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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
Prelude to Yusei Theater

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東京 桂華金融ホールディングス CEO室にて その1

長くなりそうなので一旦ここまで。

「マーク・M・バーンズ。お呼びにより参上いたしましたが、珍しい顔がいらっしゃいますな」


 近くこの部屋の主はアンジェラ・サリバンに代わるのだが、そんな素振りを見せる事無く桂華金融ホールディングスCEOの一条進は彼を応接用の椅子に座らせる。

 その応接用の椅子には先客として橘隆二が座っているのだが、マークはあまり気にする事無く腰掛けて陽気なアメリカ人のふりをする。


「で、もうすぐこの部屋を明け渡すボスが今更私にどのような御用で?」


「『欧州の魔女たち』について」


 一条の出した言葉にマークは白々しく笑う。

 それでも彼の手が震えた事は座っていた橘には見えていた。


「あれは本当に厄物ですよ。

 穏便に余生を過ごしたいならお忘れになる事をお勧めします」


「私もそうしたい所ですが、その魔女たちがお嬢様にご執心だ。

 それならば守る為にも、知らねばなりません」


 その言葉は橘から出る。

 裏にいた人間しか出せない凄みを見せると、マークは白々しく両手をあげる。


「脅してもたいしたものは出ませんよ。私も命は惜しいので」


「結構です。その判断すら我々はできない以上、あなたが話せる限りの情報を頂きたい。

 もちろん、それ相応のお礼は用意するつもりです」


「一条CEOが?」


「桂華院公爵家が」


 横から口を出した橘の言葉に、この席が橘および桂華院公爵家の意向を強く受けている事をマークはいやでも理解する。保護プログラムを受けて第二の人生を送っている身とはいえ、できる人間特有の出世欲は持っている彼は己の命とリスクを天秤にかけてバランスを取るように口を開く。


「確認を。

 ムーンライトファンドを開設したのは一条CEOで?」


「ええ。あの時はウェルスマネジメントとしてしか考えていなかったんですよ」


 苦笑する一条の目に後悔の色が浮かぶが、第二地銀のバンカーに欧州の歴史と闇を把握した上でプライベートバンクを利用しろと言う方が無理である。

 そして、おそらくそのあたりを理解していた橘も、アジアと欧州の違いまでは分かっていなかった事がこの話の悲劇につながっていた。


「話せる所までです。私も命が惜しいので。

 東西冷戦時米国から出てゆくドルの流れは二つありました。

 一つがアジアでもう一つが欧州。

 そのマネーの拠点が東京であり、ロンドン。ここまではOKですか?」


 東西冷戦華やかなりし頃、東京-香港-シンガポールを軸にドルが流れ込み、欧州はロンドン経由でパリやローマやフランクフルトに資金を流し込んでいた。

 二人が頷くのを確認してマークは続きを口にする。


「冷戦中、東側に負けるのは論外とはいえ、米国はその最前線である欧州とアジアを完全に信用してはいなかった。北日本がソ連と米国の超大国の妥協でできた際に、日本における工作資金の避難場所として樺太銀行設立に米国の秘密資金が流れたのにはそういう理由があります」


「『国家に真の友人は居ない』ですか。

 それがアジアにおける日本というのは理解しました」


 橘がため息とともに言葉を吐き出すのを確認してからマークは続きを口にする。

 まだまだ口も軽く言える国際社会の暗部の質問を。


「では、欧州のどの国を警戒していたと思いますか?」


「日本と同じ立ち位置ならドイツでしょう」


「もしかして、今のEUの原動力となったフランスですか?」


 一条と橘の答えにマークは少し悪戯っ気を出してその答えを言う。

 二人の絶句する顔を想像し、実際その通り絶句したからである。


「英国です。

 第二次大戦後、勝者である米国とかつての超大国だった英国の軋轢は暗闘レベルではなかった。

 それもあって、その秘密資金は英国に対する監視と警戒を兼ねて英国外に置かれる事になった」


 橘が当時を知る顔で、その軋轢を口にした。


「……スエズ動乱ですか?」


 第二次中東戦争とも呼ばれる戦争は、エジプト政府によるスエズ運河国有化と、それを反故にしようとした英国と仏国がイスラエルと組んで軍事介入に踏み切ったものだが、米ソ超大国が反対に回った結果失敗に終わった。英国はかつての超大国の威信を地に落とし、米国の欧州西側での影響力が確立した戦いである。

 指摘されればたしかにと二人は思わざるを得ない。


「その通りです。

 ここまでくれば、その秘密資金が何処に置かれたか察しが付くでしょう」


 マークがにやりと笑い、橘と一条が渋い顔をして、一条が正解を口にする。

 今の話を前提にしたら、米国は英国を信用できない訳で、それでも欧州に資金を直に流すには米国からは遠すぎる。そして、現地に近く英国の横やりが入らない、そんな都合のよい場所があったのである。


「スイスのプライベートバンク」


「正解です。

 そんな資金の近くに、ロマノフの財宝と間違われても言い逃れができない口座ができて、爆益を叩き出している。

 取り込もうと動かない方がおかしいでしょう」

ウェルスマネジメント

ウェルスマネジメントとは? プライベートバンキングとの違い、サービス内容を紹介 | 三菱UFJ銀行

https://www.bk.mufg.jp/soudan/shisan/lp/column/2.html

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歌う流星さんへ >ムーンライト・ファンドはペーパーとはいえ、当初アメリカ拠点の形を取っていましたし、今も次期ファイナンスCEOをはじめ米政府の関係者がいるので、資産拡大の経緯は財務省とCIAには筒抜け…
2025/02/23 09:45 瀬戸の住人
更新お疲れ様です!! ムーンライト・ファンドはペーパーとはいえ、当初アメリカ拠点の形を取っていましたし、今も次期ファイナンスCEOをはじめ米政府の関係者がいるので、資産拡大の経緯は財務省とCIAには…
アメリカから瑠奈お嬢様の財産狙われて居るなら日本政府の国民の財産と生命の保証に付いて抗議&相談、大統領に抗議、スイス銀行へ抗議と権力者と民意へ根回しとプロパガンダ 資産を企業や権力者や上流階級向け銀行…
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