お嬢様が馬主になるそうです ケイカプレビュー マイルチャンピオンシップ南部杯
マイルチャンピオンシップ南部杯。
岩手県競馬組合が盛岡競馬場で施行する地方競馬の重賞競走である。競走名は江戸時代に盛岡藩を治めていた南部氏に由来し、当主に了承を得て名称と南部家の家紋が使用されており、表彰式には毎年南部家当主が出席して南部杯を授与している。
「樺太競馬が成功した伏線の一つなんですよ」
とは、私の隣でテレビを見ていた岡崎のお言葉。
現地見物をと思ったが、今回は見送ったのもその理由絡みだった。
「ほら。南部伯爵家の晴れ舞台ですから」
「あー」
伯爵家のお披露目で公爵家がしゃしゃり出るのはよろしくない訳で。
樺太競馬が成功したのは、桂華院公爵家のお披露目という背景もあるのだとか。
「だったら、山形とか北海道でやっても良かったんじゃないの?」
当然の質問に岡崎は忘れたのかと言わんばかりのジト目で説明を続ける。
言われてみれば納得の理由を。
「山形で桂華院公爵家が仕切ったら、幕末からの諸藩の華族がいい顔しないでしょうが。
それに、競馬は元々農林水産省の利権で、それをごまかす形で樺太という縦割り行政の極致みたいな所でしたんでしょう?あの馬をG1馬にするために」
そのあの馬ことケイカプレビューは画面の中では見た目は変わらないが4番人気に推されていた。
岡崎の手にはいつの間にか競馬新聞が握られている。買う訳ではないが、情報が過不足なくまとめられているので重宝するとか。
「勝てそう?」
「厳しいですね。お手盛りG1馬で勝てるほど甘くはないと新聞では」
「悔しいけど、うまいこというわねー」
まぁ、普通の馬主は『G1が欲しいから勝てるG1レースを作りました』なんて暴挙はしない。
それをやってのけたのが私であり、それを奇貨にしたのが殿下とかアラブの石油王なんだが。
「まさかこっちにも出すとはねー」
「日本競馬に参入したがっていましたからね。うちの動きに連動して地方から参戦して実績をという事でしょう」
なお、石油王が出してきた馬は5番人気である。
画面はパドックの他の馬を映す。
「あの1番人気、朝日杯フューチュリティステークス勝ってダートにやってきているの?」
「そいつ、菊花賞の一週後でのJBCクラシックで圧勝しているんですよ。
去年のマイルチャンピオンシップ南部杯の勝者なだけでなく、JBCクラシックにG2のエルムステークス、今年のフェブラリーステークスと帝王賞も勝っている、1番人気です」
「うわぁ……」
いや、私のケイカプレビューも序盤は芝とダート走らせたけど、芝でG1取ったのに見切ってダートに移るなんて決断私にはできない。
そんな私の考えなど知らずに画面は2番人気に移っていた。
「こっちもやるわね。2002年デビューで全日本2歳優駿でG1初制覇。
ダービーグランプリでG1二勝目か」
「毎日杯2着、NHKマイルC4着、ジャパンダートダービー2着でユニコーンSは勝っています。
実績を考えたら向こうが上でしょう」
賭け事なだけにこのあたり記者も賭けている観客もシビアだ。
画面は次に移り3番人気を映していた。
「去年のジャパンダートダービーの覇者か。
たしか6番人気からがG1勝ちが居ないんだっけ?」
「大井の金杯など手堅く重賞を勝っていますね。
石油王の馬は血統はいいのですが、日本初参戦という事で……うちが出るなら他所も文句が言えんだろと。石油王の参戦は農水省からの抵抗大きかったらしいですから……」
偶然かどうかは知らないが、この盛岡競馬場のある岩手県は野党の大物議員となった大沢議員の牙城でもある。
きっとそのあたりも絡んでいるのだろうなーと思いながら見ることしばし。
ファンファーレが鳴ってゲートが開く。
「よしっ!ちゃんと逃げについ……ん?」
「うちの馬の逃げについて行ってる馬がいますね。
あれ、二番人気の奴だ」
ケイカプレビューの出だしは悪くはなかった。
だが、二番人気の馬がそれを上回り、現在は二番手。
抜こうと頑張るが抜けないいまま最終コーナーへ。
「やばっ!馬群に囲まれた!」
「うわー。一番人気が差してきた……あれ届かないぞ?」
うちのケイカプレビューは馬群に沈んだと思ったがなんとか5着に入り込み、一番人気の差しは届かず結局2番人気が逃げ切ったレースとなった。
石油王の馬は7着と着外に沈んだ。
という訳で、レース後に騎手と調教師を交えて電話会議。
『逃げとの叩きあいでスタミナを使ったのが敗因ですね。
よく最後掲示板に残ってくれたものです』
『逃げは先頭に立つ事でレース展開をコントロールしますからね。
今回は先頭に立とうと無理をした結果、スタミナを消耗して最後沈みました。
とはいえ、こいつの距離適性はこのあたりなので、経験が必要ですね』
「まぁ、敗因は分かりました。こちらもこの一年は上出来と思いますので、これからもよろしくお願いします」
電話越しに頭を下げる私だが、それは向こうにも伝わっただろう。
岡崎が口を開いて次のレースの事を聞く。
「わかりました。次のレースの候補は?」
『さすがにJBCは見送るとして、ジャパンカップダートは長すぎる』
『フェブラリーステークスを目指して、その前哨戦をという感じでどうですか?』
「こちらとしても専門家の意見に従うつもりです。これからもどうかよろしくお願いします」
と、電話を切ろうとして思い出したことがあったのでついでとばかりに聞いてみた。
「そういえば、今年デビュー予定のケイカツインロマンはどうなっています?」
『順調ですよ。そろそろ出そうかと思っています。
ただ……』
そこで私は、あの馬の名前を聞くことになる。
競馬をしてゆく中で、衝撃と共に長くつきまとうその名前を。
「他所の噂ですが、偉く出来のいい馬がいるとか。
そいつとはかぶらせたくないですね」
という訳でマイルチャンピオンシップ南部杯
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E5%8D%97%E9%83%A8%E6%9D%AF
2004年
https://www.youtube.com/watch?v=BaXyxJFnLdQ
という訳で大百科のある一着と二着馬をば。
ユートピア
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%94%E3%82%A2%28%E7%AB%B6%E8%B5%B0%E9%A6%AC%29
アドマイヤドン
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%89%E3%83%B3
うん。たしかにこれは勝てねーわ。




