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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
Prelude to Yusei Theater

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コングロマリット・ディスカウント その7

ネタバラシ回

 私と桂華グループを取り巻く環境は理解した。

 その上で相談する事になるのだが、こういう時は客観的な見方ができる第三者が相応しい。

 という事で、教えを請うている神戸教授を頼る事にした。


「なるほど。

 桂華院くん。こういう時にやってはいけない事は何か分かるかね?」


 私についてきた一条絵里香がさして考えていない感じで口を挟む。

 彼女はこの神戸ゼミの卒業生でもあった。


「多分ですが、何もしない事ですか?」


「それも一つの正解だ。

 だが、もう一つある。それはね……」


 神戸教授は勿体ぶって溜めを作ると、一条絵里花ではなく私を指さして言う。

 実に楽しそうに。


「何でもする事だよ」


 首を傾げる私と一条絵里花。

 一条絵里花の質問と神戸教授の答えを突き合わせると矛盾が発生するからだ。

 『何もしない事』が正解で『何でもする事』も正解と……ん?


「つまり、神戸教授はお嬢様が何もしない程度に何かしろと言いたいんですか?」


「そうだ。君のような優秀な人間が側にいれば、桂華院くんも無茶はしないだろう」


 神戸教授は楽しそうに笑い、一条絵里花は理解したようなしないような顔で首を傾げた。

 その姿が面白くて私もつい笑ってしまう。


「桂華院くん。

 君は実質的な桂華グループの主だ。

 君の言葉で桂華グループはほぼ自由に動くだろう。

 だが、それは行動に責任を伴う事を意味する。

 どこかで止めないと、君自身が壊れてしまうよ」


 私は頷かざるを得ない。

 桂華グループの構造的問題、私が未成年であるというそれがここでも足を引っ張る。

 大人なら好きにやれと言えるが、中学生では無理だと大人が止める。

 これが本当に面倒……ん?


「先生。

 質問があるのですが、もし、私と同じ思考を持つコンピューターがあって、その指示を私が追認した場合はどうなるのでしょうか?」


 私の唐突な質問に対し、神戸教授は一瞬驚いた顔をした後に真面目な顔になる。

 そして、少し考え込んだ後、こう言った。


「多分、同じ思考を持ってもきっと判断が分かれる事になるね。

 人と言うのは思った以上に情報を収集している。

 五感だけでなく、脳に蓄えられた記憶、私は信じたくはないが第六感なんてものも使っている人も居るだろう。

 今のコンピューターでは、それを再現するのは不可能だろうね」


 なるほど。

 こいつが春に失敗したのはそのあたりがあるのかもしれない。

 だが、それを拾って再利用しようとする輩がいる。

 そいつらの目的は何だ?


「桂華院くん。

 忘れてはならない。

 コンピューターは答えを出すかもしれないが、それを実行するのは不完全な人間なのだよ」


 神戸教授の言葉は私を深く貫いた。

 自分の言葉を実現するのは不完全な人間だ。

 だから、それをフォローするシステムが必要になる。

 人間は完全ではないから、機械に頼る部分が必要だ。

 じゃあ、機械に任せられない部分はどうするのか? 答えは簡単だった。

 人間がやるしかない。


「だとしたら、何で不完全なコンピューターなんて使うんでしょう?」


 一条絵里花の質問に神戸教授は即答する。

 彼の教授室には、価格が下がり出したパソコンの最新型があった。


「重要なのは、人間の模倣なんてややこしい事ではなく、簡略化した式を導き出す事については、コンピューターの方が優れているからさ。 

 つまり、大事なのは、問題なのだよ。

 コンピューターに何を問いかけるのか?

 そこにこそ、人の知恵の真髄があると私は思っているよ」


 神戸教授の言葉は私にとって非常に嬉しいものだった。

 だって、その言葉こそ私が求めていたものだから。

 完璧でなくても、人間に理解できる形で命令を下せるマシンであれば問題ないのだから。

 コンピューターはその命令を理解し、その答えを導くためのプログラムを組むだけでいい。

 完璧に見えるものでもバグはあるし、抜け道もあるかもしれない。

 しかし、それは人間が見つければいいだけだ。

 完璧を求めすぎると何もできなくなる。


「ちなみに先生ならば、どんな問いかけをコンピューターにしますか?」


 私の質問に神戸教授は少し考えてから答えた。

 その視線は私を見てはおらず、窓の外の中央図書館に向けられていた。


「このあたりは高宮館長の領分だな。

 こんな手間をかけるならば、それ相応のリターンが無ければ無理だ。

 で、コンピューターに代理をさせた所で、未成年だから桂華グループの実権は親族や保護者によって管理されるから割りが合わない。

 そうなったら、一番リターンが大きいギャンブルにこいつを使う事にするね」


 そのままカレンダーを見る。

 そこで私は気づいたが、一条絵里花は気づいていなかった。

 たしかにこんな荒唐無稽な物語は高宮館長の領分だろう。


「秋の米国大統領選挙。

 現職大統領に大幅に肩入れしており、選挙戦のキーマンである桂華院瑠奈。

 『彼女を米国大統領選挙に関与させない為にはどうすればいいか?』とね」

この年の大統領選挙


https://ja.wikipedia.org/wiki/2004%E5%B9%B4%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8%E6%8C%99


 イラク戦争もあってガチの接戦だった。

 選挙人では286対251だが、フロリダ州(27)かオハイオ州(20)のどちらかを落とすと負ける計算であり、フロリダ州は2000年の因縁もあって注目を集めたが、本当にやばかったのは実はオハイオ州の方だったりする。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 時系列上の最新話、ありがとうございます! [気になる点] >人間に理解できる形で命令を下せるマシン  今話から約20年後辺りの未来だと、「その出力結果の過程や意味を、必ずしも人間が理解可…
[良い点] 忙しい中での毎週更新ありがとうございます。 [気になる点] ノリがすっかり「ゴジラ対メカゴジラ」な件w この時代だとまだ笑い話で済むのだが、今の最新AI技術だとマジでシャレにならんらしい…
[気になる点] お嬢は能動的に動いてこそだと思うんだけどな。後が無かったという背景はあったにせよ、テロリストやカネの亡者に権力者のジジイ達などを相手に八面六臂の活躍をするお嬢は輝いていたし、連発するそ…
2024/03/06 18:57 丁三十四 八十五
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