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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
Prelude to Yusei Theater

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お嬢様の修学旅行 中等部 二日目 その1

 アンカレッジから北極海を横断してやってきたのは欧州の永遠の都ローマ。

 フィウミチーノ空港ことレオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港に到着した私たちだが、その空港で私は最初のイベントをする事になる。


「さー。遠慮なくやって……べふっ!!!」


(がっつぽ)


「開法院様……せめてお嬢様が言い終ってからぶつけていただければ……」


 身内によるパイの顔面衝突である。

 もちろん、派手にカメラのフラッシュがたかれたのは言うまでもない。

 馬鹿のパイ投げに対応する為に彼らの欲しがる絵をこちらから提供する。

 こーういう事をするぐらい、裏での襲撃と暗殺に神経をとがらせているのを口についたクリームを舐めつつ私たちはローマの地へ降り立ったのである。

 とりあえず、このパイをあとパリとロンドンでも食らう予定であるが、たしかに芸人だよなーとなんとなく自覚しつつある今日この頃。


「あー。さっぱりした」


 もちろん空港で顔を洗ってバスへ。

 空港からローマ市内へはおよそ30キロのあいだ、こちら側の警護車をものともせず突貫してくるパパラッチのバイクたち。

 なるほどこれが欧州かと納得しつつホテルへ。


パシャッ!


「いい顔ね。

 ちゃんと撮ってあるから安心しなさい」


 どーせついてくるならと専属カメラマンとしてオファーした石川先生はここで私を撮った。

 パパラッチたちの写真は大衆紙が中心になるが、石川先生の写真は高級紙や芸術誌を中心に出回る事になる為、最後に歴史に残るのはこっちなのだろう。


「どーなのかしらね?

 前まではそれでメディアによる情報改ざんができていたけど、こんなにカメラが増えた今、それができるのかしら?」


 さすが石川先生。廉価なデジタルカメラの普及と携帯にカメラが内蔵された事の影響をしっかり理解している。

 今回もカメラを持っていたら日本人とばかりにみんなデジカメを持ってきているからなぁ。

 なお、スリとひったくりの最有力候補なので、盗難保険に全員加入させている。

 話がそれた。


「うちのホテルがあったのは驚きよねー」

「バブル期に帝西百貨店グループが持っていたホテルで、海外から売却話がかなり来ていたそうですよ。

 うちもホテル事業があるので相乗効果を期待してという話ですが……」


 ホテルの最上級スイートルームに入った私に橘由香が続く。

 なお、そんな話が届く事無く売るのを忘れただけで、帝西百貨店グループのホテルに帝興エアラインのホテルまで吸収して膨らんだ桂華ホテルグループ。

 このホテルはオーナー企業の鶴の一声で本日完全貸し切りである。

 そのオーナーである私は普通の部屋でいいのだが、警備と体面からこのスイートルームへ。

 まぁ、それでも一学生のふりをして楽しむとしよう。


 ホテルを出てヴィットリオ・ヴェネト通りを歩く事しばしで到着したのがバルベリーニ広場。

 ここにも噴水があるのかーと思った所をガイドさんが一言。


「ここはトレビの泉ではないのでコインは投げないでくださいねー」


 投げる人が多いんだろうなー。

 バルベリーニ広場の名称は、すぐ南にあるバルベリーニ家の宮殿、バルベリーニ宮殿に由来し、現在は国立古典絵画館として利用されている。

 という事で、そのまま国立古典絵画館を見物する事に。


「おー。これここにあったのか」


 私が立ち止まって見ていたら皆が集まってくる。


「ピエロ・ディ・コジモ『読書するマグダラのマリア』か」

「ピエロ・ディ・コジモはルネサンス期の画家だね」

「ここにあったのかという事は、前に見たのか?桂華院」


 栄一くんたちを前に私は『読書するマグダラのマリア』を眺める。

 私が興味を持ったのは神奈水樹との会話からだったりするが、そのあたりは省く事にしよう。


「彼女は罪深い女という解釈があるのだけど、そんな罪深い女が何を読んでいるのかって気になってね」


 ルネサンスとは『再生』『復活』という意味なのだが、芸術面においてはキリスト教的芸術からの解放という側面があり、そのシンボルの一つとしてかマグダラのマリアはルネサンスを期に多くの作品が世に出る事になる。

 とはいえ、この時期に読める本ともなると限られる訳で、私が見ているこのマグダラのマリアが読んでいるのは聖書だろうと言われている。


「いい女でしょう?

 これで本も読むのだから男が惚れるのよ」


 神奈水樹の言葉を思い出す。彼女はきっとマグダラのマリアが聖書を読んでいた事を知っていたのだろう。

 私も悪役令嬢というものであるから、この話からマグダラのマリアに親近感を持つようになったのはここでは言わなくていいだろう。


「言われてみると……何だろうな?」

「あの頃は本は貴重だから、読めるって事はかなり上の人間だよな?」

「宗教的モチーフ画だから聖書か?」


 男子三人が盛り上がる所に入ろうとしてイリーナ・ベロソヴァに肩をつつかれる。

 見ると蛍ちゃんがかくれんぼ能力でどこからか入って来たパパラッチを脅かしていた。


(えっへん)

「あれどうします?」

「見なかった方向で」


 そんな会話があった事なんて知らずに、パパラッチたちはフィルムを没収されて警備員にドナドナされていき、私は蛍ちゃんにおつかれさまと労ったのであった。


瑠奈の泊まったホテル。

 インターコンチネンタル ローマ アンバシアトリ 宮殿ホテル

 インターコンチネンタルホテルグループは一時期セゾングループが所有していた。セゾンの経営危機後に売却されたのだが、こっちでは持っていた設定にしている。


マグダラのマリア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%A9%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2

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― 新着の感想 ―
パパラッチの噂。 「ルナ・ケイカインの護衛には本物のNINJAが居る」 蛍ちゃんの隠密能力が曲解されたら、こうなるかな?
蛍ちゃんがパパラッチ特攻すぎる ケルト文化圏だとチェンジリングとかそっち絡みのオカルトと関連付けて語られそう
がっつぽの蛍ちゃんが写ってれば間違いなく良い写真なんだが!
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