お嬢様と兵器見本市 その1
趣味回だったんだが……どうしてこうなった?
もちろんきっかけはゲームである。
なんであのゲームは飛行機をあんなに狭い所にくぐらせるのか……それはそれとして魅了された機体が一機。
「あ。これかっけー」
そんなノリでたまたま暇だったという事もあり、ふらりとやってきたのは東京国際展示場。
帝都防衛装備展示会に桂華グループはいくつかの企業が出展しており、その応援という形で入らせてもらっている。
「なんつーか、色々と来るものがあるわ……」
「一応エチケット袋渡しておきますので。
というか、何で来たんです?お嬢様??」
ジト目の岡崎に私はむっとした顔でエチケット袋を受け取る。
今回のテーマは『テロとの戦争 その先』であり、間もなく分割独立されるイラクが焦点になっていたのである。
湾岸に巨大利権を確保してしまっていた桂華グループはこの展示会に大々的にスペースを確保していた。
「我慢します。できる限りは。
で、儲かるの?これ?」
こんな台詞が出て来る事に違和感を覚えなくなりつつある今日この頃。
きれい事だけでは生きていけない人たちがいるという事を、私は最近学びつつあった。
多分、そういう人たちと付き合い過ぎて破滅したんだろうと思ったり、思わなかったり。
「基本儲からないんですが……話し合いが通じない連中相手だとこういうビジネスは必要なんですよ。うちはここに出てきている連中の中ではトップクラスの稼ぎですがね」
岡崎と一緒に大々的に飾られている桂華グループのブースを眺める。
ジャンルは『物流』『人材派遣』『コンサルティング』あたり。
で、代表で取り仕切っているのが『総合商社』桂華商会という訳だ。
「兵器だけを売っている連中は戦争が終わると食えなくなります。
うちみたいな総合商社はその先を提案できるから強いんですよ」
岡崎の話を真剣に聞く私。
なお、周囲が『あれ桂華院瑠奈じゃね?』と騒ぎだしているが気にしない。
「今のご時世、武器を求めているのに、まず現金を用意できない人間が発展途上国には結構います。そんな連中から代金を取りたてるにはどうするか?」
岡崎の言葉は、そういう事をやり続けたからこそ民間諜報機関なんて揶揄される総合商社の現実を言い表していた。
「一応聞くけど、体で払うとかならナシよ」
「お嬢様が考えている体はなしですが、それがなくなると首を吊る連中が出るのが発展途上国なんです」
ぉぉ。もぉ……私はただ飛行機が見たかっただけなのだが、出て来るリアルに吐き気どころか嫌悪感すら消し飛ばす現実がそこにはあった。
「この国は基本資源を途上国から持ってきて商品を作り、それを先進国に売る事で財をなしました。
だからこそ、彼らが資源採取の邪魔をしないだけでも利益になるんです。
これが欧米植民地宗主国あたりだと容赦ないモノカルチャー経済ってのがあるんですがね。
割り込む形でいい顔をしなければならなかった先輩たちには頭が上がりませんよ」
桂華グループのブースの北樺警備保障の所に置いてある、各種言語にて現地採用有りと書かれたパンフレットを私に手渡す。
彼らへの教育込みの雇用費用はどう考えても単体では赤字だったが、それを補うのが桂華資源開発である。
彼らが悪さをせずに資源をこの国に持ち込ませてくれるのならば、そのリターンでこの赤字は十二分にペイできる。
「ただ、こういう場所にも効率を求める連中っているんですよね。
具体的にはアンジェラさんの元同業者連中。
うちの仕組みを『非効率だ!我々と組んでもっと利益を!!』と騒いでいきましたよ。
あまりに見苦しかったらしく、がたいの良い角刈りのマッチョメンに連れ去られて行きましたが」
「うわぁ……」
テロという非対称戦争が新しい戦争として持ち上げられている今、それは戦争コストの低下に伴って新しいビジネスという形で世に出ようとしていた。
「具体的にそいつら何を言ってきたの?」
「新しい皮を被せたモノカルチャーですね。
テロが悪という錦の御旗がある今ならば、テロにかこつけて反対派勢力をジェノサイドできると」
胃のむかつきと怒りをお腹を押さえる事で我慢する私。
岡崎は私を気遣いつつも、彼ら側の同情するべき点を言うのも忘れない。
「じゃあ、政府側に正義があるかというと、我々も含めて汚職前提で腐敗していますから彼らの怒りももっともなんですよ。
ついでに言うと、そうやって反政府勢力が民主化の果てに体制側になったとしても、まず彼らも腐敗します」
何とも言えない顔で岡崎は天井を見上げてぼやいた。
その顔に、苦悩の色が映っているのを私は見逃さなかった。
「お嬢様。まっとうな政府ってのは、世界が思っている以上に貴重なんですよ……」
「何かあったの?岡崎?」
「イラク三分割案で独立する南イラク。
その権益は日英の折半なんですが、日本側の権益はほぼお嬢様が独占している形になっているんですよ。有象無象がゴロゴロと」
あの戦争に関わらなかった私に対するお叱りだけでなく、その準備に掛けた手間暇の代金を大統領と総理はちゃんと用意していた訳だ。
その大人の『誠意』に私は胃のムカムカがいつの間にかおさまっている事に今更気づいた。
Twitterでのまとめに、拓銀令嬢世界線の日本がF-111を採用したと仮定した世界線の各種考察と製作 https://togetter.com/li/2091259 #Togetter @togetter_jpより。
というのが流れてきて、じゃあ、『エースコンバット』の架空機みたいな話を書くかという話だったのだが……
なお作者のお気に入り機体は『エースコンバット3』のR-103 デルフィナス#3
スフィルナも好きなんだが、『荒野のコトブキ飛行隊』の羽衣丸も大好物である。
ドローンの進化であれ使えそうなんだよなぁ……こんな感じに。
アマゾンの飛行船から発進する宅配ドローン映像に苦笑:平凡でもフルーツでもなく、、、:オルタナティブ・ブログ https://blogs.itmedia.co.jp/yasusasaki/2019/04/post_87.html
儲かる軍需産業
軍産複合体はあまり儲からない https://togetter.com/li/1881238 #Togetter @togetter_jpより
単体で利益を出すのが無理だから情報を金と資源にかえて、商品を世界相手に売りさばき…あれ?これ総合商社……というのに気づいたのが、この話の顛末である。
そりゃ、バフェットさんも買い増すわなぁ……
武器だけを相手に商売
『ヨルムンガンド』 (高橋慶太郎 サンデーGXコミックス)のココ・ヘクマティアル。
取引相手に代金代わりの麻薬に激怒したが、あれ下手するとアフガンや黄金の三角地帯じゃあ最大の誠意になりかねんのがまた……現金オンリーの弊害であり、それを手を変え品を変えて利益を生み出していたのがジャパニーズビジネスマンである。




