某鉄道雑誌コラム 桂華ブルートレイン小話 2024/07/23 投稿
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ブルートレインと言えば、飛行機や深夜バスによって姿を消しつつある列車である。
この列車に手を差し伸べたのが桂華院瑠奈公爵令嬢というのは、ある意味偶然であり必然でもあった。
「ブルートレインが走っているなら、深夜バスに乗らなくて良くね?」
とは、某地方番組で彼女が発した迷言だが、この時期新興財閥として急速に規模を膨らませつつあった桂華グループは、信用担保として参入した鉄道事業と、買収によって得た各地のホテルの振興が至上命題とされており、帝国鉄道各社が見限りつつあったブルートレインというものを拾ったのは必然と言えよう。
そんな思惑で始まった桂華のブルートレイン事業といえば、鉄道参入のきっかけとなった四国の主要駅である松山・高知の両駅から京都までを結ぶ『ブルーナイト松山』『ブルーナイト高知』があげられる。
走っていた臨時快速のスジをもらい受ける事で実現するのだが、その特徴は線路の保守・整備の時間を確保する為に深夜時間に走らせない所にあった。
結果、夜22時出発のこれらの列車は深夜1時には岡山駅で併合して休み、朝五時の始発としてノンストップで関西圏に向かう事になる。
関西発も同じで、京都発、新大阪、大阪、三宮停車後に岡山駅で分割するのだが、ここで休めるというのがこの列車の肝なのである。
桂華グループのポイントカード『ケーカ』の対象になるだけでなく、移動先の桂華ホテル宿泊でブルートレイン利用者割引を使えるようにした結果、移動と宿泊に朝食までのトータルで見たら深夜バスと戦えるという戦略はそこそこ当たり、全車個室寝台でシャワー室つきの上朝食が食べられる事に評判は上々。
朝の8時に新大阪駅に到着するというスタイルもよく、ビジネス客を中心に利用者が増えている。
「朝食の準備ですが、セントラルキッチンを利用して岡山駅に運びます。
冷凍及びレトルトという形にして、朝6時からお出しする事になります。
電子レンジで事足りるので大いに助かっていますよ。
また、コーヒーなどのお飲み物はこだわりの一品をご用意させていただいています」
『ブルーナイト松山・高知』のスタッフも胸を張る。
人員の交代も岡山駅で行うので、帝国鉄道が運営している。
このセントラルキッチンを使った料理サービスは帝国鉄道が運営している『サンライズ』にも提供されており、評判は上々との事。
「まず、桂華鉄道が行ったブルートレインテコ入れ策は食事の強化でした。
『サンライズ』に使っていた285系電車を新造して第二種鉄道事業者としてブルートレインの筋を買い取って投入していったのです。
具体的に言うと、『銀河』『なは』『あかつき』『彗星』『あさかぜ』『はやぶさ』『富士』『さくら』ですね。
さすがに名前はそのまま使うより目的地をつけて京都発着は『ブルーナイト〇〇』、東京発着は『シルバーナイト〇〇』という形にしたみたいですが、『はかた号より遅く出発させる事』という誰が言ったか分かる天の声には苦労しましたよ。ええ」
この時桂華がかけた費用は7両1編成で10×2(往復)+予備2編成の22編成154両という深夜バスに乗りたくないためにかけるお金としては莫大な額がかかったのだが、当人曰く『747買うより安かった』との事でスケールが違う。
このせいで、桂華鉄道は多くのスタッフを確保することになるのだが、それだけではなく電化されていない四国帝国鉄道土讃線の非電化区間の電化工事と地盤改良工事までするのだから気合が違う。
「さすがにこれではないですけど元は取りますよ。
現在、愛知万博前という事もあって環境問題が注目されています。
岩沢都知事の排ガス規制と京都議定書に伴う二酸化炭素の排出量削減はトラック業界に大きな影響を与えるでしょう。
すでに東京で排出権取引市場の動きが始まっており、桂華鉄道は各帝国鉄道企業と共に炭素債の発行に向けて覚書を交わしました。これがおおきな収入になると期待しています。
桂華グループにはドッグエキスプレスという物流企業を抱えているので、ピギーバック輸送をはじめとした海上・航空貨物との一体化に寄与する際に鉄道で大きな人員を抱えるのは強みになるでしょう」
現在、政府与党と国土交通省はモーダルシフト関連法案について協議を進めており、それに合わせて桂華グループは東海道本線複線化構想として足柄SAと御殿場線を繋ぐ貨物ターミナルを建設予定な上に、第二東海道貨物線構想として天竜浜名湖線や関西本線の貨物利用を計画しており、深夜バスに乗りたくないお嬢様のわがままが日本の物流そのものを変えようとしているのだから面白い。
なお、ここまで金をかけたのにも関わらず、当のお嬢様はその後4回も深夜バスに乗る羽目になり『日本の役には立ったが、お嬢様の役には立たなかった』と番組視聴者から馬鹿にされた結果、わざわざブルートレインに乗るスポンサー回を作る羽目になった本末転倒ぶりをここに記しておく。
ブルーナイト四国
『ムーンライト松山』『ムーンライト高知』松山・高知—京都
シルバーナイト大阪
『銀河』大阪—東京
ブルーナイト熊本
『なは』熊本—京都
ブルーナイト長崎
『あかつき』長崎—京都
ブルーナイト宮崎
『彗星』宮崎—京都
シルバーナイト下関
『あさかぜ』下関-東京
シルバーナイト熊本
『はやぶさ』熊本—東京
シルバーナイト大分
『富士』大分—東京
シルバーナイト長崎
『さくら』長崎—東京
ピギーバック輸送
貨物を積んだトラックやコンテナを載せたトレーラーを、そのまま専用の貨車に載せて目的地まで輸送する事。




