表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
帝都学習館学園七不思議 破

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

643/827

某地方局記念ドラマ『深夜バス』予告

重たい話が続いたのでギャグ回

 一日の時間は24時間しかなく、この国のテレビチャンネルは最大で公共2つ民放5つの7つしかない。

 それは全部30分番組にしても、一日336人しかこのテレビという四角い箱の中の主人公になれない事を意味する。

 だからこそ、このテレビの主役になりたい金もコネも芸も持っていない誰かは、それ以外の何かに縋るのである。


「知っているか?」

「何を?」

「某局が始める新番組。

 ロケが過酷らしくて、オーディションを開くらしいぞ」

「へー。でも出てもコネも芸もない俺たちなら通らないだろう?」

「そうでもない。

 このオーディションの条件が『深夜バスに乗り続けられる事』なんだそうだ」


 これは、そんなテレビへの夢しかない若者二人が、現実を前に壊れてゆく物語である。




「長い……眠い……眠れない……」

「暗い……揺れる……まだつかない……」


 常に圧倒的カットされる乗車時間。

 それすら呑み込んでゆく圧倒的時間。時間。時間。


「北海道って広いんだな」

「誰だよ『狭い日本』なんて言った奴は……」


 編集されるその膨大な時間にオーディション参加者が壊れてゆく。


「もう嫌だ!俺は帰る!!かえるんだぁ!!!」

「てめぇ俺のジャムパン食ったな!!」

「知らねえよ!ジャムパンに名前とか書いてあるのかよ!!!」


 生み出される人間の浅知恵とその末路。

 因果応報という言葉を悟りに変えてバスは深夜の高速を走り続ける。


「時間を潰すために本を持ってきた」

「……重たいし暗くて文字が見えない……」


「時代は携帯ゲーム機だろう?」

「……電池が切れた」


「食べたり飲んだりできるオーディションって最高じゃん!」

「……ぉぇ……」


 そして唐突に現れるスポンサーのお嬢様登場。


「ねぇ。知ってる?

 ブルートレインってね、寝れるのよ」


「何それ羨ましい」

「俺たち座席で固定されているってのにお金持ちはよー」

「これだからお金持ちは……」

「うっさいわね!

 だったら、壇ノ浦や淡路島みたいな伝説を作ってみせなさいよ!!」


「……飛行機だったらそもそも乗らなくていいのでは?」


 懇切丁寧に流されるお嬢様つきメイドのツッコミ。

 朝の東京にハイテンションになる出演者たち。

 そんな彼らに運命の女神が襲い掛かる。


「次の行き先はこれです!」


「「さいころじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」


 早朝の通勤客を気にせず奇声をあげる参加者たち。

 そこに燦然と輝く『はかた』の文字に出演者及び撮影者も恐怖する。

 東京から博多までおよそ14時間半の見えている地獄に皆の心は一つになり、またしても何も知らないスズムシとお嬢様の手の間でサイコロが舞う。


「嫌よ。私。振らないからね」

「あんたスポンサーでしょ。

 責任取りなさいよ」

「企画にお金出した私が何で地獄に付き合わないといけないのよ!」

「そりゃあ、サイコロだし」

「「だったらミスターが振ればいいじゃない!」」


「あれ?

 これ、俺たちのオーディションじゃなくてもしかしてただのロケ……」

「それ以上はいけない」


 そして、ミスターの出したサイコロに皆の心は一つになった。



「「「「「ダメ人間!!!!!」」」」」



 主演……

 取材協力……

 主題歌……


「ほかにも企画があったんだよ。

 原付樺太の旅とか、ジャングルで動物観察とか」

「それ私運転できないじゃないの」

「何で当たり前のようについてゆく事になっているんだろう? このお嬢様??」


 特別出演 桂華院瑠奈 (本人)

      アニーシャ・エゴロワ (メイド)


「ここで裸撮らせてくれるなら深夜バス乗らなくていいって……」

「え? 脱ぐわよ!!

 なんならここで!!!」

「お嬢様。人間性を捨てないでください」

「人間性はサービスエリアで死にました!」

「深夜バスから逃げるな」


 特別出演 石川信光 (写真撮影)

      白崎孝二 (撮影協力)


「俺はもっとテレビって華やかなものだと思っていたんだ」

「こんなにも映らない時間ってあるんだな」


 涙あり。笑いあり。人間ドラマあり。

 その全ては深夜バスの中で発生する。


「寝れないんだよ」

「あれ本当だったんだな」


 主演……

   ……


「さぁ。サービスエリアに着いたぞ。

 いい絵を撮らせてくれよ」

「このヒゲ殺さないか?」

「うなされてたのに何だあのバイタリティー」

「博多まであと三時間もあるんだよな」

「言うなよ。聞きたくなかったのに」


 全面協力 桂華グループ


「なぁ。

 博多バスターミナルの降車口で、凄い美人のキャリアウーマンがこっち睨んでいるんだがあれ何だ?」

「おい。ヒゲが大爆笑しだしたんだが?」

「アンジェラ……ニューヨークに居たのに何でこんな所に……」

「お嬢様がこんな事やっているからじゃないですかね?」

「またあの人とヒゲとお嬢様が英語と日本語交じりで罵り合うのか……じゃあカメラ回すか」


 特別出演 アンジェラ・サリバン (本人)



 今年、我々が皆様にお送りするテレビの裏側の人間ドラマ。

 半分以上がドキュメンタリーというか別番組のロケじゃないかと思われるが、あくまでこれは新作ドラマです。


『 深 夜 バ ス 』


 水曜 23:15 オンエア予定

多分BGMはあれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=890190079&s
― 新着の感想 ―
誉は浜で死にました。 人間性はサービスエリアで死ぬのか。 いやダクソですらそうはならんやろ。
[一言]  地味に貧乏旅行流行るってか、まだ通信速度安定してないから動画やネットラジオの代わりにメールTRPGみたいな読者参加番組(出演者や宿泊先もメーリングリストから優先)になりそう。即書籍にできる…
[一言] 警備上の理由で電波に乗ることは万が一にも無い、バスのロケに帯同するお嬢様の警護要員車列を拝むそういう人種のオタクいる。 ご飯三杯いける
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ