湾岸カーレース TIGバックアップシステムスポンサー車選定 その2
おかしい所があれば後で修正してゆくスタイル
テイア自動車のリストを眺めながら『アヴァンティー』での選考は続く。
コースを見ながら栄一くんが呟く。
「このコースだと周回遅れは多分出ないな」
一周64キロのコースだから、まず周回遅れは出ない。
それは、最速を目指さなくて完走で十分な私達にとっては、問題が一つ減る事を意味する。
「出す連中はそれぞれ出すだろうが、元が公道だ。
200キロを超えると途端に世界が変わる。
まぁ、本家のプロジェクト連中の受け売りだけどな」
栄一くんの言葉は続く。
200キロラインがひとまずの境目とするならば、ボトムラインも大体見えてくる。
「140キロから200キロぐらいを出して完走できる車。
これだけでも選択肢が大体見えてくるはずだ」
次にラリーカーのレギュレーションを確認していた裕次郎くんが呟く。
栄一くんの言葉を受けて、いくつかのレースレギュレーションの書類をテーブルに並べる。
「多分、適用されるとしたらラリーカーのレースが一番近いかな?
レギュレーションだとこれかな?
グループNってやつ。
これにドライバーの安全を考えたものあたりが一番妥当なラインじゃない?」
そういうレギュレーションで想定してゆくとスポンサーする車種が少しずつ見えてくる。
今度は光也くんが呟く。
「本選が20台で冬の首都高。
予選が40台で夏から秋の首都高。
これ、エントリー時点からのサバイバルレースだな」
スポンサー集めから書類選考、予選と既にレースは始まっていた。
そして、私達も、レースチームも、自動車メーカーもこうしてそれぞれの立場でレースと向き合っている。
私がぽんと手を叩いた。
「あー。なるほど。
あの局長の考えそうなことよね。
レギュレーションから速さまで、このレースという物語の一部でしかないのよ」
あーだこーだというレギュレーションの暗闘から、各自動車メーカーのエントリーまでのドタバタぶりまで余す事無く富嶽テレビは面白おかしく伝えていた。
それが視聴率を押し上げ、話題を増幅させてゆく。
FIAの介入を跳ねつけられるのもこの話題性とリアルタイムのテレビ放送のおかげであり、野良レースと蔑まされている事すら逆手に取った『公道最速は誰だ?』というキャッチフレーズの勝利にFIAは未だ手をこまねいていた。
「質問なんだけど、レースに出る車って実際どれぐらいのスピードで走る訳?」
私の質問に栄一くんが答える。
地図でコースをなぞりながらの返事なので、若干返事が上の空である。
「出そうと思えば、それぞれ300キロ出せる車が出てくるだろうが、このレース多分低速部分が肝だ。それに、コースが首都高なだけにかなりの高低差がある」
意図的なハプニングポイントとして高速のICを撤去しないとか局長がほざいた結果、最高速で高速をぶっ飛ばした後にお台場にて下道に降りないといけないために一気に速度を落とさないといけなくなる。
エンジンやタイヤにシャレにならない負担を強いるのは言うまでもない。
更に高速道路はレース場以上の高低差がある。
特に湾岸線はトンネルあり、橋ありのコースだから、その高低差を考えたらラリーカーレースのレギュレーションもある意味納得するしかない。
「あと、予選含めて下見が難しいから、各陣営ともかなりスピードは抑えると思う」
「たしかに、下見時は高速は他の車が走っているから、事故ったらレースがぶっ飛ぶしな」
栄一くんに続いて裕次郎くん、ついで光也くんが口を開く。
言われてみれば確かにそうで、国や都の協賛するレースで交通違反とか事故があったらスキャンダルになるので、ドライバーは必然的に日本の公道を走れる免許を持った上でレース前の法の順守が求められる。
多分コースの感覚を得るために下見で湾岸線を走るドライバーが出るだろうが、彼らが高速でぶっ飛ばす事を避ける仕掛けが必要だった。
あまり固まっていないレースのレギュレーションの中で、『ナンバーをつけた車』の次に定まったレギュレーションと言えよう。
「じゃあ、これなんてどう?
たしかこれも漫画になっていたんじゃなかったの?」
私の指摘した一台に三人が資料を手に取る。
確かにテイア車で、勝ちを狙うには厳しいが、かといって戦えない訳ではない車である。
なお、最近始まったドリフト選手権なんかでも使われていた。
「悪くはないが、帝亜。
これ、排ガス規制通るのか?」
光也くんの確認に栄一くんが断言する。
その車の写真を手に取って言い切る。
「エンジンの換装からの大改造になるがうちならやれる。
目立たず、邪魔せず、話題を作るならこれでいいか。
お台場でドリフトをして話題を作れるし」
そんな感じで決定したが、実は肝心な所を私達は忘れていた。
車種選定とそれを使っているチームの選定が先で、肝心のレースレギュレーションがその車に適合するか忘れていたのである。
それに気づいた私達に控えていた橘由香がつっこむ。
「多分お嬢様が局長に言えば通ると思いますが?」
なるほど。
ルールを握るってこういう事か。
なお、TIGバックアップシステムのスポンサーチームが安全祈願と称して、レースクイーン姿の私がレース車と一緒に金刀比羅宮にお参りに行くことになり、その中継後、参加チームが次々と安全祈願をする事になり、自動車メーカーだけでなく日本各地の交通安全祈願の寺社の面子もかかる事になったのは、笑い話としてこのレースの物語を盛り上げる事になった。
……安全祈願はついででうどんが食べたくなったのが理由なんて今更言えない。
ついでに、レースクイーン姿で金刀比羅宮を登るという苦行を撮影されて大事になった為に、私はあくまでついでで讃岐うどんをすすりながらこの事を墓まで持ってゆく事にした。
橘由香以下スタッフ一同にバレバレのような気がするが、気のせいという事で。
という訳で、車選定。
活動報告で見た「スプリンタートレノ」の一言でハチロクを思い出して『頭文字D』を一気読みしたのが原因である。
で、Wikipediaで確認すると、全日本プロドリフト選手権とかでこの年あたり使われているのが確認できたのが決定打となる。
お参り
某やらない夫系メガテンのオマージュ返し。
完結おめでとうございます。
レースクィーン姿
『艦これ』のレースクィーン鹿島とレースクィーンゴトランドで迷い中。
なお、男子三人の選定である。




