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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
帝都学習館学園七不思議 破

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シビュラの神託?

今回はお礼回

「え?

 うちの案件に絡みたい?

 厚生労働省が?何に?」


 そんな話が出てきたのはこの間である。

 本格的に構造改革特別区域法を利用した特区が雨後の筍よろしく出てきたのが理由で、普通は民間が国と組むのだが、この件は国が民間に手を指し伸ばしたケースという違いがあった。


「旧赤松商事が抱えていた人材派遣企業シビュラ。

 このシステムで全国の雇用状態の把握と改善に寄与できたので、厚生労働省で採用して雇用促進の国家事業にしたいそうです」


「あー。あったわ。そんなの」


 秘書である時任亜紀さんは真っ当な方の理由しか言わないというか言えない。

 前の秘書であるアンジェラみたいに裏を聞くにはまだ早いのだろうし、そもそも裏を聞かせないようにという配慮なのかもしれないがそれを確かめるつもりは私にはない。

 そうなれば、裏を聞けそうな人間に話を聞くしかない訳で。


「カリンと岡崎を呼んでくれないかしら?

 この件で」


「かしこまりました」


 で、二人がやってきたのは二日後である。

 その間に私に聞かせていい部分と悪い部分を選別したのだろうなと推測する程度には私も大人になったものである。まだ中学生というツッコミは無しで。


「この案件なんですが、元々は私ども桂華電機連合の案件なのです」


 最初に口を開いたカリンの顔を見る限りは裏はなさそうだ。

 レポートを私に手渡して説明を続ける。


「桂華電機連合は日米電機企業の寄り合い所帯なのですが、ありがたい事に業績は改善に向かっており、統合の象徴となる成果及び企業の技術力アピールの機会を探していた所なのです」


 コンピューターメーカーにとって、スーパーコンピューターことスパコンは技術披露の花形である。旧古川通信はスパコン開発で名を馳せた事もあるので、そういう要望が出てきたのだろう。


「で、シビュラは米国製のスーパーコンピューターですが、旧古川通信を抱えているうちなら、お安くかつカスタマイズとアフターケアも万全と売り込んだ次第で。

 たまたま、そのタイミングで厚生労働省の方も動いたのでしょう」


 この世界において『たまたま』ほど信頼できない言葉はない。

 『たまたま』になるようにカリンが動いたあたりが真相だろう。

 うちで抱えるより、国家プロジェクトとなると箔もつくし、金もつく。

 私だけにたよらないこのバランス感覚を見て、カリンを雇ってよかったと心から思った。

 続いて岡崎が説明を引き継ぐ。


「うちの子会社である人材派遣企業のシビュラですが、あそこで使っているスーパーコンピューターって米国企業で米政府ががっつり絡んでいたんですよ。

 アンジェラさん経由で裏を取ったから間違いないです」


「絡んでいたって何を?」


「治安及びテロ対策ですね。

 人間、食うに困る奴が悪さをする訳で、そういう人間のリストアップが裏の目的だったそうです」


 なるほど。

 あの時スパコン購入はえらくあっさりとできたと思ったが、そんな裏の理由があったのか。

 まぁ、私の知らない所で何かを得た所で僻むほど私も暇ではないし、そうやって今まで来たのだからこれからも私の知らない所で誰かが何かを得ていってくれとも思ったり。


「で、それが今回の厚生労働省とどう繋がる訳?」


「シビュラのおかげで、全国自治体レベルの雇用状況が可視化されました。

 今度はこれを利用して本格的に失業率の低下に繋げる為に特区を利用する腹なんですよ。厚生労働省の奴らは」


 景気は薄日が差し、雇用も戻りつつある今、必然的に待っているのは旧北日本政府の国民だった二千万人をどう食わせるかであり、現在内地にいるだろう数百万人の彼らにどう職を与えるかという問題に取り組まなければならない時が来ていたのである。


「特区周りは桂華や岩崎を始めとした財閥が金を出して開発を推進するので、色々な人手が足りなくなりつつあります。

 で、こいつを駆使して、やばい人間を排除しつつ労働者を特区に送り込む事で雇用の改善を図ると」


「ずいぶん壮大な計画の様に聞こえるけど、できるの?それ?」


 首を捻る私にカリンが面白そうに笑う。

 何か私見落としているのがあっただろうかという顔をする前に、カリンが答えをばらしてくれた。


「というか、うちでしかできないんですよ。

 『ケーカ』を握っているうちでしか」


「あっ!?」


 身分証兼銀行口座兼交通乗車券を兼ねる『ケーカ』の持つ価値を私は改めて認識せざるを得なかった。

 シビュラは携帯電話に紐づけされているから、必然的に携帯もケーカに組み込まれる訳で、こんなにも情報が集まる以上、それが集約されて解析されるスパコンはそりゃ国家事業になろうというもの。


「そうなると、この案件厚生労働省だけじゃないわよね?

 何処が名乗り出ているの?」


 私のジト目にカリンは両手をあげて降参するポーズをとった。

 で、出てきた名前に私も苦笑するしかない。


「まずは国土交通省。これは『ケーカ』の母体が交通系ICだった事が理由です。次に財務省。彼らは『ケーカ』を利用したマネロン及び、口座や身分証を悪用する事を恐れています。最後は治安維持に個人情報を利用したい警察庁で、売り込み先はより取り見取りと」


 うわぁ。

 国家プロジェクト。唸る金と利権の奪い合いに私の顔はジト目の不機嫌の極みである。

 岡崎が楽しそうに煽る。


「どうしました?お嬢様?

 何処と組んでもまったく問題ないビッグビジネスですよ?」


「絶対にそれ、省庁争いの泥沼に巻き込まれるって言っているじゃない!!

 で、何処に売るの?」


 私の嘆きとも叫びともつかない声に岡崎が真顔になって私に確認を取る。

 このあたりの切り替えの早さも岡崎の凄い所だ。


「実際、お嬢様にお任せしますよ。

 俺はそういう事でお嬢様の下で働いていますからね。

 で、何処に売るんですか?シビュラ?」


 控えていた亜紀さんの呟きが思ったより大きかった為に部屋に届いたのはこのタイミングだった。


「お嬢様この件忘れていたから、多分考えていないんじゃ……」


 目を逸らす私。

 岡崎とカリンがため息をついてこの話はここでおしまいとなったが、シビュラの次期バージョン開発は桂華電機連合と桂華商会のプレスリリースで発表されて、省庁間の泥仕合は加速した事を記しておく。

『リコリス・リコイル』が2022年のアニメだから仕方ないとはいえ、私の物語だと『PSYCHO-PASS』になってしまうあたり、書き続けた時間を感じる。

という訳で、お礼SS紹介。


リコリコ×拓銀令嬢 ~実弾は日本を変える~

https://syosetu.org/novel/304943/




この時期のスパコン。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E6%8A%80%E8%A1%93%E5%8F%B2


NEC地球シミュレータからIBM Blue Gene/Lに世代交代が起きるあたり。

シビュラの記事を書いたのが2001年のテロ後だから、多分導入したのはIBM ASCI Whiteあたりじゃないかなと思ったり。


裏の目的

 もう過去というか歴史なんだなと思うが、95年のオウム真理教事件にオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件、98年のケニア及びタンザニアの米国大使館前で爆弾テロ事件、2001年同時多発テロとテロについては各国とも本当に警戒していた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] Psycho‐Passもリコリコもとても面白い。 劇場版Psycho‐Passが凄い面白かった。 最後の主人公の選択は、もしかしたら瑠奈の選択に重なるところがあるのかも知れない。 そんな事…
[良い点] シビュラというよりパノプティコンかも? [気になる点] そちらの争いをこっちに持ち込むなと一喝できないのが辛いところだろうなぁ。 [一言] ビッグデータ活用の時代が十年以上前倒しになりそう…
[気になる点] 今回の話 ・シビュラは元々米国のスパコンでやってた ・今回国家プロジェクトとしてやる事になった。スパコンの最高性能は古川製でなくともKEIKAがあるから仕事がとれた って感じ? 前…
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