お嬢様の無駄遣い おまけ 2021/01/23 投稿
酒田に旅行に行きたいなと調べた結果できたネタ
酒田の人たちが普通東京に行く場合は山形新幹線を使わない。
羽越本線で新潟まで出て、そこから上越新幹線の方が早いのだ。
ついでに言うと、上越新幹線がほぼ雪で止まらないというのが素晴らしい。
となると、問題は新潟からの接続な訳で。
列車はあるが、特急が少ないのが羽越本線である。
「じゃあ、列車買うか」
そんな事をあっさりと言える私こと桂華院瑠奈。
ちょっとしたお金持ちである。
「何を買うんですか?」
橘の言葉に私はプレスリリースを眺めて言った。
丁度この時期は、国鉄民営化後の車両置き換えが始まった時期でもあった。
「485系の置き換えが始まっているのよね。
だったら、新潟あたりに置いておいて、酒田に行く時に使うってのは悪くないでしょう?」
日本全国走りまくっていたから、大体の本線で利用実績があるというのもいい。
三両編成のやつを一つ買って、新潟に置いておくというのも悪くないだろう。
「普段は東日本帝国鉄道の新潟支社にレンタルすればいいし、酒田駅にも留置線があるのが大きいのよね。
邪魔ならそっちにおいておけばいいでしょう?」
そんな話をしていたら、墓参りついでに陳情された案件を思い出す。
酒田市駅前再開発である。
駅前のドーナツ化現象は地方において深刻であり、郊外店に客を取られて駅前デパートが閉店というのがこの辺りから雪崩を打って発生するようになる。
で、それがこの酒田市でも起こっていたのである。
「旧極東銀行案件ですよね。これ」
橘が資料を確認する。
だったら、話を聞くべきは一条だろうという事で、後日一条を呼んで話をする事に。
再開発の資料を確認した一条がため息をついた。
「ある意味、今の桂華の創業地ですからね。酒田は。
それが北海道が桂華の本拠みたいに言われているのを気にしているんでしょう」
旧極東銀行も本店機能が東京に移り、旧極東グルーブも桂華グループのメインになったのにも関わらず、あまりに規模が拡大しすぎて本家風を吹かすことすらできない現状、ここを地盤としていた加東元幹事長が秘書の脱税事件で議員辞職した事も大きかったのだろう。
忘れないでくれという思いがこの乾坤一擲の再開発に見える。
「旧百貨店跡地6500平方メートルを取得して、12階建ての複合ビルを建設する構想かぁ。
マンション棟に桂華銀行酒田支店に桂華ホテルに帝西百貨店の誘致って……完全にうち丸抱えじゃないのよ!」
こういう時の財閥は伊達じゃない。
口説き落とした後の展開がシャレでなく広いのだ。
橘が苦笑する。
「悪い話ではないですよ。
何よりもこの金額ならば、お嬢様の一存でどうとでもなります」
総工費はおよそ五十億円なり。
これなら、たしかに払えない事はないだろう。
そんな事を思っていた私に橘は続きを口にした。
「それに、これができれば泊まる事ができます。
お嬢様には、お帰りになられる田舎というのがあるというのは悪くない話だと思いますよ」
一条も何とも言えない顔で橘の後押しをする。
「我々は大きくなりました。
一昔前の言葉に『故郷に錦を飾る』ってのがあります。
旧極東銀行の私にとって、飾る故郷は酒田なのです。
こういう機会ですから、錦を飾りたいとは思いますけどね」
酒田と新潟の移動から始まったこの話だが、気付いてみたらこんな話になっていたのもよくある事で。
私も、二人の後押しに否定する理由もないのでこの再開発にゴーサインを出すことにしたのである。
「とはいえ、やるからにはこっちが主導権を握らないとね」
という事で、金を出す以上は口も出す。
駅から直で繋がる屋根付き歩道橋を整備し、帝西百貨店ではなく帝西百貨店のスーパー部門に変更。
メインは桂華ホテルで、桂華グループのオフィスフロアも用意する。
あと、主張したのは地下無料駐車場で、地方はとにかく駐車場がないと客が入らない。
で、この話の元になった485系の三両編成を買ったので、酒田の再開発起工式参加ついでに新潟駅まで見に行く。
「こっちは改造しないのね」
「使用頻度が少ないので貸出を考えると改造するのはという判断です」
私の質問に橘が理由をあっさりと告げる。
とはいえ、手が入れられる所は極力手を入れて新車同様にしている辺りはさすがである。
なお、私が乗る予定の真ん中はグリーン車のリニューアル車になっていた。
編成上は端にグリーン車や指定席で残り二両を自由にすると車内改札が楽なのだが、そこは金を出した私の都合を優先させてもらった。
なお、貸出期間中はこのグリーン車は使わずに、余っていた中間車を挟み込むとかで、それ『指定・グリーン・自由・自由』の四両編成運用でいいんじゃねと思ったのは内緒だ。
「で、あれは何?」
「ファンの方でしょうな」
このお買い物、まったく隠していなかったので『お嬢様列車』としてファンが写真を撮りに来たのである。
私を綺麗に無視して写真を撮っているあたりもう笑うしかない。
この日、酒田までの撮影ポイントで多くのファンのカメラによってこの列車の写真が撮られる事になる。
あげくに鉄道雑誌に掲載されてしまい、エヴァとかが『どうしてくれようこれ』と頭を抱えるのは後の話。
お嬢様の無駄遣い 五十二億円
酒田駅前再開発
新聞記事があったのでペタリ。
http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2008:09:21:2296
この再開発は見事に失敗し、その結果として酒田信用金庫が経営難に追い込まれて合併する事になった。
485系
値段を調べていたらこんなアーカイブが出てきた。
http://geo.d51498.com/MotorCity-Race/2520/nedan.htm
はつかり六両の改修に二億七千万円ほどかけているので、ざっくりと二億という形に。




