デザイナーメモ ジェネラル カムバック
久しぶりに架空戦記脳を動かしてみた
「ただの予備役中将を呼び出してどのような用件ですかな?
桂華院元警保局長」
「これでも一応華族なのだけどね。
君が罵倒していた上等兵が暗殺された。殺ったのは海軍の跳ねっ返り。
現在帝都は警察の下で治安維持に当たっている」
「三宅坂も地に落ちましたな。
戒厳司令部すら置かないとは。
仕切ったのは貴方で?」
「まさか?
これでも公家の出なのでね。
殿上人は地下人の争いに関わらないのが雅というものさ。
とはいえ、次で揉めている」
「殺ったのが海軍の跳ねっ返りで陸軍が大臣を出さない……と?」
「その通りだ。
という訳で、陸軍大臣。やってみないかい?」
「お断りしましょう。
今更私の言葉など誰も聞かないでしょう?
で、海軍が出ないなら陸軍は誰が候補に?」
「朝鮮総督。南方軍総司令官。支那派遣軍司令官の三人だ。
戦場から大将を呼ぶわけにはという訳で、朝鮮総督を軸に動いているらしい。
とはいえ、暗殺でまともに動いていないのは、私が君を呼んだ時点で察しているのだろう?」
「それでこの戦争は戦えないでしょう?
どうせ三宅坂は戦争を邪魔してほしくないだけだから、本気で三人を推すつもりもない。
重臣たちは誰に?」
「ここで宮様内閣は無理だろう。
内府を軸に動いているらしい」
「終戦工作を本格化させるつもりですな?」
「まだ戦えると言うのならば、私は君の見識を疑わなければならなくなるのだが?」
「まさか。
邪魔はしませんが、馬鹿は無数に……なるほど。
大臣の椅子は、夏の虫を焼く火になれと?」
「そういう事だ。
戦中に総理が暗殺されるという凶事が発生した今、誰も信用ができないという訳でね」
「で、忘れ去られた割には敵が多い私に声がかかったと。
そういう話なら乗ってもいいですが、まず向こうに聞く意思があるのですかな?」
「……これはドイツからの極秘情報だが、欧州で連合軍がフランスに上陸しようとして失敗したらしい。
向こうはその後始末に奔走しているそうだ」
「マリアナ沖で米軍が猛攻をしているのは、それを糊塗する意図もあるんでしょうな」
「とはいえ、この戦争は我々は脇役で、本命は欧州だ。
混乱している我が国に対して、非公式で接触してきたよ」
「何処が?」
「英国とソ連だ。
ビルマであれだけ戦っているのに、こちらが動揺していると察したら即座に接触してきた。
イタリアという前例があるとはいえ、さすが大英帝国だな。
ソ連はもっと露骨で、レンドリースへの警告や臨検を止める事を条件に仲介を申し出てきている」
「ソ連はやっと独逸を押し返せそうとはいえ、米国からレンドリースがなければ攻勢は続けられず、渇望していた第二戦線としてのフランス上陸が失敗に終わった今、独逸の圧力を受けるのは彼らだ。
イタリアよろしく寝返るのならば、彼らも全力をかけてくるでしょうな」
「彼らを信頼できるのかね?」
「まさか!
信頼できないからこそ、信用できるのです。
隣の家が燃えているのに逆方向の隣人と喧嘩している暇はないでしょう?」
「それはそうだ」
「ははは……」
「ははは……」
「……大臣うんぬんはともかくとして、現役復帰については条件があります」
「聞こう」
「私をビルマに送って頂きたい。
それと国内で何かやりそうな連中をまとめて連れていく事を」
「ああ。なるほど。
我が国がイタリアと同じように寝返るならば、欧州に送られるのは一番近いビルマか」
「関ヶ原の小早川秀秋とて石田三成の佐和山城攻めの先鋒を命じられました。
上手くいかなくても、この話が英国に洩れればビルマの動きが鈍るでしょうよ」
「了解した。
現役復帰の根回しをしよう。
まぁ、今敗勢のビルマに行きたがる物好きはそう居ないだろうよ。
他に何かできる事は?」
「マリアナが陥落する以上、本土の守りはどうか固めていただきたい。
それと、寝返る以上は多くを求めないように」
「こちらもそこまで馬鹿じゃ……なるほど。
本土の守りはそういう意味の守りか」
「私としても、貴方に全幅の信頼を置く訳にはいかないので」
「我々の手駒として、近衛第三師団を準備しよう。
何かあった時の為に」
「結構。
ならば、手続きが済み次第向こうに飛びましょう。
……ああ。そういえば一つ尋ねていなかった事が」
「何だね?」
「私みたいな人間すら引っ張り出した貴方は、この政局でどう動くので?」
「言ったじゃないか。
私は一応華族なのだと。
……枢密院議長に就く事になる」
「ならば安心ですな。
特高時代にソ連を手玉に取ったその才略で、国内外の有象無象を手玉に取って頂きたい」
酒田旅行で石原莞爾の墓に触発されて、彼がお嬢様世界ならという感じで書いてみた。
この時期の首相暗殺は本当に色々妄想が沸く。
インパール作戦
1944年3月8日 - 7月3日
アンツィオの戦い
1944年1月22日 - 6月5日
ノルマンディー上陸作戦
1944年6月6日
マリアナ沖海戦
1944年6月19日- 20日
バグラチオン作戦
1944年6月22日 - 8月19日
独ソ戦は派手な改変が発生しているので史実とは派手にずれている。
多分ドニエプル川でにらみ合っていて、バグラチオン作戦は発動していないのだろうなぁ。
この話で近衛師団の位置が確認できたので、『帝都学習館学園七不思議 チェーンラブレター その2』の華月詩織の祖父の近衛第二師団長を近衛第三師団長に変更。




