いくつかの記事抜粋 帝都学習館学園七不思議 破 編 その3
『ケイカ・ゲームズが運営する「トライアド・アミューズメント」の出店ラッシュが続いている。
ケイカ・ゲームスが所属する桂華グループの帝西百貨店は不良債権処理に伴う百貨店とスーパーの救済合併で出来ていただけに店舗重複が多く、コンビニエンスストアの収益の拡大と反比例するように百貨店及びスーパーマーケットの売り上げが低迷する中、店舗の整理統廃合は必然であり、その空きテナントに入る形で出店しているからだ。
店舗内部はゲームセンター・カラオケボックス・インターネットカフェを中心に娯楽系店舗を主体として構成されており、大規模店舗を利用したフードコートやミニシアター、漫画喫茶や古書店、メイド喫茶なども入居しており東京のサブカルチャーの風が地方波及の一翼を担いつつある。
同時に「子供の教育に悪い」と地元PTAによる出店反対運動が行われているが、出店が見送られた場合、帝西百貨店グループの店舗の後釜をどうするのかというコンセンサスが得られておらず、地元自治体は治安問題と雇用問題の板挟みに悩まされている。
桂華グループも、治安向上については地元に配慮する形で協力を申し出ており……』
『桂華グループ主導で鬼怒川温泉再開発が加速しており、それに伴う工事が本格的に始まりつつある。
鬼怒川温泉は東京の奥座敷として知られており、バブル期には団体旅行向けに大規模ホテルや旅館が次々と建てられていったが、バブル崩壊と個人旅行を中心とした旅行形態の変化に乗り遅れた上に、地元メインバンクの新田銀行が不良債権処理に追われて貸し渋りが発生するなどの不運で廃墟化が進みつつあった。
新田銀行を救済した桂華グループはこれらの廃墟旅館やホテル群を買収した上で再開発を開始。
樺太から来た桂華グループ従業員の宿舎として整備する予定だ。
彼らの通勤特急まで帝東鉄道に掛け合って実現させた背景には、急速に摩擦が起きつつある旧北日本系住民と元の住民の対立緩和の一環として政府のモデル事業認定も受けており、方舟都市から首都圏郊外に移り住もうとする彼らの受け入れ先の一つに……』
『山形新幹線酒田延伸に伴う工事が開始され、工事が順調に進むのならば三年後には酒田駅に新幹線がやって来ることになる。
元々は新庄酒田道路の工事の為に陸羽西線を休業させてバス転換し、それに合わせて陸羽西線を新幹線化するというもので、工事費用は山形県と桂華グループが中心になって賄われる。
桂華グループの城下町の一つである酒田市には桂華グループの巨大コンビナートがあり、酒田駅前再開発に協力している上に、山形新幹線福島駅線路改良工事や板谷峠のトンネル工事にも資金を出しているので完成のあかつきには定時性は著しく向上、東京─酒田間を四時間以内で結ぶ事を目指している。
一方で山形県政界では、この桂華グループの影響力増大に懸念の声が上がりつつある。秘書の脱税事件で議員辞職に追い込まれ先の選挙で立憲政友党に復党した加東議員が桂華グループに急接近しており、現職知事が四選を目指している中で一条進桂華金融ホールディングスCEOを担ぎ出そうという動きが……』
『湾岸カーレースに向けて各社のエントリー車が次々と東京に運ばれてきており、深夜の湾岸を走り出し、それに伴う見物客の増加や便乗車の取り締まりに警察は頭を悩ませている。
お台場からスタートして臨海副都心ICから湾岸線に入り、大黒PAで折り返して新木場ICまで行き、またお台場に戻るという高速湾岸線を利用したコースで、一周32キロを8周の計256キロ。九月の第一次予選に向けて法律に違反しない範囲内で参加各社がつばぜり合いを行っているが、これら部外者の存在が彼らを更に煽る結果になっている。
東京都と神奈川県を跨ぐという管轄の違いに、私的レースの上に構造改革特区法を用いて国や都の協賛を取り付けた以上は成功が絶対条件な為、レース実行委員会は北樺警備保障をはじめとした警備会社を中心に警備を自前でつける形に……』
『九段下桂華タワーで北樺警備保障の警備訓練があり、警視庁、自衛隊、民間警備会社、米国警備部門、ロシア情報機関等が参加して対テロ警備の訓練及び情報交換が行われる事になった。
九段下桂華タワーに住む桂華院瑠奈公爵令嬢は先の成田空港テロ未遂事件に巻き込まれたばかりで、二度と同じような失敗はしないという決意の元この訓練を行っており、国内警備機関だけでなく米国やロシアまで招待したのも、このテロで狙われた桂華院瑠奈公爵令嬢の存在感の大きさを物語っている。
実際に公開された訓練では、学生に変装した女テロリスト役に各機関とも翻弄されつつも警護対象をなんとか逃がす事に成功するが、テロリスト役を捕まえる事ができずに逃走を許すなど課題も多く、北樺警備保障の広報は「訓練だからこそ失敗が許されるが、我々はまだ反省しなければならない事が多すぎる」とコメント……』
