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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
帝都学習館学園七不思議 破

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お嬢様がだべるだけ その12

原稿修羅場なので設定回

「そういえばさー。私が雇用している人たちの戦力ってどんなのがあるの?」


 ぎゃふんされた後、当人よりリベンジに燃える他の人々を見て、今更ながらそのあたりに触れる私。

 リベンジに燃える皆様は桂華の牙城と化した夕張にて絶賛追い込みの訓練中なので、側近団の久春内七海はリベンジ用の化粧ーー訓練当日は私に化ける事で相手を奇襲するそうなーーの手を止める。


「まずは私たち側近団ですが、実際の所一分稼げればいい方だと思いますね。

 その一分でお嬢様を逃がす事ができたならば、我々の勝利です」


 えらくしょっぱなから重たい話が出るが、成田空港テロ未遂事件から私が本気を出すと止められないとの認識を得て、どうやって相手を私の所に来させないかに戦術を決めたらしい。

 彼女の私への変装はその一環である。


「まぁ、私らの所まで来たら基本負けです。負け」


 側近団の頭脳担当である野月美咲がぶっちゃける。

 彼女は警備セキュリティーまわりのハッキング対策を確認しており、セキュリティーシステムがダウンした際の退路構築に頭を抱えていた所だったりする。


「南のシステムは遊びが無いんですよ。遊びが。

 金がかけられて機械に任せられるからなんでしょうが、その機械がやられたら一撃アウトですよ。これ。

 かつての祖国なんてその点人も機械も信用していませんでしたからねー」


「いや。それでめでたく人も機械も裏切られて国滅んだじゃない……」


 めずらしく遠淵結菜が突っ込む。

 側近団の護衛指揮官である彼女は、秋辺莉子、イリーナ・ベロソヴァ、グラーシャ・マルシェヴァ、ユーリヤ・モロトヴァの四人を指揮する私の最後の盾であり、五人そろって帝都学習館学園制服姿での装備確認に余念が無かった。


「何故に学生服?」


「今回の訓練想定が平日の午後のカチコミで、お嬢様とご友人がいらっしゃるという想定なんですよ。

 私たちは友人のふりをしてという訳で」


「お嬢様を逃がすのと同時に、ご学友の安全をというのもミッションに入っておりますの」


 今回の友人役らしい劉鈴音がそんな事を言う。

 橘由香と留高美羽がメイド姿なのは、その友人を接客しているという設定で、彼女たちを逃がす為と二人の方に敵が行ってくれたらという囮を兼ねていたり。

 ……ガチである。

 そのガチさで稼げる時間を一分と見積もっているあたり、そのガチさと容赦なさに私は苦笑するしかない。


「じゃあ、その迎撃者相手のお出迎え要員は?」


 私の質問に答えたのはグラーシャ・マルシェヴァである。

 手慣れた手つきで装備を確認しつつ淡々と口を開く。


「中島淳大尉が指揮する元北日本軍の特殊部隊一個分隊およそ10人が主力ですね。

 強化装甲骨格装備の特殊部隊がお出迎え。

 都市戦闘において絶対に戦いたくない相手ですね」


「ただ、実戦に近い訓練の性質上襲撃を待ち構える事ができないんです。

 最初の襲撃から彼らが動き出す五分をどうやって稼ぎだすかが、今回の訓練のポイントになるでしょう」


 続けて言ったのは秋辺莉子。

 装備確認と言っても、最初の襲撃時にこちらは武器が持てないので、その武器確保も問題になる。

 法を守らないテロリストが自由に攻められるというだけで、こちらはこれだけの対応を強要されるのだ。


「お嬢さまー。ここのドアのシステム壊していいですか?

 訓練中だけ故障って事にして、手動オンリーにしておきたいんですけど?」


 物騒極まりない事を言い出して退路の非常ドアのシステム配線にハサミを入れようとしているのがユーリヤ・モロトヴァ。

 手慣れているというか、手慣れ過ぎているというか。よそう。背後の詮索は不要だ。


「ちゃんと訓練終わったらなおしておきなさいよ」


「了解でーす。

 諸々のお小言は全部私が受け持つんで。

 莉子の話だと五分のロスがあって、私たちで一分埋めても四分残っています。

 銃ってのは便利なもんで、お嬢様を視野に入れて秒でお嬢様を殺しちゃえるんです。

 残り四分を稼ぐのが、北雲さんが受け持つメイド隊ですね」


 これも10人の分隊規模だが、彼女らがもう一分耐えれば九段下桂華タワー近辺で待機していた非番連中およそ二百人が投入可能になる。


「それでも三分余っているわね?」


「だから、その三分を稼ぐために、システムを外部操作のできない手動にしておこうと。

 九段下交番の警官隊が駆け付けるのが大体三分後なので、最上階のお嬢さまの住居フロアでの防戦は本当にギリギリのタイミングなんですよ」


「で、こんなものまで用意したと……」


 久春内七海の声に私は呆れ声でその品に触れる。

 高層ビル用脱出バックパック。

 9.11同時多発テロをきっかけに、高層ビルからどうやって避難するかで開発が進められた品である。

 映画じゃないんだからと私が言ったらダメだろう。うん。


「で、これに米国に桜田門に市ヶ谷のお客様が横殴りです?

 現実は映画より奇なりですよ」


 化粧と変装の粋をつくして桂華院瑠奈に化けた久春内七海が私に似せた声でしゃべった時に思ったのは……


(あ。これ、彼女身代わりにして深夜バス乗せればいいんじゃね?)


という訓練とは関係ない身もふたもない事だったりする。

 

おまけ

 哀れな道化たち


エヴァ

『という訳でミッションの概要は以上です。我々米国情報コミュニティーはあなた方をとても高く評価しています。

 良いお返事を期待していますね』


近藤俊作

『……聞かなかった事にできないかなぁ……』


愛夜ソフィア

『絶対樺太に逃げたあいつも巻き込んでやる……』<<もちろん巻き込まれた


三田守

『俺、今回はほっっっっっっっんとうに役立たずですからね!!!』


神奈水樹

『だったら、開法院さん連れて行った方が良くない?』<<今回のMVP



高層ビル用脱出バックパック

高層ビルの窓から15秒以内に脱出する方法 #東洋経済オンライン @Toyokeizai https://toyokeizai.net/articles/-/86911


なお、パラシュートもある

https://www.youtube.com/watch?v=KnI166Ut2Z4

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― 新着の感想 ―
[一言] 二十代の女子生徒さんがいらっしゃるわけで、「そういう学園なんだ」とテロリストに思わせたら…… 警備の大人を識別しずらくなる……のではなく、逆にテロリストがコスプレして忍び込もうとしてモロバレ…
[一言] このお嬢様もお昼の生放送長寿番組のテ○フォンショッ○ングで呼ばれたりするんかな… そしてお嬢様は次のゲストに誰に電話するんだろう、何なら米大統領に電話できそうだけど
2023/02/24 14:55 あおいすな
[一言] テレビ屋「お嬢様が2人に増えたので2人ともバスに乗せます」 おじょうさま「ドウシテ…ドウシテ…」 テレビ屋「その方が面白いからです」 おじょうさま「理由の方は聞いてないんですけど?」 こう…
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