月刊帝国物流 特集 日本海物流カウントダウン! パンクしている物流網再編の行方
設定回
日本海の物流が樺太併合後から急速にパンクしている。
それに追い打ちをかけるようにバブル崩壊の不良債権が各社の重しになっており再編は必至だ。
今回は悲鳴を上げる日本海物流と各社再編の行方を追ってみようと思う。
樺太 人口二千万人をどう食わせるのか?
北日本政府崩壊に伴う樺太併合によって、この国は二千万人と言われる人間の生活を支える義務を負う事になったが、それは二千万という需要が発生する事を意味する。
結果、旧東側諸国特有の全てが足りない樺太に向けて大量の飛行機と船が送られる事になり、バブル崩壊で不良債権を抱えた物流企業各社は悲鳴をあげる結果になった。
何がまずいのか。まず、樺太の海は冬になると流氷に覆われてしまう。そのため、物資は冬になる前に前もって樺太に送らなければならない。
次に、樺太に届けられた物資は玄関口である大泊港に建てられた巨大地下倉庫群から豊原の巨大地下倉庫群に送られて供給されるのだが、この大泊港から豊原にかけてかなりの物資の横流しが横行している。
樺太道警察が汚職一掃キャンペーンを何度も行っているが、未だその解決には遠いのが現状である。
このルート一本だけで豊原地下都市を支えている事もあって、長大編成の貨物列車が日に何本も走っており、既に飽和状態に追い込まれている。
もちろん国や樺太道も無策でなく、本斗港を整備してそちらからも豊原に物資が送られるようにすると同時に、樺太自動車道の整備でトラック輸送なども活発化させているが、常に需給がひっ迫している状況の改善には程遠いのが現状である。
それでも豊原地下都市が飢餓に陥らなかったのは、旧北日本市民の北海道や本土への出稼ぎであり、彼らの移住で豊原地下都市の人口が減っているというのが大きい。
既に稚内の人口は二十万を超え、留萌と小樽の人口も三十万目前、旭川は札幌に次ぐ人口百万都市目前に政令指定都市への移行に向けて準備中だ。
彼ら旧北日本市民の人の移動も日本海の物流の活性化に繋がっている。
樺太との直接航路がある新潟市は人口百万を突破し、同じく樺太と関西の玄関口となっている敦賀市も人口二十万を突破。
新潟と航路が繋がっていた博多こと福岡市も人口が急増しており、北九州市の人口百万を維持しているのは彼ら旧北日本市民の移住や出稼ぎが一因と言われている。
北海道 悲鳴をあげる小樽。急速に発展する留萌。苫小牧で追いつかない室蘭の復活と第二青函トンネルへの期待。
急速な旧北日本市民の出稼ぎと移住で人口が膨れ上がったのが北海道である。
その結果、稚内と大泊の連絡船は流氷対策をした特注船で一時間に一本走らせているが、追いつく訳もなく既に小樽港は一杯で、大泊-留萌、本斗-留萌便を新設させる事になった。
この物流の激変で宗谷本線がひっ迫化。
貨物を逃がすために羽幌線が復活し、物流の中継点となった留萌は大発展を遂げる事になるが、それは稚内市民や留萌市民のほとんどが旧北日本市民となっている事を意味しており、既に文化的衝突の対処が北海道政界で急務となっている。
一方で樺太重工苫小牧製作所をはじめとした二次産業の移転で苫小牧港もひっ迫。苫小牧港建設のきっかけとなった室蘭港を使うようになるなど、北海道をとりまく船舶物流は盛況だ。
これに合わせて、桂華グループ主導で第二青函トンネルの建設を決定したのはいいが、第二青函トンネルを掘る事で、第二青函トンネルを新幹線仕様にという意見が出ており調整に追われている。
新幹線は既に青森延伸が決定しているが、この第二青函トンネルにかこつけて北海道新幹線を函館まで伸ばす事を決定しており、函館から先の札幌延伸だけでなく、北海道帝国鉄道の路線を標準軌化して貨物新幹線で関東に……
新潟 敦賀 博多 人口急増の背景に3K
3Kとは『キタナイ』『キツイ』『キケン』の頭文字がKである事から生まれた言葉だ。
旧北日本市民が本土まで出稼ぎに来るのは、これらの仕事を彼らが厭わないという理由が大きい。
それは円高で疲弊していた本土製造業の労働者を格安の彼らに切り替える事を意味しており、製造業の復権と同時に彼らを使い潰す事で製品を作るという内情に労働組合が批判を強めている。
とはいえ、世紀末に言われていた高齢化社会については、文化的衝突を見ない振りにする事で解消されると踏んでおり、今や高齢化という言葉を聞かなくなった代わりに、各地で旧北日本市民との文化的衝突がマスコミを騒がせている。
厄介なのが、樺太側の国境管理が北樺太問題という国家主権の曖昧さで厳格な管理ができない事でロシアをはじめとした大陸側からの不法移民が流れ込んでおり、人権問題と批判を集めている箱舟都市の建設だけでなく、新潟・敦賀・博多への航路が荒天の日本海に設定されたのは、その時間内での検査という観点を兼ねているという噂を関係者が誰も否定しない事がその厄介さを物語っている。
実際、これらの航路の大型船には入国管理局の職員が警察と共に常時乗り込んでおり、船内で発覚した犯罪は密輸から麻薬取締など多岐にわたる。
それでも、毎年出稼ぎで入って来る旧北日本市民は数百万……
元が『征途』のオマージュを公言しているが、あの土地に二千万人は本当に死ぬ。




