『警察密着生放送!帝都の治安は我々が守る』より
息抜き回
渋谷。
若者の街と呼ばれるこの街には、それ特有のトラブルが多い。
そんな渋谷の街を守るのが渋谷警察署である。
「最近増えてきているのが、風俗系のスカウトですね。
若い娘がどうしても集まるので、スカウト絡みのトラブルが増えてきています」
案内してくれた渋谷警察署の警官はそんな事を言いながらセンター街を歩く。
そんなタイミングで丁度事件が発生したとの連絡が入り、現場に急行すると執拗に声をかけていたスカウトらしい男がいた。
「お巡りさん。僕たちは悪い事はしていませんよ。
ただ、可愛い女の子をナンパしようとしただけで」
警官の制服を見てあきらめたらしく、そう言いながら去ってゆくスカウトだが、警官はため息をついて女の子たちを保護する。
交番に連れてゆく途中で説明してくれた。
「これは渋谷の日常みたいなものですよ。
あくまでナンパしてるだけだからこちらも深く踏み込めない。
彼らの手法としては、女の子をナンパしてその先で『稼げるバイトがあるよ』と持ち掛けるんです。
これでも、最近はPHSや携帯電話の普及で助けを求めやすくなっていますが、同時に我々の手を離れた所で犯罪が行われているケースもあって痛し痒しという所です」
交番に戻ってパトロール再開と思ったらまた事件発生の連絡が入った。
今度はスカウト同士の喧嘩らしい。
現場に行くと、スカウトだけでなくその上が来ており、明らかに堅気に見えない男が身分証を見せて実にわざとらしい敬礼を我々にする。
「ご苦労様です。
この件は我々〇〇セキュリティーサービスが請け負います。
事件の報告書については後で渋谷警察署の方に届けておきますので」
簡単な事情聴取をして警官はその場を離れる。
我々への説明には怒気が籠っていたが、同時に顔は笑っていた。
「これもこの街の一面なんです。
華族が持っていた不逮捕特権を悪用しようとする輩は多く、真っ先にそれを利用したのは暴力団たちでした。
彼らは生活に窮乏した華族に金を渡して、その庇護下に入る事で警察の介入を長い事防いでいました。あの警備会社は暴力団のフロント企業なんです。
恋住政権が華族特権にかけた網は、警察の悲願でもありました」
今年の通常国会で成立した華族特権の剥奪によって華族側に検察審査会という網がかけられた上に、探偵業法と警備業法の改正で警察の関与が強まった事で、この手のトラブルは減少傾向が見られている。先ほど映った警備会社も取材後に廃業する事になった。
パトロール終了後に交番に戻ったが、トラブルは待ってくれない。
国際都市東京の交番の日常とばかりに、トラブルに追われる事になる。
「道が分からない?そこに行くには……」
「……ちょっと待ってね。誰か!ロシア語ができる奴居るか!?」
「落とし物ですか?こちらに……」
多種多様なトラブルが舞い込む交番でこれらの業務を助けるのが、先ほどとは別の警備会社だ。
彼ら警備会社が多種多様な人材を供給する事で、国際化が進む交番業務が円滑に進められているのだ。
「先ほどの警備会社は違いますが、ほとんどの警備会社は真っ当な所で、こうして我々の業務を助けてくれます。
様々な事情で警官が交番に居ない『無人交番』問題が近年取り沙汰されてきましたが、彼らの存在でそれが解消しつつあります」
トラブルで特に問題になっていたのが、北日本併合によって急増したロシア人をはじめとした言葉の問題である。
これに警察が対応する前にトラブルが急増。
多様な人材を柔軟に雇える警備会社による交番業務の代行はまさに渡りに船だったと言えよう。
今度は警備会社の人に話を聞いてみた。
「私は樺太の豊原出身なんですよ。
日本語・ロシア語・中国語と三か国語を話す事ができます。
ここでの仕事は契約社員ですが、給料は豊原に比べて格段に違いますからね。来てよかったと思っていますよ」
インタビューをしていたら一人の男が警備会社の人を呼んで手続きをする。
探偵で、報酬の支払い手続きに来ていたという。
折角なので、インタビューしてみた。
「探偵なんてテレビドラマみたいに派手に事件を解決するようなものではなくて地味なものですよ。
地道な捜査、つまり足が大事なのですよ。
この仕事は警察からの依頼で、管内で起こった連続ひったくり事件の目撃者への調査です。
稼ぐ人間は、ハッカーの真似事をしたりとか、財閥とかに囲われたりとかしているみたいですけどね。
まっとうな探偵だと稼げるのは浮気調査で、警察がらみの仕事だと駐車違反のタレコミですね」
そう言って探偵は報酬の振込用紙を受け取って交番を去っていった。
現在、この国に存在する警察官はおよそ40万人。
警備員は70万人、探偵も1万人を超えるという。
彼らの努力によって、帝都の、この国の日常は守られているのです……
警察24時
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%A6%E5%AF%9F24%E6%99%82
微妙に各局でタイトルが違う
ちなみに令和での警官は28万人。警備員は58万人で探偵はおよそ7千人。
増えた数は間違いなく旧北日本系の警官や軍人がらみで、これで吸収できない連中が傭兵として戦地で稼いでいる感じ。




