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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
Prelude to Yusei Theater

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コングロマリット・ディスカウント その3

 問題の帝西百貨店だが、都合がいいことに内部の事を知っている人間に心当たりがあった。

 写真家なのに社外取締役を押し付けられたというか、私を撮りたいが為に帝西百貨店を巻き込んだ元凶というか……写真家の石川信光先生である。


「中?

 知っているわよ。騒動のおおよそもね」


 写真を撮らせてやると言えばホイホイやってくる石川先生に話を聞くことができた。

 夏休みの水着写真を撮れなかった事を根に持っているので、秋なのに水着である。

 多分どこかのお菓子系の雑誌を飾るのだろう。

 それはともかく、石川先生にまで話が届いているってこの問題かなり根が深くないか?


「というか、問題の一つが実はわたしとお嬢様」

「はいぃ!?」

「ほら。お嬢様とこうして話せるじゃない。

 それを特権と捉える人たちがうるさくてね」

「あー。そういう事か」


 水着が撮れるならどこでもいいらしく、今回は九段下桂華タワーのスイートルームでの水着撮影である。

 まぁ、機密保持も絡んでいるのであまり私も強くは言えない。

 なお、控えている橘由香以下メイドたちの石川先生を見る眼差しがスケベおやじを見るそれなのは言うまでもない。

 それはおいておいて、石川先生と私の関係が騒動の火種の一つとは盲点だった。


「もともと帝西百貨店って桂華グループ内での立ち位置があいまいだったでしょう?

 それでも、桂華グループ内部で優遇されていたのよ」


「優遇?」


「食事会。

 あそこの上位に席があるのを妬んでいる人がいるのよ」


 石川先生の楽しそうな声とは裏腹に、何とも言えない顔になる私。

 帝西百貨店が石川先生を社外取締役に据えたことで得た、直で私にお話しできる伝手というのがどれほどの強さかと言われると納得するしかない。

 早めに救済された上に石川先生が来る事も想定して、食事会の序列はかなり高い。

 具体的に言うと、桂華金融ホールディングスは別格、以下に桂華鉄道と桂華商会、桂華グループ創業企業である桂華岩崎畑辺製薬と続くのだが、その次に帝西百貨店が来て、なんと桂華電機連合より上だったりするのだ。

 うん。

 当人に指摘されて分かるが、これ嫉妬する人でるだろうな。間違いなく。


「それとは別に身内にも火種があってね」


 さらりと爆弾発言をする石川先生。

 撮影なのに鏡に映る私の顔はジト目だった。


「ほら。『ティル・ナ・ノーグ』って百貨店の目玉だから」

「あー。それでスーパーとコンビニが怒ったって訳だ」


 この時期から百貨店の衰退が始まるのだが、そのテコ入れとして私自身のブランド『ティル・ナ・ノーグ』を百貨店に入れる事で集客を図っていた。

 それが百貨店以上に稼いでいるスーパーとコンビニは面白くないと。


「おまけに中も割れているのよ。実は」

「中って百貨店の?」


 ベッドに寝そべる水着姿の私の確認に石川先生は写真を撮りながら続きを口にする。

 今回は室内水着撮影という事で、下着に見えなくもない水着を用意するあたり、撮影に妥協しないというか欲望に忠実というか。


「帝西百貨店と総合百貨店をくっつけたでしょ?

 中が帝西派と総合派で割れているのよ」


「おぅ……」


 人間社会あるあるの派閥争い。

 どちらも不良債権処理で潰れる所を救済した訳なのだが、関東を中心に展開していた帝西百貨店と西日本に広く展開していた総合百貨店はそれゆえに派閥ができてしまい、その派閥に外から援軍がやってくるともうめちゃくちゃである。


「元が鉄道系の帝西百貨店はそのまま桂華鉄道グループへの編入に賛成だけど、広域物流網を構築しないと維持が難しい総合百貨店は桂華商会に助けを求めたって訳」


「いやまぁ、理解はしますけど、私の関わらない所でしてほしいというか……」


「何のんきな事言っているのよ。

 これ、スーパーでも起こっているわよ」


「はい???」


 何とも言えない顔を作る私をよそに、石川先生は実に楽しそうにシャッターを押す。

 この先生、私のこの表情を撮りたいがために調べたと言ってもありそうだから困るが、出てきた情報は後で裏取りしたら本物だった。


「帝西のスーパー部門に救済した肥前屋をくっつけたでしょう?

 肥前屋は北海道をはじめとした東日本に店舗が多かったからね。

 それで、桂華の北海道支援策に乗って、内部に北海道派ができちゃって……」


「うーわー」


 ベッドの枕に顔をつけて足をバタバタさせて悶える私。

 悶える理由が派閥争いなんて夢も希望もない中学生で実に嫌だ。


「で、それにコンビニがぶちぎれたと」

「失礼ですが、今の話のどこにコンビニが激怒する要素があるのでしょうか?」


 橘由香が口を挟んだのは、悶えている写真を撮らせたくないからだろう。

 そんな橘由香にもカメラを向けた石川先生は日本企業あるあるの理由をぶっちゃけてくれた。


「こういう事をしていて、一番稼いでいるコンビニの取締役の椅子が一番少ないのよ」


「あー」

「ぉぅ……」


 言葉に詰まる橘由香と私。

 帝国百貨店の独立運動の話の筋が見えた。


「つまり、帝西百貨店の独立ではなくて……」

「帝西百貨店コンビニ部門の独立運動って訳。

 可愛らしいメイドさん。

 よかったら脱いでお嬢様と一緒に……」



「「おつかれさまでしたー!」」

今日のお嬢様の水着

 FGOの水着紫式部


もちろん、来ませんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 水着は来るもの 来る…?(どこそかのJホラーのエンディング曲が聞こえる)
[一言] 某写真家、ご冥福をお祈りします。 (英語的にはcamera manは動画撮影者のことで、静止画(写真)はphotographerですね。デジカメ、特にスマホの場合は写真じゃなくて写偽なので、…
[気になる点] 作家は財閥企業を本当の意味で理解していない。 現代日本の大企業と財閥企業は違うのに無理矢理代入しようとするからこうなる。 過半数の株を持つ大株主のあるオーナー経営企業では鎮圧されてそれ…
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