虚塔の宴 宴の始末 その1
まとめた結果玉突き衝突
春まで続いたマネーの宴だが、それに翻弄されて後始末が終わっていない所がいくつかある。
その一つがプロ野球だった。
『では、桂華院瑠奈公爵令嬢の始球式です!』
ウインドミルで投げたボールはそのままキャッチャーミットへ。
バッターがきちんと空振りをして始球式は幕を閉じた。
「お疲れ様でした」
「ありがとう。
マスコット役も楽じゃないわね」
タオルとスポーツドリンクを手渡すエヴァに私はぼやく。
たしかにプロ野球再編問題に絡んだために、私に出てもらって客寄せをしてくれというのは分からないではない。
だからといって、何で横浜でしなければならないのかというと、ニューヨークのマネーの宴が絡んでいた。
「仕方ないですよ。
球団を持つことになったフェブエッジ側のたっての希望なんですから」
不良債権処理で体力がなくなりつつあった一部の球団親企業とITバブルで財を成して名を買いたい新興ネット企業、コンテンツとして利用できたメディア球団の親会社の醜い争いは、最後金によって解決することになった。
福岡はユニオンリソースがそのまま買収。
大阪の関西電鉄は同じ在阪球団と統合し、パラダイス・ワンダーマーケットが仙台に新球団を設立。
さらに親会社の経営危機で帝西鉄道が帝亜グループ入りしてオーナー交代が発生。
で、パラダイス・ワンダーマーケットの帝国文化テレビへのTOBと富嶽放送の競売で桂華商会とフェブエッジが落札した結果、この横浜の球団が問題化したのだ。
この横浜球団は2001年に親会社の交代で富嶽放送が球団株を取得しようとしたが、富嶽放送グループ企業である富嶽テレビが神宮の球団の株を保有しており、『野球協約に抵触する』と問題化して帝国文化テレビに譲渡という結果になっていた。
それと同じケースが帝国文化テレビで発生する事になったのだ。
既に仙台に球団設立準備を進めているパラダイス・ワンダーマーケットを排除する訳にもいかず、リーグが開幕しているのにこれ以上のオーナー会議で揉める訳にもいかず、メディア系親会社はメディアを使って世論喚起という手を取ろうとしたが、マスメディア集中排除原則で親会社の帝国テレビが叩かれつつある今、ついに白旗を上げる事になったのである。
そんな状況下で、手をあげたのはフェブエッジしか残っていなかったのである。
事、野球においては、ネットがメディアを粉砕した形になった。
で、フェブエッジはこの棚ボタ勝利を徹底的に利用した。
言うだけはただとばかり「ホームゲームの始球式に出てくれないか?」と頼まれ、富嶽放送の経営と富嶽テレビを巡る共闘の観点から私がOKを出したという訳で。
チアガール衣装を着た私の始球式に向けられるカメラの砲列だが、投げ終わった後にざわついたのはいい気分である。
久々のチート身体能力によっていいボールが投げれたと思う。
「で、このチーム勝てるの?」
「厳しいですね」
私の質問にエヴァがあっさりと言う。
あ。打たれて先制点を相手チームがとってら。
「球団経営って、勝つと儲かるが違うんですよ。
たとえば、大金を払ってメジャーリーグから選手を呼んで勝ったとしましょう。
その資金の回収が難しいんです」
日本の球団経営がコンテンツ産業なのは、この資金回収が球団単独で成り立たない事に起因している。
親会社が鉄道会社ならば、試合を見る為に自社の路線に乗ってくれるのでそこから回収できるし、メディアが親会社ならば中継にニュースに翌日の新聞と利用できるからだ。
だからこそ、球団単独で資金を回収するという概念がまだなかったのだ。
繰り返すがこの時期あたりまでは。
「日本でもサッカーが根付いて来だして、地域に密着する形の経営に姿を変えようとしています。
少なくともパラダイス・ワンダーマーケットとフェブエッジはその方向で経営せざるを得ないでしょう」
彼らは成金だからこそある意味金にシビアだ。
他の所で回収すればいいという考えを捨てて、球団単独で利益が出るように動こうとするだろう。
ワールドカップがあった事でサッカークラブが本格的に地域に根付こうとしている今、この地域密着と経営をネット企業は新参者だから丸ごと取り入れようとしていた。
なお、有り余る金と私の野球に対する距離から某副社長が怪しげな妄想をしていたのを暴露しよう。
「嬢ちゃんの銭があれば……85年のあの奇跡が……」
それを進言しないのは、その球団の中までよく知っているファンだからである。
私のこれだけの金と権力を以ってしても勝てないのがスポーツの面白い所だ。
そういうファンと仕事を区別している所も私があのおっさんを評価している所だったり。
馬についてはひとまずおいておくとして。
「体制を整えるのに三年。勝てるようになるまで五年。優勝を狙うなら十年という所でしょうか?」
「その根拠は?」
私の質問にエヴァはあっさりと言った。
「私の地元の球団が、だいたいそんな感じだったので」
なお、試合は8対3で負けた。
その日の野球スレに私の事で少し騒動があったのは笑った。
『103キロ!?お嬢様中二だろう!?』
『あのお嬢様からタイガーソウルを感じる』
『個人資産数兆の公爵令嬢をどうやって引っ張るんだよwww』
『感じる前から怒りの撤退www』
『あのお嬢様に球団買ってもらえばよくね?』
『そ・れ・だ!!!』
書き上げて、ここからパワプロできるなと気づいて、あ、これお嬢様『巨人の星』の花形満だと気づく。
掲示板は後で書くかもしれない
ウィンドミル
ソフトボールの投げ方で投げてみた。おかしかったら、アンダースローで投げるように変える予定。星野伸之投手が好きだったりする。
球団経営あれこれ
日韓ワールドカップの後からのサッカーの地域化が良い感じにパリーグを中心に広がった。
これがセリーグで根付いたのが広島や横浜である。
サッカークラブの経営がプロ野球に波及する流れについて資料が欲しい所。
85年の軌跡
なお、私は『がんばれタブチくん』の影響で西武ファンだった。
あの頃の選手が福岡にけっこう来てくれたので、そのままそっちに流れた口である。
子供心にテレビで何度も流れたあの三連弾は忘れられんわ……
エヴァの地元の球団
テキサス・レンジャーズ。
なお、この球団経営に大統領が関わっているのを確認した時に知った。
タイガーソウル・怒りの撤退
元ネタをペタリ
https://wikiwiki.jp/livejupiter/%E7%8C%9B%E8%99%8E%E9%AD%82
https://wikiwiki.jp/livejupiter/%E6%80%92%E3%82%8A%E3%81%AE%E6%92%A4%E9%80%80
あと、掲示板ネタで
『〇〇くん!××に入ろう!!』を使いたかったのだが、これ元ネタが何だったのか覚えていないので情報求む。




