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現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
虚塔の宴

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『ひらがなーず』通学編

この話はTwitterで本の事に反応してくれた磨伸映一郎先生に捧げます。

https://twitter.com/eiitirou/status/1320672067813994496?s=20

 この国の華族や財閥、または上流階級が通う帝都学習館学園。

 この学園は小学校からの一貫教育だが、中等部、高等部には外部の一般生徒から優秀者が特待生という形で招かれる。

 という事は、中等部や高等部の特待生に選ばれることを目指す生徒たちが集められた学校もまた周辺に存在してる訳で。


「ねぇ。宿題やっているなら写させて」

「昨日のドラマがさー」

「今度コンサートに……」


 そんな日常を送る生徒たちが周辺の学校に通う中、朝の名物が道路を通過する。


「おーおー。

 相変わらず威圧するなぁ。学習館の大名行列は」

「黒塗りの高級車で通学たぁいいご身分で」

「俺たちにもメリットが無い訳じゃないがな。

 あの車に乗っている連中の警備で、この周辺の治安は良いわけで」

「見ろよ。その中でも特別の一行がやってきたぞ」


 二台の高級警護車に挟まれた一台に乗っているのが帝都学習館学園中等部に通う桂華院瑠奈である。

 去年の成田空港テロ未遂事件からその警備は強固になっているのだが、そんなのは歩道を歩く一般生徒には関係が無い訳で。


「お。桂華院家のご令嬢か。

 今日は少し早いな」


 眼鏡越しに朝の高級車大名行列を見送ったのが、美春さつき。

 周辺の進学校に通っている眼鏡っ娘学級委員長である。

 彼女の隣のスポーツ系ポニーテール娘が竹刀袋を持ちながら会話を振る。


「あの人、結構おちゃめだって話。

 時々、歩いているのを警備の人に連れ戻されているとか」


「前々から思うのだけど、何処からそういう話を仕入れているのだ。大倉は」


「道場に通っている人が桂華院瑠奈のご友人だそうで。

 色々と愚痴というか悩みというかを聞かされているのよ」


「あー」


 大倉と呼ばれた彼女の名前は、大倉るり。

 同じ進学校に通っているので頭は悪くない。そして剣道大会で桂華院瑠奈と剣を交わせる程度の力量はあると、そのご学友である高橋鑑子に評される程度の腕を持っていた。


「おはよう!

 さっちゃんにるりちゃん♪」


「おはよう。

 あと、ちゃんはやめてくれ。甘崎。恥ずかしい」


 甘崎と呼ばれた彼女のツインテールがぶんぶん跳ねる。

 感情とともに動くから美春さつきと大倉るりはあの髪感情があるんじゃと疑っているが、聞くことは未だできていない。

 そんな彼女の名前は、甘崎ひなという。


「えー。

 さっちゃんかわいいのにー。

 で、何の話をしていたの?」


「さっちゃん言うなし。

 あの大名行列のお姫様」


「あー。

 るなっちか。かわいいよねー。あの人。

 サインもらえないかな?」


 甘崎ひなはミーハーだった。

 美春さつきはツッコミ役で、大倉るりはバランサー。

 誰がつけたか知らないが、クラスでは『ひらがなーず』と呼ばれている。

 由来はもちろん名前がひらがなだからだ。


「だそうだが?大倉よ。

 サインは入手可能か?」


 軽く眼鏡を持ち上げながら美春さつきが尋ねると、少し意外そうな目で大倉るりが美春さつきを眺める。

 そこそこの付き合いだからこそ、彼女がミーハーではないのを知っているからだ。


「まぁ、頼むだけはするが、意外ね。

 そういうのを気にしないタイプだと思ってた」


「いや。

 どの程度のコネかというのは知っておきたいと思ってな。

 何かあった時の為に」


「その理由に納得したわ」


「ありがとー!るりちゃん!!

 今度お菓子おごるね♪」


「わかったから手を振るな!

 ついでにツインテールを揺らすな!!」


 そんな三人を尻目に目を血走らせて幽鬼がごとき形相で学校に向かう生徒たちもいる。

 帝都学習館学園の入学試験を受ける者たちだ。

 入試規模は全国からの狭き門だからこそ、全国の才能ある若者が群がる修羅場となる。

 帝都学習館学園に入学してパトロンを見つけられたら、その時点で人生の勝ち組である。

 『ひらがなーず』三人が通っている中学校も帝都学習館学園高等部を狙う生徒たちの為に作られたという。


「さっちゃんにるりちゃんは学習館学園の試験は受けないの?」


「あの修羅の国に突っ込む覚悟も才能もないよ。私は」


 美春さつきは幽鬼のごとき受験者たちから視線を逸らせて苦笑する。

 東京の自治体公務員を父に持つ彼女にも才を信じた時があったが、ここにきて彼女は身の程を知ったともいう。


「私もパス。

 せっかくの学生生活だから、楽しい事したいじゃない?」


 大倉るりは頭に腕を組んで言い切る。

 転勤族の家で万一転勤する際には高いレベルの学校に通っていたという経歴が有利になるからという理由でこの学校に通っている彼女にとって、帝都学習館学園入学という目標は最初からなかった。


「うーん。

 るなっちと同じ学校に行くのもありだと思うけど、通学面倒になるからいいや」


 首を左右に揺らすついでにツインテールが動くのだが、甘崎ひなは気にすることなく笑顔で笑う。

 地元のケーキ屋の娘である彼女はミーハーはおいておいて、その頭は帝都学習館学園に入学できると言われていたのに、『家から遠くなる』を理由に今の学校に入った変わり者である。

 そこで美春さつきと大倉るりと知り合えたのだから、彼女はこの学生生活に満足していた。


「そろそろ予鈴が鳴るから急ぐぞ」

「はいはい。

 クラス委員長が遅刻じゃカッコ悪いしね」

「ちょっと待ってよー!」


 誰にも一日というものは等しく与えられる。

 それは桂華院瑠奈にも『ひらがなーず』にもだ。

 彼女たちが桂華院瑠奈と絡むかどうかは今はまだ分からない。

キャラ設定

 美春さつき 眼鏡っ娘委員長

 大倉るり  ポニーテール剣道娘

 甘崎ひな  ミーハーツインテール


キャラの掛け合いの為に『氷室の天地』を読み返しているけど、四コマで3キャラをうまく動かすのは本当に凄いわ……

『ひらがなーず』の話は『氷室の天地』みたいに本編から外れた日常を書いて行けたらと。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんとなくあずまんがで脳内再生されました
[一言] 防弾耐爆のランクルと防弾耐爆のセルシオを想像してもお嬢様なら過剰どころか控えめに感じるだろうと思ったが、市井から見ればどちらもスゲーといった感想になるのもそうなのか。
[一言] 高級車で通学  本人たち的には当然すぎて描写できないところが良いですね
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