青少年の主張
帝亜栄一、泉川裕次郎、後藤光也の三人がアヴァンティーで駄弁る。
集まった理由は彼らの会社の事もあるが、カルテットの紅一点である桂華院瑠奈が居なければそこは年ごろの男子。
そういう会話にもなろうというもの。
「しっかし、石川先生本気で脱がすのか……?」
「少なくとも桂華院家側は妨害しないみたいだね」
「石川先生が表に出てからパパラッチが減ったってニュースを欧州のゴシップが書いていたな」
帝亜栄一がぼやき、泉川裕次郎がツッコミ、後藤光也が話題を振る。
テーブルの上のコーラとミルクティーとコーヒーが適度に減りながら雑談は続いた。
「何でパパラッチが減るんだ?」
「減った連中は桂華院の裸が撮りたい訳で、その最前線にピューリッツァー賞写真家が居る訳だ。
しかも、桂華院家優遇というか公認と言う位置で。
勝てると思うか?」
「ああ。それで今年の夏の水着あんな際どかったのか……」
帝西百貨店お嬢様ブランド『ティル・ナ・ノーグ』。
そのポスターの桂華院瑠奈は、
『この水着!
ほとんどヒモじゃ!!
ないですか!!!』
叫びながらその水着を着ており、テレビでそのネタが披露されてからはやくも爆発的な売れ行きになっているという。
ブームには乗れとばかりに、帝西百貨店グループは各地のデパートや大型スーパーの屋上にこの夏限定のプールを用意するとの事で、今年は際どい水着を着た女性たちが夏のプールを彩る事になるだろう。
なお、そのポスターと写真集は速攻で売り切れたのだが、この三人もコネを使ってしっかり確保しているのは言うまでもない。
「で、そっちが駄目ならと別方面から瑠奈を攻めている訳だ」
「これだよね。『箱に隠れるお嬢様』。
撮ったパパラッチも何やっているんだろうと頭を抱えたって書いていたけど」
「あれ、開法院のかくれんぼ能力を習得したくて始めたらしいが、箱を取ろうとするメイドと必死に中で押さえつける桂華院という何やってんだという一枚で、それは欧米で元ネタと共にバカ売れしたそうだ」
「まぁ、向こうのセレブは箱に隠れて動くなんて事はしないだろうからな」
なお、開法院蛍のガチのかくれんぼ能力を知っている三人だけに笑えない。
しかも桂華院瑠奈の身体能力を知っているだけに、本当に段ボール隠蔽を覚えそうと思ってしまうから始末が悪い。
三人とも元CIAのメイドから『お嬢様が箱に隠れていたら教えてくれ』と頼まれている身だったりする。
「思うんだが、瑠奈は箱に隠れる能力を身に着けて何処に行くんだ?」
「桂華院さんの事だから何も考えていないと思うよ」
「桂華院はできるからしたいだけで、その後を考えないからな」
それぐらいは分かる付き合いのある三人である。
欧米のパパラッチに提供された彼女のネタと言えば『サイコロで発狂するお嬢様』とか『ゲーセンでレトロゲームを相手に発狂するお嬢様』とか『立ち食いそばで講釈をたれるお嬢様』とか色々提供されているが、ただ一つお嬢様こと桂華院瑠奈に物理的な接触をするものについては日米露の警備によって徹底的にさけられていた。
だから、この手の定番である『パイを食らったお嬢様』の写真の方が最近はお嬢様のヌードよりも価値が高いというパパラッチ界隈の笑い話をこの三人は知らない。
「そういえば帝亜よ。
実家の方から何か言われたりしないのか?」
「何をだ?」
「湾岸カーレース。
海外じゃあ凄い盛り上がりだが?」
「ああ。石川先生と白崎孝二監督で写真とデモンストレーション映画を作った奴だよね。
東京の首都高の深夜に桂華院さん他レースクイーンを立たせて、その横をライトの光だけが駆けてゆくかっこいいやつ」
「あれか。
俺は関わっていないが裏事情があって、協賛する都の排ガス規制をクリアする車を用意できなかったらしいんだよ。
本当は車を走らせたかったらしいな。あのPV。
おかげで、9月の第一次予選までに都の排ガス規制をクリアするGTを作らないといけないんで、既存車のエンジン入れ替えで対応しつつ、次回以降も見据えて新車を開発するとかで、門外漢の俺が口を出す余地なんかないよ」
「欧米が大使館経由で圧力かけているって聞いたけど、圧力かける場所が違うんだよね。気づいていないみたいだけど」
「だよな。泉川の言葉を使わせてもらうが、厄介なのは国じゃなくて都の排ガス規制の方なのに」
「まぁ、外資は国内のディーラーと組むから最後は出れるだろうが、ルールを握るってこういう事かと傍目で感心させてもらっているよ」
そんな話をしているとウェイトレスがやってきて三人の飲み物がお替りされる。
喉を潤した後、三人の話はまた別の話題に変わる。
「話を変えるけど、夏に樺太競馬会がついに結成されるね。
今年の結成と構造改革特区法を利用した樺太競馬復活で、欧州とアラブの大物がやってくるみたいだよ」
泉川裕次郎の言葉に、帝亜栄一と後藤光也の顔に緊張が走る。
三人とも、その大物が桂華院瑠奈のお見合い候補と知っての緊張である。
もちろん、負けるつもりはない。
「しまったな。
俺たちも馬を買っておくべきだったか」
「さすがに、僕たちの年で馬主は無理だよ」
「桂華院とて、法人名義だからな。
むしろ、関わるなら湾岸カーレースの方だろう。
帝亜がいるから合法的に絡めるし……」
後藤光也の言葉が一瞬途切れる。
それに合わせて喉が鳴ったが後藤光也はそれを言った。
「桂華院の事だ。
嬉々としてレースクイーンとして出るぞ。残暑厳しい一次予選から」
三人とも視線を少しだけ逸らす。
その先の妄想にはコネで手に入れた際どい水着を着たレースクイーンの桂華院瑠奈が見えていた。
多分怒鳴っている所まで。
「うん。
本家の邪魔をしない程度に手を出す事にする」
「なんなら、TIGバックアップシステムでスポンサーをする?
合法的に絡めるけど?」
「それだ!泉川!!
俺はテイア自動車系列のワークスチームで資金的に苦しい所を探しておくから……」
思春期の男子と言うのはこういうものである。
パイ
記事があったので紹介
パイ投げスナイパー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A4%E6%8A%95%E3%81%92%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC




