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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
虚塔の宴

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『ひらがなーず』放課後編

磨伸映一郎先生『氷室の天地』第14巻販売おめでとうございます。

 この国の華族や財閥、または上流階級が通う帝都学習館学園。

 この学園は小学校からの一貫教育だが、中等部、高等部には外部の一般生徒から優秀者が特待生という形で招かれる。

 という事は、中等部や高等部の特待生に選ばれることを目指す生徒たちが集められた学校もまた周辺に存在してる訳で。


「授業終わったー!」

「昨日のTVがさー」

「私、バイトがあるのよ……」


 そんな日常を送る生徒たちが周辺の学校から家に帰る途中、放課後の名物が道路を通過する。


「行きも帰りも上流階級の人たちはものものしい事で」

「あいつら、部活よりも社交の方が大事なんだろう。

 毎日毎日パーティーとか愚痴っていたぞ」

「結婚もほぼお見合いだしな。

 うらやましくはあるが、なりたいかといえばなぁ……」


 華族のお迎えの車による渋滞を眺めながら一般学生たちは徒歩で家路を急ぐ。

 鉄道をはじめとした公共交通機関が発展している東京という街は、ある程度歩いた方が実は早いのだが、それを華族連中がするには面子とセキュリティーの問題がある訳で。


「るりちゃーん!

 今、部活の帰り?」


「ああ。

 それと何度も言うが、ちゃんはやめてくれ。甘崎。恥ずかしい」


「えー。かわいいのに」


 竹刀を肩にかけて歩く大倉るりの隣に甘崎ひなが追いつく。

 いろいろな小物を持っているあたり、どうもゲーセンで遊んでいたらしい。


「みてみて!今日の戦果!!」

「甘崎はこういうの上手いな」


 ゲームセンターと言えば、一昔前は不良のたまり場と呼ばれていた場所である。

 それが新世紀に入ったあたりからクレーンゲームやプリクラや音楽ゲームで女性客を取り込もうとしていた。

 その旗振り役はケイカ・ゲームズこと旧ズガガガ・エンターテイメント社。

 カラオケ・ネットカフェ・ゲームセンターという巨大複合施設『トライアド・アミューズメント』を作って、若者の文化発信の担い手にならんとアピールしていた。

 そんな『トライアド・アミューズメント』は帝都学習館学園の近くにもあり、多くの学生で賑わっていた。


「はぁはぁ……あ、甘崎。あなたまた帰り道にゲーセンに寄ったな?」

「えー?

 さっちゃん。みんな寄っているじゃない?」

「校則では一応禁止なんだよ。甘崎よ。

 美春は委員会の帰りか?」

「ぜいぜい……そう。議題がそのゲーセン絡みなのよ」


 走ってきたらしく息が上がっている美春さつきに甘崎ひなが返事を返し、大倉るりが額に手を当てる。

 当たり前だが、周辺学校PTAはこのゲームセンターの存在に批判的だが、その批判もどこ吹く風で『トライアド・アミューズメント』は存在し続けており、周辺校は校則の禁止で対応するしかなかった。


「でも、あそこ安全だし。不良もいないよ?」

「そりゃ、桂華のお嬢様が遊ぶゲーセンでそういうのが居たら駄目だろうよ」

「それが理由だから、学校もPTAも文句が言えないんだよ」


 そのゲームセンターに何故かレトロゲームが置かれているのは間違いなく某お嬢様の趣味である。

 最近は、ピンボールにはまっているらしく、発狂している姿が見られるとか。

 館内だけでなく周辺区画にまで張られた監視カメラ網に、各フロアに常駐するメイドと言う名の警備員、何かあった時は当たり前のように出てくる軍隊なみの規律を持った探偵や賞金稼ぎという治外法権さながらの要塞である。

 周辺の不良たちはここを縄張りにしようとして国家諜報員並みの警備会社と探偵の追い込みに撤退する羽目に。PTA側は行政サイドから網掛しようと躍起になっていたが、華族絡みの案件だけに行政も及び腰という有り様で、周辺校は頭を抱えていた。


「大体、遊び続けたらお金が幾らあっても足りんだろうが」

「ふっふっふ。

 今の私はお金持ちなのです!

 この間の街中美化運動の報酬でケーカポイントを結構貰えたのだ!!」

「それもあるから文句言えないんだよ……本当に……」


 遊んでもらうためにはまず与えよではないが、桂華グループは周辺校の生徒に桂華グループ共通ポイントカード『ケーカ』のポイントをばらまいたのだ。

 街中美化運動に協賛し、学生ボランティアにお礼として『ケーカ』ポイントを渡す。

 『ケーカ』ポイントは桂華グループのお店で利用できる訳で、『トライアド・アミューズメント』も当然対象店舗に入っていたのである。

 学園周辺部の美化は治安の向上に繋がり、この費用を桂華グループは『警備費』で計上しているあたり、これもお嬢様警備の一環だったりするが、この三人には知る由も無い。

 さらに、ICカードによって利用履歴が丸裸になってその莫大なデータが商品開発に使われているなんてのもこの三人には知り得ぬことだ。


「それはいいが、今度できる新宿ジオフロントにゴールデンウィークに私たち三人で遊びに行くのだろうが。お小遣いは残しておけよ」


「もちろん!

 巨大ショッピング街ができて周辺のデパートや繁華街と繋がる新宿ジオフロント。

 遊ぶためのお小遣いは家でのお手伝いでちゃんと確保しているのだ♪」


「欲しいものいっぱいあるが、買えるかな……」


 三人の歩く隣のコンビニには『新宿ジオフロント街開き!2004年4月27日』というポスターが張られ、そのポスターの中央で桂華院瑠奈が微笑んでいた。

 ピンボール。

 WINXPについてて、暇つぶしによく遊んだなぁ……

 昔、ピンボールをする少女が全米を旅する映画があって、試しに調べたのだが『ブルック・シールズの プリティ・ギャンブラー』かなぁ?

 さすがにDVD化はされていないだろうけど。どんな物語だったか忘れたけど寂れた米国の街が印象に強くて……


美化による治安改善

 割れ窓理論 Wikiペタリ。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%B2%E3%82%8C%E7%AA%93%E7%90%86%E8%AB%96


街開き

 カレンダーで大安吉日を確認してこうなった。

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― 新着の感想 ―
そういや権力者は自分の肖像を貼りたがるものよな。 まあ、このお嬢はヌードグラビア撮るまでのマイルストーンとして貼られてるだけなんだけど。 全世界の性癖を歪める大望とか恐ろしすぎるわ。
[一言] 最後の瑠奈の世界を闇から支配してる悪役感よ。いや、悪役令嬢だけど
[一言] 学習院近辺がどうなっているかは知りませんが、文教地区指定って結構いい加減なもんですよね。 通学に電車を利用していれば、どうやったってその区画の中心市街地を通ることになるし。
感想一覧
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