パンドラの箱 (なお他にもたくさんある模様)
いい感じに架空戦記クラスタに話題をぶん投げてみる。
「後藤。こっちだ。
すまないな。予算絡みで忙しい所来てもらって」
「まぁ、構わないといいたい所だが、奢れよ。
退官して、今やPMCの財務役員とは互いに入省した時には思っていなかったが。
で、この時期に呼び出したんだ。
ろくでもない話だったら、高い酒頼んでやるからな」
「分かっているって。
乾杯前に、先に本題に入るか。
後藤。お前兵部省の動き掴んでいるか?」
「兵部?
……16大綱の事か?
向こう側に送った奴と概略については話してるが、まだ全体像は固まってなかったと言っていたな」
「あれに官邸が凄い勢いで関与している。
理由は帝興エアライン。それで察するだろう?」
「総理は本気で北の連中とやるつもりなのか!?」
「というより、先に総理がぶん殴ったという方が正しいだろう?
樺太銀行マネーロンダリング事件。
あのパンドラの箱が開かなければ、彼らの未来における破滅もなかった」
「で、追い詰められて暴発して……昔の軍じゃあるまいに」
「PMCが契約しているワシントンのオペレーションズ・リサーチだと、この国で体制に動揺を与える目的でテロが再度発生する確率は86%、それに自衛隊の一部が呼応する可能性が29%と出た。
やばい奴らをソマリアやアフガンやイラクで使い潰したこの国のやり方に今更何かいうつもりはないが、国内のテロの可能性を考慮して、そのあたりの加減をというのがこの席を設けた理由だよ」
「そりゃ、PMCとはいえ実際は鷲のひも付きだからワシントンが警告するのは分からんではないが……
俺を含めた多方面にこの話を流すのは何故だ?」
「忘れたのか?
今年は四年に一度のホワイトハウスの主を決めるイベントがあるって事を!?
さっきのオペレーションズ・リサーチじゃ成田空港テロ未遂事件であのお嬢様が死んだ場合、50%の確率でこの国がイラクからの撤退を決断し、イラク戦は56%の確率で多国籍軍の状況が悪化すると出た。
イラク戦局の帰趨が大統領選挙に多大な影響を与える昨今、この国の動揺はしゃれにならないんだよ」
「なるほどな。
お前の所のPMC、この国に既に入って何かしているな?」
「……契約上の黙秘とさせていただく」
「わかった。そこは突っ込まん。
で、それがどうして兵部の大綱という話になるんだ?」
「官邸が大臣を焚きつけて、『装備規格の統一』を実現しようと動いているらしい。
下手すると師団削減すら出してくるかもしれん」
「……そりゃ、財務からすれば願ったりかなったりだが、正気か!?
戦争前の軍縮で軍がどれだけ抵抗したか知らんわけではないだろうに。
あげくに、まだイラク戦は終わっていないし、彼らは戦っているじゃないか!
……だが、その話は魅力的だよなぁ。
あの金食い虫を減らせるって囁かれたら、うちの若手も飛びつくかもしれん」
「な。
俺がお前を呼び出した理由が分かるだろう?」
「理解はした。
とりあえず飲まんとやってられんわ」
「で、酔っぱらいの戯言だが、イラク終わるのか?」
「言ったろ。
今年のホワイトハウスの主はイラク戦局次第だって。
今熱いのはイラク三分割案だ」
「イラクがクルド人、スンニ派、シーア派の三つの勢力に分かれているのは知っているが、どうしてイラクを解体する方向で話が進んでいるんだ?」
「そのクルド人勢力が独立すると、国内に多数のクルド人が住むトルコが動揺する。
で、その国内クルド人過激派勢力のテロに対処する名目でトルコ軍がイラク北部のクルド人勢力に侵攻している。
この時点で長期化が確定されたから、ここをイラク戦争と切り離そうと考えた訳だ。
ワシントンの連中は、ほこりをかぶった信託統治を慌てて引っ張り出してイラクに適用する準備を始めている。
最初はイラク北部を信託統治領にして残りをと考えてたんだが、これにイラク南部が噛みついた」
「またどうして?
多国籍軍が泥沼のイラクから逃げだしたがっているのは彼らも分かっているだろうに?」
「イラク南部はシーア派住民が多数な上、戦争勃発から侵攻したイラン軍と日・英軍が交戦を避けた事で平穏が保たれている。
で、激しく戦っている中部イラクはスンニ派。それ以上の理由は必要か?」
「よくわかった」
「美味しい所をイランにもっていかれても、米国はというか今のホワイトハウスの主は秋の選挙に勝つ為にイラク戦争の勝利という名を欲しているんだ。
南部イラクが平和裏に独立して、日英軍を泥沼のイラク中部に投入できるのも大きいしな」
「そんな状況で、今の自衛隊イラク派遣が終わるのはたまらないという訳だ。
やっとこの宴会の理由が理解できた」
「あと、野党側の動きにも目を光らせておけよ」
「『戦争反対!イラクから撤兵を!』としか言わん奴らが……ああ。そういう事か」
「テロってのは何も要人を暗殺したり、爆弾を炸裂させるだけじゃない。
その発生に伴う国政の混乱を狙うのがテロだと定義するならば、野党側にスキャンダルを渡して与党を動揺させるのはもっとも法的リスクを払わなくていい楽な手だからな。
うちも数年前それでやられただろうが」
「おかげで、大蔵の看板が財務に替えられた。それも数年前か。
……遠くなったなぁ……」
「じゃあまた」
「次はもう少しうまい肴で飲みたいものだよ。
運転手さん。霞が関にやってくれ」
「お客さん。霞が関の何処へ」
「財務省ビルに頼む」
「ああ。官僚さんでしたか。
飲んだ後も仕事とはご苦労な事で」
「まったくだよ」
「……この話、俺に接触したって事は、お嬢様にも流せって事なんだろうな。
あまり息子をこういう話に巻き込みたくはないが……
もしもし。
ああ。まだ仕事だよ。多分今日は帰れそうはない。
そうだな。
明日帰るときにみんなで食事にでも行くか。
光也は起きているか?替わってくれ。
……もしもし。光也か。
まだ起きて勉強はいいが、体だけは壊すなよ。
明日、みんなで食事に行く時に先に迎えにきてもらいたくてな……」
こういう話はネタだけ投げて細部は読者に任せるスタイル。
16大綱
平成17年度以降に係る防衛計画の大綱について。
ほんとうにまぁこのタイミングでと作者が天を仰いだ日本における安全保障政策の基本的指針。
もちろんネタに使う事にした。
信託統治
wikiペタリ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E8%A8%97%E7%B5%B1%E6%B2%BB#:~:text=%E4%BF%A1%E8%A8%97%E7%B5%B1%E6%B2%BB%EF%BC%88%E3%81%97%E3%82%93%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%A8,%E3%81%95%E3%81%9B%E3%81%A6%E7%B6%99%E6%89%BF%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE%E3%80%82
こんなのを引っ張り出してきた時点でイラクは察してほしい。
瑞穂「このままでは私の出番が来ないので、エタらないようにブックマークや評価をお願いします」
瑠奈「随分久しぶりにここに出たような気がするわ」
瑞穂「とりあえず祝!書籍化!!祝!二巻決定!!」
瑠奈「そりゃ、本出ないと貴方一巻冒頭で終わるしねぇ……」
(グサッ!)
瑞穂「ふふふ。ここもネタ考えるの結構大変でね……ふふふ……」
瑠奈(あ。これ下手に突っ込んだらまずいやつだ……)
瑠奈「Twitterを中心にエゴサをしているけど、架空戦記クラスタが反応してくれたのでこんな話をば」
瑞穂「大枠だけ投げて、細部はみんなでわいわいがやがややってくれるのを眺めるスタイルですね」
瑠奈「お馬と同じでそこまでの知識が無いので、読者の知恵を借りようと」
瑞穂「実はこの2004年大統領選挙も現職がかなり危なかったんですよ。イラクのせいで」
瑠奈「それ以上の大混乱を今、この時点で見せられていると、色々な思いがこみ上げるのですが。が」




