANASHI:ついでにあんたの国、日露戦争の借金律儀に返し続けていたのよ。こういう信用ってこの手の口約束に容赦なく効くのよ。困った事に。
AYA's:つまり、どういう事?
NANASHI:金融立国スイスの原資の一つがロマノフ王家の財産ってのはその筋じゃあ有名な話だからね……
John Doe:信用前提の口約束だからこそ、スイスは口座を閉じたんだよ。だから、ソ連もナチスも今のロシアもロマノフの財宝を手に入れていない。『ロマノフ家の財産』だからな。
AYA's:やっと話が見えてきたわ。スイスにあるかもしれないロマノフ家の財産ってロシア帝国が倒れた時の亡命資金だった訳ね。
NANASHI:で、そんな口座があるかもしれないスイスのプライベートバンクに、信用は高い日本という国からあなたのお嬢様が莫大な資産つきで口座を開いていると。ロマノフ家の財宝と疑われて当然でしょう?
AYA's:うわぁ……それは私でも言い逃れできないかも……
John Doe:で、悪い奴らはお前のお嬢様を使って、その閉じたロマノフの財宝を開けようとたくらんでいる訳だ。奴らが欲しいのは美術品や芸術品じゃないんだよ。その価値を保証したロマノフ家という『王家』なんだ。格好のマネーロンダリングシステムだからな。
NANASHI:間が悪い事にEUができて一つの欧州が視野に入りだしたからね。欧州大統領という権威にいつ青い血が就くか欧州ではひそかな話題になっている。ヴェネツィアでお嬢様のパイ投げを阻止したあのロートリンゲの御曹司とお嬢様がくっついたら、欧州王家の再統一が成立するでしょうね。その青い血で君臨すれど統治せずでは飯は食えないから、彼らは彼らの財布を用意する必要があると。
AYA's:やっと話が飲み込めてきた。高宮館長が変な事を言っていたから気になっていたのよ。
NANASHI:へ?
John Doe:何?
anonymous:入室しました。いらっしゃいませ♪
anonymous:おいちょっと待て! あの高宮晴香館長が何か言ったのか!?
AYA's:いらっしゃい。ええ。お嬢様の義妹のお父様に美術品のレクチャーをしていたのをたまたま聞いていたんだけど……
NANASHI:それ絶対わかって流しているって……
John Doe:彼女はラスプーチンのグリモワールの騒動で米露のその筋返り討ちにした魔女だぞ。絶対にここに流れる事わかって聞かせたんだろうな……
anonymous:早く言ってくれ! あの魔女は何て言ったんだ???
AYA's:えっと確か……『もしお嬢様が美術館で何かに出会うのならば、それはイースターエッグこそ相応しいでしょうね』って……
anonymous:退室しました。またどうぞ。
John Doe:退室しました。またどうぞ。
NANASHI:退室しました。またどうぞ。
AYA's:ねぇ。ちょっと! 何も言わずに去るってひどくない?
馬車で逃亡
ヴァレンヌ逃亡事件
間違いなく成功したら欧州の歴史が変わっていた事件の一つ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%8C%E4%BA%8B%E4%BB%B6
日露戦争の戦費返済。
完済したのは1986年との事。
https://studyhouse1.com/burogu/%E3%80%90%E3%80%80%E6%97%A5%E9%9C%B2%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E5%A4%9A%E9%A1%8D%E3%81%AE%E5%80%9F%E9%87%91%E3%82%92%E3%80%80%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E8%BF%94%E3%81%97%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%81%A6/




