月刊経済誌財閥 2003年10月号特集 樺太疑獄と桂華グループ組織再編と株式上場のタイムスケジュール
あくまで、この時代の外から見た見解の一つ
未だワイドショーを賑わせている樺太疑獄こと樺太銀行マネーロンダリング事件。
その陰に隠れて、近年の政局の陰の主役だった桂華グループの組織再編と上場スケジュールが着々と進行している。
今回はそれにスポットを当てつつ、今後の政財界の動きを俯瞰してみようと思う。
樺太疑獄--政府や岩崎財閥ですら手が出せなかった樺太の奥の院の崩壊--
そもそも、樺太疑獄とは樺太銀行のマネーロンダリング事件を一般に指すが、その実態は北日本政府崩壊時に日本に協力した旧北樺太政府高官たちへの懐柔策が背景にあり、更に元をたどれば米国の反共工作資金に至るという非常に長い経緯を持つ事件である。
この様な資金援助システムが、役割を終えた後もマネーロンダリングシステムとして残ってしまったことがそもそもの発端である。つまり、今回の元凶とは、始まりが米国の反共工作資金であり日本政府が直接的に関与できなかった事と、円滑な樺太統治の「飴」として日本に協力した旧樺太政府高官たちを華族に叙爵した上で不逮捕特権を与え過去の罪を問わなかった事だと言える。
当時の政府は政権交代や不良債権処理等に追われて、この伏魔殿を黙認。
そこに、経済が崩壊したロシアンマフィアが接近して……という流れなのだが、この時点で桂華グループ、いや桂華院瑠奈公爵令嬢の存在がゲーム盤に上がる。
彼女に流れるロマノフ家の血と彼女が持つと言われているロマノフ家の財宝がロシア政局を動かし、ロシア内部で起こったと言われるクーデター未遂においても彼女を旗頭にする動きがあったという噂が流れたのだ。
だが、9.11によって始まった非対称戦争と今回の樺太疑獄の発覚でそれらのからくりは完全に白日の下に晒されることになり、関係者の逮捕や自殺によって一定のケリがつこうとしている。
それは政府がようやく本格的に樺太統治に力を注げることを意味している。実際、今国会にて審議されている樺太特区法や枢密院改革法をはじめとして、恋住政権はこの樺太疑獄を奇貨として党内抵抗勢力への攻勢を強めている。
一方で、樺太に巨大な権益を持っていた岩崎財閥の動きは鈍い。当初、伏魔殿の崩壊に伴って活発に動くと目されていたのだが、蓋を開けると帝都岩崎銀行が五和尾三銀行の救済合併に尽力するのみであった。関係者は、岩崎はこの伏魔殿の闇の深さを知っているからだろうと語る。
桂華金融ホールディングス--上場とちらつく樺太銀行合併構想--
桂華金融ホールディングスは、不良債権処理のモデルケースとして武永金融大臣が再三強調していたその上場スケジュールを発表し、2004年4月1日に上場すると公表した。
これにより日本の不良債権処理は一つの山を越えることになり、世界と戦える国際金融機関の構築という次のステップに移ろうとしている。
とはいえ、『民間でできる事は民間で』をスローガンにしている恋住政権の中では郵便貯金と並ぶ公的金融機関であり、また樺太疑獄で渦中にある樺太銀行の処遇先として永田町及び霞が関でその噂を聞かない日はない。
関係者が匿名で語ってくれた。
「恋住政権の郵政民営化に対する執念はもはや怨念のレベルだ。それに対する地ならしという意味でも樺太銀行も民営化されるはずだったが、樺太疑獄でそのスケジュールが全部飛んでしまった。
金融庁サイドは桂華金融ホールディングスの上場、樺太銀行の上場、この二行の合併の後に郵政民営化を行い、郵貯とこの統合銀行をくっつけるという青写真を描いていたらしいが、到底無理になった。
浮いた桂華金融ホールディングスは、今の規模だと国内外の金融機関から食われかねない。
少なくとも、二木白水銀行は帝都岩崎銀行に五和尾三銀行を持っていかれて規模を大きくする為にも狙っているし、内部がガタガタで帝亜グループ入りした穂波銀行は主導権の奪回を狙って更なる合併先として桂華金融ホールディングスに視線を向けている」
一方で桂華金融ホールディングス内部人事にも異変があり、アンジェラ・サリバン桂華証券取締役が桂華金融ホールディングス専務取締役に抜擢され、次期CEOに内定したと関係者の間で噂されているようだ。
彼女はこの初夏の世界規模の市場の大商いでも、数百億ドル近い利益を一人でもたらした凄腕のファンドマネージャーであり、桂華グループの奥の院であるムーンライトファンドにアクセスできる一人と言われていた。この抜擢は当然ではあるのだが、同時に外資との合併に踏み切るのではないかと金融庁は警戒しており……
桂華資源開発--形を与えられた『ムーンライトファンド』その御簾の奥は相変わらず謎のまま--
経営統合作業中の桂華商会の子会社に桂華資源開発という会社がある。
元々は買収した湾岸石油開発に桂華商会の資源開発部門が合流した形になっているが、ここが桂華グループの奥の院とも言われるムーンライトファンドそのものである事を知る者は今や少なくない。
ムーンライトファンドは、ITバブルで財を成し不良債権処理でその名前を轟かし、現在の桂華グループを作り出した中枢であるが、その関係者は恐ろしく少ないと言われ、その全貌は未だ明らかになっていない。
近年の連結会計重視の流れによって、この正体不明のファンドにも形が与えられることになったが、持ち株会社としてではなく桂華商会の子会社という形をとったことに金融関係者は戸惑いを隠せない。組織の内部事情に詳しい関係者はこう語る。
「近年の桂華グループは、ムーンライトファンドによって作られたと言っても過言ではありません。現在も進んでいる桂華グループの事業再編後もムーンライトファンドが持ち株会社として君臨するのではと思っていました。
ですが、ムーンライトファンドが桂華金融ホールディングスではなく、桂華商会の子会社として姿を出したという事は桂華商会が桂華グループを率いるのではと考えている人も多いのです。
近年の桂華グループは橘隆二桂華鉄道会長、一条進桂華金融ホールディングスCEO、藤堂長吉桂華商会社長の三人が差配していました。
橘会長が山形県酒田市の土地取引の脱税疑惑で代表権の無い会長に追いやられ、ムーンライトファンドを持っていた桂華金融ホールディングスがそれを桂華商会に差し出した事で、一条CEOの力も落ちたと囁かれています。
一条CEOは元々第二地銀である極東銀行出身で、巨大化した桂華金融ホールディングス内部に地盤が無い所が弱点になっていました。
一条CEOがアンジェラ・サリバン専務取締役へのバトン継承を隠そうともしないのも、彼の力が残っている内にという焦りだろうと噂になっていますよ」
さらに不可解なのは、この桂華資源開発は桂華商会の子会社でありながら持ち株比率は49.9%しかなく、残り50.1%をスイスのプライベートバンクが握っている事である。その口座名は明らかになっていない。
間違いなく桂華院家の誰かの口座だろうと言われているが、ロシアではこれこそロマノフ家の隠し財産だという声がまことしやかに……




